新卒内定者に提出を求める資料のひとつに「健康診断書」があります。
健康診断の実施は厚生労働省によって義務付けられていますが、企業側はどんなことに注意しなければならないのでしょうか?
この記事では、内定者を対象とした健康診断の制度や実施時期、企業が気を付けるべき点を解説します。
新卒を雇い入れる際に健康診断を受診させる必要があるのでしょうか?
ここでは、法律の観点から必要性について解説します。
新卒を雇い入れる際、入社前に行う健康診断に一般健康診断があります。
一般健康診断とは、労働安全衛生規則第43条と労働安全衛生法第66条によって定められています。
その内容は、事業主が労働者を雇い入れた時と年に1度、医師による健康診断の実施が義務付けられているというものです。
これを怠ると労働安全衛生法120条により50万円以下の罰則が処されるので注意しましょう。
また、一般健康診断の検査項目は以下の通りで、省略できないことに注意しましょう。
【参考】e-Gov「労働安全衛生規則」
【参考】e-GOV「労働安全衛生法」
雇入時の健康診断の対象者は、企業が常時使用する労働者です。
常時使用する労働者とは、正社員・パート・アルバイトなどの名称に関わらず以下の<A>または<B>の「いずれか」に該当する従業員を指します。
<A>
※深夜業などの特定業務に常時従事する方の場合は6ヶ月以上
<B>
そのため、新卒の雇い入れ時には健康診断を行わなければいけません。
では、「全ての新卒に対して健康診断を行う必要があるのか?」というとそういうわけではありません。
労働安全衛生規則第43条により、入社日の3カ月以内に必要な健康診断項目を全て実施し、その結果を証明する書面を提出したときは健康診断を行う必要がありません。
そのため、大学で健康診断を受けている場合は診断書を再発行してもらうだけで大丈夫ですが、健康診断の実施日が入社日から起算して3ヶ月以内のものでないといけない点は注意してください。
【参考】e-GOV「労働安全衛生規則」
採用選考時の健康診断は、募集業種や職種に対する適性を判断するために、健康状態を把握する必要がある場合に実施します。
しかし、健康診断には応募者の適性を判断する上で必要のない項目が含まれている可能性が高いです。
そのため、必要性を十分に検討した上で、合理的・客観的に妥当な場合のみ必要項目の提出を求めることができます。
合理的・客観的に妥当な場合とは、具体的には以下の場合であると厚生労働省は説明しています。
ただし、上記に当てはまる場合であっても、応募者本人に必要性を説明し同意を得ることが必要です。
【参考】公正な採用選考の基本|厚生労働
雇い入れ時の健康診断は最寄りの保健所や病院で受診できますが、「誰が負担するのか」、「どのくらいの費用がかかるのか」について解説します。
厚生労働省は、健康診断の実施は事業者に義務付けられているため、その費用は事業者が負担すべきであるという見解を示しています。
そのため、雇入時の健康診断にかかる費用は原則企業が負担しましょう。
受診先にもよりますが、相場は1万円前後です。
病気の疑いがあるときに受ける検査ではないので保険適用外で、一般的な受診と比べると高額になります。
また、健康診断にかかる費用は福利厚生費として計上することができます。
【参考】厚生労働省「健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか?」
健康診断の費用を抑えるために、加入している健康保険組合や自治体の制度を利用するという方法があります。
健康保険組合によっては、提携する医療施設等で通常より安く各種企業健診を実施している場合があります。
自治体が企業向けの健診を実施している場合もあるため、健康保険組合や自治体に確認してみるとよいでしょう。
新卒の雇い入れ時の健康診断にかかる費用は検査料金と診断書の2つで、診断書の発行には受診から1〜2週間ほどかかります。
健康診断は下記の4つの場所で受診ができます。
労働安全衛生規則第51条によると事業者は健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを5年間保存する義務があります。
ただし、保存方法に決まりはないため、書面か電子データで保存・管理しましょう。
健康診断個人票(第五号)は以下に添付しておくのでぜひお役立てください。
【参考】厚生労働省「健康診断個人票」
原則として、健康診断の結果で採用の可否は判断できません。
ただし、例外的に内定を取り消すことができる場合もあります。
詳しく見ていきましょう。
内定を取り消すことができるのは内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実を理由として、内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当と認められる場合に限られます。
健康診断の結果の場合は、必要な職種に対し、合理的・客観的に妥当な場合に限り、内定の取り消しが認められると考えられます。
【参考】労働政策研究・研究機構「採用内定取消|雇用関係紛争判例集」
合理的・客観的に妥当な場合とはどのような状況を指すのでしょうか?
以下で具体的な例を見ていきましょう。
一般的に、内定取消事由として「病気・事故により、勤務に堪えられないとき」といった記載がされます。
具体的には以下のような場合が当てはまります。
就業によって労働者の持病等が悪化することが見込まれる場合は、内定取り消しが認められる可能性があります。
ただし、想定していた職種では労務提供が不可能であっても、他部門であれば労務提供が可能な場合は、内定取り消しが認められない可能性が高いです。
うつ病などの精神疾患は、雇入時の健康診断では把握することのできない項目です。
以下では、うつ病などの既往歴の申告について解説します。
うつ病などの精神疾患の既往歴を聞くことは、就職差別につながる危険性があります。
そのため、精神疾患の既往歴を聞くことは控えましょう。
回答は任意であると応募者側に伝えた場合でも、応募者は実質的に回答を迫られていると解釈する可能性があります。
既往歴が虚偽だった場合に解雇できるかどうかは、既往歴が業務内容に与える影響によって決まります。
既往歴によって業務の遂行に著しい障害が生じると判断される場合は、懲戒解雇の事由に当てはまると考えられます。
一方で、業務の遂行に対する影響が軽微である場合・全く影響がない場合は、解雇は無効となる可能性が高いです。
先述の通り、採用選考時の健康診断書は、合理的・客観的に妥当な場合のみ提出を求めることができます。
そのため、選考時に健康診断書を一律に提出させることは避けましょう。
提出させる場合でも、目的を説明した上で、判断が必要な項目のみ提出を求めるようにしてください。
また血液検査は就職差別につながりやすいため、対象外にした方が良いでしょう。
採用内定者の内定取消しの正当性を認めてもらうためにも、内定取り消し事由を採用内定者に配布する内定通知書等に記載しましょう。
また、健康診断の結果により内定取り消しを行う場合は、産業医に適正性の判断を求め、取り消す必要が生じた際は、顧問弁護士に相談しましょう。
内定取り消し事由の書き方をはじめとした内定通知書の書き方は以下の記事を参考にしてください。
【参考】【テンプレート付き】内定通知書の書き方と内定に関する書類を解説
内定者が雇入時健康診断の受診を拒否した場合は、健康診断を受けないことのリスクを説明し、未受診を防止しましょう。
健康診断を受診しないと、労働者に健康障害が生じた場合、企業は安全配慮義務違反で損害賠償請求されても過失相殺の対象になります。
また労災事故が起きる可能性もあるため、健康診断は必ず受診する必要があると内定者に説明してください。
受診しなかった場合には就業規則に懲戒処分を設けることも有効です。
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内定者の健康診断に関する制度を理解し、トラブルを防ぎましょう。