年々早期化する新卒の採用スケジュールですが、採用に成功する企業はどのようなスケジュールで動いているのでしょうか。
この記事を読めば、成功する新卒採用スケジュールの立て方について理解できるでしょう。
新卒採用のスケジュールを作成するにあたって、まずは就活ルールに則った新卒採用スケジュールを紹介します。
就活ルールとは、近年の新卒採用で見られる就職活動の早期化・長期化に伴う学業への影響や安心して就職活動に取り組める環境構築に向けて政府が主導して行う企業等に対する要請のことを指します。
この就活ルールは2021卒から踏襲されており、次の図のようなスケジュールを要請しています。
ただし、この就活ルールには強制力も罰則もないため、守らない企業も多く、形骸化している側面もあります。
しかし、それでも「広報」、「選考」、「内定」をルールに則って解禁している企業も多く、このルールの重要性に変わりはないでしょう。
【参考】内閣官房「2024年(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」
近年、新卒の採用活動が早期化している理由にインターンシップを通じた採用の活発化が挙げられます。
従来は、3月1日からの説明会等のプレエントリーを前に、母集団を形成すべく、学生に対して企業名と事業内容を刷り込む目的でインターンシップが開催されていました。
しかし、近年はインターンシップを単なる広報活動ではなく、採用活動の一環として割り切る企業が多くなっています。
実際にHR総研の調査では、24卒の学生に内定を出した企業が42%であったのに対して、25卒が56%と6割の企業が広報活動の解禁日よりも前に内定を出していることがわかります。
このように、新卒の採用スケジュールの早期化傾向は今後さらに加速すると予想されるでしょう。
【参考】HR総研「 HR総研:2025年新卒採用動向調査(3月) 結果報告」
企業の新卒採用が早期化する中で、学生の就職活動はどのように変化したのでしょうか。
HR総研の調査によると91.1%の学生(前年比2.5%増)が3年生の6月時点で就職活動を始めていることがわかります。
夏インターンシップのエントリーが増える時期に合わせてほとんどの学生が就職活動を開始していることからも、学生が企業に合わせて就職活動の開始時期を早めていることがわかります。
【参考】HR総研「【25卒生の就活動向】Z世代のキャリア選択は「安定性」を重要視。就活開始は「大学3年4月まで」が最多で早期化続く」
従来のインターンシップはあくまで「就労体験」であり、インターンシップに参加した学生の選考を認められていませんでした。
しかし、インターンシップを通じた採用の増加に伴う新卒の採用スケジュールの早期化に対応すべく、次の図のようにインターンシップの定義を見直しました。
これからの分類のうち、従来の1dayインターンシップ等は「オープンカンパニー」や「キャリア教育」という名称に変わり、3と4のみをインターンシップと呼ぶようになります。
また、タイプ3、4の要件を満たしたインターンシップは、以下の2項目を行うことができ、正式に採用直結型のインターンシップを開催することができます。
【参考】採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2021年度報告書「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」
企業ごとに様々な採用戦略があると思いますが、ここでは次の4つのケースでの採用戦略スケジュールを解説します。
新卒の学生による応募が毎年一定数確保でき、採用スケジュールが固定されている企業向けの採用スケジュールは以下の通りです。
このような企業は就活ルールに則って、広報、選考、内定出しを行います。
本選考を始めるのは6月以降となりますが、夏や冬の時期にインターンシップを開催することで本選考の母集団形成を図るのも良いでしょう。
インターンを通じた早期選考では優秀な学生を確保し、本選考では組織のバランスを考慮した採用を目的とした企業向けの採用スケジュールは次の通りです。
概ね、就活ルールに即した採用スケジュールですが、他企業に流出することを防ぐために3月より前の早い時期に内定を出すことも必要になります。
内定辞退による採用人数が未達成になることを見込んで採用を行う企業向けの採用スケジュールは以下の通りです。
このような企業は他の企業よりも「早く、短く」選考を行うことで、学生の母集団を確保しつつ、選考の途中辞退を防ぐことができます。
