深刻な人手不足が続く日本。「学生が中々集まらない」「せっかく内定を出したのに辞退されてしまう」といった悩みがある人事担当者の方も多いはず。
本記事では、新卒採用でよくある課題を紹介した後に、各課題に対して解決策を6つ紹介します。
また「学生が会社選びで確認するポイント」も併せて記載しました。学生の志向を知りたい採用担当者の方にピッタリの内容です。
新卒採用の課題がある箇所を把握しよう
本記事をご覧の方は「最近新卒採用が上手くいっていない・・・」といった悩みを抱えている方が多いでしょう。
新卒採用を成功させるには、まず「課題がある箇所の特定」が重要です。
新卒採用における課題は「採用前」「採用活動中」「内定後」の3つに大別でき、この3つのうちどこに大きな課題があるのかを把握することで、効果の高いアプローチができます。
例えば下記のように「昨年の自社の採用活動」を図にして考えると分かりやすいでしょう。
図のように数値化して分かりやすくまとめることで、効果の高いアプローチができます。
新卒採用でよくある7つの課題とその原因
「採用前」「採用活動中」「内定後」どこに自社の課題があるのかを把握したら、次にその課題が起こっている原因を特定しましょう。
下記にて、新卒採用でよくある課題とその原因を7つまとめました。
応募が集まらない (母集団の形成)
まず多くの企業が抱える悩みが「応募が集まらない」ことです。説明会やインターンシップに応募が集まらないことには、学生の採用を始めることはできません。
応募が集まらない原因としては、このようなことが挙げられます。
- 会社の規模が小さく、学生に知ってもらう機会が少ない
- 不人気業界・職種で人が集まらない
- ベンチャー企業のため、学生から敬遠される
実際、従業員数5,000人以上の大企業における有効求人倍率は、
- 2020年 0.42倍
- 2021年 0.60倍
以上であるのに対し、従業員数300人以下の会社における有効求人倍率は、
- 2020年 8.62倍
- 2021年 3.40倍
と大きな差があります。
※有効求人倍率は、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す指標です。1倍以下だと求職者が求人より多く、1倍以上だと求職者より求人の方が多いことが分かります。
コロナ渦においても、規模の小さい会社の人手不足は深刻であることがわかるでしょう。
採用したい学生がこない(ターゲット層からの応募がこない)
こちらは採用活動中に起こる新卒採用の課題です。
「学生は集まっても、採用したい学生が来てくれない」といった悩みをもつ採用担当者の方も多いでしょう。
多くの学生が説明会やインターンシップに集まっても、採用したいと思える学生がこなければ意味がありません。
採用したいと思える学生がこない原因としては、このようなことが挙げられます。
- 採用したい学生が、社内で明確になっていない
- 発信方法・ターゲットの設定が間違っている
- 自社の魅力を最大限伝えきれていない
どこに原因があるのかを確認し、適切な解決策を講じましょう。
採用に時間とお金、人手がかけられない
主に規模の小さい会社で起こる課題として「新卒採用にかける時間とお金、人手が足りない」というものがあります。
原因としては、このようなことが挙げられます。
- 人数が少ない会社のため、新卒採用担当者が他業務と並列して仕事を行っている
- 採用の時期になると、社員の業務量が増え、ダイレクトリクルーティングができない
- 採用予算の金額が少なく、求人広告などにかけるお金がない
選考を途中で辞退する学生が多い
「せっかくエントリーしてもらったのに、選考途中で辞退する学生が多い・・・」というのも多くの方が抱える悩みでしょう。
面接やインターンシップのドタキャンなども、ここに当てはまります。
原因としては、このようなことが挙げられます。
- 選考スピードが遅く、学生に忘れられてしまった
- ネット上の評判が良くない、悪い
- 選考中に面接官が学生に悪い印象をもたれてしまった
- 学生がより志望度の高い会社から内定をもらった
内定を承諾してもらえない
意外に多いのが「内定を出したのに、承諾してもらえない」という悩みです。
原因としては、このようなことが挙げられます。
- 企業が学生と上手くコミュニケーションが取れていない
- 学生がより志望度の高い会社から内定をもらった。または選考中である
- 万が一のための「滑り止め」として学生が選考を受けていた
実際内定辞退率が3割を超えている会社は、21卒で43.8%となっています。
入社してもすぐにやめてしまう (ミスマッチ)
最後に新卒採用の課題で挙げられるのが「せっかく新卒を採用したのに、すぐにやめてしまう」というものです。
原因としては、このようなことが挙げられます。
