近年「健康経営」が注目を集めていることをご存知でしょうか?
健康経営とは、従業員の健康状態を良好に保つことで、企業価値や生産性向上につなげる取り組みのことです。
この記事では、健康経営の定義や制度をはじめ、健康経営の実施を検討している方が知っておくべき情報をご紹介します。
<この記事を読むとわかること>
まずは、健康経営の意味と、健康経営が注目されるようになった背景について確認していきましょう。
健康経営とは、企業が従業員の健康管理を「経営課題」として捉え、改善に取り組むことです。
健康管理を従業員個人に任せるのではなく、他の事業活動と同様に戦略的な活動として投資を行うことで、企業全体の生産性向上を目指します。
【参考】経済産業省「健康経営」
健康経営が提唱され、注目を集めるようになった背景には以下のようなものがあります。
少子高齢化の影響で労働人口が減少していることから、従業員ひとり一人の生産性を上げることが企業の急務となっています。
労働人口減少の対策の一つとして、高年齢者の就労が奨励されています。
2013年には定年が65歳に引き上げられましたが、さらに2021年からは「労働者の希望があれば、最長70歳まで定年延長できるようにすること」が企業の努力義務とされています。
そのため、高年齢者でも健康に働ける職場環境を整備する必要性が高まっているのです。
近年、長時間労働による過労死・自殺や裁判などが社会問題になりました。
従業員の健康やストレスへの配慮を求める風潮が強まったことから健康経営が注目を浴びています。
コロナ禍の影響もあり、今後もさらに健康問題への関心は高まっていくでしょう。
医療費が年々増大していることも要因の一つです。
国民医療費の増加は、健康保険料の上昇という形で企業の経営を圧迫しています。
健康経営を推進するために、経済産業省は以下のような認定制度を設けています。
詳しく解説していきます。
健康経営銘柄は、東京証券取引所の上場企業の中から、健康経営に優れた企業を選定する制度です。
長期的な視点からの企業価値の向上を重視する企業として紹介され、投資家からの資本が集まりやすくなります。
健康経営銘柄に選定されるためには、毎年8〜10月ごろに実施される健康経営度調査に回答する必要があります。
詳しくは以下をご覧ください。
【参考】経済産業省「健康経営銘柄」
健康経営優良法人認定制度は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
健康経営優良法人として認定されると「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けられます。
また「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となり、自社の取り組みを内外にアピールできることも大きなメリットです。
そのほか、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、自治体や金融機関等において融資優遇などさまざまなインセンティブがあります。
また、健康経営優良法人に認定されるには申請が必要です。
詳しくは以下をご覧ください。
健康経営優良法人では、大規模法人の上位500社をホワイト500、中小規模法人の上位500社をブライト500として認定しています。
健康経営優良法人認定制度には、大企業を対象とした大規模法人部門と、中小企業を対象とした中小規模法人部門があります。
ここでは、それぞれの部門で健康経営優良法人と認定されるための評価基準をご紹介します。
以下に当てはまる企業は大規模法人に該当します。
大規模法人部門の認定申請料は、80,000円(税込88,000円)です。
大規模法人のうち、以下の要件を満たした企業が健康経営優良法人として認定されます。
出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営銘柄2024選定基準及び健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定要件」
以下に当てはまる企業は中小規模法人に該当します。
中小規模法人部門の認定申請料は、15,000円(税込16,500円)です。
中小規模法人のうち、以下の要件を満たした企業が健康経営優良法人として認定されます。
出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件」
健康経営を行うとどのようなメリットが得られるのでしょうか?
