新入社員に対して行う入社研修として、OJTを導入をしている、もしくは導入を検討している企業が多いのではないでしょうか?
OJTは現場の社員が実務を通じて指導する教育方法です。
OJTを導入することで、新入社員が早いうちに仕事や現場慣れて、早期離職の防止や即戦力化などが期待できます。
ただ、OJTの内容や指導方法によっては効果はなく、逆効果になる可能性も考えられるのです。
今回は、OJTを効果的に実施するための方法やOJTがもたらす効果などについて詳しく解説していきます!
OJTとは?簡単に解説
そもそもOJTとはなにか、ご存じでしょうか?
OJTとは「On the Job Training」の略称で、新人や業務未経験者に必要なスキルや知識を、現場の社員が実務を通じて指導する、企業内教育の方法です。
OJTは、将来活躍する社員を育成するために必要な教育制度だといえます。
OJTとOFF-JTの違い
OJTと混同されがちなOFF-JTについて解説します。
OFF-JTとは「Off The Job Training」の略称で、職場外で行われる訓練のことです。
セミナーなどの形式で実施されることが多く、外部の講師や団体を招くなどして実施をします。
対象や目的によって、実施の時期は異なり、例えば各プロジェクトリーダーを集めてリーダー向けのスキルアップ講座を開くなどです。
教員育成にもOJTが採用されている
教育課題の多様化や、教職員の多忙化による研修時間や場所の確保ができないなどを受け、学校に勤める教職員向けのOJTも実施されています。
【出典】東京都教育委員会「OJTガイドライン【第三版】」
OJTの目的3選
OJTをやる意味はあるのか?と思っている人は、そもそもOJTを実施する目的を見失っているかもしれません。
OJTの目的について、以下の3つをご紹介します。
- 業務効率の向上
- 新入社員の不安を解消
- 職場への定着率アップ
それでは、各目的について詳しく解説していきます。
①業務効率の向上
実務的に研修を行うため、研修生は業務理解がしやすく、早期的なスキルの習得も期待できます。
「聞いたあとに実践するよりも、実践しながら教わる方が理解できた」ということは仕事に限らずよくあることでしょう。
仕事でOJTを行うことで、実務経験を積めるため、早期的な業務知識やスキルの習得が可能です。
また、研修生だけでなく指導する側の業務効率向上も期待できます。
指導を担当すると、普段の業務に加えOJTを行う必要があるため、時間的にも精神的にも負担が増えるでしょう。
ただ、そのような負担を抱えることで、時間の使い方に工夫をするようになったり、教えることによってより業務理解が深まったり、指導する側にも学ぶ機会になります。
よってOJTは、新入社員と指導する先輩社員の相乗効果が期待できる育成方法なのです。
②新入社員の不安を解消
新入社員は入社時に、「仕事についていけるのか」「同僚や先輩社員とうまくやっていけるか」などの不安を抱えています。
OJTは社員間のコミュニケーションを活性化し、実践しながら仕事を学んでいくため、上記のような不安を解消することが可能です。
新入社員の不安を解消することは、仕事へのモチベーション向上にも繋がるため、非常に重要だといえます。
③職場への定着率アップ
OJTは以下2点の理由から、新入社員のモチベーション向上・維持に繋がるため登記離脱を防ぎ、定着率を上げることができます。
①新入社員にスキルをつけさせることで、活躍のチャンスを広げることができる
②先輩社員とのコミュニケーションがとりやすく、関係性も構築しやすい
近年、新入社員の早期退職についてよく聞く方も多いのではないでしょうか?
退職する理由の中には、業務に対する不安感や、人間関係などがあげられます。
OJTは新入社員の早期退職に関する問題も解消することが可能です。
OJTを実施するメリット3選
OJTは実務的な研修とはいえ、先輩社員の貴重な時間を使ってまで実施するメリットはあるのかと考えている方もいるのではないでしょうか?
ここからOJTを実施するメリットについて、以下の3つをご紹介します!
- 個人の特性に合わせて教えられる
- 指導する側にとってもスキルアップに繋がる
- 職場の人間関係の構築
それぞれ詳しく解説していきます!
