採用基準を設けることで、担当者によって評価の軸が揺らぐことなく、自社が求める人材を的確に採用することが可能です。
本記事では採用基準の決め方や、注意するべきポイントなどを解説します。
「そもそも自社の求める人材を集客するのに苦労している」
「ミスマッチが多く、採用基準なども含めて全体を見直したい」
このようなお悩みがある場合は以下の記事も併せてご覧ください。
【参考】【採用戦略の立て方】4ステップでマスター!フレームワーク活用が鍵?
【参考】新卒採用のミスマッチが起こる原因と8つの対策を紹介します
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採用基準とは「自社の求める人材かどうかを正確に判断するために、採用選考時に利用する基準」のことです。
客観的数値や指標を用いて候補者のスキルや能力などを評価することで、自社で活躍できる人材を見逃すことなく採用することが可能です。
また評価の軸が明確になっているため、判断にかかる時間の短縮や、選考の公平性にも繋がります。
自社の求める人物像を記載したものとして、「採用要件」や「ペルソナ」があります。
採用要件とは、自社が採用したい人材の特徴を示したものです。
採用要件を土台にして採用基準を作成し、評価軸を決めていきます。
一方ペルソナとは、採用要件から自社が採用したい人物の具体的な行動パターンや趣味などを想像し、作成したものです。
ターゲットの人物像を想像しやすくすることで、戦略的なアプローチ方法が考えられます。
採用基準は選考時に利用するものですが、ペルソナは母集団形成時に利用します。
【参考】採用要件を明確に定義する方法!評価基準の設け方などを解説
【参考】採用ペルソナの設定方法を具体例・フォーマットを用いて解説します
採用基準を決めることはなぜ必要なのでしょうか?
ここでは採用基準を定めるメリットをご紹介します。
選考は「本当に自社へ入社することがお互いにとってベストな選択なのか」を判断するために行われます。
判断基準が定まっていないと、自社の雰囲気に合わない人材や業務内容を面白がれない人材を採用してしまう恐れがあります。
このようなミスマッチが起きると、早期離職や士気の低下に繋がります。
採用基準を設けることで正しく選考を行い、候補者にとって自社が活躍できる場所かどうかを判断しやすくなります。
例えば、採用要件で「主体性のある」人物を採用したいと決めたとしても、主体性の定義が曖昧では認識にすれ違いがおきます。
認識のズレがあると、「本当はミスマッチなのに採用してしまう」「欲しかった人材を落としてしまう」などの事態に繋がりかねません。
採用基準が細かく設定されていると、判断の際の認識にすれ違いが起こりにくいです。
一般的に、選考は複数の段階に分けて候補者を評価していきます。
その際に、選考フェーズによって評価者を変えて対応するケースが多いです。
しかし、担当者によって評価のポイントや良い・悪いと思う基準が異なると、評価にブレが生じてしまいます。
全ての担当者が共通認識を持って評価を行うには、評価の指標となるものが必要です。
採用基準が設定されていることで評価に対する理由付けがしやすくなり、評価段階における工数の削減にも繋がります。
選考の通過者が少ない場合は、採用基準を厳しくしすぎている可能性があります。
特に書類選考の通過率が低い場合は要注意です。
自社の給与や待遇面に対して採用基準が見合っているか、項目は多すぎないか、見直してみることをおすすめします。
このような場合は、人事と現場の間で合否の感覚にズレがある可能性が高いです。
現場と意見をすり合わせながら採用基準を再考したり、採用基準が面接担当の社員ひとりひとりにしっかりと浸透しているかどうか、今一度確認してみてください。
早期離職者が多いなど、採用後のミスマッチが起きている場合にも採用基準を見直しましょう。
早期離職は、企業の文化に馴染めないことや仕事内容と離職者のスキルがマッチしていないことなどが原因で起こります。
早期離職の発生原因を突き止めた上で採用基準を見直すようにしましょう。
また採用基準そのものに問題がない場合でも、採用基準が選考過程で適切に反映されていないとミスマッチは起きてしまうので注意してください。
次に、採用基準の決め方をステップごとに解説していきます。
各段階で必要な情報を集めて整理し、誰が見ても分かりやすいような採用基準を設けるように意識しましょう。
まずは採用の指針となる採用要件を設定します。
採用要件とは、自社が求める人物像の特徴を列挙したものです。
採用要件は、以下の2つのポイントに沿って設定するとよいです。
業務上必ず必要となるスキルや資格は、業種や採用する部署によって異なります。
ですので、各部署の現場社員や管理職にしっかりとヒアリングを行った上で、採用要件を明確に設定しましょう。
この作業を怠ると入社後のミスマッチが非常に起きやすくなってしまいます。
1度決めた人物像に固執してしまうと、採用が難航する恐れがあります。
なぜなら、就活・転職市場のトレンドは時代によって変化し続けるためです。
採用基準が、世間の流れと相反するものであると、中々採用が進まないといった状況になりかねません。
採用したいターゲット層との価値観の乖離もその原因になり得るでしょう。
