元社員は宝の山!「アルムナイ」を活用した採用戦略
2024/04/11

近年、新卒採用市場が年々厳しさを増す中、企業は新たな人材確保の手段として「アルムナイ採用」に注目しています。

「アルムナイ」とは、「自社を退職した元社員」のことを指し、彼らを再び雇用する取り組みをアルムナイ採用と呼びます。

この記事では、アルムナイの基礎知識からメリット・デメリット、最新事例まで分かりやすく解説します。

採用戦略にお悩みの方は、以下の記事を参照ください。

【参考】「採用戦略の立て方」を4ステップで徹底解説!鍵はフレームワーク?採用戦略の立て方の資料ダウンロード

アルムナイとは?

「アルムナイ(alumni)」は、英語で「卒業生」や「同窓生」を意味する言葉です。

近年では、ビジネスシーンにおいても新たな役割を担い、「自社を退職した元社員」を指す言葉として注目されています。

従来の「OB・OG」という表現よりもジェンダー平等に配慮した言葉として、その使用が拡大しています。

2024年、アルムナイ採用は40.9%に

分析データを表す画像

マイナビの調査によると、2024年1月時点でアルムナイ採用を実施している企業は40.9%に達しました。

これは2022年の約20%から大幅な増加であり、企業の積極的な取り組みが伺えます。

また、下の図からも分かるように、従業員規模が大きくなるほど導入率が高くなっています。

企業のアルムナイ採用実施率、2024年1月

【参考】マイナビキャリアリサーチLAB「企業のアルムナイ実施率は40.9% 。一方で出戻り転職を行った正社員は12.3%」

出戻り転職の実態と意欲

一方、実際にアルムナイ採用を活用した転職経験者は12.3%にとどまっています。

しかし、「今後検討している」と前向きな人は約20%存在し、潜在的な需要の高さが伺えます。

【参考】マイナビキャリアリサーチLAB「企業のアルムナイ実施率は40.9% 。一方で出戻り転職を行った正社員は12.3%」

人づてに頼る現状と課題

現状、アルムナイ採用は人づての紹介が最も一般的な方法です。

再入社の経路

【参考】パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」

アルムナイが注目される背景

アルムナイが注目される背景、ビジネス街の画像

かつて海外企業や外資企業で注目されていたアルムナイ採用が、近年では国内企業でも積極的に導入されています。

現代のビジネス環境において、アルムナイが注目される理由は大きく分けて3つあります。

採用難の深刻化

少子高齢化の進行により労働人口が減少している中、企業は優秀な人材確保に頭を悩ませています。

アルムナイは、自社の文化や業務内容を深く理解しており即戦力になりうるため、外部採用よりも効率的に組織力を強化できます。

働き方への価値観の多様化

働き方の多様化により、フリーランスや起業など、企業に属さない優秀な人材も増えています。

アルムナイ採用は、こうした人材を柔軟に確保する方法であり、外部リソースへの依存リスクを低減する効果も期待できます。

退職・転職に関する考え方の変容

かつては、一度退職した企業に再び戻ることをネガティブに捉える風潮がありました。

しかし近年は、終身雇用制度の崩壊により、転職はキャリアアップのための手段として一般的になりました。

優秀な人材ほど積極的に転職を検討する傾向もあり、アルムナイは貴重な人材プールとなります。

アルムナイ活用のメリット

アルムナイを活用してメリットを得られたイメージの画像、楽しそうに仕事をする男女

企業はアルムナイを活用することで、以下のようなメリットを得ることができます。

アルムナイを活用するメリット・デメリット

即戦力の確保