①個人の特性に合わせて教えられる
OJTは基本的に、指導する先輩社員と1対1での指導が受けられるため、新入社員の個性や強みを把握しやすいです。
新入社員の「得意なこと」「苦手なこと」をもとに、目標や育成方法を設定できるので、新入社員に合った教育が実現します。
そのため、自由に教育をカスタマイズでき、効率的な即戦力を育成することが可能です。
②指導する側にとってもスキルアップにつながる
「OJTの目的3選」で少し紹介しましたが、OJTは研修を受ける新入社員に限らず、指導をする先輩社員のスキルアップにも繋がります。
指導する先輩社員は、業務に取り組みながらOJTに対応するため、普段以上にタイムマネジメントや業務効率について意識するようになります。
また、人を育成するための育成方法やマネジメントについて実践的に学ぶことができるため、OJTは指導する側のスキルアップに繋がる機会となるでしょう。
③職場の人間関係の構築
OJTは実際に現場で実施されるため、配属された部署の社員とコミュニケーションをとる機会が多くあります。
そのため、新入社員は配属先に馴染みやすくなり、人間関係構築に繋がるでしょう。
また、OJTは人それぞれに合わせた研修を行うため、新入社員についてよく理解しなければいけません。
通常の研修であれば、新入社員がどんな人なのか理解するのに時間がかかりますが、OJTでは新入社員を早いうちに知ることができます。
意味のあるOJTを実施する5つのポイント
OJTを成功させるためのポイントについて5つご紹介します。
- OJTを実施する目的を明確にする
- 定期的に指導者間で情報共有を行う
- OJTは人事部と現場で設定する
- 計画的にトレーニングを行う
- 反復・段階的にトレーニングをする
各ポイントについて詳しく解説していきます!
①OJTを実施する目的を明確にする
なぜOJTを実施するのか、目的を明確にすることで、意味のあるOJTを実施することができます。
もし目的があまり明確になっていなければ、指導者が自身の業務を優先し教育が疎かになったり、新入社員がミスするとすぐに怒ってしまったり、OJTの意味がなくなります。
新入社員に対してもOJTの目的を共有しておくことで、自分で考えて取り組むようになるでしょう。
OJTを実施する目的はなにか?何を期待しているのか?という点は明確化し、社内で共有をしておきましょう。
②定期的に指導者間で情報共有を行う
OJTについて定期的に指導者となる先輩社員間で、情報共有をしておくことで、指導者の教育に関するスキルアップに繋がります。
また最適なやり方や、改善点について共有をすることで、効率化も期待できるため、定期的に指導者間で情報共有を行うことは重要です。
③OJTは人事部と現場で設定する
OJTの計画を人事部と現場で設定することで、効果的に実施することができます。
OJT実施を人事部が決めることが多いですが、その中で人事部がOJTの目的や計画、目標などを決めず、現場に丸投げの状態になると現場に混乱を招き、失敗します。
そのためOJTは人事部と現場で設定をすることで、自社でOJTを行う目的に沿った実施ができるようにすることが必要です。
④計画的にトレーニングを実施する
当たり前ではありますが、実施する際には計画的に行うことが重要です。
目標設定や定期的な振り返り、進捗管理などを雑で無計画で行ってしまうと、効果がないのはもちろん、OJT終了後に新入社員が無計画に業務に取り組む可能性があります。
必ず計画的にトレーニングを実施するようにしましょう。
OJTがうまく機能しない3つの原因
「OJTを実施しているけど、あまり効果を実感しない」と感じている方もいるのではないでしょうか?
ここで、OJTがうまく機能しない原因は以下の3つが考えられます。
- 教育にかける時間が足りない
- 指導者が適切な教育方法を知らない
- 人事部と現場のギャップ
それぞれ詳しく解説していきます。
①教育にかける時間が足りない
OJT、教育にかける時間が少ないなど、不十分な点が多いとせっかくOJTを実施しても、教育の質が落ちてしまいます。
指導者が自分の仕事で手一杯でOJTの時間が取れない時や、指導者の基準でOJTの時間を設けてしまう時に、「教育にかける時間が足りない」ということに陥りがちです。
指導者の業務範囲や目標を見直し、OJTに専念できる環境を整えてみましょう。
②指導者が適切な教育方法を知らない
OJTの理解や実施する時間は足りているものの、指導者が適切な教育方法を知らない、またはできていないというケースです。
不適切な教育方法として、指導者が新入社員の失敗に対し感情的に怒ったり、すぐにできないと決めつけてしまうなどがあげられます。
感情的に怒ったり、すぐに決めつけるような発言をしたりすると、新入社員は委縮して自分で考えるのをやめてしまうのです。
また、指導者側のペースでOJTを行ってしまうと、必要な知識やスキルを習得できず本末転倒となってしまいます。
新入社員がOJTを通じて、新入社員を即戦力にするために、ミスした際には理論的に注意をし、新入社員にもミスをした理由を考えさせたり、新入社員の進捗などを理解してOJTを実施したりすることが最低限必要です。
OJTを失敗させないためには、指導する先輩社員の教育が重要なため、OJT前に指導者に向けた講習を開くなど準備をしておきましょう。
③人事部と現場のギャップ
OJTの実施を人事部が決めて現場に依頼したものの、OJTの具体的な計画や内容のすり合わせが不十分で、人事部の求めるOJTと現場が実施するOJTとでギャップが生じるケースです。
例えば、人事部が現場に対して「OJTの実施をお願いします」と依頼をしたものの、現場が実施方法などを理解していなければ当然失敗します。
OJTの実施を人事部が決めた場合は、必ず現場に対してOJTの目的を伝えて各部署の状況を見ながら現場の社員と計画や内容を決めていくことが重要です。
OJTの指導に向いている人の特徴3選
OJTは基本的には1対1で指導をするため、OJTの成功には指導者側の教育が非常に重要です。
それでは、どんな人がOJTに向いているのか、3つの特徴についてご紹介します。
- 新入社員への成長可能性を信じている人
- 新入社員と一緒に考えようとする人
- 仕事に着目して評価ができる人
各特徴について詳しく解説します!
