面接は、企業が採用したい人材を選ぶ場というだけではなく、候補者が企業を見極める場でもあります。そこで、面接で少しでも良い印象を持ってもらい、自社への志望度向上を図るために有効な手段の1つが面接フィードバックです。
面接フィードバックは、応募者に対する魅力付けはもちろんのこと、ミスマッチ防止や就活生からのイメージアップなどさまざまなメリットがあります。
この記事では、面接フィードバックのメリットや実施方法について、フィードバックの具体例も交えながら解説していきます。
面接フィードバックとは、その名の通り面接で良かった点や改善点を応募者に伝えることです。実際、24卒の学生のうち、約6割が「企業からフィードバックを受けたことがある」と回答しています。
面接フィードバックは、選考に合格した参加者に対して、合格した理由や次のステップに進む際のアドバイスなどを伝えることが多いです。ただし、中には不合格者に対してもフィードバックを行う企業もあります。
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一言で面接フィードバックといっても、いくつかの種類が存在します。本章では、面接フィードバックの種類について細かく解説します。
▼面接フィードバックの種類
それぞれのフィードバックをどのように使い分けるのかに関しては、「効果的な面接フィードバックを行うポイント」の章で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ポジティブフィードバックとは、褒め言葉が中心で否定的な言い回しは避けたフィードバックです。自己評価が低い候補者に対して使うことで、自分のことを高く評価してくれているという印象から、志望度向上につながります。
▼ポジティブフィードバックでの伝え方の例
「これまでの経験から、○○さん自ら考えて行動し、周囲を巻き込みながら成果を出されてきた点が印象的でした。また、素直で誠実なお人柄が伝わり、当社のことをしっかり調べて臨んでくださった姿勢にも好感を持ちました。今後もその主体性を大切に、さらにご自身の強みを伸ばしていってください。」
ネガティブフィードバックとは、課題点と改善に向けたアドバイスを中心に行うフィードバックです。
自信がある候補者や優れた経歴を持つ候補者に対して使うことで、自身を成長させてくれる企業だという印象を持たれやすくなります。
▼ネガティブフィードバックでの伝え方の例
「ご自身の経験や強みをお話しいただく中で、もう少し具体的なエピソードや成果を交えて説明いただくと、より説得力が増すと感じました。また、ご自身の価値観や将来像について深掘りすることで、志望動機との一貫性がより明確になるかと思います。今後の選考では、伝え方の工夫によってさらに魅力が伝わると思います。」
混合型フィードバックとは、ポジティブな内容と、ネガティブな内容を合わせて伝えるものです。
ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックを合わせて伝えることで、候補者がネガティブなフィードバックを受け入れやすくなります。
また、ただ褒めるだけではなく、改善点も合わせて伝えることで、候補者に「自分に誠実に向き合ってくれている」「自分のことをしっかり見てくれている」という印象を与えることもできるでしょう。
▼混合型フィードバックでの伝え方の例
「ご自身の経験や強みを明確に整理してお話しいただいた点は非常に印象的でした。特にチームで成果を上げられたエピソードからは、協調性とリーダーシップの両面が伝わってきました。一方で、成果を定量的な数字や具体的な事例で補足していただけると、より説得力が増すと感じました。今後の面接では、その点を意識して伝えていただくことで、さらにご自身の魅力が際立つと思います。」
逆質問で求められるフィードバックとは、面接中に設けられた逆質問の時間に、候補者が自身の面接のフィードバックを求めるものです。
インターネットや就活本を中心に、逆質問で面接フィードバックを求めるべきである、という考え方が出回っており、近年逆質問でフィードバックを求める求職者が増加しています。
フィードバックで伝える内容は直接合否に関わる場合もあるため、その場ではフィードバックを実施できない場合は、その旨を伝えることが大切です。
▼逆質問の場でフィードバックを求められたが、伝えられない場合の例
