ストレス耐性がどのくらいなのかを面接で見極めることは、企業のためだけではなく、候補者が自社で健康的に働くためにも欠かせません。
本記事では、面接でストレス耐性を見極めるための質問例やポイントなどをご紹介します。メンタルヘルスによる早期退職者が多い・ミスマッチを予防したい採用担当者様は特に参考にしてみてください。
ストレス耐性とは、心理的な負荷に耐える力のことを指します。どれだけスキルが高い人材だったとしても、ストレスに上手く対応できなければ体調不良や退職に繋がり、持っている能力を十分に発揮できなくなってしまいます。
2014年には「労働安全衛生法」が改正され、労働者が50人以上在籍している事業所でストレスチェックを行うことが義務化されました。
このような背景から、社員のストレス耐性を重要視する企業が増えています。
【参考】厚生労働省『改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について』
候補者のストレス耐性がどれくらいあるのかを面接で見極めることによって、候補者が自社で健康的に働くことができるのかを知ることができます。
厚生労働省の調査によると、2023年にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%(前年度比0.2%の上昇)となっており、以下のグラフよりその割合は年々上昇していることが分かります。
今後もメンタルヘルスの不調により休業・退職する労働者が増えることが考えられます。
【参考】厚生労働省「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)」
また、仕事を行う上で避けられないストレスと上手く付き合う方法を知らなければ、体調を崩してしまうなどのリスクがあります。
特に新卒で採用した人材は、新しい環境や人間関係、仕事の責任やプレッシャーなど、生活 が大きく変わったことによるストレスを受けやすいです。
ストレス耐性を面接で見極めることによって、早期離職を予防するだけではなく、候補者の精神的な健康を守れるのかを判断することに繋がります。
ストレス耐性の強度を見極めるためには、まずストレスがかかる構造を知ることが大切です。ここではストレス耐性に関わる6つの力そしてそれぞれ6つの力が業務に発揮される例についてもご紹介します。
自社で特に重要となる力はどれか、検討してみてください。
▼ストレス耐性に関わる6つの力
ストレスに鈍感な人は、ストレスの要因に気がつかないため、比較的ストレスを感じにくいことが特徴です。そのため、ストレスに鈍感な人はストレス耐性が高い傾向にあり、人間関係のストレスや仕事で負荷がかかる業務にも対応することができます。
一方、ストレスに敏感な人は小さなストレスにも気がつき、心に負荷がかかりやすくなってしまいます。そのため、小さなストレスがたまることで早期離職や休職をしてしまう可能性もあるでしょう。
ストレスに気付いた時、いくつかの方法で対処することができます。そのうちの一つが、ストレスの原因となるものを「避ける」ことです。
「くよくよ悩んでもしょうがないから割り切ろう」
「いろいろな考え方があるから、間に受ける必要ないな」
このようにストレスの原因をストレスと認めずに避けることで、精神的負荷そのものの存在をなくす能力 もストレス耐性に繋がります。
ランニングやドライブなどで気分転換を行い、ストレスを発散している方もいるのではないでしょうか。ストレスが溜まって限界に達する前に、それぞれの方法で処理することで、ストレスを弱めたり、なくしたりすることができます。
自分なりにストレスを発散する力を持っていると、ある程度の負荷がかかったとしても耐えることが可能 です
例えば「何かミスをした時に責任を感じる」「怒られた時に反省する」といった際に多少のストレスを感じるのは当たり前です。
このような場合、そのストレスの要因となっているものをネガティブなものとして避けるのではなく、ポジティブに受け入れる力も、働く上で必要になります。
ストレスを受け入れる力を持っている人は、ミスを認めて学びを得ることや、失敗を糧にする ことができます。
「初めて人前で話す時は緊張してストレスを感じる」といったこともあるかもしれません。
このような場合、何回も人前で話して経験を積むことで、緊張を感じなくなるように鍛えることが可能です。
何度も同じことを繰り返すうちに慣れが生じ、ストレス要因に対して向き合う方法を見つけ出せます。
ストレスの経験値があるかどうかも、ストレス耐性に大きく関わります。
人によってストレスに対応できるキャパシティが異なります。
「満員電車に乗るとひどく疲れてしまうが、1日中じっと座っていることができる」
「1日中人混みの中にいても平気だが、じっと座っているとイライラする」
一人ひとり、「どんなストレス要因」に対して「どれほどストレスを抱えられるのか」ということは異なります。ストレス耐性を見極める際には、どのようなストレス要因に対してどれほどの容量があるのかを知ることが大切 です。
ストレス耐性を見極める際に注意すべきことがあります。
それはメンタルヘルスに疾患に関する質問は行わない、ということです。
従業員のメンタルヘルス疾患に関する情報は、個人情報保護法における「要配慮個人情報」に該当します。
情報の取得にあたっては、従業員本人の同意のもとで適切な手段で行う必要があります。
つまり、企業側がストレス耐性を見極めるためにメンタルヘルス疾患に関する質問をすることは可能ですが、候補者はそれに回答する義務はないということです。
そのため、「現在患っている精神疾患はありますか」などのように直接的にメンタルヘルスについて質問することは、候補者の心証を損ねる可能性があります。
ストレス耐性を見極めるための質問を検討する際は、以上の点に注意してください。
【参考】総務省「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン 」
