現在、新卒で就職した3割が3年以内に離職すると言われています。
学生のためにも企業のためにも採用のミスマッチをなるべく減らすためには、面接でいかに学生の本音を聞き出せるのかが重要です。
短い時間で効率よく学生の本音を引き出すためには、どのような質問をしたら良いのでしょうか?
本記事では、面接で学生の本質を見抜くためのポイントをいくつかご紹介します。
ここでは、面接で学生の本質を見抜く質問例をご紹介します。
自社の採用方針に合わせてアレンジしながらご活用ください。
人柄、性格、価値観などを採用する上で判断材料となるものを面接の短い時間で引き出すには、いかに意図を持って質問するかが鍵となります。
漠然とした質問はその分抽象的になり、解像度の低い会話に終わってしまいます。
それでは学生の本質は見抜けません。
事前の用意で効果的な質問を作り出し、採用のミスマッチを減らしましょう。
そのためには、面接をする前にまず以下の3点について考えてください。
新卒採用の目的は「一般的に優秀とされる人材を採用すること」ではなく「自社にマッチする人材を採用すること」です。
ミスマッチを減らし、自社にマッチする人材を採用するためにはまず「学生の何を見極めたいのか」を把握する必要があります。
下記の流れで「学生の何を見極めたいのか」について確認してみましょう。
採用要件とは自社の求める人物像を明文化したものです。
採用の明確な基準を設けなくては、気分や感覚などの主観的な要素に大きく判断が左右されてしまいます。
そういった判断を無くし正当な基準で合否を決められるように採用要件を設けます。
【参考】採用要件を明確に定義する方法!評価基準の設け方などを解説
まだ採用要件を決めていない場合には、この段階できちんと整理しまとめておきましょう。
確認した採用要件をもとに、自社で働くために必要となる素質を確認します。
質問を用意するにあたって、漠然と「本質を見極める」と考えると何を質問したら良いかわかりませんよね。
それを防ぐためには、質問を通じて「何を見極めたいのか」を明確にする必要があります。
「成長意欲」「協調性」「カルチャーマッチ」等、何を求めているのかを具体的にしておきましょう。
的確な質問をするためには「目的」と「手段」を分けて考える必要があります。
目的:相手のどんな部分を知りたくて、質問をしているのか
手段:どんな質問の仕方で相手を見極めるのがベストか
自社が必要としている人材に求めている素質があるかどうかを確かめるために、面接で質問をしますよね。
1で確認をした内容をもとに、質問の目的を定め、そこからブレないように質問の内容を考えていきましょう。
そして、目的が定まったあとは、質問の内容を決めます。
例えば「自己理解力を評価する」という目的のある質問でも、質問の仕方は何通りも想定できます。
前者の質問は、ストレートに自己分析を伝えられるものとなっております。
学生も想定できる質問のため、どれだけ面接に対して準備をしてきたのかなども併せて見られるでしょう。
後者の質問は、学生が事前に想定しにくい質問のためアドリブ力が確かめられます。
急な質問に対してどういったアプローチで返答するのかなど、頭の回転の速さなども見られます。
学生の何を見極めたいのかを詳細に把握し、それに合った質問を考えることが大切です。
「目的」と「手段」に分けて具体的な質問内容を決めたあとは、その質問に対する返答をある程度想定した方がよいでしょう。
質問の返答を想定することで、
という2つのメリットがあります。
面接では1日に何人もの学生と話をする場合が多いです。
自分のなかで明確な評価基準を持っていた方が、学生にとっても会社にとってもベストな判断がしやすいでしょう。
それぞれの質問ごとに4つほどの基準を設け、それぞれに合格ラインなどを設けるなど、工夫をしてみるのもよいかもしれません。
また、繰り返しにはなりますが、面接ではいかに相手の深い部分へと近付いていけるかが鍵となっています。
より相手の本質を引き出すために、学生の回答をさらに深めるための質問をした方がよいでしょう。
もちろん面接本番での柔軟性は必要ですが、事前にある程度想定される回答を考えておくことで、そこからどう会話を発展させていくかなどの目安をつけておきましょう。