「本日の面接では、ご経験やお考えをとても丁寧にお話しいただきありがとうございました。特に○○のご経験から感じられる行動力や課題解決力は印象的でした。一方で、選考の公平性の観点から、現時点で具体的なフィードバックをお伝えすることは難しい点をご理解いただければと思います。ただ、本日のお話からは、ご自身のキャリアや目標に対してしっかりとお考えをお持ちであることが伝わりましたので、今後のキャリアにもきっと活かしていただけると思います。」
面接フィードバックを行うことで期待できるメリット・効果は以下のようなものがあります。
▼面接フィードバックのメリット3つ
詳しく見ていきましょう。
面接フィードバックの最大のメリットは、候補者に対して自社の魅力付けができることです。自分の良かった点を褒められて悪い気分になる候補者はいないでしょう。
実際、企業からフィードバックをもらうことに「良い印象」「どちらかといえば良い印象」を抱くと回答した学生は約7割に上りました。
面接でのどんな話から、候補者のどのような経験・能力・人柄を評価したのか詳細に伝えることで、「しっかりと自分のことを見て評価してくれているのだな」という印象を持ってもらうことができます。
また、改善が必要な点についても伝えることで、候補者は次回選考や就職活動全体に役立てることができます。面接フィードバックを行うことで、「面倒見がよい企業」「丁寧に就活生と向き合ってくれる企業」だという良い印象を与え、志望度アップにつなげられるでしょう。
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SNSが発達した現在、企業の情報は求職者の間で拡散されやすくなりました。中には、面接の雰囲気や面接官の対応などをSNSで発信する就活生もいます。
SNSに悪評が投稿され広まってしまうと、就活生の間でのイメージや応募者の志望度に悪い影響を与える可能性もあります。良くも悪くも、自社の選考に参加した候補者からの印象が、企業イメージに影響しやすいのです。
そのため、面接フィードバックを通して参加者に良い印象を持ってもらうことが大切です。
面接フィードバックはミスマッチ防止にも役立ちます。応募者のどのような点を評価したのか、またどのような点が不足しているのかを伝えることで、応募者に自社の評価基準を知らせることができます。
企業で求められる特性や能力を知ることで、応募者はその企業が本当に自分とマッチしているのか判断する基準にすることができるでしょう。
面接フィードバックにはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットもあります。面接フィードバックを行うデメリットは、以下の2つです。
▼面接フィードバックのデメリット2つ
面接参加者ひとり一人に対してフィードバックを実施するとなると、当然面接官や人事担当者の工数は増加します。そのため、面接フィードバックに多くの工数を割けられない場合は、「2次面接以降」や「最終面接合格時のみ」フィードバックを行うといった工夫をするとよいでしょう。
面接フィードバックを行うことで、自社の採用基準が面接参加者や他の就活生に伝わってしまうリスクがある点にも留意してください。先述の通り、応募者に自社の評価基準を知ってもらうことは、ミスマッチを防ぐうえで役立ちます。
その一方で、内定が欲しいがために、フィードバックをもとに応募者が面接で自分を偽ったり、他の就活生に対して自社の評価基準を広めてしまう可能性もあります。前者に関しては、フィードバックを最終面接合格時のみにすることである程度防止できるでしょう。
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それでは面接フィードバックはいつ、どのような手段で実施するのが良いのでしょうか。本章では、面接フィードバックを行うのに効果的なタイミングと手段について解説します。
面接フィードバックを実施するタイミングは、主に以下の3つのタイミングが挙げられます。
▼面接フィードバックを実施するタイミング
面接の最後に直接フィードバックを実施するケースです。
面接の直後にフィードバックを実施することで、面接官の言葉で伝えることができるため、誠実な印象を与えることができます。
また、直接顔を見ながら伝えることで、フィードバック内容を誤解なく伝えることができるでしょう。