ここでは、健康経営を行うメリットを5つご紹介します。
労働生産性の向上は、健康経営の最大のメリットといえます。
従業員ひとり一人の心身の健康を高めることで、集中力やパフォーマンス、モチベーションが向上し、生産性や業績アップが期待できるでしょう。
実際に、健康経営の投資効果が実証された例もあります。
米国ジョンソン・エンド・ジョンソングループは、世界250社に対して健康教育プログラムを提供し、投資利益率を算出しました。
その結果、生産性・モチベーションの向上や医療コストの削減などにより、1ドルの投資に対し3ドルの利益が得られました。
このように、健康経営により生産性が向上し、企業利益につながることが明らかになっています。
従業員の健康を維持することで、疾病による長期休暇や退職者の高齢者医療費負担の低減が期待できます。
健康に働ける職場環境を提供することは、優秀な人材の流出を防ぎ、労務負担を軽減することにもつながるでしょう。
「健康経営に力を入れている会社」「働きやすい会社」としてブランドイメージを獲得し、社会的評価を得られることもメリットです。
健康経営優良法人としての認定を受ければ、求職者へのアピールや、投資家・取引先からの信頼も獲得しやすくなります。
健康経営に取り組む企業に対し、次のようなインセンティブを付与する自治体・金融機関等が増加しています。
このようなインセンティブを得られることも健康経営を実施するメリットといえます。
従業員が健康に働ける環境を構築することで、病気やメンタルヘルスの問題による離職の防止が期待できます。
実際に経済産業省の調査では、健康経営銘柄に認定されている企業は、全国平均と比べて離職率が大幅に低いことがわかっています。
全ての企業が健康経営を目指すべきであることは言うまでもありませんが、特に以下に当てはまる企業は健康経営を行うべき企業であるといえます。
健康経営と聞くと、大企業向けの取り組みのように思われるかもしれません。
「コストもかかるし、うちでは難しそう・・・」と感じる方もいるのではないでしょうか。
しかし、実は健康経営は中小企業の方が取り組むメリットが大きいです。
従業員数が少ない中小企業では、ひとり一人の健康状態が会社全体の生産性に大きく影響を与えます。
例えば、従業員数の多い大企業よりも、中小企業の方が一人の休職によるダメージは大きいですよね。
また中小企業の場合、従業員が休職・退職をしてしまった際の人材補充の難易度も高いです。
そのため、中小企業ほど従業員ひとり一人の健康を維持するために、健康経営を実施すべきと言えます。
離職率が高い企業は、長時間労働や休日出勤、ハラスメントが横行していることが多いです。
長時間労働が続けば、従業員の体調不良やストレスにつながります。
健康経営により健康問題やストレスを軽減することで、ハラスメントの減少も期待でき、離職率を下げることにもつながるでしょう。
先ほど「中小企業ほど健康経営を実施することのメリットが大きい」とお話ししました。
とはいえ、金銭面での負担がネックで健康経営に踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。
そんな時は、中小企業向けの助成金制度を活用することも一つの手です。
以下では、健康経営で活用できる助成金制度の一例をご紹介します。
働き方改革推進支援助成金には以下の3つのコースがあります。
時間外労働の削減や、有給休暇・特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む企業を支援します。
詳しくは以下をご覧ください。
勤務終了後から次の勤務までの一定時間以上の休息時間を指す「勤務間インターバル」の導入に取り組む企業を支援します。
詳しくは以下をご覧ください。
労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む企業を支援します。
詳しくは以下をご覧ください。
喫煙室の設置費用や整備にかかる経費の3分の2(主たる業種の産業分類が飲食店以外は2分の1)を上限100万円まで支援します。
詳しくは以下をご覧ください。
次に、健康経営を始める際のステップについて解説します。
まずは、自社が加入している協会けんぽや健康保険組合などの保険者へ、健康経営を始めたい旨を相談してみましょう。
健康経営についての専門知識を備えた職員の方に、具体的に何をすればよいのかアドバイスしてもらうことが可能です。
また、中小企業が健康経営優良法人に認定されるためには、保険者が行っている「健康宣言事業」に参加したうえで、次に解説する「健康経営宣言」をしなくてはなりません。
そのため、健康宣言事業への参加方法や申請フローなどについてもあわせて教えてもらうとよいでしょう。
次に、自社が健康経営に取り組むことを社内外に伝える「健康経営宣言」を行います。
健康経営宣言は、健康経営優良法人の認定を受けるための必須条件の一つです。
具体的には、企業ホームページなどでどのように健康経営を行っていくのか明文化し、発信します。
次に、健康経営を実践するための組織体制を整えましょう。
幹部や従業員の中から「健康づくり担当者」を選出し、担当部署を置きます。
「健康づくり担当者」は、総務・人事などの業務に携わっている従業員や、衛生推進に携わっている従業員の中から選ぶとよいでしょう。
「健康づくり担当者」の設置は、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を受ける際の必須の認定要件でもあるため、必ず設置してください。
組織体制が整ったら、自社が抱えている健康課題を把握します。
上記のような項目について調査・チェックを行い、課題を洗い出しましょう。
自社の健康課題が明らかになったら、課題を解決するための施策を決め、計画を立てます。
残業時間や喫煙率など、数値化できる項目に関しては数値目標を立てておくことをおすすめします。
また、次の項目の実施は法令で義務化されています。
達成できていない場合は最優先で取り組みましょう。
定期的に施策の振り返りを行うことも忘れないでください。
健康経営は一朝一夕で効果が出るものではありません。
長期的に評価・改善を繰り返すことが重要です。
ここまで健康経営の始め方を解説しましたが、
「自社でできそうな取り組みってなんだろう?」
「自社と同じような規模の企業はどんな取り組みをしているんだろう」
といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
ここからは、実際に健康経営を実践している企業の取り組み事例を、企業規模別にご紹介します。
まずは大企業の事例を見ていきましょう。
【参考】健康長寿産業連合会「2023 健康経営 先進企業事例集」
<施策>
<成果>
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次に、中小企業の取り組み事例を見ていきましょう。
<施策>
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