ただし、このような採用スケジュールの場合、学生が他企業に流出するにつれて、内定辞退者数も多くなる傾向にあります。
そこで、採用計画人数を達成するために、7~10月に第2次採用を行うと良いでしょう。
この時期に就活をする学生は「留学等で就職活動が遅れた」や「公務員志望だったが、民間企業志望に変わった」などが多く、これらの層を採用ターゲットにすることができます。
外資系企業やマスコミ、ベンチャー企業のように、超早期に採用を行う企業の採用スケジュールは以下の通りです。
一部の企業は「3月より前に新卒の採用活動が終了している」というケースもあり、採用活動を行うタイミングが早いです。
このような企業は内定者がインターンシップに参加した学生の大部分を占め、優秀な学生を早期に確保できます。
ただし、就職活動を終了してから入社するまでに時間があるので、社会人になることに対する不安が大きいため定期的に懇親会等で内定者に対してフォローする必要があります。
近年の学生側・企業側の大まかな就活スケジュールを理解したら、採用スケジュールを立てましょう。
ここでは、採用スケジュールを立てる前にやっておくべき準備を紹介します。
最終的な目標が決まっていないと、就職活動のスケジュールも上手く立てられません。
「採用の目標人数と新卒採用の目的」を明確にしておきましょう。
具体的には「その部署で何名の新卒を受け入れるのか」「新卒採用を通じて、会社にどの様なインパクトを与えるのか」といった点を明確にしておくのがおすすめです。
こちらの点は、採用スケジュールを立て終わった後でも、定期的に社内で共有しておくようにしましょう。
また「採用したい学生像を明確にしておく」ことも重要です。
具体的には「学歴・過去の経験・スキル、保有資格・人柄」などで基準を設けるのが分かりやすいでしょう。
学生像を明確にしておくと、効率よく学生にアプローチできるので、採用活動の負担も減らすことができます。
採用する学生像を決める際は、採用活動を行う人だけでなく、他部署を含めた社内全体で決めることが望ましいです。
さらに「前年度の自社の採用活動を数値化し、課題を明確にしておく」ことも重要です。
一口に採用に課題があるといっても、「母集団形成に課題があるのか」それとも「内定辞退率に問題があるのか」など、課題の箇所によって取るべき対策は異なります。
まずは自社の昨年の採用実績を数値化し「採用活動のどこに問題があったのか」を明確にしておくようにしましょう。
意外に思われる方も多いと思いますが「競合他社の採用状況」も確認しておくことが重要です。
学生は業界を絞って採用活動を行っていることが多く、競合の会社から先に内定が出てしまうと、選考を辞退されてしまう可能性が高まります。
逆に、競合他社が採用活動を行っていない時期に学生へアプローチができれば、自社に興味を持った学生がより多く集められるようになるでしょう。
そのため「競合他社がどんなスケジュール感で就職活動を行っているのか」は知っておくべきだといえます。
上記のポイントをすべて確認したら、採用の戦略を立てましょう。
採用の戦略を立てる際は、以下のポイントに注意するのがおすすめです。
新卒の採用を担当する場合は「学生から自社がどの様に見えているか」を常に意識しておくことが重要です。
自社の魅力を積極的にアピールし、学生に「あの会社に入りたい!」と思ってもらえるような就職活動を行いましょう。
戦略がしっかりと立てられれば、採用の工程を効率化させることもできます。
採用の戦略を立て終わったら、年間の大まかなスケジュールを立てましょう。
新卒採用のスケジュールを立てる際は、以下の順序で行うのがおすすめです。
採用のスケジュールを立てる際に重要なのは「最終目標から逆算して戦略を立てること」です。
まずはメインとなる「広報活動・選考活動・内定出しの開始時期」を決め、その後に細かい日程を決めていくようにしましょう。
採用活動はインターンシップから面接まで、非常に多くの準備が必要です。
施策を実行する時期を逃さないようにするためにも、年間のスケジュール作成は非常に重要といえます。
記事冒頭で触れたように、経団連の定める「就活ルール」廃止に向けて、緩やかに採用活動の早期化を行う企業が増えています。
それにより、早期選考を行うべきかお悩みの担当者様もいるのではないでしょうか。
ここでは早期選考を行う4つのメリットについてご紹介します。
早期選考に参加する学生は、情報感度が高く、計画性を持って物事に取り組む力がある優秀な学生が多いことが予想できます。