選考後、候補者に合否を連絡するタイミングでフィードバックを実施するケースです。選考後面接内容を整理してから丁寧にフィードバックを伝えることができるため、伝えるべき内容をモレなく伝えることができます。
選考合格者向けに、次の選考に進む前にフィードバックを実施するケースです。合格者に限定してフィードバックを実施するため、採用担当者にかかる工数を減らすことが可能です。
また、合否連絡の後でフィードバックを実施するため、すみやかに合否連絡を実施することができるでしょう。
フィードバックは、基本的に電話で行うとよいでしょう。
メールでは細かいニュアンスや温度感が伝わりづらいため、電話で直接話した方が候補者からも親しみを持ってもらいやすくなります。
最終面接合格時には、ウェブ会議や対面での面談を実施するのも一つの手です。面接のフィードバックを行うとともに、質疑応答や就活状況のヒアリングを行うことで、入社にあたっての不安解消や自社の魅力付けにつなげられます。
「面接フィードバックの意味や実施するメリットはわかったけど、実際の面接フィードバックではどんな内容を伝えればいいの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。ここからは、面接フィードバックで伝えるべき内容を解説していきます。
▼面接フィードバックで伝えるべき内容
まずは「候補者のどのような点を評価して合格と判断したのか」を伝えましょう。その際、ただ「面接であなたのここが良かった」と伝えるのではなく、必ず評価の根拠もあわせて伝えるようにしてください。
具体的には、以下の内容を伝えましょう。
▼評価した点として伝えるべき内容
評価の根拠となったエピソードを伝えることで、候補者はなぜ自分が評価されたのか明確に知ることができ、「きちんと自分の話を聞いて評価してくれている」という実感を持つことができます。
また、入社後の生かし方を伝える際は、具体的なポジションや場面なども示しながら伝えることで、候補者はより具体的な活躍イメージを持ちやすくなります。
「傾聴力が素晴らしい方だと思いました」
→なぜそのように判断したのか、なぜ傾聴力があると良いのかがわからない
「○○さんの部活動でのリーダー経験は弊社で必ず活かせます」
→リーダー経験が自社のどの職種でどのような仕事で生きるのか、具体的なイメージが持てない
「部活動でチームメイトひとり一人の考えを吸いだしてチームをまとめたエピソードから、傾聴力がある方だと思いました。○○さんのように傾聴力のある方は、お客様のニーズを上手く引き出し、弊社の営業職として必ず活躍できると思います」
→具体的なエピソードが根拠になっており、入社後の活躍イメージが持てる
面接フィードバックでは、良かった点だけでなく、次回選考で気を付けるべきポイントや、どのようなアピールをするとよいといったアドバイスも伝えるとよいです。改善点を伝える場合は、必ず具体的な改善策も一緒に伝えるようにし、個数は1〜2個にとどめましょう。
また、短期間で直すことができないようなところや人格否定と捉えられてしまうような内容も避けてください。
「もう少し論理的に話せるとよいですよ」
→アドバイスが抽象的で改善方法が伝わらない
「お人柄の素晴らしさは伝わってきましたが、能力や経験が他の候補者よりも劣っているように感じました」
→人格否定ととらえられる
「淡々としている印象を受けたので、笑顔を心がけるととさらによくなると思いますよ」
→短期間で改善することができる
「志望動機が漠然としていたので、弊社の部署ごとの仕事なども調べたりしてみて、もう少し内容を詰められるとよいです」
→アドバイスが具体的でやるべきことが伝わる
上記のようなアドバイスに加えて、次回選考で面接官を担当する社員の属性なども伝えると、候補者は次回選考のイメージがしやすくなり親切です。
面接後に不採用とした学生から面接フィードバックを求められた場合や、合否に関わらずフィードバックを伝える採用方針の場合、不採用の学生に対する伝え方には配慮が必要です。
評価した点、改善点を伝えることはもちろん、なぜ不採用としたのか簡単な理由も述べると学生は不採用への納得感を得やすいと同時に、学生に対して誠実に対応している企業という印象を与えることができます。
▼不採用の学生に対する面接フィードバック例
①評価した点:
「面接を通じて◯◯さんの誠実なお人柄や、これまで取り組んでこられた課外活動への熱意がしっかり伝わってきました。また、当社の事業やビジョンについて丁寧に調べてくださっていたことも印象的で、真摯な姿勢にとても好感を持ちました。」