一度会社を辞めた人材は、逆に言えば会社のことをよく知っている人でもあります。

企業文化や理念を理解し、一定の愛着と信頼を持っているため、すぐに戦力として期待できるでしょう。

採用コスト・育成コストの削減

求人広告や人材紹介会社などに頼ることなくアルムナイを発掘・採用できるため、新規採用に比べて採用コストを大幅に削減できます。

また、アルムナイは、自社の採用基準をクリアして採用された実績があり、なおかつ社内で実際に一定の期間働いていた人材群です。

すでに十分なスキルや経験を有している可能性が高いため、アルムナイを再雇用する場合は、教育コストを大幅に削減できるのもメリットとなります。

採用ミスマッチの減少

アルムナイは企業文化や業務内容への理解度が高いため、早期離職率を低減できます。

以下の図は、退職前と再入社後の満足度を比較したものです。

退職前と再入社後の満足度

【参考】パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」

ご覧の通り、再入社後の満足度は総じて転職時よりも高くなっています

一方、唯一「給与・報酬・評価」の項目では、離職時より低くなっています。

一般的に再入社後の方が待遇・報酬が低い傾向にあるためです。

これは、再離職の要因の一つになりかねません。

アルムナイ採用を行う際は、昇給などの評価基準を明確にするなどして、求職者の不安を取り除きましょう。

採用する人物像について、「自社にマッチした人材が分からない…」とお悩みの方は、以下の記事を参照ください。採用ペルソナ設計ワークフローの資料ダウンロード

企業イメージの向上

アルムナイ(元社員)が再び自社を選んでくれたことは、企業イメージの向上に繋がります。

なぜなら、「離職後も戻りたいと思える企業」であることの客観的な証明になるからです。

また、退職後も良好な人間関係を維持できるというポジティブな印象にもなるため、企業のイメージアップに繋がりやすいといえます。

単なる再雇用を超えた、新たな関係構築

アルムナイと良好な関係を維持することは、再雇用という枠を超え、企業にとって大きな価値を生み出す可能性を秘めています。

それは、自社を離れた人材との間に新たな関係性を構築し、多様なメリットを獲得できるからです。

新たなビジネスチャンスの創出

アルムナイが転職先で意思決定を担うような地位に就いた場合、パートナー企業や取引先として、強固な関係性を築き、相互に利益をもたらす関係を構築することができるでしょう。

社内外への情報発信

自社の新製品の情報を拡散してもらえたり、客観的な立場から意見をもらえたりすることもできます。

アルムナイネットワークとは

アルムナイネットワークを表す画像

ここまでアルムナイを活用するメリットについて見てきました。

では、どのようにしてアルムナイとの良好な関係を築いていけるのでしょうか?

ここで大切なのがアルムナイネットワークの存在です。

「アルムナイネットワーク」とは、企業が退職者と繋がるためのプラットフォームです。

単なる同窓会組織ではなく、双方向の交流を通じて、人材・情報・ビジネスチャンスの循環を生み出す場として注目されています。

近年、多くの企業がアルムナイネットワークを構築し、以下のような多彩な活動を通して、企業と個人の双方にメリットをもたらしています。

企業側のメリット

  • 人材確保: 優秀な人材の再入社促進
  • 情報収集: 市場動向や競合企業の情報収集
  • ブランド強化: 企業イメージの向上
  • ビジネスチャンス: 新規事業や顧客開拓

アルムナイ側のメリット

  • 人脈形成: 業界関係者との交流
  • 情報収集: 最新の業界動向や転職情報
  • スキルアップ: 研修やセミナーへの参加
  • ビジネスチャンス: 新規事業や副業の創出

