働き方改革は、企業の規模を問わずすべての企業にとって必要な取り組みです。自社の社員の定着率向上や生産性の向上につながるだけでなく、新卒採用や中途採用で人材を確保するときに求職者に重視されるポイントでもあります。
この記事では、
「働き方改革とは何?」
「具体的にどのように取り組めばよいか分からない」
「若い世代の希望に対応した職場環境に整備して優秀な人材を採用したいけど、どうしたらよいか分からない」
そんなお悩みを抱えている人事担当者様向けに、働き方改革の基礎知識から具体的な取り組み方、企業事例までご紹介していきます。
働き方改革とは、働く人が多様な働き方を選択できる社会を実現するために企業や国が行う取り組みです。
厚生労働省は、働き方改革を推進するための法律「働き方改革関連法」を2019年4月1日から順次施行しており、8つの労働に関する法律が改正されました。長時間労働の是正やテレワークの普及、育児・介護休業制度の充実などが主な施策としてあげられます。
では、なぜ国や企業による働き方改革が求められているのでしょうか。
ここでは「少子高齢化による労働力不足」と「働き手の生活環境の多様化」の2点から背景をご紹介します。
現在日本の人口は減少傾向にあり、2020年時点の日本の総人口は約1億2,000万人、高齢化率は28%です。しかしこのままだと2070年には9,000万人を割り込み、高齢化率が39%になると予測されています。
働き手が減少しているしているなかで企業が業績を高めるためには、大前提として社員が無理なく健康に働き続けることが欠かせません。そのために働き方改革を行うことで、社員にとって無理なく働ける選択肢を増やす必要があります。
現在、労働者の人口減少と高齢化率の上昇により、働きながら介護をする「ビジネスケアラー」が増えており、今後さらに増えることも考えられます。経済産業省によると、介護が理由で離職する人は毎年約10万人おり、2030年には家族介護者のうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーになる見込みです。
また、ビジネスケアラー発生により、約9兆円の経済損失額が発生しています。そのなかで「仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額」が9割に近い79,163兆円、次いで「 介護離職による労働損失額 」が約1割の10,178兆円となっています。
つまり、働き方改革によって社員が仕事と介護の両立をしやすくなるよう働く環境や働き方の選択肢を増やすことで、介護離職を減らすことにつながります。働き方改革によって多様な働き方を選択することが可能になる結果、経済損失額を大幅に減らすことができるのと同時に、会社の生産性や利益も高まるのです。
では、実際に働き方改革に取り組んでいる企業の割合はどのくらいなのでしょうか。
株式会社学情によると、働き方改革を全社的に取り組んでいる企業は68.6%にのぼりました。約7割の企業が働き方改革を実施し、働く環境の改善に取り組んでいることが分かります。
続いて、企業が具体的に取り組んでいることとして、主に以下のようなものがあります。
▼企業が働き方改革で取り組んでいること(複数回答可)
「時間外労働(残業)の削減」が85.0%と最も多く、続いて「有給休暇取得の奨励」が84.0%という結果となりました。ワークライフバランスの向上に積極的に取り組んでいる企業が多いことが分かります。
働き方改革が新卒採用活動に波及した影響については、「波及効果がある」と回答した企業は19.0%と、約2割という結果でした。
効果があった企業は「週休3日制の導入や副業解禁で応募者が増えた」「フルリモート(居住地自由)を制度化したことで、全国から応募が入るようになった」という声が上がっています。その一方で、効果が感じられないと回答した企業からは「『時間外労働(残業)の削減』や『有給休暇の取得奨励』など各社が実施していることは、あまり差別化につながらない」という声があがりました。
すでに多くの企業が取り組んでいる働き方改革を実施するだけでは差別化が狙えず、むしろ学生にとってはすでに働きやすい環境であることが企業選びの前提条件となっている可能性も考えられます。働き方改革で採用活動を有利に進めたい場合、ほかの企業は実施していないような制度を導入するなど、対策が必要になります。
働き方改革を実現するために解消したい、日本の労働市場が抱えている課題は以下の3つです。
▼働き方改革で改善したい3つの課題
日本人の長時間労働は深刻な問題になっています。
