「新卒で入った社員がすぐやめてしまう」
「定着率を上げたいがどうしたらよいか分からない」
少子高齢化が進行する日本において、新卒で入社した人材がどれだけ長く働くかは、非常に重要な問題になります。
また、採用活動が長期化している中で、せっかく採用した人材がすぐにやめてしまっては、採用コストが無駄になってしまう恐れがあります。
そこで、本記事では、
について、事例とともに解説しています。
新卒の定着率に悩みを抱え、具体的な施策を行いたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
定着率とは「入社〇年後に在籍している従業員の割合」を表します。
例えば、新卒で100人採用した3年後に80人の従業員が在籍している場合、定着率は80%になります。
以下の計算式で算出することができ、数値が高いほど、従業員の離職が少ないことを表します。
定着率(%)=〇年後の在籍数/〇年前の入社人数×100(%)
「1年」「3年」「5年」といったように、年単位で測定することが一般的です。
定着率と離職率は似たような言葉ですが、以下のような違いがあります。
つまり、離職率は定着率と対になる概念で、数値はそれぞれの逆数で表すことができます。
例えば、定着率が70%である場合、離職率はその逆数の30%です。
厚生労働省の調査によると、令和2年に大卒で入社した人の定着率は67.7%です。
逆にいえば「10人採用したら3人以上の従業員が3年後までに退職する」ということを表しています。
グラフからも分かる通り、若干のバラつきはあるものの、ほとんどの年で30%前後の離職率を記録しています。
新卒入社後3年以内に退職する人は、何に不満を持って自社からいなくなってしまうのでしょうか。
以下は、アデコ株式会社が20代計330人に行ったアンケートの結果です。
退職する主な理由は3つあります。
①自身の希望と実際の業務内容のミスマッチ
②待遇や福利厚生に不満がある
③キャリア形成が見込めない
それぞれ詳しくみていきましょう。
1つ目は「自身の希望と実際の業務内容のミスマッチ」です。
「希望していた部署とは違う部署に配属された」という配属の問題もたしかに関係しています。
しかし、社会人経験がほとんどない新卒社員の退職原因は他にもあるようです。
例えば
「営業の仕事が自分に向いていないと感じた」
「思ったよりも単調な業務内容で飽きてしまった」
など、学生側の持っているイメージとの相違も、退職に繋がってしまいます。
2つ目は「待遇や福利厚生への不満」です。
長時間の労働が社員の不満を増幅させています。
また、不公平な評価制度により、従業員がやりがいを感じられなくなり、退職にいたるケースも多いです。
3つ目は「今後のキャリア形成が見込めないこと」です。
「企業の業績が低下している」「希望する職種に就くことができそうにない」といった、今後のキャリア形成に関係することも、若手人材の退職に大きく影響します。
特に、1社で定年まで勤めあげるという意識が希薄化しつつある現代において、多くの若手人材が、自身の希望する職種で経験を積むことを重要視しています。
なぜ、上記のような理由で退職してしまう人がいるのでしょうか。
以下では、入社前と入社後に分けて退職の原因を明らかにしています。
入社前
入社後
それぞれ詳しくみていきましょう。
企業の採用活動は、新卒入社後の定着率に大きく影響をもたらします。
自社にマッチした人材を採用できなければ、どんなに入社後に工夫をしても、すれ違いが原因による離職者は増加してしまいます。
学生と企業が本音で話せていなければ、業務内容、社内の雰囲気、学生の適性などにおいて、大きなギャップを生み出してしまいます。
特に、社会経験の少ない新卒が持つイメージと実際の業務内容には、大きな乖離がある場合がほとんどです。
また、学生は社会人の方と話すことに慣れておらず、正直に自己開示できていないことも考えられるでしょう。
企業側も、自社を多くの学生の第一志望にしてもらおうと、会社の魅力を大袈裟に、不都合になりうる情報を小さく言うことが見受けられます。
ありのままの情報を交換できていなければ、入社後に双方のギャップが生じ、早期の離職者が増加してしまいます。
学生が入社後のキャリア形成をイメージできていないことも、早期退職の増加に繋がります。
終身雇用制度が崩壊し、キャリア形成の主体はますます個人に移行してきました。
そのため、入社後、中長期的に得られる経験や成長を重要視する学生が増加しています。
1年目の業務内容だけでなく、3年や5年でどのようなキャリアアップができるのかをイメージできることが重要です。
そうでなければ「成長が見込めない」という理由で早期に退職する人が出てきてしまいます。
母集団形成の時点で、自社の採用要件にマッチしている学生が少ない、ということも考えられます。
例えば「成長意欲が高い人」を採用したいのに「ゆっくり着実に昇進したい人」からのエントリーが多い、といったことです。
自社にマッチしていないアプローチをしてしまったら、たくさん面接を行ったのに、採用人数が基準値に満たない、という状況が生じてしまいます。