②改善するとよい点:
「一方で、今後さらにご自身の魅力を伝えていくためには、自己PRの中で具体的なエピソードをもう少し詳しくお話しいただけると、より説得力が増すかと思います。成果だけでなく、その過程で◯◯さんがどのように考え、なぜ行動したのかを伝えることで、◯◯さんらしさがより際立つと感じました。」
③不採用とした理由:
「今回は、配属予定のポジションとの適性などを総合的に検討した結果、誠に残念ながらご希望に沿えないご連絡となりました。ただ、◯◯さんの持つ素質や可能性が今後ますます広がっていくと感じておりますので、これからのご活躍を心より応援しております」
ここまで、面接フィードバックで伝えるべき内容や実施するタイミングなどを解説してきました。さらに効果的な面接フィードバックを行い、候補者の志望度向上につなげるためのポイントは以下の通りです。
▼効果的な面接フィードバックのポイント
詳しく解説していきます。
「面接フィードバックの種類」の章で解説しましたが、面接フィードバックには、ポジティブフィードバック、ネガティブフィードバック、また、混合型のフィードバックが存在します。
画一的にフィードバックを実施するのではなく、学生の性格に合わせてフィードバックの内容を変えると良いでしょう。
例えば、就活を始めたばかりで面接経験が浅い学生や、自信がなさそうな学生、協調性を大切にしている学生に対してはポジティブフィードバックを行うと良いでしょう。
一方で、面接中に「厳しい環境でこそモチベーションを上げることができる」と回答した学生や、客観的な視点を重視する学生、自己評価が高い学生に対してはネガティブフィードバックが効果的です。
そして、面接経験はありそうだが、自信がなさそうな学生や、成長意欲は高いもののどこを改善したらよいのかわからない学生は、混合型フィードバックの実施がおすすめです。
上記で、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの使い分けについて解説しました。
しかし、面接フィードバックでは、基本的にポジティブな言い回し・内容を選ぶべきです。たとえネガティブフィードバックを行う場合であっても、「こうすればさらに良くなる」といった前向きな言い回しにするよう心がけてください。
特に、人格否定につながる内容や改善方法がわからないようなフィードバックになっていないかについては注意深くチェックする必要があります。
フィードバックは、面接官が責任を持って一人称で伝えるようにしましょう。例えば「一般的にこういうふうに言われているので~」といった言い回しをしてしまうと、面接官がフィードバックの内容に責任を持っていないようにも感じられます。
「私はこのように感じました」というように、面接官自身の意見として伝えることが、相手に誠意を伝えるうえで大切です。
先ほど、面接フィードバックを実施するデメリットとして、工数がかかる点をあげましたが、工数を削減するためにおすすめなのが評価シートの活用です。
面接での評価項目や評価基準を記載した評価シートをあらかじめ用意し、候補者の回答や反応に対するフィードバックを、ある程度言語化して評価シートに記しておきましょう。
そうすることで、1からフィードバックを作成する手間を省き、確実で適切なフィードバックができるようになります。また、評価シートを作成しておくことで、評価基準が明確になり、担当者ごとのばらつきを防ぐこともできるでしょう。
面接評価シートはこちらからダウンロードすることが可能です。ぜひ参考にしてみてください。
ブリッジングとは、フィードバック内容を自社の志望度向上につなげることです。
▼ブリッジングを意識して伝えるべき内容
フィードバックを自社への適性度に結びつけることで、魅力付けを行いましょう。
▼ブリッジングの例文
「これまでの経験を伺って、○○さんの真面目で協調性高く取り組んできた姿勢がよく伝わりました。当社はチームでの仕事が中心となるため、○○さんのポテンシャルを当社で十分に発揮していただけると考えております。」
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いかがでしたか?この記事のポイントは以下の通りです。
ポイントを押さえて、候補者の志望度向上を目指しましょう