例えば、自由な働き方を重視する人が多い20代を採用するのに「裁量労働制、副業NG、出社必須」という志向を基準にするのは得策ではありません。
応募者、採用担当者をはじめとする関係者の時間を浪費しないためにも、必須条件の確認・周知は非常に重要です。
さらに詳しい採用要件の設定方法については下記の記事をご覧ください。
【参考】採用要件を明確に定義する方法!評価基準の設け方などを解説
採用要件を定めたら、次に評価項目を設定しましょう。
評価項目を設定する際のポイントは以下の通りです。
スキルや経験に加え、思考力や主体性といった能力や人間性なども評価項目に含めることで、多角的に評価を行うことができます。
経済産業省が仕事に必要な能力として提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」を参考にしながら設定するのもおすすめです。
【参考】経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力について」
評価項目は優先順位を決めて以下のような3つに分類するとよいです。
必須条件の中にも、「特に必須」なものと、「必須」と「歓迎」の間に位置するものなどがあると思います。
こうした優先順位を明確にしておくことで、基準を適正なバランスに保つことができるほか、僅差の評価の応募者から合格者を選ばなければならないときの判断材料にもできます。
役員と現場の間で求める人物像にギャップがある場合、各項目の優先度を決めにくくなってしまいます。
例えば、役員は「プログラミングスキルよりも社風を体現していくコミュニケーション能力の高さを重視したい」と考え、現場では「プログラミングスキルは必須で、コミュニケーション能力は最低限あれば良い」と考えているかもしれません。
このような場合、採用担当者は「中途ではなく新卒採用を行う意義」について立ち返り、自社で新卒採用を行う際のゴールを意識しながら優先度を決めていきましょう。
どの項目を必須または歓迎条件に設定するかという話し合いを通して、自社が求める人材の認識のギャップをなくしていくことが可能です。
最後に評価基準の設定を行います。
評価項目を定めても、各項目をどれだけ満たしているとOKなのかという判断基準がなければ適切に評価できません。
例えば「主体性がある」という評価項目には、「自ら行動にうつした」ケースと「いつでも行動にうつせるよう、アンテナを張っていた」ケースのどちらも含まれます。
前者のみを「主体性がある」と評価する面接官と、前者と後者どちらも「主体性がある」と判断する面接官がいた場合、公平性のある選考ができなくなってしまいます。
「どこまで思考して行動したのか」「目標達成レベルはどのくらいか」「周囲からどれほど評価されたのか」などを軸にすると、評価基準を設定しやすいです。
各選考フローは書類選考やグループ面接、最終面接まで、様々です。
ここまでで決めた採用基準を、各段階でどこに適用するかを決定します。
例えば、実務経験に関する項目を書類選考で、コミュニケーション力に関する項目をグループ面接での基準にするなど、試験の方法別に分類すると良いでしょう。
選考が進むにつれてより求める人材に絞れる基準になるよう、段階を設定することも大切です。
次に、多くの企業が陥りがちな、採用基準における設定ミスの例を2つ紹介しようと思います。
選考における評価ポイントは、必ず具体的に設定する必要があります。
ここが曖昧になってしまうと、意識せずとも人事の主観で判断した採用を行ってしまい、ミスマッチを生みやすいです。
また、評価ポイントを上手く設定できていないと、選考過程で学生の本質を見抜きにくくなったり、人事と現場の求める人物像に乖離が生まれる可能性があります。
各選考過程の面接官によって、解釈にすれ違いが発生し、採用戦略通りに選考が進みにくくなるリスクもあります。
目標に達しないなどの対応に追われて採用にかかる工数が増加することもあるでしょう。
採用コストは決して低くはありません。費用対効果も考えるとミスマッチはなるべく避ける方がよいでしょう。
また、自社でエースとなり得るポテンシャルの高い学生を採り逃さないためにも、明確に言語化された評価ポイントが必要です。
選考における評価ポイントが明確になった後に注意すべきは採用基準です。
自社が学生に求める基準を高く設定しすぎて、採用に至らなくなるケースも少なくありません。
例えば、自社のシステムエンジニアを新卒採用したい場合「開発経験」を必須条件にすると途端に母数が少なくなってしまいます。
中途採用であれば、スキルや実績をみる必要がありますが、新卒はある程度ポテンシャルによった採用基準を設けるなどのバランスが大事です。
「選考初期の通過率が悪い」「選考後期で急に歩留まりが低くなる」などの傾向が見られる場合は、採用基準の設定を見直す必要があるでしょう。
「歩留まりが低い」「母集団形成が上手くいかない」といったお悩みをお持ちの方におすすめなのが、新卒向けダイレクトリクルーティングサービス「Matcher Scout」です。
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それでは自社に合った採用基準を設定するには何を意識すれば良いでしょうか?