せっかく採用した新卒の学生が早期に退職してしまっては、非常にもったいないです。
入社後に定着率が下がってしまう原因は以下の通りです。
明確な目標設定ができていないことも離職の大きな原因になります。
「前年度比150%の営業成績を達成する」
「3年後に管理職に昇進する」
といった明確な目標設定ができていれば、モチベーションも上がり、成長実感も感じられるようになります。
このような目標がなければ「これ以上のキャリア形成は見込めない」という理由で、離職する人が増えてしまいます。
「成果を上げたのに給与や待遇が見合っていない」ということも、離職に繋がる大きな原因です。
実際、待遇や福利厚生に不満を抱えて早期に退職する人は非常に多いです。
自分の成果がしっかり評価され、それに見合った給与や待遇が与えられないことは、他社への転職を考えるきっかけになってしまいます。
上記で、入社後の明確な目標設定が重要だと述べました。
しかし、ほとんど社会経験がない新卒にとって、明確な目標を設定することは困難です。
また、会社内で良好な人間関係を築くことは、定着率の向上に大きく繋がります。
そのため、新卒社員を支える取り組みができていなければ、早期に退職する人が出てしまいます。
①組織のビジョンを全員が共感している
②成果と報酬が結び付いている
③社内のコミュニケーションが活発である
④採用時のミスマッチが小さい
上記のような特徴を持つ組織は、新卒の定着率が高いといえます。
組織のビジョンを全員が共感している企業は、新卒の定着率が高いです。
「自分が組織の一員である」と認識することは、仕事をする上でのモチベーションにも繋がります。
そのため、組織として向かう方向性、つまりビジョンを全社員が共感している組織は、新卒の定着率が高いといえます。
成果が適切に評価され、それに見合った給与や待遇が得られることも、定着率の高い組織の特徴の1つです。
「成果を出せば出すほどより多くの報酬が得られる」
「結果に基づく公平な評価制度によって昇進が決まる」
このような制度が整っていれば、一人ひとりが高いモチベーションで業務に取り組むことができます。
給与や待遇面に関する不満も軽減され、定着率の高い組織であると言えます。
社内のコミュニケーションが活発であることも、定着率が高い組織の特徴の1つです。
企業で働けば、少なからず人と関わる機会ができます。
いくらリモートワークが進んでいるとしても、人間関係への関心が全くなくなるわけではないでしょう。
同期はもちろん、上司や部下など気軽に相談できる人間関係のある職場は、働きやすい環境であると言えるでしょう。
定期的な1on1ミーティングやチームでのカジュアルミーティングなどによって、コミュニケーションが活発である組織は、定着率が低いです。
採用時のミスマッチが小さいことも欠かせません。
いくら入社後の取り組みが適切でも、自社にマッチしていない新卒を採用していえば、離職者を減らすには限界があります。
選考プロセスにおいて自社に合う新卒を獲得できれば、入社後の取り組みとの相乗効果で、定着率を低くすることができます。
「学生から多くのエントリーが得られない」
「自社に合う学生になかなか会えない」
新卒採用において、このような悩みを抱えている企業は多いと思います。
自社にマッチした学生に会いたい、効率的に母集団形成をしたい方には、Matcher Scoutがおすすめです。
「知名度が低くナビ媒体では多くの学生からのエントリーを得られない」
「工数をかけずに自社にマッチした学生を採用したい」
新卒採用において、上記のような悩みはありませんか?
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新卒の定着率が高い組織にするために、具体的に何ができるでしょうか。
入社前と入社後に分けて、5個の施策をご紹介します。
入社前
入社後
それぞれ詳しくみていきましょう。
入社前には「企業と学生双方のミスマッチを減らすこと」が重要です。
「業務内容や社内の雰囲気、キャリアパスにかなりギャップがあった」
「もっと成長意欲の高い学生だと思っていた」
といった、認識のズレが生じないような工夫をしましょう。
「企業と学生がともに本音で話すこと」で、入社後のミスマッチを軽減できます。
企業側も学生が知りたい情報を話すことはもちろん、学生の本音を引き出すことが非常に重要です。
社会人と話す機会が少ない学生にとって、面接でいきなり自己開示をすることは難しい場合がほとんどでしょう。
また「合否を受ける」という意識から、自分を良く見せようと仮面を被ってしまうこともあります。
学生の本音を引き出すために具体的にできることには、以下のものがあります。
「自社の採用要件にマッチした学生にアプローチすること」も重要です。
母集団に自社の求める人材が少なければ、採用工数が増加する一方で、希望する採用人数に満たないことが考えられます。
逆に、採用人数を満たそうとすれば、入社後のミスマッチから定着率が低くなってしまうでしょう。
自社にマッチした母集団形成を形成するために具体的にできることには、以下のものがあります。
入社後は「採用した新卒社員のモチベーションを維持すること」が重要です。
