「スクラム採用」とは、現場社員を採用に巻き込むことによって、採用活動の質的改善を目指す採用手法のことを指します。
従来の採用活動では、経営陣や採用担当者が母集団形成から選考、内定後のフォローまでを行います。
採用フローに現場社員が関わることもありますが、あくまで主導しているのは採用担当者です。
一方でスクラム採用では、採用プロセス全般で現場社員が主体となることで、採用力を引き上げることを目的としています。
「スクラム(scrum)」とは本来、ラグビーで肩と肩を組み合うプレーを表す言葉です。
この肩を組み合う姿から転じて、近年では「スクラム」は「一致団結すること」といった意味合いで使われることが多くなってきています。
スクラム採用と同様に、近年注目を集めている採用手法の一つに「リファラル採用」があります。
スクラム採用とリファラル採用は混同されがちですが、その意味は次のように異なります。
スクラム採用:全社員が採用プロセスに関わる手法
リファラル採用:自社の現場社員から友人や知人を候補者として紹介してもらう手法
つまり、スクラム採用は候補者の紹介(=リファラル採用)も含めた、あらゆる採用活動が対象範囲となります。
リファラル採用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【参考】【新卒|リファラル採用】内定率をあげる方法、成功事例など紹介
スクラム採用には、以下の3つの条件が必要になります。
採用活動のワークフローを分解し、各フローの権限を最適な部署・社員に委譲することです。
各職種ごとの最適な採用方法に関して、現場の意見を取り入れながら社員主導でPDCAを回し、より良い採用活動に繋げやすくなります。
採用活動の成果を「見える化」し、社内の全社員にフィードバックすることです。
これにより、採用活動の定期的な振り返りができるようになります。
全社員が自分事として採用活動に関わっている状態をつくり、振り返りを次回への改善に繋げることができます。
採用担当者は、採用活動の「PM(プロジェクトマネージャー)」として機能します。
採用に関する知識やノウハウを現場社員に伝え、採用活動という「プロジェクト」を採用担当者が主導することで、社員全体の成長を促します。
スクラム採用がなぜ注目されるようになったのか、その背景について解説していきます。
企業が発展していくためには、優秀な人材の確保が不可欠です。
しかし、転職市場の競争が激化している現在、優秀な人材ほど市場に出てくることが少なくなっています。
従来の採用手法ではこうした転職潜在層にリーチすることが難しいため、優秀な人材にアプローチするための新たな手法として、スクラム採用が注目を集めています。
ITの発展に伴い、専門職向けの求人メディアやマッチングサービスなど、採用チャネルが非常に多様化しています。
このようなさまざまな採用手法がある中で、自社に最適な手法を選択する必要があり、その1つとしてスクラム採用が注目されています。
近年、ジョブ型雇用の拡大に伴って、高い専門性を持つ人材を見極めて採用する必要性が増しています。
現場で働いていない採用担当では、こうしたスキルの見極めが困難なため、現場社員が採用に関わることによって専門性の高い人材を確保することができます。
ジョブ型採用について詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
【参考】新卒からジョブ型採用を取り入れるべき?特徴や導入企業一覧を紹介
採用手法が多様化したことで、求職者も以前と比べて多くの企業の情報を収集することができるようになりました。
転職が当たり前になった現在、社内の雰囲気や文化といった要素も含めて、より自分に合った企業を探す動きが加速しています。
採用活動で現場社員と接することのできるスクラム採用は、このような求職者の需要に応えるものであると言えます。
スクラム採用には以下のようなメリットがあります。
全社員が採用活動に携わることで、転職潜在層の優秀な人材を採用できる可能性が高まります。
現場社員のつながりを活用することで求職者とのタッチポイントを増やすことができるため、採用担当だけではリーチできなかった層にアプローチすることが可能になるのです。
スクラム採用では現場社員が採用活動の中心となるため、実際の業務や自社の文化に合った人材を獲得することができます。
また、採用活動を通して、求職者に自社の働き方や価値観を伝えることができるため、求職者側の企業に対するイメージも正しいものになりやすく、ミスマッチを防ぐことができます。
採用活動にあたる社員は、自社の魅力について求職者に語る機会が多々あります。
これによって、社員が自社の魅力を再確認することができます。
さらに、将来の同僚を自分で選ぶことで当事者意識も高まり、社員のエンゲージメント向上に繫がります。
一方で、スクラム採用にはデメリットもあります。
通常業務に採用業務の工数が加わることで、現場社員の負担が増えてしまいます。
採用活動のせいで通常業務に支障をきたしてしまっては元も子もありません。
採用活動と通常業務のバランスをうまく取ることが求められます。
採用活動に対する全社員の意識を統一することは容易ではありません。
社員によって熱量に差が出てしまったり、現場社員の負担が増えることで不満の声が上がる可能性もあります。
スクラム採用を導入する際には、現場社員の意見を十分に聞いた上で、自社にあったやり方を探る必要があります。
スクラム採用では、求職者の個人情報を複数の従業員が扱うため、情報管理コストが上昇してしまいます。