厚生労働省によると、2019年の総実労働時間(パートタイム労働者を含む)は1,710時間で、そのうち140時間は所定外労働時間でした。また、2019年のパートタイム労働者を含まない一般労働者の総実労働時間は1,945時間で、過去の年と比較してもほぼ横ばいの値となっています。
長時間労働は集中力が低下しやすくなるため、労働生産性も低くなることが考えられます。また、長時間労働によって過労や精神的ストレスがたまり、過労死や自殺につながるリスクもあります。
労働生産性を高めながら社員の健康を守るには、働き方改革によって長時間労働を解消する必要があるのです。
非正規社員と正規社員では賃金格差があり、2023年5月時点で非正規社員の平均賃金は22万6,600円、正規社員の平均賃金は33万6,300円と、約11万円の差があります。これは、非正規社員の賃金が非正規社員の賃金の約7割ほどであるということです。
また、厚生労働省によると、2023年の雇用者のうち非正規社員の割合は37.1%でした。約4割を占める非正規社員の賃金が正規社員とここまで差があることは、非正規社員のモチベーションの低下やさらなる生産性が発揮できない可能性が考えられます。そのため、非正規社員と正規社員の賃金格差の解消が求められます。
労働力不足の現在、生産年齢人口に含まれない高齢者にも就労の機会を提供することが必要になります。実際、内閣府の調査によると、現在仕事をしている60歳以上の方で「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答した人は約4割でした。
「70歳くらいまで」から「働けるうちはいつまでも」まで回答した方の合計は約9割となり、ほとんどの方が今後長い間働いていきたいと考えていることが読み取れます。そのため、高齢者も働きやすいような働き方を整えることが求められます。
ここからは、2019年4月から順次施行されている働き方改革関連法について詳しく見ていきます。
働き方改革関連法の導入に伴い、11の変更点がありました。一つずつみていきましょう。
時間外労働の上限規制は、働きすぎを防ぐために定められました。残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間となります。これは1日2時間を目安に残業することとなり、この時間を超えることは法律により規制されています。
大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行されました。
しかし、臨時的な特別の事情がある場合は、年間6ヶ月という期間に限って、残業時間が月45時間・年360時間を超えることが認められることもあります。その場合は、以下の3つの規則を守りましょう。
▼臨時的な特別の事情により残業時間月45時間・年360時間を超える場合、守るべき3つの規則
1.年720時間以内
2.複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
3.月100時間未満(休日労働を含む)
これら3つの規則に違反した場合、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあるため、必ず守るようにしましょう。
労働基準法が改正されたことで、企業は年次有給休暇の付与日数が10日以上のすべての労働者に対し、毎年5日、確実に年次有給休暇を取得させる必要があります。大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されました。
また、時季指定とは、年次有給休暇が10日ある労働者に対して、企業は年5日まで社員と相談したうえで時季を指定して取得させるということです。これにより、社員に確実に有給休暇の取得を促せます。社員が有給休暇を取りやすい環境づくりにつながるでしょう。
「勤務間インターバル制度」は労働者の働きすぎを防ぐために定められました。勤務終了から翌日の出社までに、一定時間以上の休息期間を確保することを義務付けています。これにより、労働者の生活する時間や睡眠時間を確保することが目的です。
例えば勤務終了から翌日の勤務開始までの時間が設定したインターバルの時間に満たない場合、確保するために以下の2点が考えられます。
大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されており、努力義務ではありますが、導入することで社員の休息時間を確保し、生産性の向上が見込まれるでしょう。
