学生が就職先を決める際に重視する項目の1つに「福利厚生」があります。
福利厚生を充実させることができれば、新卒採用を有利に進めることができます。
しかし、いざ新たに福利厚生を導入するとなると
「何を優先的に導入すればいいのか分からない…」
「福利厚生を充実させたいけど、あまりコストはかけたくない…」
などなど、悩みは尽きないのではないでしょうか。
本記事では、福利厚生を導入する際の注意点や、今すぐ導入できる福利厚生について解説します。
そもそも、学生が求める福利厚生にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、学生に人気の福利厚生ランキングトップ10をご紹介します。
(株式会社マイナビ『2020年卒』より)
1位は「家賃補助」、2位は「社宅・社員寮」と住居に関する福利厚生が最も人気です。
また3位には「通勤交通の支給」、4位には「リフレッシュ休暇」がランクインし、手当や休暇を求める学生が多いことがわかります。
学生が企業選びをする際に重要視する福利厚生ですが、具体的にはどれほど重視されているのでしょうか。
以下では、新卒採用における福利厚生の重要度について、データを参照しながらご紹介します。
下記の調査では、「企業選びの基準」(複数回答可)において学生が重視するものは
1位 仕事内容
2位 一緒に働く社員との相性
3位 福利厚生の充実
という結果が出ています。
給与や残業の少なさといった項目よりも、福利厚生が上位にランクインしていることから、企業選びにおいて福利厚生は非常に重視されていることがわかります。
【参考】2023年卒学生の就職意識調査
学生が企業選びで重視する点については、下記の記事でも言及しています。
「Z世代」と呼ばれる、現代の学生に響く組織作りの方法もご紹介していますので、ぜひご覧ください。
【参考】【採用】Z世代に響く「組織作り」とは!?3ステップで紹介します
freee株式会社が行った調査によると、就業先として大手企業を選んだ学生のうち「福利厚生」を重視している割合は、非大手企業(※)を選んだ学生に比べて3.2倍も高い結果となりました。
一方で、「企業の将来性」や「自らの成長が期待できる」といった項目では、大手と非大手の差はあまりなく、「給与・賞与」でも、1.27倍と大きな差はありませんでした。
下のグラフでは、各項目について、大手を選んだ学生が非大手を選んだ学生の何倍重視したかを、非大手を1として表しています。
(freee株式会社2021年卒のベンチャー企業を志望した学生に調査べンチャーよりも大企業を選んだ新卒学生は3.2倍福利厚生を重視|freeeのプレスリリースより)
また、「給与水準は大手企業とベンチャー企業に大きな差は感じなかった。一方で、福利厚生は大手企業の方が手厚かった。」「福利厚生が充実しているベンチャー企業は経営がしっかりしている印象。」などのコメントも寄せられました。
※非大手企業とは、大手企業(設立15年超、従業員1,000名超の企業)ではない企業を指す
このように、就職先として大手企業を選んだ学生は、福利厚生を重視していることがわかります。
言い換えれば、福利厚生の充実度が大手企業よりも劣っていることが原因で、非大手企業を選ばない学生が多くいるということです。
そのため、非大手企業が「学生に選んでもらえる企業」を目指すためには、福利厚生を充実させる必要があると考えられます。
下記の記事では、学生の志望度を上げるためのノウハウをご紹介しています。
こちらも合わせてぜひご覧ください。
【参考】 【新卒】採用CX(CandidateExperience)を解説
【参考】【新卒採用】学生の志望度をグッと高めるキャッチコピーの作り方
では、そもそも学生がこれほどまでに福利厚生を求める背景にはどういった事情があるのでしょうか。
今の若い世代は、人生に金銭的な不安を抱えています。
大学生に対する調査で、「将来について最も不安だと思うもの」の1位は「お金」でした(株式会社マイナビ『マイナビ 大学生低学年のキャリア意識調査(2023年1月調査)』より)。
企業選びの基準でも、3位「福利厚生」のほか、5位には「年収」がランクインしています。
また、先ほどご紹介した人気の福利厚生ランキングでは、「家賃補助」と「社宅・社員寮」がトップ2の項目となっています。
3位にある「通勤交通費の支給」も含めて、直接的・固定的な金銭の支給を福利厚生に求める傾向が強く出ていることがわかります。
人気の福利厚生ランキングの上位には、
4位 リフレッシュ休暇(連続●日間休める、等の制度)
6位 育児支援(育休、時短勤務、子の看護休暇等)
7位 独自の休暇制度(介護休暇、誕生日休暇、結婚記念日休暇等)
という項目もランクインしています。
結婚・出産を経験しても共働きを続ける女性が増えたことや、ワークライフバランスを重視することが一般的になった現在「働きやすさ」を求めて福利厚生をチェックする学生も増えていると考えられます。
このように学生は、金銭的な不安を解消するためや、ワークライフバランスを実現させるために福利厚生を重視する傾向があるようです。