まだ他の企業からの内定を保有している確率も低く、様々な業界や業種に対してオープンになっている時期に優秀な学生層へと接触することが可能です。
早めのうちから優秀な学生とコンタクトを取ることで、自社に対して興味を持ってもらえる確率が高まります。
初めのうちから志望する業界や企業を明確に決めている学生は少数です。
学生は、様々な業界・企業のインターンシップや会社説明会に参加することで、自分に合う会社を探していきます。
そのため選考開始時期が早いほど、まだ志望業界や企業の決まっていない学生にもアプローチすることができます。
一方で、選考開始時期が遅ければ、志望企業が定まり、内定を保有する学生も増えていくため、母集団の量を確保しにくくなるため注意が必要です。
採用活動を成功させるために重要なことの一つは、PDCAを回して改善を繰り返していくことです。
新卒採用市場は毎年傾向が変わるため、「この採用活動方法が正しい」というような答えを見つけることは難しいです。
対象年度ごとに「どのようなアプローチ方法が効果的か」を手探りで見つけていく必要があります。
そのため一年の中でいかに早くPDCAを回していけるかが、採用成功の鍵となります。
早期選考を行うことで、早めのうちから学生の傾向を読み解くことができ、自社の採用の最適化が行いやすくなります。
採用開始時期が遅いと、その分活動できる時期が短くなり、短期集中で自社の求める人材を探さなくてはなりません。
既に内定を持った学生が多い状況だと会社説明会などへの集客もうまくいかず、また内定辞退が出た場合に再度選考を行う余裕もありません。
早期から選考を開始することで、採用目標を達成する可能性が高まり、余裕をもって採用活動を行うことができます。
また想定よりも内定辞退者が多かった場合でも、採用第二期を設け、再度候補者に募集を呼びかけることも可能です。
新卒採用を早期化するデメリットはなんでしょうか。
ここでは、次の2つについて詳しく解説します。
新卒採用を早期化すると、通常の採用と比べて半年以上早い時期から採用活動を始めることでしょう。
その場合、採用に関わる人件費、宣伝費等が採用を早期化した分だけかかってくることになります。
「人材採用にどこまでコストをかけることができるのか」と相談しながら慎重に検討しましょう。
新卒の学生は、入社する企業を選んだ自分に対する疑念や自分が社会人になることへ不安を感じやすくなる「内定ブルー」になることがあります。
特に、採用を早期化することは、通常の採用よりもこれからについて考える時間が長いことから内定ブルーになりやすいです。
内定ブルーによる内定辞退を防ぐために、定期的に内定者に対して、懇親会等のフォローをする必要があり、会場確保や人員確保等、通常の採用では必要のなかった業務が増えることで、社員の負担も増加することでしょう。
このように、採用の早期化に伴う内定者フォローの長期化は大きなデメリットとも言えるでしょう。
採用スケジュールがある程度固まったら、いきなり採用活動を開始する前に、まずは以下の2点を行うと良いでしょう。
採用スケジュールを立ててみると、どれだけの業務をいつ行うべきかが見えやすくなり、業務がひっ迫しそうな時期も見えてくると思います。
もし、自社だけでは手に負えなそうな業務量が予想される場合、採用代行の利用も検討しておきましょう。
目の前のタスクをこなすことで手一杯になると、採用活動に大切なPDCAを回すことが難しくなってしまいます。
早めのうちに採用代行の利用を検討することで、安定して採用業務を行うことが可能です。
採用スケジュールがある程度固まったら、早めのうちに会社説明会などの実施会場を予約しておきましょう。
自社内で実施する場合は必要ありませんが、交通の利便性や集客する学生数などによっては外部の会場を抑えると良いです。
「開催1ヶ月前に予約をしようと思って調べたら、予約可能日程がない」という事態が起こりうるため、事前の準備は欠かせません。
費用面などの問題で個別での会社説明会開催が難しい場合は、合同企業説明会に参加しても良いでしょう。
優秀な人材と出会う機会を逃さないためにも、早めに会場を抑えておく必要があります。
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いかがでしたか。 現在は多くの学生が3年生から就職活動をはじめています。
新卒採用が早期化している中においては、採用スケジュールをしっかりと立てることが重要です。
時期ごとにやるべきことを明確にし、新卒採用活動を成功させましょう。