「フレックスタイム制」は、労働者の柔軟な働き方を推進するために定められました。これまで最大1ヶ月だったフレックスタイム制の労働時間の調整可能期間(清算期間)が、最大3か月に延長されました。
フレックスタイム制は、社員自身が生活スタイルに合わせて勤務時間を調整しやすい点がメリットになります。そのため、育児などで急な予定が入っても勤務時間を別日にずらすなど、変更が可能です。
しかし、これまでは労働時間の調整可能期間(清算期間)が1ヶ月のみでした。つまり、就業時間が月160時間と定められている場合、1ヶ月の中で就業時間の調整をしなくてはなりませんでした。
それが今回の変更によって3か月の中で就業時間を調整することが可能になりました。フレックスタイム制の清算期間の延長により、これまでよりさらに柔軟な働き方が可能になったのです。大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されています。
企業に対して産業医・産業保健機能の強化が求められています。労働者の健康確保対策の強化や産業医の活動環境の整備などを行うことで、労総者の健康を心身ともに守ることが目的です。大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されています。
雇用形態における賃金格差をなくすために定められました。同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、給与や待遇などで不合理な待遇差を生むことを禁止しています。
この変更により、雇用形態にかかわらず労働者全員が公正な待遇をうけることが目的です。大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から施行されています。
2023年4月から中小企業を対象に、月60時間を超える残業の割り増し賃金率が50%に引き上げられました。大企業は2010年から適応されており、今回の変更で中小企業も大企業と同じ割り増し賃金率となりました。これにより、労働者の働きすぎを防ぐことを目的としています。
労働安全衛生法の改正により、労働時間の客観的な把握が義務付けられました。
具体的には、労働者の勤務日ごとの始業・就業時間を把握して正確に記録することや、タイムカードなど客観的に就業時間を記録することを企業に求めています。
これにより、労働者の働きすぎを防ぐことにつながります。大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されています。
「高度プロフェッショナル制度」とは、高度な専門的知識を持ち、職務範囲が明確で年収要件を満たす労働者に限り、労働基準法に定められた労働時間や休憩、休日及び深夜の割増賃金にかかわる規定を適用しない制度のことです。
年間104日以上の休日を確保すること、健康管理を確保することを満たしたうえで、本人の同意と労使委員会の決議が得られた場合に適応されます。大企業・中小企業ともに2019年4月から施行されており、高度な知識を持った人材にとってより柔軟な働き方が可能になります。
パートタイム・有期雇用労働法の改正により、アルバイトや契約社員などの有期雇用労働者に対しても待遇の内容や職場での考慮事項について雇用主が説明する必要があります。正社員と同様に待遇に関する説明をすることで、待遇の透明化と非正規社員と正規社員の賃金・待遇格差を是正することを目的としています。
大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から施行されています。
待遇の説明義務と同様に、有期雇用労働者についても労働権を保護するために行政による履行確保措置の規定ができました。具体的には、行政がある企業の有期雇用労働者の労働環境の改善が必要だと判断した場合、その企業に対して助言や指導を行います。
大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から施行されています。
ここからは、働き方改革を行う企業側・社員側のメリットをご紹介します。
▼働き方改革に取り組むメリット
ひとつずつ見ていきましょう。
働き方改革を行うことで、社員は適切な休息時間を確保することができます。それにより、生産性の向上が見込まれるでしょう。
十分な休息を取らずに勤務を続けていると、眠気や体調などで勤務に支障をきたすことがあります。その場合、業務で注意散漫になりミスが起こりやすくなるなど生産性が下がることが考えられます。社員の休息時間を確保することが、結果的に企業の生産性の向上につながるでしょう。