では、実際にストレス耐性を面接で見極めるためには、どのような質問を行えばよいでしょうか?上述したストレス耐性に関わる6つの力を面接で見極めるための質問をそれぞれご紹介します。
ストレス耐性が高いと見込まれる回答例もそれぞれご紹介しますので、採用面接の際に回答からストレス耐性を見極める材料として活用してみてください。
ストレスに気がつきやすいかどうか分かるような質問をしましょう。特に、候補者がストレスに感じやすいことと、自社の業務内容が近いことにも注意が必要です。
例えば、自社の業務で顧客に対してプレゼンテーションを行うことが多いとします。 面接で候補者にストレスを感じやすいときについて質問した際に、「大勢の前で発表するとき」と回答された場合、自社の業務とその人がマッチしておらず、早期退職のリスクが高くなってしまいます。
ストレスを避ける力を見るためには、ストレス要因をどのように認知し、対処しているのかが分かるような質問をしましょう。
「あまりストレスを感じない」「ストレスを感じても割り切っている」
などの回答された場合、ストレスを避ける力があると見られます。
過去の経験を聞きながら、ストレスを上手く発散できているのかを判断しましょう。
具体的な経験やエピソードを答えられた場合、自覚的にストレス発散が行えていると分かります。
過去の経験や仮定の質問を行いながら、ストレスに対しての向き合い方や処理の方法を見極めましょう。
ストレスを受け入れる力がある人材は、失敗を認め、そこから学びを得ることが得意な傾向があります。
過去のエピソードを聞きながら、自社での業務を遂行できるレベルの経験があるのかを確かめていきます。
ストレスがかかることが予想される出来事に対して、適切に対処し、成果を挙げた経験がある場合はストレスの経験値が高いです。
ストレス容量に関する質問は、「抱えられる業務量が多そうだと評価が高くなる」と勘違いされてしまいがちです。
これらはあくまでも体調を崩さないために自分自身のキャパシティをしっかりと把握できているのかを知るための質問です。
「いくらでも働きます!」という回答を求めているわけではないことを伝えておくと良いです。
続いて、求職者の経験別に面接でストレス耐性を見極める質問をご紹介します。短期離職者、第二新卒のストレス耐性を見極める質問をそれぞれご紹介するので、中途採用の面接の際にぜひご活用ください。
転職を繰り返すと、転職へのハードルが下がり、さらなる短期離職につながる可能性が高まる傾向にあります。転職を繰り返している人の多くは入社1年半〜2年前後で仕事に慣れ始め、人間関係にストレスを感じて転職を考え始めるようです。
20代で3社、30代で4社、40代で5社以上の転職経験があると、転職回数が多いと判断する目安になります。短期離職者が新しい職場に定着してくれそうかを判断するためには、人間関係に対するストレス耐性を確認する とよいでしょう。
社会人経験の少ない第二新卒のストレス耐性を推しはかるために、学生時代の行動力を確認できる質問をするとよいでしょう。挑戦した経験が少ない場合、成長意欲が低く、仕事でつまずく可能性が高いです。
そもそも、これまでストレスが少なく「ストレス慣れしていない」ためストレスに弱く、早期離職につながるリスクがあります。
ここまでストレス耐性を見極める質問例について紹介してきました。 では、どのような回答がストレス耐性が高いと判断できるのでしょうか。ここでは2つのポイントを紹介します。
ストレス耐性が高いと考えられる回答の傾向
ストレスを感じた出来事について質問したとき、ストレスを軽減するためにどのような対応を取ったのか具体的にあげている回答は、ストレスを<避ける>力、<発散する>力が高いと考えられます。
また、その出来事から自分のストレスを感じやすい傾向や今後の対策・学びについて言及できている回答は、<受け入れる>力が高いだけでなく、自分を俯瞰することができるため、自分のストレスの<容量>も理解できていると考えることもできます。
ストレスが生じた原因として、人間関係や環境によるものである場合もあるでしょう。「チームで連携が取れず、意思疎通が図れないとき」「初対面の人と話すとき」のような、自分1人ではストレスの原因を取り除くことが難しい場合もあります。
その場合に、他の人や環境のせいにするのではなく、「積極的にコミュニケーションを取るように働きかけた」「自然体でかかわるようにする」のような、ストレスを軽くするために自分で工夫している点を回答できる学生も<避ける>力や<受け入れる>力が高いと言えます。
ストレスの原因を人や環境のせいにした回答をする方は、就職した場合に自分で改善しようとせずに人間関係や環境を理由に早期退職する可能性もあります。回答から、自分ができることをやる姿勢が感じられるかどうかも、大切なポイントです。
面接でストレス耐性を見極める際には、以下のポイントを抑えておくと良いです。
ストレス耐性が高い人や低い人の特徴を把握しておくと、質問に対する回答からストレス耐性を見極めることができます。
ストレス耐性が高い人の特徴は以下の通りです。
ストレス耐性が低い人の特徴は以下の通りです。
それぞれの特徴に当てはまる箇所が候補者にあるかどうかを面接の中で確かめていきましょう。
「ストレス耐性はありますか?」というような漠然とした質問では、候補者からも抽象的な答えが返ってくることが予想されます。
これでは適切に候補者のストレス耐性を見極めにくいです。
面接中は、今までの経験や、状況を仮定した質問を行った上で、候補者がどのような時にどのようなアクションを取るのかという行動パターンを知ることが大切です。
そのため、「なぜそう思うのか」「どうしてそうしたのか」などの考えや行動の理由を探るような質問を重ね、候補者に対する理解を深めていきましょう。
ここではストレス耐性を見極める面接で注意したいポイントについてご紹介します。
「ストレス耐性を見極めるには、実際に面接でストレスを候補者にかければいい」と思っていませんか?
