近年、新卒採用市場が年々厳しさを増す中、企業は新たな人材確保の手段として「アルムナイ採用」に注目しています。
「アルムナイ」とは、「自社を退職した元社員」のことを指し、彼らを再び雇用する取り組みをアルムナイ採用と呼びます。
この記事では、アルムナイの基礎知識からメリット・デメリット、最新事例まで分かりやすく解説します。
採用戦略にお悩みの方は、以下の記事を参照ください。
【参考】「採用戦略の立て方」を4ステップで徹底解説!鍵はフレームワーク?
「アルムナイ(alumni)」は、英語で「卒業生」や「同窓生」を意味する言葉です。
近年では、ビジネスシーンにおいても新たな役割を担い、「自社を退職した元社員」を指す言葉として注目されています。
従来の「OB・OG」という表現よりもジェンダー平等に配慮した言葉として、その使用が拡大しています。
マイナビの調査によると、2024年1月時点でアルムナイ採用を実施している企業は40.9%に達しました。
これは2022年の約20%から大幅な増加であり、企業の積極的な取り組みが伺えます。
また、下の図からも分かるように、従業員規模が大きくなるほど導入率が高くなっています。
【参考】マイナビキャリアリサーチLAB「企業のアルムナイ実施率は40.9% 。一方で出戻り転職を行った正社員は12.3%」
一方、実際にアルムナイ採用を活用した転職経験者は12.3%にとどまっています。
しかし、「今後検討している」と前向きな人は約20%存在し、潜在的な需要の高さが伺えます。
【参考】マイナビキャリアリサーチLAB「企業のアルムナイ実施率は40.9% 。一方で出戻り転職を行った正社員は12.3%」
現状、アルムナイ採用は人づての紹介が最も一般的な方法です。
【参考】パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」
かつて海外企業や外資企業で注目されていたアルムナイ採用が、近年では国内企業でも積極的に導入されています。
現代のビジネス環境において、アルムナイが注目される理由は大きく分けて3つあります。
少子高齢化の進行により労働人口が減少している中、企業は優秀な人材確保に頭を悩ませています。
アルムナイは、自社の文化や業務内容を深く理解しており即戦力になりうるため、外部採用よりも効率的に組織力を強化できます。
働き方の多様化により、フリーランスや起業など、企業に属さない優秀な人材も増えています。
アルムナイ採用は、こうした人材を柔軟に確保する方法であり、外部リソースへの依存リスクを低減する効果も期待できます。
かつては、一度退職した企業に再び戻ることをネガティブに捉える風潮がありました。
しかし近年は、終身雇用制度の崩壊により、転職はキャリアアップのための手段として一般的になりました。
優秀な人材ほど積極的に転職を検討する傾向もあり、アルムナイは貴重な人材プールとなります。
企業はアルムナイを活用することで、以下のようなメリットを得ることができます。
一度会社を辞めた人材は、逆に言えば会社のことをよく知っている人でもあります。
企業文化や理念を理解し、一定の愛着と信頼を持っているため、すぐに戦力として期待できるでしょう。
求人広告や人材紹介会社などに頼ることなくアルムナイを発掘・採用できるため、新規採用に比べて採用コストを大幅に削減できます。
また、アルムナイは、自社の採用基準をクリアして採用された実績があり、なおかつ社内で実際に一定の期間働いていた人材群です。
すでに十分なスキルや経験を有している可能性が高いため、アルムナイを再雇用する場合は、教育コストを大幅に削減できるのもメリットとなります。
アルムナイは企業文化や業務内容への理解度が高いため、早期離職率を低減できます。
以下の図は、退職前と再入社後の満足度を比較したものです。
【参考】パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」
ご覧の通り、再入社後の満足度は総じて転職時よりも高くなっています。
一方、唯一「給与・報酬・評価」の項目では、離職時より低くなっています。
一般的に再入社後の方が待遇・報酬が低い傾向にあるためです。
これは、再離職の要因の一つになりかねません。
アルムナイ採用を行う際は、昇給などの評価基準を明確にするなどして、求職者の不安を取り除きましょう。
採用する人物像について、「自社にマッチした人材が分からない…」とお悩みの方は、以下の記事を参照ください。
アルムナイ(元社員)が再び自社を選んでくれたことは、企業イメージの向上に繋がります。
なぜなら、「離職後も戻りたいと思える企業」であることの客観的な証明になるからです。
また、退職後も良好な人間関係を維持できるというポジティブな印象にもなるため、企業のイメージアップに繋がりやすいといえます。
アルムナイと良好な関係を維持することは、再雇用という枠を超え、企業にとって大きな価値を生み出す可能性を秘めています。
それは、自社を離れた人材との間に新たな関係性を構築し、多様なメリットを獲得できるからです。
アルムナイが転職先で意思決定を担うような地位に就いた場合、パートナー企業や取引先として、強固な関係性を築き、相互に利益をもたらす関係を構築することができるでしょう。
自社の新製品の情報を拡散してもらえたり、客観的な立場から意見をもらえたりすることもできます。
ここまでアルムナイを活用するメリットについて見てきました。
では、どのようにしてアルムナイとの良好な関係を築いていけるのでしょうか?