働き方改革は企業ブランディングにも効果的です。社員にとって働きやすい環境であることは社員を大切にしているという印象につながり、企業のイメージの向上が見込めます。
新卒・中途採用どちらの求職者も、労働時間が長く労働環境が過酷な会社に入社したいとは思わないでしょう。特に学生はワーク・ライフ・バランスを重視する傾向にあります。働き方改革を行って労働環境が整っていることをアピールすれば、人材確保にもつながるでしょう。
また、正規社員だけでなく非正規社員や高齢者雇用、フレックスタイム制の積極的な導入を行うことで、個人の事情でフルタイムでは働くことが困難な人材も採用することが可能になります。労働力不足が深刻な現在、多様な働き方や雇用形態を提示することで多くの労働者を確保することにつながります。
続いて、働き方改革を実施した場合の社員側のメリットをご紹介します。
社員にとって、働き方改革によって自分のキャリアビジョンやライフスタイルに合った働き方が実現できることが大きなメリットでしょう。そのため働く際に生じる環境のストレスも減り、さらなる生産性の向上が見込まれます。
育児や介護と仕事を両立している社員にとっては、仕事を調整できる点がメリットです。フルタイムで働かなくてはいけない場合、育児や介護との両立はかなり困難になってしまいます。そのため、仕事を辞めなくてはいけない方もいるでしょう。
しかし、フレックスタイム制や時短勤務などの制度が整っていることで、仕事をつづけながら両立が可能になります。これは社員だけでなく、企業にとっても貴重な労働力を失わずに済むため、企業側のメリットでもあるのではないでしょうか。
働き方改革は全企業が行うべきものですが、そこにはデメリットも存在します。対処できるよう、どのようなデメリットがあるのか把握することが必要です。
▼働き方改革を行うデメリット
これまで非正規雇用者は正規雇用者に比べて約7割の賃金だったため、人件費が抑えられていました。しかし、法改正によって同一労働同一賃金が施行されたことで、非正規雇用者の人件費が増えてしまいます。そのため、雇用者全体の人件費が増加してしまいます。
人件費の増加を解決するための解決策は以下の2つがあげられます。
▼解決策
今まで人が行っていた作業を機械化することで、人件費の削減と生産性の向上につながります。
人件費の削減が困難である場合は、人件費以外のコストをカットすることで全体的なコストを削減することが可能です。例えば早期離職を防ぐことで採用コストをカットすることや、事業所の光熱費を抑えることがあげられます。
また、働き方改革によってコストの削減につながる場合もあります。例えばフルリモート勤務、もしくはリモート勤務と出社勤務のハイブリッド制度を導入した場合、1日にオフィスに出社する社員の数は限られるでしょう。そこで、会社を規模の小さいオフィスへ移転することで安価な賃料に抑えることが可能です。
労働者にとって、残業時間の減少により残業代が減少することで給与が下がることが懸念点です。残業代が減ることが生活に影響を与える労働者にとっては大きなダメージになってしまいます。
▼企業が行うと良い対策
そこで、企業が行うとよい対策として、給与制度の見直しがあげられます。見直すことで就業時間内の勤務で労働者に十分な給与を支払うことができるほか、労働者のモチベーションの向上にもつながるでしょう。
残業時間を制限することは、これまで残業時間込みで行っていた業務を就業時間内というより短い時間で行う必要があるため、労働者に高い生産性を求めることにもなります。これをプレッシャーに感じる労働者もいるでしょう。
▼企業が行うとよい対策
企業が行うとよい対策として、社内でコミュニケーションをとれる機会を増やすことがあげられます。例えば、上司や人事担当者との面談を月に1回設定する、従業員同士のコミュニケーションが活性化するようなサークル活動やイベントを実施するなどが考えられます。
分からないことがあったとき、悩みや不安を抱えているときにすぐに話せるような環境や機会をつくることが、労働者のプレッシャーを減らすことや生産性の向上につながるでしょう。
働き方改革関連法には、違反すると罰則が適用されるものがあります。
▼罰則が適用される働き方改革関連法
これらの関連法の罰則について、次の見出しで詳しく説明していきます。
1.時間外労働の上限規制
今回の改正により、「残業時間45時間以内、年360時間以内」の原則のほかに「臨時的な特別の事情がある場合」の「年720時間、所定の複数月の平均80時間以内(休日労働含む)」や「月100時間未満(休日労働含む)」の上限ができました。
