雇用流動化とは?メリット、デメリット・今後の採用戦略を解説
2024/01/29

雇用流動化とは?

雇用流動化とは「人材が企業間を移りやすくすることにより、労働力の流動化を図り、企業の生産性が向上して経済成長に繋がる」という状態を表します。

日本の従来の雇用制度は、年功序列・新卒一括採用・終身雇用をもとにした「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。

しかし、日本の経済成長が緩やかに、国際競争力において劣勢になると、上記の雇用制度が機能しなくなってきました。

企業内での新陳代謝が促されず、今後増えていく中高年の雇用の問題などもデメリットになってしまうのです。

雇用流動化によって労働市場が活発になれば、企業は必要な人材像にあった人をピンポイントに採用できるようになります。

企業の生産性も向上し、日本全体の経済成長に繋がるというのが、雇用流動化で目指すものなのです。

労働力流動化との違い

雇用流動化に似た言葉として「労働力流動化」というものもあります。

「労働者が会社間を移動しやすくし、労働市場が流動的になることで、産業の発展と雇用市場の活発化を実現できる」という意味を持つ言葉です。

どちらも、労働者の流動性が高まることによって産業の発展に繋がる、という意味で同じような言葉として使われます。

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雇用流動化が新卒採用に与える影響

雇用流動化は新卒採用にも影響を与えます。

主なものには以下の2つが考えられます。

①約4割の学生が転職前提で就活をする
②学生がファーストキャリアで求めるものは「成長」

それぞれ詳しく解説します。

①約4割の学生が転職前提で就活をする

株式会社ワンキャリアが2025年卒の学生に行ったアンケートによると、約4割の学生が「転職を前提に就職先を選択する」と回答しました。

終身雇用・年功序列などの従来の雇用制度が崩壊しつつあり「大企業だから安泰」という風潮の変化が背景にあります。

先行き不透明になり、キャリアを企業に委ねるのではなく、主体的にキャリアを築きたいと考える学生が増加したことが考えられます。

では、そのような学生はファーストキャリアに何を求めるのでしょうか。

【参考】株式会社ワンキャリア【2025年卒 実態調査】『25卒は「転職」を視野に入れつつ「給料」を重視』

②学生がファーストキャリアで求めるものは「成長」

転職を前提にファーストキャリアを選択する学生は、企業に求めるものとして「給料」の他に「自身の成長」を挙げています。

物価の高騰や円安の影響などから給料を重視しつつも、中長期的なスキルアップやキャリア形成を図りたいという学生の意図が伺えます。

【参考】株式会社ワンキャリア【2025年卒 実態調査】『25卒は「転職」を視野に入れつつ「給料」を重視』

日本における雇用の現状

雇用流動化が注目されていますが、日本の雇用の現状はどのようなものなのでしょうか。

雇用流動化の観点で日本の雇用を分析すると、以下のような特徴がみられます。

①日本の雇用はすでに流動化している
②日本の雇用は「非正規化により」流動化している

①日本の雇用はすでに流動化している

勤続年数の国際比較

【参考】労働政策研究・研修機構(2023)「データブック国際労働比較2023」より作成

図表1の各国の勤続年数を見ると、日本の勤続年数が他国に比べて長くはないことが分かります。

アメリカの勤続年数が突出して短いですが、ドイツやフランスの勤続年数は日本に近く、もはや日本は雇用が安定しているとはいえません

しかし、日本では雇用流動化が注目されていることにかわりありません。

なぜ雇用流動化がこのように注目され続けているのでしょうか。

それは、日本の雇用流動化が「社員の非正規化により」実現されているからであると考えられます。

②日本の雇用は「非正規雇用の増加により」流動化している

日本の雇用流動化は、非正規社員の増加により実現されています。

日本では、正規社員を解雇するためには、整理解雇の4要件(※)という厳しい条件を満たす必要があります。

つまり、企業は戦略的な人員整理のためであっても容易に正規社員を解雇できないのです。

一方で、非正規社員は雇用に関して常に不安定であり、比較的容易に解雇できます。

正規社員の代わりに、比較的容易に解雇しやすい非正規社員が増加したことで、雇用が流動化している、というのが日本の現状です。

総務省が行った労働力調査によると、2023年11月時点で非正規社員は2158万人であり、役員を除く雇用者全体の37.4%に上ります。

2013年時点での非正規社員は1910万人なので、この10年で大きく増加したといえます。

※整理解雇の4要件とは「人員削減の必要性」「解雇回避努力」「人員選定の合理性」「解雇手続きの相当性」の4つです。

【参考】総務省統計局 労働力調査 2023(令和5年)11月分

ジョブ型雇用の拡大が求められる

上記では、日本の雇用流動化は「非正規雇用の増加」によってもたらされていると解説しました。

そもそも企業が非正規雇用を増やしたのは、終身雇用を前提に、新卒を一括採用するメンバーシップ型の採用制度のもとでは、経営を再建させるために行う「整理解雇」の合理性が認められないからです。