採用面接を行う場合は、面接官の役割・責任を理解してから臨むことが重要です。
具体的に面接官の役割・責任とは、以下のようなものを指します。
ほとんどの求職者、学生にとっては、面接官が「その会社で会う初めての社員」です。
数千人社員がいるような会社でも、はじめて会う面接官の印象が、会社全体の印象を決めてしまいます。
上記に記載している役割についてもう少し詳しく解説します。
「応募者の入社意欲をいかに高められるか」も面接官の役割の1つです。
応募者は基本的に他の企業と並行して選考を受けています。そのため、面接の中で、好印象や、良いイメージを持ってくれることで、会社を選んでくれる可能性があります。
自社の魅力付けのために必要なのは、質問内容です。
以下、自社の魅力やメリットをアピールできる質問例です。
また、
といった会社の魅力を応募者に投げかけるといった方法も1つの手です。
面接担当者の心構えとして大切なのが、自分が「企業の顔である」という認識です。
応募者にとって、面接官は会社の印象。選考過程で関わる社員は少ないため、良くも悪くも面接官の印象が応募者が感じる印象に繋がります。
例えば、面接官に悪いイメージを持った応募者は選考を辞退するだけでなく、知人に広めたり、SNSなどに書き込みされたりした場合、会社のイメージダウンが生じます。
まずは、求職者にとってどのような対応が良いのかを整理して考え、面接官の間で認識を統一すると良いでしょう。
求職者に悪い印象を持たれないようにするためにも
といった点を意識しましょう。
ここからは、すぐに使える質問例を交えながら学生の本質を見極めるポイントを解説していきます。
ポイント①学生が普段通りに話せる環境を作る
ポイント②経験の中身を聞き出す
ポイント③本音が出るような質問をする
まずは学生が普段通りに話せる環境を作ることです。
採用のミスマッチを防ぐためには、できるだけ普段通りの自分を出せるように環境を整える必要があります。
面接のために用意した回答でその人の本音について知ることはなかなか難しいです。
仕事を一緒にするのであれば、面接のような瞬間的な目線ではなく、もっと長期的な目線でその人と自社がマッチしているのかどうかを判断しなければなりません。
そのため、まずは学生が普段通りの自分を出せるための工夫をしましょう。
学生にリラックスしてもらうための手段として「アイスブレイク」がおすすめです。
アイスブレイクとは、初めて会った人などとコミュニケーションを取る際に、緊張をほぐすために使われる手法です。
以下の質問例にあげたような当たり障りのない質問をしたり、できるだけ笑顔でいることを意識したり、学生がリラックスできるような空気づくりを意識しましょう。
【参考】【面接官必見】アイスブレイクのネタ・質問集|オンライン面接も!
続いてのポイントが経験の中身を聞き出すことです。
特に職務歴のない新卒採用における面接では、結果よりも過程を重視した質問をする場合が多いのではないでしょうか。
イエスかノーの質問よりも、「なぜ」や「どのように」などで聞き出すことで、結果よりも過程を多く語ってもらうように意識する必要があります。
過去の経験における、その当時の行動や心情などに焦点を当て、経験の中身を聞き出せるように質問しましょう。
経験の中身を聞き出すためには「オープン・クエスチョン」をすることを心がけましょう。
オープン・クエスチョンとは「回答者の回答範囲に制限を持たせず、自由に答えてもらうために行う質問のこと」です。
反対に「Yes/No」という形での回答を求める質問方法は、クローズド・クエスチョンと呼ばれます。
経験の中身を聞き出したいときにはオープン・クエスチョンが効果的です。
オープン・クエスチョンでは質問の幅が広がり過ぎてしまう場合があるため、ある程度回答の方向性も示してあげることが重要です。
「どのようにして大会での成績を改善させたですか?具体的な施策の内容や、それを実施しようと提案するまでの過程、難しかったことなど教えてください」
上記の例のように、具体的な返答例を挙げてみるとよいでしょう。
投げやりな質問をするのではなく、学生が答えやすいように誘導することを意識しましょう。
3つ目のポイントが、学生の本音が出るような質問をすることです。