これは1日あたりの平均残業時間が4時間以内に収めるということです。この上限を超えて労働させた場合、企業には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
2.年次有給休暇の時季指定
有給休暇が年10日以上ある労働者に対し、年5日以上の取得が義務化されました。これにはパートやアルバイト従業員も含まれます。
従業員の年5日以上の有給休暇取得ができていない場合、企業には年30万円以下の罰金が科されます。また、労働者の請求する時季に年次有給休暇を与えなかった場合も、企業には6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されます。労働者1人につき1つの罪と取り扱われるため、労働者に徹底して有給休暇の取得をしてもらうことが必要です。
3.月60時間超の残業の割増賃金率の引き上げ
改正により大企業・中小企業ともに月60時間を超える残業の場合、割増賃金率が50%に引き上
げられましたが、50%に満たない割増賃金率で支払う場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
4.フレックスタイム制の清算期間の延長
フレックスタイム制の清算期間は1ヶ月から3か月に延長することが可能になりましたが、労働基準監督署長へ労使協定を届け出る必要があります。労使協定を届けなかった場合には、30万円以下の罰金が科せられます。
また、清算期間全体の労働時間が週平均40時間、または1ヵ月の労働時間が週平均50時間のどちらかを越えた場合は、フレックスタイム制であっても時間外労働とみなされます。その場合は割増賃金で支払う必要があるので、注意しましょう。
5.産業医・産業保健機能の強化
「月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接を申し出た」労働者や、「月100時間超の時間外・休日労働を行った」研究開発業務従事者、「1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超行った」高度プロフェッショナル制度適用者に対して、企業は産業医との面談をさせることが義務化されています。
高度プロフェッショナル制度適用者と研究開発業務従事者の産業医との面談を行わなかった場合、企業は50万円の罰金が科されます。一般労働者に対して面談を行わなかった際の罰則はありません。
そして、知らずに法律違反をしていたというトラブルにならないように、対策をする必要があります。
▼働き方改革関連法を遵守するための対策
特に年次有給休暇の取得や時間外労働の上限規制については、従業員も法律を遵守する意識を持つことが必要になります。法改正によって定められた規則について周知を徹底し、企業だけでなく従業員も遵守する意識を高めていきましょう。
また、法律に違反しないためには労働時間などを見える化しておくことも必要です。そのために、従業員に勤務管理を任せるのではなく、デジタル化によって労働時間などの数値を残すようにすることがおすすめです。そうすることで、働き方に対するトラブルを防ぐことにつながります。
では、働き方改革をどのように新卒採用に活かせばよいのでしょうか。
3つのポイントをお伝えしていきます。
▼働き方改革を新卒採用に活かす3つのポイント
新卒が働きたいと考える会社とはどのような会社なのか、解説していきます。
株式会社識学の調査によると、新卒・若手社員が会社を辞めたいと思っている割合は合計すると58.7%であり、その辞めたい理由として「昇給の見込みがないから」40.9%、「休みがとりづらいから」29.5%が上位2つでした。昇給など仕事のやりがいにかかわる理由とともに、休みも重視している傾向が読み取れます。
【参考】株式会社識学「【新卒入社3年未満の若手社員の“働き方に関する調査”】」
リモート勤務と出社勤務の割合について、新卒・若手社員は、「出社したい」(「どちらかと言えば出社がよい」を含む)が52.0%、リモートワーク派(「どちらかと言えばリモートワークがよい」を含む)が48.0%でした。
感染症が落ち着き、出社したい新卒・若手社員とリモートワークをしたい新卒・若手社員の人数はほぼ同じであることが分かります。
また、就職活動をしている学生にどのような企業に魅力を感じるのか聞いた調査によると、「完全週休二日制」が3番目に多い結果となり、そのほかにも「希望勤務地で働くことができる」「転勤がない」「フレックス制度を導入している」「産休育休後の復帰率が高い」など、ワークライフバランスに対する項目の関心が高いです。