新卒採用を行う際は、アルバイトとは異なり労働力の確保だけを目的とはしていない場合がほとんどです。
自社がこれから成長していくために必要であろう人材を採用していくには、自社の現状だけではなく、今後についても把握した上で採用要件や基準を設定していきます。
役員との話し合いを重ねながら、5年後、10年後の目標や、それを達成するために必要な能力などを採用基準の中に盛り込みましょう。
採用基準となっているポイントが、本当に自社においてパフォーマンスが高い人の特徴に当てはまっているのかを吟味する必要があります。
社内で優秀な人の行動観察や適性検査の結果を採用基準に反映し、思い込みにならないよう事実確認をしながら採用基準を設定していきましょう。
優秀な運動選手が必ずしも優秀な指導者ではないように、役員や成果の高い人が「成果を出すための能力やポイント」を正確に言語化できているとは限りません。
もちろん今後の会社の方向性などを役員から聞いて自社が必要とする人材を把握する必要はあります。
一方で、ヒアリングで得た条件を鵜呑みにしないよう気をつけなければなりません。
「なぜその人材が必要なのか」という理由を論理的に説明可能かどうかを見ていきながら、本当に必要な採用要件や基準を整理する必要があります。
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、公正な採用選考を行うために応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないことが重要であると記載されています。
就職差別に繋がる採用基準を設けていないのか確認することが重要です。
採用選考を行う際は、以下の内容に触れないように気をつけましょう。
実務経験からスキルや能力を重視した評価を行う中途採用の場合は、明確な数値や仕事における行動パターンなどが評価しやすく、採用基準の設定も比較的行いやすいです。
一方で、実務経験がほぼない新卒採用の場合は、学生時代の経験からどれほど自社でパフォーマンスを発揮できるのかが想像しにくいです。
新卒採用実施企業が2022年卒で内定出しの決め手となった項目についてアンケートをとったところ、上位3項目は「人柄」「自社への熱意」「今後の可能性」でした。
特に「人柄」はおよそ90%の企業が内定出しの決め手となったと回答しています。
このことから新卒採用では、知識や経験などよりも思いやポテンシャルが重視されていることがわかります。
候補者にどれほどのポテンシャルがあるのかを評価する場合、評価の軸となるポイントは以下の3点です。
新卒採用を行う主な理由として、自社の文化を吸収しやすく、体現していける人材の獲得を挙げている企業が多いです。
そのため新卒採用では、どのような価値観を持った人材なのかを選考を通して判断し、自社と合っているのかを見極めていくことが重要になります。
候補者のもつ価値観は、過去の経験から判断可能です。
ある特定の経験に対して「なぜそのような行動を取ったのか」という理由を深掘りしていきます。
例えば「インターン先でメンバーの士気を高める」という目標を持っていても「より細かい数値目標を設定して達成しやすい環境を作る」行動と「企業理念や行動指針を改めて共有して目標を達成する意義を再確認する機会を作る」行動では軸となる価値観が異なります。
他の選択肢もある中でなぜそのアクションを取ることが最善と考えたのかという動機を探り、候補者の価値観を見ていきましょう。
新卒一括採用では総合職として募集をかけて、内定者の属性や社内の状況を見ながら配属を決定していく場合もあります。
そのため、中途採用で重視するような即戦力としての専門的なスキルではなく、仕事を学ぶ上で必要となる総合的なスキルが備わっているかを新卒採用では重視します。
一方で、新卒採用でも最初から職種を限定して募集をかけている場合は、「プログラミングスキル」や「SNS運用経験」などから定量的にスキルを判断することもあります。
今までの実績で評価を行う際は、その成果が個人の行動の成果なのか、チームの一員として行動した結果なのかについても見ていきましょう。
候補者が自社でどのようなパフォーマンスを発揮するのか予想する際は、コンピテンシーを軸としながら評価すると良いです。
