売り手市場において、従来のような採用媒体に求人票を掲載し、求職者からの応募を求める「マス型」の採用では、人手不足を解消することが難しい傾向にあります。そんな中、共通の目的を持った求職者と従業員がフランクに交流し、企業が1人1人にアプローチする「個別採用」が注目されています。そんな個別採用の1つとして「採用ミートアップ」に関心が集まっています。
この記事では、ミートアップがどのような採用手法か、成功事例から開催方法について詳しく解説します。
採用ミートアップとは、採用とミートアップ(meet up)を掛け合わせた単語です。
共通の目的を持った人たちが交流する場所全般を「ミートアップ(meet up)」と呼び、これを採用に活用したものが採用ミートアップになります。採用ミートアップで企業は、自社の従業員と参加者がオープンに意見交換することに加えて、参加者1人1人に対して個別にアプローチできます。
採用ミートアップは従来の求人媒体に求人票を掲載して、求職者からの応募を募集する「マス型」の採用ではなく、企業が求職者に対して直接アプローチする「個別採用」として注目されています。グラフからわかるように従業員規模が1001名を超える企業においも、8割を超える企業が個別採用をしていることから、その注目度合いがわかるでしょう。
【参考】HR総研『2023年&2024年新卒採用動向調査 結果報告【採用手法編】』
採用現場でミートアップが注目されている背景には、主に人手不足があります。事実、人材の採用市場は過去10年、企業の1名の求職者に対して求人が複数ある売り手市場となっています。そのため、企業の人材獲得が激化しており、求職者からの応募を待っているだけでは人材獲得が難しくなっています。
また、採用だけでなく従業員の離職が課題になっている企業も多いです。多様な価値観を持つ人が増えている現代において、企業と従業員間のミスマッチによる退職も後を絶ちません。ミートアップでは自社に適した人材に対してアプローチできるので、価値観の相違による退職が起こりづらい特徴があります。
このような背景で、ミートアップは注目されています。
近年、変化し続ける採用市場の課題を解決するために、採用ミートアップのような企業から求職者に対してアプローチする個別採用が増えています。
ここではこのような採用手法について簡単に解説します。
⬇︎個別採用一覧
ダイレクトリクルーティングとは求人広告や人材紹介のような第3者を媒介せずに、運営会社のデータベースからそれぞれの企業に適した人材にアプローチする採用手法です。自社にマッチした採用候補者に対して自社の魅力を伝えることができるため、採用確度が高く、ミスマッチが起こりにくい特徴があります。
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【参考】運用代行型の新卒採用ダイレクトリクルーティングならMatcher Scout
ヘッドハンティングとは、実務スキルやマネジメントスキルが優れた人材を自社に引き抜く採用手法のことを指します。集まった人材から新たに選考を行うのではなく、優秀な人材に対して直接アプローチできるため、低コストでの採用が可能です。
リファラル採用とは自社の従業員や社外の取引先から信頼できる人物を紹介してもらう採用手法になります。自社をよく知る人物から直接紹介してもらえるため、採用のミスマッチが起こりづらく、定着率が高い特徴があります。
ミートアップは開催する目的別に次の3種類に分けることができます。ミートアップを採用に繋げるためにも、自社の採用目的にあったものを開催すると効果的です。
表形式でわかりやすくまとめたのでぜひ参考にしてください。
交流会型 | 勉強会型 | 説明型 | |
目的 | 様々な求職者との接点を増やす | 専門性の高い人材との接点を増やす | 自社への理解が深い人材との接点を増やす |
内容 | 軽食を取りながらのカジュアルな交流会 | ワークショップを通じた、専門知識などの情報提供 | 企業説明を通じて、参加者に自社の理解を促進 |
交流会型のミートアップは求職者の接点を増やすことを目的とした企業に向いているでしょう。
このようなミートアップでは、自社の従業員と参加者が自社の社風や雰囲気のようなビジネスの話から、趣味やプライベートな話まで軽食を取りながら話し合う場のことを指します。リラックスした雰囲気で参加者からの質問を受け付けるため、お互い気軽に参加できるのが特徴です。また、企業は参加者の人柄やコミュニケーションを測ることもできます。
ただし、多様な価値観を持つ人の参加が期待できる分、自社にあった人材を探し当てる確率は低い傾向にあります。そのため、採用のために行うのではなく、まずは自社の認知度をあげるために行う企業に向いているでしょう。
勉強型のミートアップは専門性の高い人材を求める企業に向いているでしょう。