「これ以上の成長は見込めない」
「労働時間や評価制度などの待遇面に不満がある」
といった、従業員のモチベーションを維持する工夫をしましょう。
「社員一人ひとりに明確な目標設定を行うこと」が重要です。
「3年後に管理職に就くために、営業でチームトップの成績を出す」
「将来独立するために、新規事業を軌道にのせる」
といったように、今の業務内容が中長期的に自分が望む目標に結びついていれば、従業員のモチベーションを高めることができるでしょう。
明確な目標設定を行うために具体的にできることは、以下のものがあります。
「成果に基づいた報酬制度を導入すること」も重要です。
「出した成果に応じた給与を得る、待遇を受ける」ということは、仕事におけるモチベーションに大きく影響します。
成果に基づいた報酬制度を導入するために具体的にできることは、以下のものがあります。
「生産性を重視し残業制度を見直すこと」も重要です。
「残業が多く、日々疲弊してしまっている」
「ワークライフバランスを重視した生活がしたい」
という理由で、離職を選ぶ人も多くいます。
そもそも、残業や長時間の労働時間は、成果を大きくするために行うものです。
長時間の残業によって、従業員の不満が大きくなり、成果が小さくなってしまっては、元も子もありません。
仕事を時間で区切るのではなく、生産性で区切ってみてはいかがでしょうか。
そうすれば、従業員も「残業をしたくないから短い時間で集中しよう」といったモチベーションも湧いてきます。
自社の状況と照らし合わせながら読むと、定着率を改善できる具体的な施策が思いつくかもしれません。
①株式会社アイネット|早期退職者が10%以下に
②株式会社ホットランド|早期退職者を5人から1人に
③堂本食品株式会社|内定承諾率が7割超
それぞれ詳しく見ていきましょう。
<企業概要>
独立系のITサービス企業であり、業務内容は以下の3つです。
①システムの企画、開発、運用、監視、保守
②自社のデータセンターを活用したクラウドサービス
③各種業務代行サービス
<課題>
社員の常駐先が多岐に渡るなかで、社員同士の連帯感を高めたり、労務管理の面で丁寧なフォローが必要でした。
<主な施策>
年に1回、自己のキャリアの振り返り、今後の目標設定を行うことで、近況の把握だけでなく、従業員のモチベーションの向上に寄与しました。さらに、新入社員研修時代から定期的に顔を合わせることで、一体感を醸成しました。
客先常駐のシステムエンジニアの労働時間も正確に把握しました。基準値を超えた社員に対しては、看護師が訪問し、職場環境や健康状態について定期的に面談を行いました。
女性のライフステージに合わせた柔軟な働き方を実現するために、産休・育休から職場復帰に至るまでの復職支援シートを作成しました。
<施策の効果>
<企業概要>
「築地銀だこ」が主力の飲食チェーン店で、現在は国内外に約400店舗の飲食チェーン店を展開しています。
<課題>
店舗数が急激に増加する一方で、店長(店舗マネジメント)の不足が課題でした。
<主な施策>
・出店計画に基づいた採用計画の策定
以前は、前年度対比および補充人数をベースに採用人数を決定していましたが、出店計画を基準に採用人数を決めました。
事業の拡大により、SVの能力に偏りができてしまっていました。そこで、リーダーシップの発揮が求められるSVの人材要件を明確化するとともに、教育体系の整備を行いました。
アルバイトとしての作業経験はありましたが、業績の重要性や部下育成など、店舗マネジメントに必要な能力が欠如していました。人事フォロー個別面談や新入社員の集合研修、退職者面談などを実施することで、早期離職防止を図りました。
<施策の効果>
<企業概要>
100年以上の歴史を持つ食品メーカーであり、主に業務用食品の製造を行っています。
<課題>
一般市販用食品を取り扱うメーカーに比べ、学生に馴染みがなく採用目標の達成が難しくなっていました。
<主な施策>
栄養士や調理師といったプロを相手に、技術力と開発力で勝負する業務用食品の魅力や、顧客との長期的な信頼関係を重視する社風を分かりやすいストーリーに落とし込んで伝えました。
合否を判定するのではなく、学生のやりたいことを見極めたうえで、自社の魅力を訴求し「この会社で働いてみないか」という動機形成の場にしました。
最終選考では、営業と開発双方の業務を体験してもらうことで、仕事内容や業務の魅力を体感でき、動機形成と入社後のミスマッチ軽減に努めました。
<施策の効果>
【参考】公益財団法人日本生産性本部「若者が定着する職場づくり取り組み事例集」
「入社後のミスマッチを減らしたい」
「自社に合った学生に多くエントリーしてほしい」
新卒採用において、上記のような悩みはありませんか?
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新卒の定着率や離職を防止するための施策について、事例とともに解説してきました。
労働人口の減少に伴い、自社の定着率を高めることや、離職を防止することの重要性は増しているのではないでしょうか。
本記事を読んで、自社の新卒定着率の現状をみつめ、改善できる施策を策定し、実行していただけたら幸いです。