- 学生が希望していた職種と配属された部署が異なっていた
- 配属先の上司と性格面・仕事観などが合わなかった
- 新卒を受け入れる体制が整っていなかった
事実、大卒で就職した新卒のうち、100名~499名規模の会社で33.0%、1000名以上の会社で26.5%が3年以内に退職しています。
【参考】厚生労働省『新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内の離職率の推移』
「入社してもすぐにやめてしまう・・・」という課題は、会社の規模に関わらず多くの採用担当者が抱える悩みだと言えます。
中小企業が新卒採用を成功させる6つのポイント
ここまでは、新卒採用において企業が抱えることの多い課題を見てきました。
ここからは上記6つの課題に対し、それぞれ有効な解決策を紹介していきます。
応募が集まらない (母集団の形成) ⇒ 求人媒体だけでなく、自ら学生にアプローチできるチャネルを持つ
「応募が集まらない」「そもそも会社の認知度が低い」といった会社は、大手人材会社の求人媒体に掲載しているだけだと、有名企業に埋もれてしまい学生から興味を持ってもらえません。
そこで、上記のような悩みがある方におすすめしたいのが「学生に直接アプローチできるチャネルを持つ」ことです。
学生に直接アプローチできる手段として「ダイレクトリクルーティング」と「SNS戦略」の2つがおすすめです。
<ダイレクトリクルーティング>
ダイレクトリクルーティングは、学生に対し企業側からアプローチをかけていく採用手段です。
メリットとしては、このような点が挙げられます。
- 採用したい学生や自社に合った学生にピンポイントでアプローチできる(建設業の求人なら建設業に興味がある学生など)
- 会社内のリソースが足りていない場合でも利用しやすい
- 短期間で成果が上げやすい
特に「学生に対するスカウト送信」や「日程調整」などを全て請け負うダイレクトリクルーティングサービスに登録すれば、自社内の人的・金銭的リソースが足りていなくても、利用できます。
<SNS戦略>
また近年では、比較的若いベンチャー企業を中心に、SNSを利用して認知度を高めようとする企業も増加しています。
具体的には、「YouTubeやTwitter、Instagramなどの無料SNS」を使用しているケースが多いです。
SNSの活用は学生への認知度向上だけでなく、自社商品のPRにも効果的です。
ただしSNSでの採用活動は、このようなデメリットもあります。
- 学生の認知度の向上に時間がかかるため、短期的に応募者を増やすことはできない
- SNSに詳しい社員がいなければ、運用が難しい
- コンテンツの設計から発信まで時間がかかる
「社内の人手が足りていない」という会社は、自社SNSによる採用活動よりも、ダイレクトリクルーティングやその他の活動を行った方がよいでしょう。
下記にて、その他に学生の応募を増やす方法を記載しました。
- 合同説明会や大学が主催する学内イベント、マッチングイベントに参加し露出を増やす
- 人材紹介会社に学生を紹介してもらう
- 採用エリアを絞らず、全国に広げる
学生からの認知度に不安を感じている採用担当者の方は、上記の中ですぐに取り組める内容から始めてみるのはいかがでしょうか。
採用したい学生がこない(ターゲット層からの応募がこない) ⇒ 採用要件やペルソナ設定、採用チャネルを見直す
次に「学生は集まるが、採用したい学生や優秀な学生と出会えない」といった課題に対する解決策を提示します。
ターゲット層の学生から応募がこない場合は、このようなアクションが重要です
- 採用チャネルの見直し
- 情報発信の見直し
- 社内で求めている学生像を共有し、ターゲット層を明確にする
それぞれ解説していきます。
採用チャネルの見直し
既存の求人媒体だけでなく「ダイレクトリクルーティングが行えるアプリ」や「一定の学歴やプログラミング知識など、特定の知識がないと利用できないサービス」を利用しましょう。
特に、欲しい学生に対し直接スカウトが打てるダイレクトリクルーティングは、欲しい学生が来ないと悩んでいる方におすすめです。
【参考】【新卒】ダイレクトリクルーティングとは?特徴や他サービスとの比較、メリット・デメリットを紹介
情報発信の見直し
欲しい学生が求めている内容やコンテンツを分析し、発信することも1つの手段です。
発信する場合はYouTubeなど、多くの学生が日々利用しているSNSを使うのがよいでしょう。
採用したい学生の印象に残るコンテンツを発信することができれば、会社に興味を持ってもらえます。
社内で求めている学生像を共有し、ターゲット層を明確にする
社内全体で採用したい学生像が明確になっていないと、学生へ的確なアプローチができません。
日々採用に関する情報交換を活発に行い、欲しい学生像や能力を社内で共有しておきましょう。