このようなミートアップではセミナーやワークショップを通じて参加者同士で特定のテーマや技術に関する議論を深めることを目的に開催します。勉強会型のミートアップはトークテーマや内容の濃さが参加者の心をつかむことに直結するため、工夫する必要がありますがその分採用に繋がりやすいです。
特定のスキルや技術を持つ人材が集まりやすいため、エンジニアの採用に使われる傾向にあります。
説明会型のミートアップは自社への理解が深い人材を増やしたい企業に向いているでしょう。
このようなミートアップでは自社の事業内容や社風、ビジョンから社員の声のような内部事情を参加者に伝えることを目的として行います。一般的な会社説明会と似ていますが、質問対応の時間を長めに確保したり、社員とのパネルディスカッションがあったりと参加者とインタラクティブに行う特徴があります。
説明会型のミートアップでは自社に興味を抱いてくれる参加者が比較的多いため、その後の選考に繋げやすいです。そのため、早期に採用選考を行いたい企業に向いているでしょう。
昨今、様々な企業が採用ミートアップを行っていますが、実際にどのように行っているか成功事例を元に説明します。
株式会社ホットリンクは入社1〜4年目の比較的若手の社員が交流会型のミートアップを行っています。
入社して日が浅い若手のうちだからこそ語ることができる入社前後のギャップや社風、業界のことについて話し合う場を提供しています。幅広い層からの参加を促していることから、自社の存在を参加者に知らせることで、入社候補の1つとしてアピールしていることがわかるでしょう。
【参考】株式会社ホットリンク『【7月25日開催】採用イベント「ホットリンクに転職して、実際どう?- 入社1年目~4年目の社員による座談会 -」』
株式会社メルカリは半年や1年と長期間で交流会型のミートアップを開催し、各会の参加人数を少人数にすることで全員が交流できるような場を提供していました。
また、お酒を飲みながら話し合うなど、カジュアルな雰囲気を作ることで生々しいことでも話しやすい環境を整備していたことがわかります。
【参考】株式会社メルカリ『700人以上が参加した、メルカリの「ミートアップ」運営術!自社のファンを増やす狙いとは』
株式会社ビーピーオークリエイトはエンジニアを対象に、自身が手がけたものを発信したり、他社の話に耳を傾ける勉強型のミートアップを開催しています。
最大参加人数も5人と少なく、お互いに実りのある濃い話ができる環境整備をしていることがわかります。
【参考】株式会社ビーピーオークリエイト『自社独自のリクルーティングを生み出せ!ミートアップ企画会議 』
キャディ株式会社は企業説明型のミートアップを、「10億円調達した資料」と数字的なインパクトの大きい内容を交えて行っています。
興味深い内容は企業に対してポジティブな印象を持ちやすく、その後の選考の参加ハードルを下げることができたでしょう。
【参考】キャディ株式会社『【満足度96.7%!】キャディのミートアップ参加者のリアルな声を公開』
ミートアップで人材採用を行うにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではミートアップで人材採用を行うメリットを3つ紹介します。
⬇︎ミートアップで人材採用を行うメリット
ミートアップに参加した採用候補者は、企業の担当者との会話を通じて社風や求められるスキルを理解していくでしょう。そのため、ミートアップを通じて選考へ参加した人材は参加していない人と比べて企業と自分の親和性を事前に測り終えています。このような人材は、ミスマッチによる早期離職が発生しづらいです。
ミートアップで発生するコストは次のようなものがあります。
一方、従来の採用媒体を通じた人材採用では次のようなものがあります。
両者の間で発生するコストの種類に大きな違いはありません。しかし、例えば金銭的コストを例に挙げると、従来の採用は1人あたり90万円程度かかるのに対し、ミートアップは広告費やイベント関連の費用がかからないため1人あたりにかかる費用を大幅に削減できるでしょう。
特に交流会型のミートアップでは、開催内容に合わせた知識を持ち合わせた人が参加します。そのため、採用後に即戦力としての活躍が期待できる人を採用できます。
また、技術的な知識を持ち合わせていない人でも、ミートアップの中で参加者とコミュニケーションをとることでその人が持つ考え方や価値観に触れることができます。その際に、自社に合った考え方を持つ人材を採用することで、早くから活躍する人材の採用が可能でしょう。
ミートアップで人材採用を行うデメリットは何があるのでしょうか。ここではミートアップで人材採用を行うデメリットについて3つ紹介します。
⬇︎ミートアップで人材採用を行うメリット
ミートアップの開催が、すぐに人材採用につながるわけではありません。企業側が採用候補者を選定するように、採用候補者も企業を選んでいます。ミートアップを採用に繋げるためには継続的に開催することで、採用候補者との接点を増やし、参加者に自社で働く魅力を徐々に知ってもらう必要があります。
