大手・ベンチャー問わず、企業の採用方法は年々多様化しています。
より親和性の高い学生にエントリーしてもらうために、様々な採用方法を理解しておくのは大切です。
本記事では近年導入が増えている通年採用について現状分析から、導入方法まで紹介します。
通年採用は、企業が学生の募集時期を絞らずに、年間を通して採用活動を行う手法です。
学生が就活を意識する時期は年々早まっていて、3月の就活解禁の時期には就活を終えている学生も少なくありません。
通年採用は、解禁前からインターンや説明会を通して学生と接点を持ち、時期に関わらず採用につなげることができるため、行動が早い学生をキャッチすることができます。
【参考】採用担当者必見!インターンシップを実施するメリットをご紹介!
ニュースやネット記事で、近年導入する企業が増えている印象がある通年採用ですが、実際の変化はどうなのでしょうか。
就職白書2021を参考に調べてみました。
23ページに22年卒の採用活動について、このように記載されています。
採用方法・形態について、22年 卒採用で実施予定のものを聞いた。
最も 実施予定企業の割合が高かった方法・ 形態は「部門別採用」で、40.9%。
次に、 「大学・大学院卒業後3年以内の既卒者 の採用」(39.6%)、「コース別採用」(28.8 %)、「通年採用」(27.0%)、「日本の大 学・大学院を卒業する外国人留学生の 採用」(25.1%)と続いた。
既に通年採用を22卒の採用で、導入しようとしていた企業は約3割でした。
※ この値は、21卒の19.2%の約1.4倍の値になっていて、 「海外の大学・大学院を卒業する日本人留学生の採用」に次ぐ、3番目の伸び率となっています。
23卒の採用データはまだ発表されていませんが、23卒から通年採用を導入した企業事例もあるため、今後も増えていくことが予想されています。
※回答の対象企業:全国の新卒採用を実施している従業員5人以上の企業4577社のうち、1398社の回答データ
【参考】株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職白書2021』
通年採用が話題になったきっかけは、経団連の”ルール”撤廃や、大手企業の通年採用方式の導入などがあります。
採用活動もマーケティングの1種です。
話題になったできごとや、時代のトレンドによって方式が大きく変わることがあります。
もちろん、企業も採用方式を変えるには人、時間、費用などコストがかかるため、明確な目的があるからこそ、通年採用が導入されていると考えられます。
以下に目的をまとめてみました。
企業の人材確保競争が、近年激化しております。
いわゆる売り手市場で、企業が目標としている採用予定枠に求職候補者が満たないため、新卒採用だけでなく、既卒、中途、海外留学生の採用口を用意しようという戦略です。
また、一括採用と比較して選考結果を焦る必要がなく、1人の求職者の方と接点を持つ時間が長くなるため、社風や社員とのマッチ度を吟味することができます。
これにより、社員のパフォーマンス向上、離職率を下げる効果も期待されています。
今後のグローバル展開を考えて、海外人材、専門知識を有した帰国子女を採用したい日系企業が通年採用を導入しています。
日本の一括採用だと、採用時期が海外大学の卒業時期とズレてしまいます。
この懸念点を解消するために通年採用に踏み切る企業もあるようです。
日本の大学を卒業した学生に比べて、海外大学・大学院を卒業した学生は、学んだ分野の専門性を活かして働きたい方が多くいるようです。
そのため、通年採用と同時に職種別採用を取り入れて、入社後すぐ、専門分野の即戦力として働いてもらう狙いもあるようです。
冒頭でも挙げましたが、経団連の中西会長が2018年に就職活動のルールの撤廃を行ったことで、通年採用への関心が高まったと考えられます。
ルール撤廃前に既に通年採用を導入していた日経大手企業もいたことからも、話題が大きくなったのかもしれません。
就職活動のルール撤廃については、この後の一括採用と通年採用の違いのパートで記します。
一括採用と通年採用はどのように違うのでしょうか。
2つの採用の特徴を比較し、まとめてみました。
一括採用の特徴は、①企業が期間を限定して②新卒学生を採用する点にあります。