学生は、面接に向けて話す内容の準備をします。
時間をかけて作り込まれた回答からは、本音が見えにくい場合も多いでしょう。
学生の人間性や人柄を短い面接の時間で効果的に引き出すには、できるだけ本音がでるような質問の仕方を選ぶ必要があります。
本音を引き出すためには、その場で考えて回答する必要がある質問が有用です。
この時、抽象的な話にならないように、過去の出来事などの具体的な事柄と併せて話してもらうように注意しましょう。
また、一問一答形式ではなく「○分間△△について話してください」など時間制限を設けた質問の仕方に変えることで、学生に内容を膨らませた回答をしてもらえます。
通常の質問に比べて本音が引き出しやすくなるので、こちらの質問形式もあわせて使用すると効果的です。
学生の思考力の高さや自社へのマッチ度を測るためにおすすめなのが「コンピテンシー面接」や「構造化面接」です。
これらの面接手法は、求職者の本質を見極めるためだけでなく、自社へのマッチ度や公平な評価という観点からも有効です。
「質問内容は考えられるけど、本質的な面接手法をしりたい!」という方は、下記の記事を併せてご覧ください。
【参考】【簡単】コンピテンシー面接を徹底解説!質問例・評価シート例あり
【参考】【簡単】構造化面接の質問例・手順を紹介!Google導入の理由
面接というのは双方向のコミュニケーションのため、ただ質問をすればよいというわけではありません。
返ってきた回答に対して、その場で会話を広げていくことが、学生の本質を見抜くために必要な要素です。
もちろん回答に応じて柔軟に対応する必要がありますが、そのなかでもより学生に深く語らせたり、円滑にコミュニケーションを取るためのコツがあります。
以下では、そのコツをご紹介します。
ポイント②で挙げたようなアドリブ力が試されるような質問では、学生自身に明確な回答のイメージがなく、抽象的な答えが返ってきてしまう場合があります。
例えば、 「こんな会社は嫌だな、というのはありますか?」 という学生の価値観を聞き出すための質問に対して、
「暗い会社は嫌だと感じます。
私の所属する学生団体には暗いイメージがあったので、それを払拭できるように所属者間のコミュニケーションを活性化できるように、定期的なミーティングの開催や、交流会を設けました。」
と返ってきたとします。
これでは「暗い団体に所属したくない」という表面的な価値観しか聞き出せていません。
「なぜ暗い雰囲気が嫌なのか?」や「どういった状況が暗いと感じるのか?」など、「暗い」という抽象的な言葉の理解を相互的なものにするために次の質問で深めた方がよいでしょう。
学生の回答を聞いている中で気になった単語をメモに残しておき、会話の次の展開について考えながらコミュニケーションを取ってみてもよいかもしれません。
面接で効果的に学生の本質を見抜くためには、相手の経験について語ってもらうことがベストです。
面接では将来のことについて語る場面が少なからずあります。
「なぜこの会社を志望したのか」 「どのようなことを実現したいのか」
このような質問に対して、熱意を持って理想を語る学生さんも多いのではないでしょうか。
一方で、理想はあくまでも想像なため、そこから学生の本質を見抜くことは難しいです。
過去の具体的な経験や体験から本音を引き出せるように意識しましょう。
面接での質問から学生の本質を見極めるためには、求めている回答をしてもらうことが重要です。
そのためには「なぜその質問をするのか」を伝えることが効果的な場合があります。
特に、少し変わった質問をする際には「なぜその質問を伝えているのか」という意図を明確に提示してから聞くようにしましょう。
通常の質問についても、学生の回答にズレを感じた際には質問の意図を伝えることで聞きたい回答が返ってくる場合があります。
(例)学生時代に、組織で成果をあげた経験について教えてください。
→ 組織の中で、あなたがどのように考え行動されるのかを知りたいので、学生時代に、組織で成果をあげた経験について教えてください。
このように「どのような答えを期待しているか」を提示することで、学生は伝えたいことを明確に伝えられるようになります。
上記の例の場合、最初の聞き方では
「組織の中で、個人として良い結果を出したこと(◯◯3段取得、個人優勝等)」