そのため、非大手企業であっても、こういった学生のニーズを満たすような福利厚生を導入することで、志望してくれる学生を増やすことができるのではないでしょうか。
ここからは、企業が新たに福利厚生を導入する上で役立つヒントや注意点などをご紹介していきます。
そもそも「福利厚生」と一口にいっても、福利厚生には「法定福利」と「法定外福利」の2種類があります。
まずはこの違いを把握しておくことが必要です。
「法定福利」とは、法律で義務づけられている福利厚生を指します。社会保険料の企業負担分を企業が負担することがこれに当たり、どの企業も同様に行っているものです。
一方で「法定外福利」は、企業独自の福利厚生です。法定福利以外に企業が費用を負担して従業員に提供する福祉施策がこれに当たります。
例えば、家賃補助、レクリエーション活動への補助、企業内託児所、カフェテリアプランなど内容は企業によってさまざまです。
近年、学生から高い注目を集める福利厚生には、大きく分けて3つの種類があります。
1つ目は、住宅に関する制度です。
住居は生活に欠かせないものですが、快適な住宅で暮らすためには相応の費用がかかります。
特に都心では家賃も高く、新卒社員にとっては大きな負担になるでしょう。
住宅に関する福利厚生の例は、以下のようなものがあります。
企業によって金額や条件は変わりますが、住宅費用の一部でも負担してもらえることは、就職活動中の学生にとって大きな魅力と言えるでしょう。
2つ目は、食事に関する制度です。
食事に関する福利厚生の例は、以下のようなものがあります。
安く食事できることはもちろん、企業によっては栄養バランスやおいしさまでこだわり抜かれたメニューがあったりと、忙しい社会人にとっては嬉しい制度です。
3つ目は、健康に関する制度です。
近年の健康志向の強まりも相まって、最近では社員の心身の健康を守るために、独自の制度を導入している企業も増えてきています。
健康に関する福利厚生の例は、以下のようなものがあります。
福利厚生を導入・拡充する際には、以下のような懸念もあります。
福利厚生を拡充する際には、このような広範囲への影響や福利厚生費の増大といった、リスクやデメリットに関してもしっかりと考慮しなければなりません。
安易な福利厚生の拡充は避け、自社の経営状況や人員計画など、長期的な展望も踏まえた上で、福利厚生を拡充する必要があります。
福利厚生が、意図せず組織内の不公平感に繋がってしまうこともあります。
本来人事とは、従業員の能力や成果を正当に評価し、会社の業績に貢献した従業員に対して、その評価に応じた給与を支給すべきものです。
一方で福利厚生は、能力や成果と一切関連性がない報酬です。活躍している人材だけでなく、そうでない人材にも、平等に適用しなければなりません。
例えば福利厚生で新たな休暇制度を導入した場合、
優秀な人材には仕事が集中しやすいことを考えると、このような状況が発生する可能性は高いといえるでしょう。
良かれと思って用意した福利厚生が、逆に不公平感を生んでしまい、不満に繋がることもあるのです。
福利厚生を導入する際には、こういった組織内の公平性にも気を配る必要があります。
上記のようにリスクやデメリットはあるものの、「大手企業は福利厚生が充実している」というのは事実です。
企業規模ごとの福利厚生の充実度を見てみると、
「常用労働者1人1ヶ月あたりの法定外福利費」は、1000人以上の企業では約9,200円、30〜99人の企業では約3,900円という調査結果が出ています
【参考】 厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』)。
しかし、大手企業ほどのコストをかけなくても、魅力的な福利厚生は工夫次第で用意できます。
以下に、低コストで無理なく導入できる福利厚生のアイデアをいくつかご紹介します。
学生が「福利厚生」を通して企業に求めている、「将来への金銭的な不安」の払拭と「ワークライフバランス」の実現をかなえることができれば、学生に自社の魅力を十分にPRすることができます。
下記に挙げているような福利厚生の制度は、金額はそれほど高額でなくても従業員が利用しやすく、メリットが受けやすいものです。
また会社にとっても、社内のコミュニケーション活性化や個人のスキルアップ、生産性向上などが期待でき、一石二鳥の制度でもあります。
後ほど実際の導入成功例もご紹介しますので、参考にしてみてください。
一般的に広く導入されているサービスで、従業員1名あたり数百円〜1200円程度で利用可能です。
従業員は飲食店やレジャー施設などの各種提携サービスを会員価格で受けられたり、特典をもらえたりします。
従業員同士が集まってスポーツや飲み会などを開催した際に、費用の一部(または全部)を会社が負担するというものです。
社内コミュニケーションの活性化にもなります。
書籍購入費用やセミナー参加費用などの一部(または全部)を会社が負担します。
学んだあとは社内で勉強会を開くなど工夫も合わせて行うことで、従業員のスキルアップに繋がります。