新卒採用に関しては、今から70年前(1950年代)からルールが作られてきました。
2018年に経団連が廃止を決定した「採用選考に関する指針」で決められていたルールには、採用活動の日程に関してこのように決められています。
これは、新卒学生が学生生活の中で学業に専念する時間と環境を確保するために、設定されたものです。
【参考】2022 年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について 一般社団法人 日本経済団体連合会
通年採用を導入する企業にとって、現状のどのような点を解決したくて通年採用に乗りかえているのでしょうか。
一般的に考えられている一括採用の課題点を集めてみました。
一斉に採用活動が開始すると、どうしても有名な企業・大手企業の方が学生にとって認知度が高いため、特定の企業に応募が集中します。
中小・ベンチャー企業は採用に割ける人員も大手に比べて少ないので、同じ期間だと圧倒的に大企業の方が採用に有利です。
前述の通り、海外の大学は卒業シーズンが日本と異なるため、入社時期、就活の時期が日経企業の一括採用の時期(3月〜)と重ならない場合があります。
海外では新卒採用の概念がなく、欠員が出たら補充するために選考スタートの場合もあります。
そのため海外大学生には明確な就活開始時期がなく、人によっては在学中「常に」アンテナを張っている方もいます。
即戦力候補で、親和性が高いかもしれない人材がいるのに、採用時期が異なるだけで逃してしまうのはもったいないことです。
採用期間が限られている場合、企業側は採用ステージの期限が決まっているため、学生1人にかけられる時間は短いです。
学生側も複数の企業の選考をすすめながら参加するので、1企業のことを理解する時間が少なくなります。
両者が曖昧な認識の中、期限が迫っているがために選考を通過、承諾をして内定につながった場合、入社後のミスマッチが起こる可能性が高まると考えられます。
次に通年採用の特徴を紹介します。
メリット1:時間をかけて学生と向き合える
学生とのミスマッチを防ぐためにも、採用の期間を長く設定できるとメリットになります。
また、採用募集期間が限られていないと、エントリーも分散するため面接担当者や、選考のスケジュールにもゆとりを持てると考えられています。
お互い準備・理解する時間を十分にもつことで、理解度が高い状態で判断できると考えられます。
メリット2:海外大卒学生を採用しやすくなる
課題点でもあげましたが、海外大卒学生が選考に参加できる可能性が広がるため、採用する人材が幅広くなると考えられます。
海外大学卒業後、入社まで時間が空いてしまう場合も、内定後、入社前にインターンを行うことで入社時期を日本人学生と合わせることができます。
メリット3:内定辞退に対応しやすい
内定者が辞退することも採用活動にはつきものです。
一括採用の場合は一斉に内定をそろえて出すため、辞退数も想定して内定を出す必要があります。
一方で通年採用では、内定者が辞退した場合でも継続して採用活動を行っているため、都度補充が可能です。
デメリット1:一括採用に比べてコストが大きい
年間通して採用広告の掲載を行うため、一括採用に比べて費用がかかります。
認知度の高い大手企業の場合は自社ホームページで賄える場合もありますが、通常よりも「広告費」や「人件費」がかかる可能性が高いです。
さらに入社後も研修時期が分散するため、教育コストもかさみます。
デメリット2:一括採用解禁時を狙う学生を取りこぼす
通年採用を取り入れる企業が増加しているとはいえ、現在は一括採用が主流です。
そのため学生の間でも一括採用(3月解禁)に備えている優秀学生も多くいます。
そういった学生は通年で採用を行っている会社に出会わずに就活を終えてしまう可能性があります。
また、仮に接点をもち、内定につながったとしても一括採用企業の「滑り止め」として活用する学生もいます。
内定辞退を防ぐために、内定者研修やインターンなどのフォローが大事になってきます。
メリット1:時間をかけて就活に臨める
就活を始めるタイミングは学生によって異なりますが、選考参加に学年の指定がないため、早く始めるほど卒業というタイムリミットまで時間をかけて就活に臨めます。