▼学生が企業に魅力を感じる点(複数回答)
【参考】人事ZINE「【25・26卒】就活生が企業に求めるものに関する意識調査アンケート」
学生が求める働き方を実現するために、企業が行うとよい働き方改革として以下のことが考えられます。
▼企業が行うとよい働き方改革
学生が企業に求めるものとして「産休育休後の復帰率が高い」という項目があるように、仕事だけではなく生活も充実させるワークライフバランスを考えている学生が多いです。
そこで、以下の2点を整えることで、多様な働き方が可能になり、学生にとって魅力的な職場環境となります。
学生が企業に求めるもので最も多いのが「社内の雰囲気が良い」ことからもわかるように、働き方に対する制度が整っているだけではなく人間関係も良好に築いている会社は学生からの人気もさらに高まります。
そこで、社員同士のコミュニケーションを活性化させることが大切です。
フルリモート勤務ではなく週に数日出社日を設ける、上司などと面談する機会を設けるなど、社内のコミュニケーションを活性化させることで、新卒採用でアピールできるだけでなく、会社の生産性の向上にもつながります。
学生は、企業に求めるものとして「成長できる環境がある」という点も重要です。成長環境を整え、アピールすることも学生の集客につながります。成長環境を整えることとして、以下のようなことがおすすめです。
▼成長環境を整えるためにしたいこと
新卒の学生に対して、働き方改革をしっかり行っている企業であることを伝えていくことで、母集団形成につながります。
働き方改革をアピールポイントとして訴求したい場合、おすすめなのは働き方に特化した説明会や座談会を実施することです。
働き方や待遇は、新卒の学生にとって会社選びに重要な要素ですが、印象が悪くなることを避けて直接企業に聞くことをためらってしまう学生も多いです。そこで、働き方や待遇に特化した説明会を実施することで、学生も気になる点を聞きやすくなり、企業への理解度が高まるでしょう。
学生が気になっているものの、採用担当者に聞きにくいこととして、以下のようなものがあげられます。
▼学生が聞きにくい働き方改革についての質問
これらの疑問点について質問が来る前に回答しておくことで、学生も深く理解することができます。
働き方改革を進めたほうが良いとは分かっていながらも、ハードルが高いと感じる採用担当者様もいるのではないでしょうか。ここでは、働き方改革を進めるために利用可能な支援制度についてご紹介していきます。
働き方改革では、人件費やITツールの導入など、どうしてもコストがかかってしまいます。そのため、働き方改革を推進するために企業が助成金を出しています。コスト面で働き方改革の導入を悩まれている採用担当者様は、以下の助成金を活用することも検討してみてください。
▼働き方改革の推進のために利用できる助成金
業務改善助成金とは、事業場内での最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性を向上させるために設備投資を行った場合、設備投資の費用を一部助成する制度です。
▼助成金の対象者
事業場内最低賃金とは、事業場内で最も低い時間給のことで、地域別最低賃金とは毎年10月ごろに改訂される都道府県別の最低賃金のことです。この2つの差額が50円以内、つまり、都道府県の最低賃金に近い賃金であることが条件になります。
▼業務改善助成金の申請の流れ
また、助成金が支給されたあとも「状況報告」を都道府県労働局に提出すること、「消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書」を提出する必要があるため、注意が必要です。
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用者の企業内でのキャリアアップを促進するために、正社員登用や待遇の改善に取り組んだ企業に助成するものです。
キャリアアップ助成金には、以下のコースがあります。
◎正社員化支援
◎処遇改善支援
▼助成金の対象者
企業規模に制限はなく、雇用保険適用事業所の、助成に必要な書類を提出ができる事業主が対象です。
▼キャリアアップ助成金の申請の流れ
時間外労働等改善助成金とは、生産性の向上を目指す中小企業に対して、時間外労働の縮減のための様々な取り組みに助成するものです。
◎支給対象となる時間外労働縮減のための取り組み
※研修には業務研修も含み、機器の導入はパソコン・タブレット・スマートフォンは対象外
▼助成金の対象者
▼時間外労働等改善助成金の申請の流れ