アルムナイネットワークの構築・強化により、退職者との接点を維持し、関係性を深めましょう。

具体的な施策については、後ほど事例とともに解説します。是非最後までご覧ください。

アルムナイ活用のデメリット

アルムナイ活用のデメリットに対面し、困る女性の様子の画像

アルムナイとの関わりは、このように人材確保や企業文化の継承など、多くのメリットをもたらします。

しかし、その一方で、以下の3つの注意点があります。

既存社員への影響 

アルムナイの待遇や給与が既存社員より優遇されると、不公平感や不満が生じる可能性があります。

公平な評価制度やキャリアパス設計が重要です。

また、長期間離れていたアルムナイが復帰する際は、社内文化や仕事の進め方に順応しづらいリスクもあります。事前に研修などを行い予防しましょう。

情報漏洩リスク

アルムナイは自社で再雇用する場合を除き、外部の人材であることを常に意識しましょう。

セキュリティ対策を徹底し、情報漏洩リスクを防ぐための体制を構築することが重要です。

情報共有の範囲を明確に定めるなどして対策しましょう。

関係維持にかかるコスト

アルムナイとの交流イベントや情報発信など、関係維持には継続的なコストがかかります。

コストとメリットを比較検討し、費用対効果の高い取り組みを設計する必要があります。

アルムナイネットワークを作る方法~企業事例4選~

では、アルムナイネットワークを構築するための具体的な施策について見ていきましょう。

「組織とアルムナイの新しい関係」作りに先駆的に取り組んでいる企業事例をご紹介します。

ぜひ参考にしてみてください。

みずほフィナンシャルグループ|「アルムナイの活躍が〈みずほ〉の誇りである」

みずほフィナンシャルグループのロゴの画像

専門的な知識を必要とする金融機関では、人材不足が深刻化しており、アルムナイ採用を導入する企業が増えています。

その一つが、みずほフィナンシャルグループです。

みずほフィナンシャルグループは、アルムナイ・現役社員の双方にとって以下のようなメリットを見据え、退職後の関係を維持しています。

【みずほ銀行側】

一度採用し育成した人材を即戦力として再雇用し、転職先で培った知見を取り入れる

【元社員側】

アルムナイネットワークを通じた支援でビジネスチャンスが生まれれば、新たな融資先の確保にもつながる

取り組み

独自に作ったアプリ上でアルムナイネットワークを設け交流を継続。

具体的な取り組みは以下の通りです。

  • 「社員×アルムナイ」の意見交換会の実施
  • 「みずほ×アルムナイ」「アルムナイ同士」の共創にむけ、ビジネス連携・マッチングのトライアル

活用例

みずほを退職後、ITコンサルティング会社で新規事業の立ち上げを担当するAさん。

「いま考えている新規事業にどれだけニーズがあるのか」を調べるために、Aさんは元職場のみずほのアルムナイネットワークを頼りに。

結果

アルムナイネットワークを導入した当初(2020年)から、登録者数がここ数年で約10倍に急拡大し、今では1200人を超えています。

【参考】みずほフィナンシャルグループ「カムバックアルムナイ採用」

【参考】みずほフィナンシャルグループ「ESG データブック 2023」

日立製作所|転職潜在層へのアプローチ

日立製作所のロゴの画像

取り組み

2023年3月にアルムナイネットワークを設立、繋がりを強化しています。

具体的な取り組みは以下の通りです。

  • 元社員らに経営・事業動向や採用情報を提供
  • 退職者向けにキャリアイベントや交流会を開催

結果

  • アルムナイネットワーク設立から9か月間で、250人が登録
  • 結果として計15人が日立に再入社

立ち上げわずか1年でのこの結果に対して担当者も手ごたえを感じているようです。

再入社した社員は主に30代から40代で、SE(システムエンジニア)や研究者、営業職など。

コンサルティング、広告・人材紹介、エネルギー、ITなどへの転職を経て、再び日立を選んだ人や、中には起業を経験した人もいたといいます。

【参考】日立「Hitachi Alumni Network」

デロイトトーマツグループ|イベント・e-learningの提供

デロイトトーマツのロゴの画像

取り組み

デロイトトーマツグループは、アルムナイに対し、「継続的なキャリア形成支援」と「親睦・交流を深める場の提供」をしています。

具体的な取り組みは以下の通り。

  • イベント:月に1回開催
  • e-ラーニング:CPA協会のCPE単位が取得できる
  • アルムナイ専用のWebサイト
  • メルマガ発行:定期的な情報提供
  • 求人情報掲示板:社内外のポジション情報提供