明確にどのくらいの期間が必要かは企業や開催回ごとの参加者属性に依存しますが、根気強くミートアップを開催することが人材採用につながるでしょう。
多くの参加者が見込まれるミートアップには次のような特徴があります。
特に初めてミートアップを開催する企業は右も左もわからず、集客に四苦八苦するでしょう。常に参加者目線で魅力的なミートアップの内容について考えることが集客を成功させるコツになります。
ミートアップに参加する人は同じ目的意識を持っています。そのため、自社の採用目的にあったミートアップを開催することが重要ですが、その反面、特定の分野に偏った人材が集まりやすいという課題があります。
このように特定のスキルやテーマに絞ったイベントを継続的に開催することで、自社に適した人材との接点を増やせますが、幅広いバックグラウンドを持つ人材との出会いが減ってしまいます。その結果、組織の多様性が失われるリスクも考慮する必要があります。
採用ミートアップを開催したことのない企業も多いことでしょう。
ここでは、採用ミートアップを開催するためのステップを次の5つにわけて解説します。
⬇︎採用ミートアップを開催するステップ
ミートアップを開催する基本事項を決定しましょう。
基本事項には次のような内容が含まれます。
特に開催目的は参加者の満足度、ひいては入社意欲に直結するので明確に設定する必要があります。エンジニアを採用したい、企業のブランド力を強化したいなどそれぞれの企業にあった目的を決めることが、参加者と企業の両者にとって有意義なミートアップになるでしょう。
ミートアップの基本事項が決まり、会場や企業側の参加者の予定を抑えることができたら参加者を募るために開催を告知しましょう。当日の参加者の質がミートアップを成功に導くと言っても過言ではありません。
参加者を募集する方法には次のようなものがあります。
募集ターゲットが利用するであろう媒体での告知、興味をそそるコンテンツであることを伝える文言の作成など様々な工夫をする必要があります。
また、ミートアップ専用の募集媒体には次のようなものがあります。
ぜひ参加者募集に活用してください。
参加者の募集に並行して資料やコンテンツの作成、進行の準備をする必要があります。当日の流れがわかるスケジュール表を作成することで準備するべきことが明確になるでしょう。
また、当日は多少の欠員が出ることが考えられますが、参加者不足によりミートアップの開催ができなくなることを予防する意味でも参加予定者へのリマインドを忘れないようにしましょう。
ミートアップに参加してよかったと思ってもらうために、話題に入れていない参加者へ話を振るなど常に気を配る必要があります。採用ミートアップの開催目的を達成するためにも、主役は参加者であることを意識することを忘れないようにしましょう。
また、当日の盛り上がり状況によっては一部コンテンツをスキップしたり、追加したり柔軟に対応しましょう。
ミートアップを採用へと繋げるためには定期的に開催することが重要になります。当日を振り返り、よかった点、悪かった点など改善点を挙げて、次回のミートアップを両者にとってより良いものにしましょう。
採用ミートアップを成功に導くために欠かせないポイントは次のものが挙げられます。
⬇︎ミートアップを成功に導くために必要なポイント
ミートアップを成功に導くためには、開催するミートアップの種類に合わせて十分な参加者を確保する必要があります。ミートアップの種類に合わせて次の人数を集めるのが一般的です。
単一の媒体で参加者を確保することが難しい場合、複数の媒体利用を考える必要があります。
人は元々無関心であった物事や人物でも、接触回数を増やすことで興味を持つようになります。これを心理学では接触効果と呼びます。
どんな企業でもミートアップを人材採用に繋げるには、定期的に開催するミートアップに継続して参加してくれるファンを作る必要があります。そのため、定期的にミートアップを開催し、参加者が徐々に自社で働く魅力に気づけるような工夫をする必要があります。
開催側の参加する社員は主に若手が多いですが、時には企業の経営権を持つ人に参加を依頼することも効果的です。普段、接触することが難しい経営権を持つ人との会話は参加者側も得難い機会です。そのため、経営権を持つ人のミートアップへの参加は、応募者の増加と当日の盛り上がりに多いに貢献するでしょう。
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いかがだったでしょうか。
ミートアップを採用に活用することは、低コストで即戦力を採用できる可能性が高いですが、短期間で採用に繋げることが難しくなっています。このように、様々なメリット・デメリットがある採用ミートアップですが、活用している企業も増えています。
この記事が新たな採用手法の導入への一助になれば幸いです。