続いて、働き方改革に関して専門家に相談できる窓口を紹介します。
▼働き方改革に関する相談窓口一覧
働き方改革推進支援センターは、労務の専門家に対して無料で相談できる窓口です。特に中小企業・小規模事業者の方々が抱える様々な課題に対応するために厚生労働省が設置しました。47都道府県にあるため、相談しやすいことが特徴です。
また、働き方改革について専門的に相談できるコンサルタント会社もありますので、そちらも活用することも一つの手です。
ここで、実際に相談する際のポイントについてご紹介します。
▼働き方改革について相談する際のポイント
働き方改革について、自社はどのような課題を抱えているのか、何を質問したいのかを明確にしたうえで相談しましょう。この部分が曖昧になっていると、専門家も適切なアドバイス、コンサルティングができずに根本的な解決につながらない可能性があります。
また、複数の専門家に相談することもよりよい環境改善につながります。もちろん一人の専門家に相談してもよいですが、複数の意見を聞くことで見えてくる課題や解決する可能性もあります。
ここからは、実際に働き方改革を推進している企業事例を見ていきましょう。
3社紹介します。
塩野義製薬株式会社は大阪府に拠点をもち、医薬品や臨床検査薬・機器の研究、開発、
製造、販売などを行う会社です。社員数は1000人以上の大企業です。
▼働き方改革の取組み
◎スーパーフレックスタイム制度
以前から導入していたフレックスタイム制のコアタイムを廃止し、より柔軟な勤務が可能になりました。健康面に配慮し、原則として5時~21時の範囲での勤務を推奨しています。また、1日最低3時間の勤務を定めています。
◎在宅勤務制度
研究職・製造職は業務上出社が中心になるため、主にスタッフ職で制度を活用しているそうです。在宅勤務の「いつどこで働くのかが把握しにくい」という課題を踏まえて、時間も含めた業務予定を立てて共有する仕組みを導入しています。
◎所定労働時間の見直し
2021年10月から、1日の所定労働時間を7時間45分から7時間に、1ヶ月の所定労働時間を155時間から140時間に短縮させました。短縮した分の1ヶ月あたりの15時間分は固定残業代として支給し、給与水準を維持しています。
◎選択週休制度と副業基準の見直し
2021年10月から社員の社外での学びを還元することを期待し、選択週休制度の導入と副業基準の見直しを行いました。選択週休制度では、働く時間に応じて給与が支給される制度を導入しており、所定労働時間は5分の4に、給与は原則80%になる仕組みです。
副業は同業他社や医薬品を取り扱う施設での業務は承認しておらず、100人程度の社員がコンサルティングや教育など、様々な活動を行っているそうです。
【参考】働き方・休み方改善ポータルサイト『働き方・休み方改革取組事例集』
株式会社ZOZOは千葉県に拠点をもち、ファッションECを運営している会社です。社員数は1000人以上の大企業です。
▼働き方改革の取組み
◎変形労働時間制
1日8時間×週5日勤務(週休2日)を基本としながら、1日10時間×週4日勤務(週休3日)を選択できるようになっています。どちらを選択しても総労働時間と給与は変わらず、社員は半年に1度、週休2日か3日かを選択することが可能です。
制度導入によって社員が不在になる日が増えるため、業務の属人化を解消する取り組みを実施しています。
▼取組みの成果
株式会社綿善は、京都府に拠点を持つ旅館です。社員数は29人以下と、小規模の企業です。
▼働き方改革の取組み
◎ICTの活用やマルチタスク化
これまでフロント・客室・調理で分かれていた担当を、2018年から全社員が全部門ローテーションで取り組むようになり、マルチタスク化に取り組みました。様々な業務にかかわることで、スタッフがそれぞれの業務内容の理解を深めることが可能になったそうです。
また、1人1台、社内連絡用の個人端末を導入しました。即座に連絡を取れるようになり、業務効率化が図れたそうです。同時に、管内防犯カメラを導入したことでフロアごとの繁忙状況を一目瞭然にし、効率のよい人員配置が可能になりました。
◎年間休日の増加
全ての業務を洗い出し、お客様への価値につながっていないと判断した業務を廃止し、部署間で協力体制を組む取組みを行いました。
▼取組みの成果
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この記事では働き方改革について解説してきました。
働き方改革の基礎知識や企業の事例を参考に、新卒採用にも活かすことができる働き方改革を推進していきましょう!