ここで大切なのがアルムナイネットワークの存在です。
「アルムナイネットワーク」とは、企業が退職者と繋がるためのプラットフォームです。
単なる同窓会組織ではなく、双方向の交流を通じて、人材・情報・ビジネスチャンスの循環を生み出す場として注目されています。
近年、多くの企業がアルムナイネットワークを構築し、以下のような多彩な活動を通して、企業と個人の双方にメリットをもたらしています。
アルムナイネットワークの構築・強化により、退職者との接点を維持し、関係性を深めましょう。
具体的な施策については、後ほど事例とともに解説します。是非最後までご覧ください。
アルムナイとの関わりは、このように人材確保や企業文化の継承など、多くのメリットをもたらします。
しかし、その一方で、以下の3つの注意点があります。
アルムナイの待遇や給与が既存社員より優遇されると、不公平感や不満が生じる可能性があります。
公平な評価制度やキャリアパス設計が重要です。
また、長期間離れていたアルムナイが復帰する際は、社内文化や仕事の進め方に順応しづらいリスクもあります。事前に研修などを行い予防しましょう。
アルムナイは自社で再雇用する場合を除き、外部の人材であることを常に意識しましょう。
セキュリティ対策を徹底し、情報漏洩リスクを防ぐための体制を構築することが重要です。
情報共有の範囲を明確に定めるなどして対策しましょう。
アルムナイとの交流イベントや情報発信など、関係維持には継続的なコストがかかります。
コストとメリットを比較検討し、費用対効果の高い取り組みを設計する必要があります。
では、アルムナイネットワークを構築するための具体的な施策について見ていきましょう。
「組織とアルムナイの新しい関係」作りに先駆的に取り組んでいる企業事例をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
専門的な知識を必要とする金融機関では、人材不足が深刻化しており、アルムナイ採用を導入する企業が増えています。
その一つが、みずほフィナンシャルグループです。
みずほフィナンシャルグループは、アルムナイ・現役社員の双方にとって以下のようなメリットを見据え、退職後の関係を維持しています。
【みずほ銀行側】
一度採用し育成した人材を即戦力として再雇用し、転職先で培った知見を取り入れる
【元社員側】
アルムナイネットワークを通じた支援でビジネスチャンスが生まれれば、新たな融資先の確保にもつながる
独自に作ったアプリ上でアルムナイネットワークを設け交流を継続。
具体的な取り組みは以下の通りです。
みずほを退職後、ITコンサルティング会社で新規事業の立ち上げを担当するAさん。
「いま考えている新規事業にどれだけニーズがあるのか」を調べるために、Aさんは元職場のみずほのアルムナイネットワークを頼りに。
アルムナイネットワークを導入した当初(2020年)から、登録者数がここ数年で約10倍に急拡大し、今では1200人を超えています。
【参考】みずほフィナンシャルグループ「カムバックアルムナイ採用」
【参考】みずほフィナンシャルグループ「ESG データブック 2023」
2023年3月にアルムナイネットワークを設立、繋がりを強化しています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
立ち上げわずか1年でのこの結果に対して担当者も手ごたえを感じているようです。
再入社した社員は主に30代から40代で、SE(システムエンジニア)や研究者、営業職など。
コンサルティング、広告・人材紹介、エネルギー、ITなどへの転職を経て、再び日立を選んだ人や、中には起業を経験した人もいたといいます。
【参考】日立「Hitachi Alumni Network」
デロイトトーマツグループは、アルムナイに対し、「継続的なキャリア形成支援」と「親睦・交流を深める場の提供」をしています。
具体的な取り組みは以下の通り。
特に、イベントと、e-ラーニングは活発に動いているといいます。
イベントでは、毎回約150名以上が参加、多い時には700人ほど集まるそう。
【参考】デロイト トーマツ「アラムナイ」
日揮ホールディングス株式会社では、自社を「母校のようにしたい」という想いから、有志がアルムナイコミュニティを結成。
短期的な出戻りや協創ではなく、長期的な関係構築に主眼を置いていることが特徴です。
具体的な取り組みとしては以下の通りです。
【参考】アルムナビ『テーマは「日揮を母校に」日揮ホールディングスがアルムナイ交流会を開催!』
アルムナイ採用を実施しているのは民間企業だけではありません。
東京都庁でも、転職や育児等で退職した人材が、再度都庁で活躍できる制度(都庁版アルムナイ採用制度)を導入しています。
【参考】東京都『都民が「実感」できるサービスの質向上へ!「シン・トセイ4」にバージョンアップ』
成功事例を見たところで、アルムナイと良好な関係を築くためのポイントを解説します。
近年のアルムナイ活動の課題として、「優秀な人材を採用したい」「採用コストを削減したい」という企業側の思惑とニーズが先行しがちな点が挙げられます。
しかし、上記のように、アルムナイネットワークの構築に成功している企業には共通していることがあります。
それは、企業の都合ばかりを優先しないことです。
あくまでも、アルムナイ活動の主役は元社員であることを意識することが重要です。
短期的な出戻りや協創だけではなく、中長期的な関係構築を心掛けましょう。
企業が元社員を再雇用する場合、退職時の面談でネガティブな印象を与えていないかどうかが重要です。
調査によると、もとの会社のサービスには満足していても、会社自体には不満を持っている人が多いようです。
そこで、退職面談を行う際に、退職理由に理解を示すとともに、不満や要望を丁寧に聞き出すことが重要です。
そのように心のうちを丁寧にヒアリングすることで、退職者にポジティブな印象を与え、将来的に再雇用につながる可能性を高めることができるでしょう。
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初めてのアルムナイ採用に不安を感じている企業はぜひこのような外部サービスも活用してみてください。
上記のように、アルムナイ採用は人材不足の改善にオススメの採用手法です。
しかし、採用段階から自社との相性を見極め、ミスマッチを防ぎたいですよね。
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いかがでしたか?
退職者は、裏切り者ではなく「卒業生」。
アルムナイ採用は、人材不足や離職率の高さなどの課題を抱える企業にとって、有効な手段の一つです。
今回紹介した企業の事例を参考に、自社に合ったアルムナイネットワークの構築をしてみてください!