採用管理ツールを導入して、各部署で進行している採用活動の進捗を把握したり、情報漏洩を防ぐために従業員に対する指導をする必要があります。
では実際にスクラム採用の導入をするには、どのようなステップを踏めば良いのでしょうか。
以下では、スクラム採用を導入する際の手順や、意識するべきポイントについて解説していきます。
全社員を採用活動に巻き込むためには、経営層や現場マネージャークラスの人間のコミットメントが必要不可欠です。
まずは経営層・現場マネージャークラスにスクラム採用の必要性を理解してもらいましょう。
経営層が採用に積極的に取り組む姿勢を見せることで、社員のモチベーションを向上させることができます。
また、現場社員の採用活動が人事評価に繋がる体制を整えることも必要です。
経営層の理解が得られたら、次はスクラム採用の必要性を社内全体に浸透させ、その上で現場社員に採用活動にコミットしてもらうことが必要です。
自社の採用における課題を洗い出して目指すべき方向性を現場と共有し、全社で共通認識を持った状態をつくりましょう。
採用活動の参加へのハードルを下げ、社員が積極的に採用活動に参加してくれる環境を作ることも重要です。
役職や年次に関わらず、採用活動における情報発信をしやすい環境を整えることで、課題やノウハウの共有が進み、全体で協力しながら採用活動を行うことが可能になります。
また同時に、採用の権限を現場社員に移譲することも必須です。
採用担当者は採用活動全体の最適化など、現場社員をサポートする立場に回りましょう。
スクラム採用では複数の社員が採用に関する情報にアクセスするため、情報を一元管理することも重要になります。
採用管理ツールを導入するなどして、アクセス権限を管理したり、情報漏洩の防止を行いましょう。
採用管理システムについてはこちらの記事で解説しています。
【参考】ATS(採用管理システム)とは?無料サービス7選を徹底比較!
上記の①~③のステップをクリアしたら、実際に採用成果をあげるためのPDCAサイクルを回していきます。
その際「母集団形成」「ジャッジ制度の向上」「アトラクト力アップ」の3つのポイントに着目しながら課題を選定し、改善を行うとよいでしょう。
そもそもエントリー数が少ないなどの課題がある場合、母集団形成を見直す必要があります。
エージェントやリファラル採用の活用、スカウト業務に割く工数を増やすなどして、母集団を増やす工夫を行いましょう。
選考回数は多いけれど内定を出せない、入社1年以内の離職率が高いといった場合には、ジャッジ精度の低さに問題があるかもしれません。
採用要件の見直しや、各選考間の情報の引継ぎを見直すことが有効です。
アトラクトとは、英語で「魅了する、引き付ける」を意味し、候補者の自社に対する好感度を高めることを指します。
選考途中や内定後の辞退率が高い場合には、会社説明資料や面談の内容を見直して、アトラクト力を向上させることが求められます。
以上の3つのポイントを念頭に、自社の採用における課題を見極め、必要に応じて施策を打つことで、スクラム採用を有効に実施することができます。
実際にスクラム採用を導入している企業の成功事例をご紹介します。
Ubie株式会社では専任人事を置かず、全従業員が採用に携わっています。
プログラミング言語やスキル面でのマッチよりも、カルチャーフィットを重視した採用を行っており、その結果、離職したメンバーはたった7人にとどまっています。
「Ubieness (ユビネス) 」という6つの採用要求を明確に打ち出し、照らし合わせることで、会社のカルチャーにマッチしているのかの見極めを可能にしています。
株式会社メルカリでは、創業当初からリファラル採用に力を入れており、全社員が採用活動に参加する文化が浸透しています。
同社はあらゆる採用施策において、
「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションと、
「Go Bold(大胆にやろう)」
「All for One(全ては成功のために) 」
「Be Prifessional(プロフェッショナルであれ)」
という3つのバリューを軸として展開することで、全社員が共通の理念を持って採用活動に取り組んでいます。
【参考】https://about.mercari.com/
BASE株式会社は、経営陣・人事主導の採用手法からスクラム採用へのシフトを実現した企業です。
従業員数が増加するにつれ、採用計画が未達になってしまっていたことで、採用手法を見直しスクラム採用の導入に着手しました。
同社では、現場社員にスクラム採用の必要性を理解してもらうことを最優先とし、段階的にスクラム採用を進めることで、参加ハードルを取り除きました。
また、「内定判定会議」を導入し、選考に関わった全員が、候補者に対する各自の評価や懸念点などを共有し、内定を出すかどうかのすり合わせを行う場を設けました。
これらの取り組みにより、採用人数は前年より43%増加し、採用計画の達成に成功しました。
さらに、選考人数に対しての入社決定率、すなわち採用効率も21%向上しました。
【参考】https://binc.jp/
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いかがでしたでしょうか?
本記事では、「スクラム採用」の定義や注目されている背景、メリット・デメリットなどをご紹介しました。
採用手法の見直しを考えている方、スクラム採用の導入を検討している方に、この記事が参考になっていますと幸いです。