についてのエピソードとなる可能性もありますが、意図を伝えると
「組織の中で、何を考えて行動したのか(組織で課題感を感じたことに対してどう向き合ったか)」
について話してもらいやすくなるでしょう。
こうすることで、企業にとっても、学生の話をきちんと聞いた上でマッチするかどうかの判断ができるようになります。
「良い人を採用したいから、いろんなことを聞きたい・・・」
というのが、採用面接官の本音でしょう。
しかし中には「面接で質問することそのものが違法」という質問があります。
以下の項目のような質問は、避けましょう。
他にも
といった質問などは、男女雇用機会均等法に抵触する可能性が高いです。基本的人権の侵害や就活差別につながるおそれもあるため、気をつけましょう。
質問で自社に対する心証を損ねてしまうと、最悪の場合訴訟されたり、インターネット上で悪い口コミが出回ったり、様々なリスクがあります。
そのような辞退を防ぐためには、
などの対策を取ることが重要です。
ここでは、面接官の面接中のNGな行動を解説します。
面接の質問内容を事前に準備しておくことも大切です。準備不足の面接官は、応募者に不信感を与え、入社意欲を削ぐ可能性があります。
面接官は、面接前に応募者の履歴書やエントリーシートをよく読み、応募者の志望動機やスキルを理解しておく必要があります。
面接官は、応募者に入社後のイメージを具体的に伝える必要があります。具体的には、仕事内容、社風、福利厚生、キャリアパスなどについてです。
入社後のイメージが明確でない面接官は、応募者に不安を与え、入社をためらわせてしまう可能性があるでしょう。そのため、自社の魅力や課題への正しい理解をしておく必要があります。
面接内容を記録として残すことに必死で、応募者と目を合わせることを忘れてしまう人も多いのではないでしょうか。
しかし、目が合うことで、応募者に誠実さや真剣さが伝わります。
また、応募者の表情や仕草から、その人の性格や能力を判断することもできます。応募者と目が合わない面接官は、応募者に不信感を与え、印象を悪くする可能性があります。
面接官は、応募者と目が合うように心がけましょう。特にオンライン面接の時は、相手と目線を合わせるために、カメラの位置を把握しておく 必要があります。
面接官は、明るい表情で、大きな声で話すようにしましょう。
明るい表情と大きな声は、応募者に好印象を与えます。また、応募者に安心感を与え、話しやすい雰囲気を作ります。
顔の表情が暗く声が小さい面接官は、応募者に緊張感を与え、印象を悪くする可能性があります。
面接官は、これらのNG行動を避けることで、応募者に好印象を与え入社意欲を高めることができます。
応募者目線で対応する「採用CX(キャンディデイトエクスペリエンス/Candidate Experience)」の考え方を意識することをおすすめします。
「採用CX」とは、「応募者体験」という意味で、採用力の向上と自社ファンを増やすための姿勢を大切にすることです。
ご自身の就職活動中を思い出して、好印象を抱いた面接官の良かった点を取り入れてみたり、「この企業の選考に参加して良かった」と思ってもらうために、面接でどういう風に行動すれば良いのかに意識を向けてみると良いでしょう。
採用CXについて詳しく解説している記事はこちらです。
【参考】【解説】採用CXとは?注目されている理由と導入事例を紹介
認知バイアスとは、自分の思い込みや価値観によって、無意識のうちに合理的ではない判断をしてしまう心理現象のことです。
無意識のうちに、相手への見方が偏り、面接中に認知バイアスが生じることがあります。
例えば、「自分と共通項が多いと、親近感が湧き好印象を持つ」 「高学歴やエントリーシートに記載してある成果をみて優秀だろうと思い込む」 「直前に面接をした応募者と能力を比較して見てしまう」
といったことが認知バイアスに当てはまります。
面接で生じる認知バイアスを理解しておくことで、面接の見極め精度を高めることができます。
いかがだったでしょうか。
面接ではいかに短い時間で効果的に相手の本質を見抜ける質問をするかが重要になってきます。
採用のミスマッチを減らすためにも、上記のコツやポイントを意識しながら本音を引き出しましょう。