本棚を設置し、会社が購入した書籍や、個人が持ち寄った書籍などを置いて無料で貸し出すというものです。
オフィス内に気分転換できるスペースを設けます。
自販機・給茶機やお菓子、雑誌、クッションや筋トレグッズなどを置くと、頭を切り替えてしっかり休める空間になり、煮詰まっていたアイディアが浮かびやすくなるかもしれません。
がん検診・人間ドックなどの費用や、インフルエンザ等の予防接種費用の一部(または全部)を会社が負担します。
大きな病気を早期に発見することで長期化や退職を防いだり、オフィス内感染を最低限に止められることにも繋がります。
通常の勤務時間外に残業や宿直をした従業員に、夜食または夜食代が会社から支給されます。しっかりと食事を取ることで、残業や夜間勤務のパフォーマンスが向上し、残業時間の短縮に繋がります。
工夫次第では、お金をかけずに福利厚生を導入することも可能です。
例えば、
アニバーサリー休暇や失恋休暇など、年に数日の休暇を取得できるようにする制度です。休暇を強制的に取得させるルールを設ければ、業務の見える化・共有化が進んで、部署全体のスキルアップや生産性向上にも繋がります。
従業員がオフィス内でお菓子やドリンクをいつでも購入できる制度です。設置スペースと冷蔵庫があれば、費用をかけずに導入することができます。
仮眠スペースを設けるなど、職場で昼寝ができる制度です。従業員の集中力アップにも繋がります。
このほかにも、
…など、アイデア次第でさまざまな福利厚生ができます。
従業員のためになることであれば、何でも福利厚生になります。
金額は少しであっても、制度があることで「従業員のウェルビーイングやキャリアアップを支援したい」という会社からのメッセージになります。
安価または無料で導入できる福利厚生の成功事例をご紹介します。
インターネットコンサルティング企業のヒューゴでは、13時から16時までの3時間にシエスタ(仮眠)制度を設けています。
9時に始業し、13時~16時はシエスタタイムに入り、20時に終業というスケジュールになっています。実働時間は一般的な日本企業と同じく8時間です。
シエスタタイムの過ごし方は、
など、様々です。
シエスタタイムを仕事に使い、20時より早く退社することも可能です。
この制度に対して社員からは、
などの声が上がっており、集中力が高まることによって、業務スピードや質の向上が上がるなど、良い影響がもたらされているようです。
インターネット広告事業を展開するサイバーエージェントでは、女性社員が長く働ける職場環境づくりのため、「macalonパッケージ」と呼ばれる女性活躍促進制度を導入しています。
その中に、女性特有の体調不良の際に、月1回取得できる特別休暇「エフ休」というものがあります。(エフ=FemaleのFを指します)
通常の有給休暇も含め、女性社員が取得する休暇の呼び方を「エフ休」とすることで、利用用途がわからないようにしています。
これによって、取得理由の言いづらさ・取得しづらさを排除し、女性が気軽に休暇を取得できる環境を実現しています。
【参考】株式会社サイバーエージェント
ゲームアプリなどのエンターテインメントコンテンツを提供するジークレストでは、「推しメン休暇」と呼ばれる特別休暇制度を導入しています。
1年に1度、アニメやゲームのキャラクター、タレントや声優など、自分のイチ推しメンバーの記念日(誕生日やライブ開催日など)に、休暇を取得できます。
さらに、お祝いを支援するための活動費として、上限5000円までを会社が負担してくれます。
ゲーム会社ならではのユニークな休暇ですね。
【参考】株式会社ジークレスト
せっかく福利厚生を導入しても、それを上手くアピールできなければ、学生に自社の魅力は伝わりません。
導入した福利厚生を有効に活用して「学生に選んでもらえる企業」を目指すためには、「アピール方法」が重要になります。
例えば、多くの学生の注目を集める人気企業の福利厚生では、次のようなものがあります。
「福利厚生が充実している会社」として人気の企業は、「社員を大切にする」「働きやすさが成果に繋がる」といったメッセージを併せて打ち出していることが多いです。
単に福利厚生の存在をアピールするだけでなく、福利厚生を通じて会社の理念や風土を伝えることで学生の共感を得ているのです。
ここまで、手軽に導入できる福利厚生や、導入時の注意点などについて述べてきました。
しかし、独自で福利厚生を備えるためには莫大な費用、工数がかかってくるのも事実です。
そういった会社への配慮の観点から、近年では企業側の福利厚生のアウトソーシングをする会社も増えてきています。
【参考】株式会社ベネフィット・ワン
【参考】株式会社リロクラブ
Matcher Scoutは、新卒向けのダイレクトリクルーティングサービスです。
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いかがでしたか?
本記事では、学生が求める福利厚生と、新たに福利厚生を導入する際の注意点、手軽に導入できる福利厚生のアイディアなどをご紹介しました。
福利厚生を有効に活用し、新卒採用を有利に進めましょう。