年中情報公開されているため、スケジュールを無理に詰める必要もなく、情報収集を行いながら選考を進められます。
仮に選考に落ちてしまった場合でも、次回選考が3か月や半年以内に始まるので、再チャレンジすることが可能です。
メリット2:出会える企業数が増える
時間をかけて就活に取り組めるので、出会える企業、社会人の数も多くなります。
出会いによって興味がわく業界、職種もあると思います。
OB訪問や説明会に積極的に参加して、多くの接点を持つことで、いざ選考に進む企業を絞る際も方向を定めやすくなります。
デメリット1:選考フローが長い
通年採用では企業側も学生との親和性を細かく確かめたいので、時間や工数をかけて選考する場合が多いです。
一括採用では3-4選考段階で内定が一般的ですが、通年採用では6選考段階以上の企業もあります。
学生にとっては何度も選考の壁を突破するのは大変ですが、内定が出た企業はそれだけ親和性が高いとも考えられます。
デメリット2:求められるレベルが上がる
通年で人員補充ができるので、量よりも質を意識した選考になります。
そのため、選考で求められる学生のレベルが高まるため、事前の情報収集や訓練を徹底することをオススメします。
また、通年採用では新卒学生だけでなく、第二新卒、中途社会人もライバルになるので、よりハードルが上がった選考になります。
通年採用に魅力を感じた!取り入れよう!となった場合、以下の順序を参考にしてください。
①採用目的を設定
②採用計画を立てる
③採用チームの編成
④採用手法・方法を検討する
⑤新人育成の体制を検討
一括採用でも大事ですが、現状社内でどんな人材が足りていないかを、正確に把握する必要があります。
その現状に対して「どのような人材」を「どの部署」に「何人」採用するか設定しましょう。
求める人物像の設定を間違えると採用の意味がなくなってしまうので、正確に設定することが重要です。
目的を設定したら、時間を意識していきます。
通年採用で、明確な区切りがなく採用を続けてしまうのを防ぐために「いつまで」に採用した人員を配属するかを考える必要があります。
これまでの一括採用エントリー数をもとに、想定選考参加人数を決定しましょう。
一括採用よりもスケジュールには余裕があるので、年計画から半年、3か月ごとなど細かく計画をたてて、随時振り返りを行っていくのも良いでしょう。
採用人材、計画が設定できたら、採用に関わるメンバーを集めます。
会社の規模にもよりますが、通年採用は準備やタイムマネジメント、実際の選考などで多くのタスクが発生します。
そのため、1人より複数人で採用に取り組むことが望ましいです。
採用する部署、人数、時期に合わせて採用プロジェクトに関わる社員を決めていきます。
採用メンバーが決まったら、どのような採用を行っていくか具体的に考えていきます。
学生と関わる場面は多くあるので、どの手法で接点を持つか選んでいく必要があります。
方法例とその特徴を参考に記載します。
採用時期にばらつきがでるため、内定者1人1人に対応が必要な場合があります。
時間をかけて内定につながった方の内定辞退を防ぐために、研修や育成、内定者インターンなどを準備しておく必要があります。
この点でも社内のメンバーに協力を要請する必要がありますね。
新型コロナウイルスの影響で生活や仕事に影響が及んだ方も少なくないと思います。
これは就職活動も同様で、今まで対面で行っていた説明会、面接がリモートで行われることが増えています。
現在の状況は、良い面・悪い面がありますので、両側面を分析しながら、今後の採用事情を考えていきます。
今までネット環境を活用した採用は行ってこなかった企業の担当者も、ここ数年でオンラインツールを活用するようになっています。
これまでもインターネット上でのコミュニケーションツールはありましたが、採用に活用はあまりされていませんでした。
このような時代の転換には若い世代の順応力が早く、現在は授業もインターネット上で行われることが当たり前になりつつあります。
採用におけるオンラインツールの導入は
などのメリットが学生にとってあるため、オンラインのイベントには学生も積極的に参加する傾向にあります。
企業のオンラインツールの導入にはコスト、社員の不慣れなどにリスクはありますが、今のタイミングだからこそ導入するメリットは大きいと思います。
