近年、採用の形式が多様化しどのような採用活動が最適なのか、目標を達成するにはどうすれば良いのかが不明瞭になっています。
そこで効率的に採用活動を行うには、KPIを設定することが重要です。
KPIを設定することで、無駄のない選考内容を設定することができたり、課題が明確になったり効果的に行うことができます。
ただ、採用活動においてKPIをどのように設定をすれば良いのか、運用方法について知らない方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、採用活動で利用するKPIの目的や効果、運用方法やポイントについて解説します!
ビジネスの遂行において重要なKPIは、採用活動においても重要な役割を果たしています。
営業利益率など財務指標がイメージされがちですが、必ずしもそうではなく、様々な場面での利用が可能です。
これまで、仕事でKPIを設定したことがないという方も多いのではないでしょうか?
KPI(重要業績評価指標)とは、組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味します。
達成状況を客観的に見ることで、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようになり、どこで課題が生じているのかがわかるのです。
「KGI」はビジネスゴールを定量的に示した、指標そのものを指します。
「KPI」はKGI達成までの各プロセスのことで、ゴールまでの中間指標という意味です。
KGIは「結果を見る指標」で、KPIは「過程を見る指標」と考えてください。
応募者数や内定者数など、事前に細かくKPIとして設定することで、その数値に対してどのようにアプローチするか、具体的な指針が決めやすくなります。
採用活動は具体的な指針が決めづらく、改善がしづらい面もありますが、KPIを設定することで目標数値からの逆算ができ、より明確な指針を打ち立てることができるため、重要です。
採用活動でKPIを設定する目的は、主に以下の2つがあります。
①目標達成までの具体的な行動を設定するため
②改善箇所を把握するため
KPIを設定することで、効果的にPDCAを回すことができます。
採用活動においてのKPIの設定方法を解説します。
最終目標となる「KGI」を設定します。ゴールを決めなければ、それまでのプロセスを立てることはできません。
KGIを設定するには「採用人数」と「人材の質」の2つの視点が求められます。
どちらを優先して、重要視するのかは自社の状況を見て判断するようにしましょう。
例えば、人員の数が不足している場合は、採用人数に比重をかけるという考え方があります。
一方で、中途採用などでスキルや経験重視の欠員の補充やプロジェクトの進捗に関わる人員を求めているなら、人材の質に比重をかけた方が良いでしょう。
採用人数では、今後の事業展開に各部署でどのくらいの人員が必要なのかを設定しましょう。
予想される退職者数も考慮して算出しておくと良いです。
どの部署に、どのような性質やスキルを持った人材が必要なのかを正確に把握します。
各部署の社員に対して、どのような人材を求めているのか具体的にヒアリングを行うと、正確に把握できるでしょう。
求人媒体、エージェント、ダイレクトスカウトなど、複数の採用手段を取っている場合は、各採用手法ごとに採用フローを設定します。
応募経路によって、応募者の志望度やマッチング度は大きく違うため、採用手法ごとに採用フローを設定することで、KPIを設定する時に採用フローを最適化できます。
【参考】新入社員に刺さるフォローアップ研修とは?目的や導入事例を徹底解説
採用活動においての歩留まり率とは、各選考に進んだ割合を指します。
計算方法は、「選考通過数」÷「選考対象数」×100=「歩留まり率」です。
現在の歩留まり率をもとに、目標の歩留まり率を決めます。
この時、各採用手法ごとに歩留まり率の目標を設定することが大切です。
例えば、ダイレクトスカウトやエージェントを通してエントリーした人はマッチング度が高いため、書類選考通過率は80〜100%に設定しても問題ありませんが、誰でも応募できる求人媒体と同じ通過率にするのは適当ではないと言えます。
そのため、それぞれの採用手法の特性から、歩留まり率を設定することは重要と言えます。
【出典】「曽和利光(2018)『人事と採用のセオリー』P145」
分析方法を徹底解説!採用歩留まりが低下しやすい項目と9つの改善策
KPIはSTEP1で決めたKGIから逆算して設定します。
採用手法ごとの採用人数を決め、STEP3で設定した歩留まり率を使って、採用フローに数字をあてはめていくと良いです。
例えば、KGIを「10人採用」として、求人媒体での募集を10%とした場合「求人媒体での採用人数=1人」がKPIとなります。
採用人数を重視しすぎると、選考通過率が高くなり採用担当者の負担が増えるのでKPIである「面接設定率」を高くしすぎないように設定しましょう。
採用フローに、STEP3で決めた歩留まり率を埋め込みます。
「内定承諾者数=1人」に対し、内定承諾率が50%の場合は「内定者数=2人」にする必要があります。
採用KPIは、リアルタイムで数字を把握することが重要です。
そのため、エクセルやスプレッドシートなど、表計算ソフトを利用して管理すると良いでしょう。
採用管理をする上で、下記に記載した項目を入れておくと進捗管理がしやすくなり、振り返りの際にも役立ちます。
また勤務先が複数ある場合や、求めるスキルを重要視する場合は、一目見てわかるようにまとめておくと良いでしょう。
なお、エクセルシートによる管理を手間に感じられる方にはATS(採用管理システム)がおすすめです。
ATSとは企業の採用業務を効率化するシステムを意味します。
ATSでは求人情報、応募者の個人情報、選考の進捗、採用担当者の評価といった採用活動に必要な情報をまとめて管理することが可能です。