コンピテンシーとは、活躍している人材が持つ行動特性のことを指します。
「チャレンジ精神が豊富」「リーダーシップがある」など自社で活躍している人材の特性をいくつか抽出し、その項目に多く当てはまる候補者は活躍可能性が高いと判断します。
コンピテンシーを用いた選考では、所属大学やTOEICのスコア、今までの実績などの表面的な経験や能力は重視しません。
どのような立場の時にどう行動してきたのかという思考と行動を評価していきます。
今までの経験と入社後の実務が必ずしもイコールではないからこそ、コンピテンシーを使用した採用基準を作成すると良いでしょう。
コンピテンシー面接の詳しい内容については下記の記事をご覧ください。
【参考】コンピテンシー面接とは?質問例から評価シートや参考本も紹介
ここでは作成した採用基準を元に、どのように各選考段階で学生を見極めていけば良いのかについて解説します。
書類選考では、定量化されやすいスキルや経験を元に見極めていきます。
「SNS運用に関する3ヶ月以上の長期インターン経験」
「学生団体、アルバイトまたはインターン先で何らかの成果を挙げた経験」
など一定の条件を満たすかどうかという基準で合否を判断できます。
書類選考通過率が低い場合は、基準を高く設けすぎている場合があります。
特に新卒採用は文面では見えにくいようなポテンシャル部分での合否判断が主となるため、書類選考では「これだけは外せない」という部分を満たしているかの確認に留めましょう。
適性検査は、知的能力や性格などを数値的に示すために行われます。
新卒採用で適性検査を行う場合、成績上位者を高く評価するためではなく、最低限必要な知識を候補者が持っているか確認するための判断材料として使用するケースが主です。
大勢の候補者を客観的数値を用いて短時間で評価する際の基準として数値を設定すると役立ちます。
面接では、書類や適性検査からは読み取れないような「人柄」や「入社意欲」なども見極めていく必要があります。
このような質的部分を面接官によってブレがなく評価するためには、採用基準の設定が欠かせません。
社内での採用要件や採用基準に関する認識にすれ違いがないように、事前に説明や擦り合わせを行っておきましょう。
また新型コロナウイルス感染症の流行が懸念される現在、選考段階によってオンラインと対面を使い分けている企業も多いのではないでしょうか。
以下はオンラインと対面で「見極めることが難しかった」項目についての調査をグラフとしてまとめたものです。
選考段階によって何を重視して見極めを行うべきなのかについても共有しておきましょう。
実際に採用基準を設定する際、どのようなフォーマットを使用すれば良いのか想像しにくい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
以下でご紹介する採用基準を定める際のテンプレートを参考にしながら、自社の採用要件に沿ったものを作成していきましょう。
こちらでは「評価項目は決まっているけれど、それぞれの定義の付け方が分からない」という方向けに、よくある評価項目の例と共に定義の例をご紹介します。
定義例:外部からの指示を受けずとも、何が求められているかなどのニーズや課題を発見し、自ら方法を考えて解決に向かう姿勢
定義例:チームとしてのパフォーマンスを優先して考え、その構成員として何をするべきなのかを理解し、実行する姿勢
定義例:与えられた業務に対して責任を持って勤勉に取り組む姿勢
定義例:目的を常に意識しながら達成するために必要な要素を分解し、それらの要素の特性や働きを明確にする力
定義例:提案内容の目的と課題、妥当性を理解し、情報と思考をまとめて分かりやすく説明する力
定義例:相手の立場や考え方を尊重しながら、適切な場面に適切な発言を行う力
定義例:困難な課題や未知の仕事をクリアにするための手立てを考え、積極的に行動していく心構え
定義例:目的を常に意識しながら、チームとして最大のパフォーマンスを発揮するために各メンバーが行うべきことを理解し、ニーズに応えてフォローする力
いかがでしたか。
明瞭な採用基準を設定することで、自社にとって必要な人材を漏らすことなく的確に採用できます。
社内で認識のすれ違いが起きないように、採用基準の説明もしっかり行うようにしましょう。