先述したように、ストレス耐性に関わる要素は複数あります。
圧迫面接で候補者に対してストレスを与えたとしても、あくまでストレスに対する対処の一面しか見ることができません 。
また圧迫面接を行うと、パワーハラスメントのあるブラック企業だという印象を候補者に与え、自社への志望度を下げてしまいます。
インターネットなどの口コミで悪印象が広がり、自社の企業イメージが下がる恐れもあります。
面接でストレス耐性を見極めるのは、自社で健康的に働けるかを判断するためです。
自社と候補者の双方にとって適切な採用を行うためにも、圧迫面接を行うことは避けた方が良いでしょう。
1つの質問に対する回答を聞いただけでは、ストレス耐性を見極められません。
「ストレスに気付く力は高いが、ストレスを上手く処理できていない」
「ストレスを発散する力はないが、受け入れる力はある」
一概に「ストレス耐性が高い」「ストレス耐性が低い」とは言えないのが難しいポイントです。
ストレス耐性を見極めるいくつかの質問を行った上で、総合的に候補者が持つストレス耐性の特徴を把握しましょう。
また自社で働く上で特に必要だと思われるストレス耐性の要素を調べておく と、候補者を評価しやすくなります。
ここまで面接時にストレス耐性を見極めるための方法をご紹介してきました。 一方で、面接では候補者のストレス耐性を予想することしかできません。 面接ではストレス耐性が高いと評価を受けても、自社の環境とその候補者の持つ特徴がマッチしていなければパフォーマンスを上手く発揮できないことも。
今までの経験ではストレス耐性が低い傾向にあったとしても、ストレスの経験値を上げ、ストレスとの向き合い方を知ることで健康的に働ける場合もあります。面接だけでは候補者が持つストレス耐性の正確な判断はできないということを念頭に置いておきましょう。
候補者の先天的なストレス耐性を把握したい場合、適性検査を導入することをおすすめします。
面接と異なり、適性検査は対策が難しいため、より実態に近い候補者の性質を明らかにすることが可能です。
・SPI3
オプションでストレス分析報告書を入手可能
・DIST
ストレス要因への耐性と対処するための資質を診断
定着しない、成長しない、頑張らない人材に共通する不適性な傾向を診断
これまでストレス耐性の見極め方についてご紹介してきましたが、ストレス耐性の有無は環境によって左右されることがあり、面接のみでストレス耐性があるかどうか見極めることは困難です。
そこで、選考に長期インターンシップを導入することがおすすめです。
実際に働いてみることで候補者の本当のストレス耐性が分かるだけでなく、自社との相性を入社前に事前に確認することができ、早期退職を防ぐことにもつながります。
2022年4月に日本経済団体連合会(経団連)が「就活ルール」とも呼ばれている新卒採用の方針を変更し、一部のインターンシップに限って、インターンシップで取得した学生情報を就職・採用活動に活用できるようになりました。
つまり、インターンシップが採用活動に直結することが認められたのです。
採用に直結が認められたインターンシップは、汎用的能力・専門活用型インターンシップと呼ばれるタイプに分類されるもので、汎用的な能力を必要とするインターンシップは5日以上、専門的な能力を必要とするインターンシップは2週間以上の期間で行われます。
長期インターンを実施することで、学生のストレス耐性を図ること、自社との相性を図ることができるだけでなく、優秀な学生を採用活動につなげることも可能になります。
【参考】日本経済団体連合会「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」
仮にいわゆる「ストレス耐性の低い」応募者であったとしても、入社後にきちんとしたサポートを受けることができれば定着する可能性もあります。
一方で「ストレス耐性の高い」応募者であったとしても、社内環境が悪ければ短期で離職してしまうことも考えられます。
ストレス耐性の高い従業員を集めるだけでなく、ストレスを未然に防ぐ取り組みも重要です。
候補者のストレス耐性を見極める方法について解説してきました。
しかし「もっと楽に採用活動がしたい!」「効率的に母集団形成をしたい!」と考えている方も多いはずです。
そんな人事担当者の方には「Matcher Scout」をおすすめします。
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いかがでしたか。
本記事では、ストレス耐性に関わる6つの要素や、面接でストレス耐性を見極めるための質問例などをご紹介しました。
候補者の今までの経験などから深掘りを行い、自社のとっても候補者にとっても良い採用となるよう見極めていきましょう。