以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
【参考】【徹底比較】採用管理システム(ATS)とは?無料サービス10選
採用KPIを適切に設定するために意識すべきポイントを説明します。
KPIの強みは採用課題を定量的な指標から分析できることです。
そのため数値にしにくい要素をKPIに入れてしまうと効果が損なわれてしまいます。
数値に変換できる指標を選択しましょう。
KPIはあくまでKGIを分解したマイルストーンのような位置づけです。
そのためKPIはKGIに関係のある内容にする必要があります。
KPIは実現可能性がある範囲で設定しましょう。
KPIの目標が過度に高いと、達成が難しくなり現場のモチベーションを損ねてしまいます。
採用KPIの目標値を定めるときは
等を念頭に置くと良いです。
KPIの数は多ければ多いほど良いというものでもありません。
KPIの数が増えすぎるとどの値に注力すれば良いかわからなくなってしまうためです。
KPIは自社の状況や課題に合わせて必要最小限に設定しましょう。
採用KPIの指標例をいくつか提示します。
もちろん記載以外の指標もありますので、自社の状況に合わせて評価指標を決めるようにしましょう。
具体的な指標の設定は、企業の規模や事業内容、採用目標などによって異なります。また、採用KPIは定期的に見直しを行い、必要に応じて修正することが重要です。
KPIを設定して満足してしまったらKPIの意味がありませんよね。
ここからは採用KPIの状況からあぶりだされる採用課題の例を紹介します。
ターゲットと掲載媒体の不一致
求人が適切でない媒体に掲載されている可能性があり、媒体の変更を検討する必要がある。
面接内容の不備
面接自体の評価基準や質問の適切さに問題があるかもしれず、面接官のトレーニングや改善が必要
プログラム内容に不備がある
インターンシッププログラム自体が学生にとって魅力的でない可能性がある。プログラム内容や経験価値を強化し、参加の魅力を高める工夫が必要。
申込プロセスが複雑
登録から実際の参加までのプロセスが複雑であると、参加者が途中で辞退する可能性が高まる。シンプルで効率的なプロセスへの見直しが求められる。
情報提供不足
応募者が面接辞退する主な要因は、企業情報が不足していることです。企業の特徴や文化、仕事内容などを明確に伝え、応募者の期待に応えることが重要。
選考プロセスが煩雑
面接過程が複雑で時間を要する場合、候補者の離脱の可能性が高まります。
スムーズで効率的なプロセスの導入が必要であると考えられます。
内定者フォローの不足
内定後のコミュニケーションの不足が候補者体験を悪化させ、内定辞退を招く可能性があります。
競合他社の魅力に負ける
他社の内定が出たことで辞退されている可能性があります。自社の差別化ポイントや魅力を強調するアプローチを検討する必要があるでしょう。
採用活動でKPIを設定することで、どのような効果があるのかについて解説します。
KPIを設定することで、KPIを達成するためにはどのような採用手法・選考内容にすべきか考えやすくなり、無駄のない選考内容を設定することができます。
例えば、「ビジョンに共感してくれる人」といったように人物像を重要視する場合は、書類選考の時点でビジョンに基づいた設問を用意したり、人柄がわかりやすい選考内容にしたりと内容を個別に切り分けて最適解を考えることが可能です。
採用KPIを設定することで、最終目標に達成しなかった場合、選考フェーズのどこに課題があったのかが明確になります。
そのため、課題の対する施策が打ちやすくPDCAも回しやすいです。
採用活動は採用担当者だけの仕事ではなく、外部の協力会社など様々な関係者が存在します。
KPIを設けていることで、各プロセスを担当する人に役割や責任の範囲が明確になるため、主体的に動いてもらいやすくなります。
KPIを運用する際の方法とポイントについて解説します。
企業によって、採用フローは異なりますが適切にKPIの進捗管理をするために、採用フローを整理し、それぞれの数字を管理できるようにしましょう。
リアルタイムで数字を把握できるようにすることで、日々KPIに対して進捗を管理することができるようになります。
実際に採用活動をしていくと、KPIと現状にはギャップが生じてしまいます。
そこで、ギャップが生じている原因や改善策を検討して、アクションを実行すると良いでしょう。
例えば、書類通過後の1次面接の通過数が目標よりも進捗が悪い場合、面接官の選考基準が厳し過ぎる、応募者の多くが求める人物像とは異なるといった原因が考えられます。
その場合は、面接官で選考基準の共通認識を持つようにしたり、説明会などで求める人物像について強調したりなどの対策が挙げられるでしょう。
このように、KPIを設定することで、最終目標が達成できていない原因がプロセスのどこに生じているのかが明確になるのです。
KPIを管理するにあたり、思い通りの進捗にならない場合は、KPIの見直しも検討しましょう。
設定したKPIと実績が離れてしまうと、例え課題が見つかったとしても最適な施策を打つことができないなどの問題が生じます。
必要に応じて柔軟にKPIの変更・改善を行うようにしましょう。
KPI設定時に達成期限を決めておくことが重要です。
期限が決められていないと、優先度が下がり、せっかく設定したKPIの効力が減ってしまいます。
採用KPIを設定するときは期限もあわせて定めておきましょう。
採用活動におけるKPIの設定方法について解説しました。
営業やマーケティングなどの職種で利用されるイメージが強く、採用活動で利用するイメージはあまりないですが、KPIを活用することで、効率的に採用活動を行うことができます。
是非、KPIを利用して採用活動を進めてみてください。