結果

  • 2021年時点で、約5000人が所属

特に、イベントと、e-ラーニングは活発に動いているといいます。

イベントでは、毎回約150名以上が参加、多い時には700人ほど集まるそう。

【参考】デロイト トーマツ「アラムナイ」

日揮ホールディングス株式会社|「母校のようにしたい」

日揮ホールディングス株式会社のロゴの画像

日揮ホールディングス株式会社では、自社を「母校のようにしたい」という想いから、有志がアルムナイコミュニティを結成。

取り組み

短期的な出戻りや協創ではなく、長期的な関係構築に主眼を置いていることが特徴です。

具体的な取り組みとしては以下の通りです。

  • 年1回のOBOG交流会(Echo-Day)開催:創立から5年連続で開催
  • ミュニティサイトの継続的な活動
  • ニュースリリース等の情報共有
  • 再入社社員やCVCのインタビュー記事など、アルムナイの興味を引く情報発信

結果

  • 約200名のアルムナイが登録
  • ビジネスからプライベートまで様々な交流が日々生まれている

【参考】アルムナビ『テーマは「日揮を母校に」日揮ホールディングスがアルムナイ交流会を開催!』

東京都庁|民間企業だけではない!

アルムナイ採用を実施しているのは民間企業だけではありません。

東京都庁でも、転職や育児等で退職した人材が、再度都庁で活躍できる制度(都庁版アルムナイ採用制度)を導入しています。

【参考】東京都『都民が「実感」できるサービスの質向上へ!「シン・トセイ4」にバージョンアップ』

アルムナイとの繋がりを構築する際のポイント

アルムナイネットワーク、人と人との繋がりを表す画像

成功事例を見たところで、アルムナイと良好な関係を築くためのポイントを解説します。

中長期な関係構築を目指す

近年のアルムナイ活動の課題として、「優秀な人材を採用したい」「採用コストを削減したい」という企業側の思惑とニーズが先行しがちな点が挙げられます。

しかし、上記のように、アルムナイネットワークの構築に成功している企業には共通していることがあります。

それは、企業の都合ばかりを優先しないことです。

あくまでも、アルムナイ活動の主役は元社員であることを意識することが重要です。

短期的な出戻りや協創だけではなく、中長期的な関係構築を心掛けましょう。

アルムナイとのコミュニケーションを大切にする

企業が元社員を再雇用する場合、退職時の面談でネガティブな印象を与えていないかどうかが重要です。

調査によると、もとの会社のサービスには満足していても、会社自体には不満を持っている人が多いようです。

そこで、退職面談を行う際に、退職理由に理解を示すとともに、不満や要望を丁寧に聞き出すことが重要です。

そのように心のうちを丁寧にヒアリングすることで、退職者にポジティブな印象を与え、将来的に再雇用につながる可能性を高めることができるでしょう。

アルムナイ採用におすすめのサービス

オフィシャル・アルムナイ・ドットコムのロゴの画像

アルムナイ採用を考えている方にオススメな外部のサービスが、アルムナイ特化サービスであるオフィシャル・アルムナイ・ドットコムです。

多数の導入実績と豊富なノウハウに基づくコンサルティングにより、設計から導入まで支援してくれます。

初めてのアルムナイ採用に不安を感じている企業はぜひこのような外部サービスも活用してみてください。

【参考】オフィシャル・アルムナイ・ドットコムHP

離職率を下げるためにオススメのサービス|Matcher Scout

上記のように、アルムナイ採用は人材不足の改善にオススメの採用手法です。

しかし、採用段階から自社との相性を見極め、ミスマッチを防ぎたいですよね。

「求めるような学生になかなか出会えない」とお悩みの新卒採用担当の方におすすめしたいのが、Matcher Scoutです。

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まとめ

いかがでしたか?

退職者は、裏切り者ではなく「卒業生」。

アルムナイ採用は、人材不足や離職率の高さなどの課題を抱える企業にとって、有効な手段の一つです。

今回紹介した企業の事例を参考に、自社に合ったアルムナイネットワークの構築をしてみてください!