①新入社員への成長可能性を信じている人
OJTによって新入社員が成長すると信じて取り組めるような人は、新入社員の成長を考えながら教育ができるため、向いていると言えます。
新入社員側にとっても、指導者側が自身の成長を信じてくれていれば、モチベーションの向上にも繋がり、よりパフォーマンスを発揮するでしょう。
②新入社員と一緒に考えようとする人
OJTにおいて重要なことは、実務を通して新入社員自身が考える能力を身に着けることです。
初めのうちは、新入社員は物事に対してどのように考えればいいのか、わかっていません。
そんな時に一緒に考えようと寄り添える人は、向いていると言えます。
例えば、新入社員がミスをした時に「なぜミスをしたのか?」について考える場面で、指導者側がアドバイスなどを提示するとより考えやすくなり、いずれそれが習慣化されるでしょう。
ただ注意してほしいことは、考えさせるのではなく「ミスした原因は○○だからだよ」と教えてしまうと、新入社員は考えることを諦めてしまいます。
面倒くさがらずに、新入社員と一緒に考えることで、より効果的なOJTを実施することができるでしょう。
③仕事に着目して評価ができる人
3つ目は、評価をする際に仕事に着目できる人です。
例えば、仕事以外の話し方や指導者側の好みなどで評価をすれば、それは正当なOJTの評価とは言えません。
OJTの評価は新入社員の今後の活躍などに大きく影響するため、重要です。
仕事の結果に基づいて、良かった点や改善点などを具体的に出せるような人は向いていると言えます。
OJTの指導に向いていない人の特徴3選
向いている人の特徴についてご紹介しましたが、反対に向いていない人の特徴について以下の3つをご紹介します。
- 否定的な人
- 相手の話を聞かない人
- OJTに関して後回しにする人
それでは各特徴について詳しく解説していきます!
①否定的な人
否定的な人は、新入社員のモチベーションを下げる要因に繋がるため、OJTにはあまり向いているとは言えません。
新入社員の話を理解しようとせずに、初めから否定をして話すような人を指します。
否定することが悪いのではなく、新入社員側の意見を理解しようとしないところが問題なのです。
新入社員側も、自分の考えや発言が否定されると、積極性を失ってしまうため、否定的な人にはOJTは向いていません。
②相手の話を聞かない人
①に付随しますが、新入社員側の話を聞かず、仕事の進め方などを一方的に教えるだけだと、OJTの意味を成しません。
OJTの目的は、実務を通じて知識やスキルを習得することであり、スキルの習得には新入社員側が考えて発言をする機会を設けることが重要です。
そのため、相手の話を聞かない人はOJT指導者には向いているとは言えません。
③OJTに関して後回しにする人
OJTを後回しにする人は、OJT指導には向いているとは言えません。
例えば、指導者自身の普段の業務を優先するあまり、新入社員側が置いてけぼりになる状態のことです。
OJTも重要な業務であるため、後回しにする人は向いていないでしょう。
おわりに|OJTは意味がないのか?
いかがだったでしょうか?
今回はOJTについて紹介しました。
OJTは実施するにあたり、会社全体の協力が必要となるため、簡単とは言えません。
ただ、協力をして取り組むことができれば、OJTは効果のある研修・教育方法です。
現在OJTの導入を検討している人や、導入しているもののあまり効果を感じられていない方は、是非今回の記事で紹介したポイントなどを参考にしてみてください!
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