非正規雇用の増加による雇用の流動化は、構造的な賃上げには寄与していないのです。

そこで、職務への貢献度に応じて給与が決まるジョブ型の採用制度が拡大していけば、企業が行う解雇のハードルは下がります。

また、従業員もリスキリングによる技能向上を高めるインセンティブも生まれ、構造的賃上げに繋がるのではないでしょうか。

雇用流動化が注目される3つの理由

日本において「雇用流動化」が注目される理由として、以下の3つがあります。

①少子高齢化による労働者数の減少
②多様な就労スタイルの確立と就労意識の変化
③働き方改革の促進

それぞれ詳しくみていきましょう。

①少子高齢化による労働者数の減少

1つ目の理由は「少子高齢化により労働者数が減少したこと」である。

将来推計人口の概要

【出典】厚生労働省「将来推計人口(令和5年推計)の概要」

上記のグラフから分かるように、年を重ねるにつれて、高齢者の割合が増加する一方で、生産年齢人口が減少しています。

厚生労働省の推計によると、この流れは2070年まで続くことが予測されています。

企業は、労働者人口が減少する中で、引き続き優秀で自社に合う人材の確保が必要です。

従来の新卒一括採用にこだわらず、即戦力となる人材を中途で採用することが求められています。

②多様な就労スタイルの確立と就労意識の変化

「多様な就労スタイルの確立と就労意識の変化」も雇用流動化をもたらしたのです。

IT技術の発展により、従来のフルタイムでのオフィス勤務が当たり前ではなくなりました。

また、キャリア形成が企業から個人に移行していることで、副業や転職に対してのイメージがポジティブに変化しました。

つまり、労働者一人ひとりが自分に合った働き方を目指して、雇用が流動的になりやすい環境が整ってきているのです。

③働き方改革の促進

政府による「働き方改革の促進」も雇用を流動的にしたといえます。

働き方改革は「働く人が多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す改革」です。

そこで、多様な就業機会を設け、各労働者の能力や意欲が発揮できる労働環境を整えることが必要になります。

従来の新卒一括採用や終身雇用ではなく、柔軟な雇用機会が作られることで、人材が流動的になりつつあるのです。

雇用流動化の3つのメリット

雇用が流動的になることによる企業のメリットは以下の3つがあります。

①即戦力を採用できる
②自社に適した人材を確保できる
③新たな視点を取り入れ革新性が生まれる

それぞれ詳しくみていきましょう。

①即戦力を採用できる

雇用が流動化することで、企業は即戦力となる人材を採用しやすくなります。

人材が流動化し、中途採用での応募が増加すると、自社が必要としているスキルや経験を持ち合わせた人材と出会える可能性が上がります

事業の立て直しが必要な状況を考えてみましょう。

もし、雇用が流動的でない場合、たとえスキルや経験がなかったとしても、自社の中から抜擢しなければなりません。

しかし、雇用が流動的であれば、十分なスキルや経験を持つ人材を社外から獲得することができます。

②自社に適した人材を確保できる

雇用流動化が進むことで、自社に適した人材を確保しやすくなります。

人材が流動的になることで、あらゆる人材を雇い入れる機会が増加するからです。

自社に必要なスキルや経験を持つ人、社風に合う人を採用できるでしょう。

また、新卒で採用できなかった優秀な学生が中途入社してくることも考えられます。

③新たな視点を取り入れ革新性が生まれる

雇用流動化が進むことで、これまで自社になかった視点やノウハウを取り入れることができるようになります。

流動性の低い組織や長い期間勤めている社員ばかりであると、社員の持っているスキルや経験に違いがなくなってしまうでしょう。

そこで、異なる業界を経験した人材や、違った価値観をもった人を採用すれば、社内に新しい視点をもたらします。

雇用流動化の3つのデメリット

雇用流動化にはデメリットもあります。

ここでは以下の3つを取り上げます。

①若手人材の成長機会が減る恐れがある
②採用コストや工数が増加する
③自社にマッチする人材の見極めが重要になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①若手人材の成長機会が減る恐れがある