前の項目では採用におけるオンラインツールの利点を多く説明しましたが、懸念点もあります。
1つは企業への注目が分散しやすいこと、もう1つはオンラインツールの不具合による選考イベントの懸念です。
前者は学生が短い時間で複数社の説明会に参加しやすくなったことから、1つの企業への思い入れが弱くなっていると考えられます。
「たとえこの企業の選考落ちても他の選考あるから」、「説明会は画面オフでも参加できるから、他の作業の片手間でも聞ける」など対面にあった緊張感がなくなり、その後の選考でも未参加、辞退者が増加することが心配されます。
後者は、インターネット環境に不安のある学生や、ツールになれていない企業が、「面接時間になっても参加してこない」、「話している途中で途切れてしまう」など適切にお互いのことを知る環境が不安定なことです。
事前に選考とは別の面談、座談会などで接続状況を確認し、学生1人1人と向き合った選考方法を考えるなどの対応が必要になるでしょう。
ここから実際に通年採用を行っている日経企業を例として3社紹介していきます。
2015年から始まったこの方式は、 「将来を担う人財には、自分の可能性を限定せず、意思を持って主体的に進路を考え、選んでほしい。
企業は、必要な時に、必要な人財を採用する。
」
ことを念頭に置いた通年採用です。
募集対象は入社時30歳未満であれば、新卒、既卒、就業者であることを問いませんが、求職者の能力に関係ないポテンシャル採用として募集しています。
【参考】SoftBank RECRUTING SITE『ユニバーサル採用|採用情報』
2016年からヤフーでは新卒一括採用を廃止し、30歳以下の方であれば新卒、既卒、第二新卒などを経歴に関わらず応募できる通年採用を行っています。
ねらいとして第二新卒や既卒の求職者に平等な採用選考機械を提供すること、海外留学生や博士号取得者の就職活動に対応することがあるようです。
【参考】YAHOO!JAPAN『ポテンシャル採用|採用情報』
」
2023年度の採用では、就業経験の有無、年齢やいつ卒業したかは問わない選考方法を導入しています。
さらに、就業経験の有無を問わないにもかかわらず、エンジニアやビジネス職など職種別に採用をするいわゆるジョブ型採用の方式をとっています。
【参考】DeNA新卒採用
通年採用を考えている企業の方にオススメのサービスを紹介します。
OB・OG訪問アプリ「Matcher」を運営するMatcher株式会社が手がけるダイレクトリクルーティングサービスです。
このサービスの特徴として以下の4つがあげられます
「自社の求めている学生に、手間を掛けずに、リスク無く採用したい」というニーズを持つ企業の方におすすめです。
【参考】Matcher Scout
OfferBoxは、株式会社i-plugが運営する、利用学生が約24万人のスカウトサービスで、幅広い業界の企業が利用しています。
採用活動にかかる工数や時期を統計データから予測作成する機能があるため、初めて採用計画を立てる場合でも「いつ何をおこなうべきか」考えやすくなっています。
料金体系は「早期型プラン」と「成功報酬型」の2種類があり、目的に合わせて選ぶことが可能です。
【参考】株式会社i-plug OfferBox『OfferBoxの料金プラン』
株式会社ベネッセi-キャリアが運営するdodaキャンパスは、登録者数が約67万人、オファー開封率は88%あるダイレクトリクルーティングサービスです。
就活を開始している学生に限らず、1,2年生への早期接触にも対応していて、通年採用の導入を検討する企業にとって、就活の早い段階で学生と関われる数少ない接点を担っています。
料金体系は「定額制」と「成功報酬型」の2種類あり、自社の採用活動にマッチした形を選択することができます。
これらのサービスについて詳しい料金設定は以下のリンクで詳しく説明しています。
【参考】ダイレクトリクルーティングの費用を紹介!安くすませる方法とは?
いかがでしたか。
今回は通年採用について導入方法や事例などをご紹介していきました。
記事を参考に、現在の採用方法を見直すきっかけにしてみてください。
【参考】おすすめの新卒採用コンサルティングサービスは?10社の特徴比較!