雇用が流動化すると、若手人材の成長機会が失われてしまう恐れがあります。

なぜなら、企業が経験豊富な即戦力となる人材ばかりを採用し、若手の採用や育成を軽視してしまう傾向にあるからです。

また一般的に、新人教育は多額の費用と労力がかかるというのも理由にあります。

しかし、若手人材を育成しなければ、企業の将来を担う人材がいなくなってしまいます

即戦力となる中途人材を定期的に採用しながら、若手人材の育成にも注力することが、中長期的に見て大切です。

②採用コストや工数が増加する

人材が流動化することは、採用コストや工数の増加をもたらします。

雇用流動化によるメリットを享受するためには、企業側の積極的な採用活動が必要です。

最適な採用戦略を考えたり、複数の求人媒体を利用したり、数多くの面接を行ったりなど、業務量が大きく増加します。

また、自社にマッチしない人材を採用し、早期退職者が増えてしまうと、育成や採用にかけたコストや時間が無駄になってしまう可能性も出てくるでしょう。

③自社にマッチする人材の見極めが重要になる

雇用が流動化すると、企業は自社にマッチする人材をいかに採用するか、が重要です。

採用できる人材が増えることはメリットになる一方で、自社にマッチしてない人を採用してしまえば、それにかかる採用や育成コストは無駄になってしまいます。

また、近年は転職に対するハードルも下がってきています。

「勤め先が自分に合わない」と感じた社員はすぐに退職し、再び転職市場に身を置く可能性も高まりつつあるでしょう。

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雇用流動化に合わせた採用戦略とは

雇用が流動化した現在において、企業にとって自社にマッチする人材の採用は非常に重要性を増しています。

そのような状況において、企業は「計画的な中途採用」を行うことが必要です。

計画的な中途採用

今後も人手不足が進行していく日本において「欠員募集の中途採用」から「計画的な中途採用」への移行が求められます。

従来の採用戦略では、新卒一括採用を基本に、欠員が生じた場合のみ、例外的に中途採用によって補完することが主流でした。

しかし、社会変化や企業戦略の変化によって中途採用も戦略的に行うことが必要になってきています。

また、売り手市場である現在は、複数の内定をもらう転職希望者も珍しくありません

企業が「選ばれる側」になったことからも、採用をより計画的に行うことが重要です。

優秀な人材を自社に定着させるために

企業戦略にとって「採用」が重要であることは言うまでもありません。

しかし同時に、採用した転職希望者が自社で長く働いてくれることも大切です。

ここで、優秀な人材を自社に定着させるためにできることを3つ紹介します。

①待遇面や評価制度を見直す
②多様なキャリアパスをつくる
③人材育成と人材配置を適切に行う
それぞれ詳しくみていきましょう。

①待遇面や評価制度を見直す

給与や福利厚生などの待遇面は、労働者が転職をする際に重要視するポイントの1つになります。

労働者が快適に働きやすい環境かどうかは、見直す必要があるでしょう。

また「評価制度が公平でない」「正当に評価されていない」という不満は、労働者の離職を招きます

採用戦略とともに、上記のような不満がないような正当な評価制度にも力を入れることが必要です。

②多様なキャリアパスをつくる

社内で多様なキャリアパスを設けることも、離職の防止に繋がります

終身雇用・年功序列型賃金が崩壊しつつある今、個人の主体的なキャリア形成が主流になってきました。

そこで「どのようなキャリアを歩んでいけるのか」を明確にすることで、中長期を見据えた労働者にも働きやすい環境を整備できるでしょう。

もちろんキャリアパスが単一の企業よりも、複数ある企業の方が「柔軟な働き方ができる企業」というイメージから、多くの転職希望者が集まります。

③人材育成と人材配置を適切に行う

適切な人材育成と人材配置も、優秀な人材の定着に不可欠です。

もし適切でないと「この企業では成長できない」「思い描いたキャリアを描けない」と感じた社員の退職に繋がってしまいます。

このようなトラブルを防ぐためにも、社員一人ひとりの適性と意向を踏まえた人材育成と人材配置が重要です。

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まとめ

採用市場において、存在感が大きくなっている「雇用流動化」について解説してきました。

社会変化や就労スタイルの変化によって、新卒で入社した企業に定年まで勤めあげる制度は崩壊しつつあります。

人材不足に加えて、人材が流動化している現在において、戦略的な採用戦略は重要性を増しています。

この記事を参考に、自社に適した人材を採用・定着できるようになれば幸いです。