採用コストがかけられない (採用のコストを抑えたい) ⇒採用チャネルの見直しとSNSの活用
採用にかかるコストを抑えたいという場合は、求人媒体の見直しとSNSの使用がおすすめです。
具体的には、このような内容が有効です。
- 成功報酬型の新卒紹介サービスを利用する
- 知人や社員の人脈を駆使して採用活動を行う
- 新卒ハローワークの活用
- TwitterやInstagramなど無料で利用できるSNSを使用する
人手不足で新卒採用に時間をかけられない ⇒ 外注やSPIを始めとした適性検査を利用する
「人手不足で新卒の採用に時間を使えない」という場合は、採用工程を一部外注したり、適性検査を利用することがおすすめです。
具体的には、このような対応が有効でしょう。
- インターンシップのコンテンツ作成などを他社に行ってもらう
- SPIなどの適性検査を行いボーダーを設けることで、学生と面接する回数を減らす
外注と適性検査を有効活用することで、人手不足の会社でも効率よく採用活動ができますよ。
選考を途中で辞退する学生が多い・内定を承諾してもらえない ⇒学生とのコミュニケーションを密に取り、選考の間は開けすぎない。
選考途中の辞退や内定辞退が多い会社は「学生とのコミュニケーション」が上手くいっていない可能性が高いです。
学生とコミュニケーションを上手く取り「一緒に働きたい」と思ってもらえる雰囲気作りをしましょう。
具体的には、このような行動が重要です。
- 面接の際に、学生に好印象を持ってもらえる雰囲気作りをする
- 「カジュアル面談」で会社のありのままを伝える
- 内定承諾後も間を開けず、学生と連絡を取り合う
「カジュアル面談」では、選考に関係なく会社の社員と学生が本音を語り合ったり、プライベートな内容を話したりします。
学生から「この社員さんいい人かも!」とカジュアル面談の中で思ってもらえるように、穏やかな雰囲気で面談を行いましょう。
また内定承諾後も学生と連絡を密に取ることで、内定承諾後の辞退も防ぐことができます。
同期同士が交流できるイベントなどを開催し、学生が入社するモチベーションを高めるといったことがおすすめですよ。
入社してもすぐにやめてしまう ⇒ 入社前に会社を知ってもらう機会を作る
最後に「苦労して採用したのに、新卒がすぐにやめていってしまう」というケースの解決策を解説します。
先程も記載しましたが、大前提として約30%が新卒入社した会社を3年以内に退職するということを頭に入れておきましょう。
その中で早期退職率を下げる方法として、このような内容が挙げられます。
- 入社前に学生の志向と希望する部署を把握しておく
- 「内定者インターンシップ」を通じて、会社の業務・社風・働く人を知ってもらう
希望部署を尋ねる際は、併せて「希望部署以外の配属になっても問題ないか」を学生に確認しておきましょう。
「内定者インターンシップ」は、内定者が大学在学中にインターンシップ生として企業で働くというもので、ベンチャー企業を中心に実施されています。
学生の「入社前と入社後のギャップ」を埋めるためにも、働く機会を提供できる内定者インターンシップは有効です。
最近の学生の志向を理解した上で採用活動しよう!
「一生懸命採用活動をしているのに、学生が全然集まらない」と悩みを抱えている方も多いでしょう。
もしかしたらその原因は「最近の学生の就職観」が理解できていないことにあるかもしれません。
そこでここでは、新卒採用担当者の方に向けて、最近の学生が就職活動で重視するポイントをまとめました。
下記は『マイナビ 2021年卒大学生就職意識調査』の結果を引用しています。
どんな会社で働きたい?(就職活動において重視するポイントとは)
<質問>企業を選択する場合にどの様な企業がよいですか?
1位 安定している会社 38.3%
2位 自分のやりたい仕事(職種)ができる会社 35.9%
3位 給料の良い会社 19.8%
4位 勤務制度、住宅など福利厚生の良い会社 12.8%
5位 働きがいのある会社 12.7%
上記の結果を見ると学生は企業選びの際、事業の安定性や自分のやりたいことができるか等を中心に見ていることが分かります。
さらに学生の「就職観」を尋ねた質問では、
1位 楽しく働きたい 38.5%
2位 個人の生活と仕事を両立させたい 13.7%
2位 人のためになる仕事がしたい 13.7%
4位 自分の夢のために働きたい 10.6%
となっています。
「収入さえあればよい」や「出世したい」という学生の割合が5%以下と低いことから、最近の学生は「楽しく働けるか」「ワークライフバランス」などを重視していると分かります。
学生が敬遠する企業の特徴とは?
では逆に学生が働きたくない会社はどのような会社なのでしょうか。
<質問>行きたくない会社があるとしたらどんな会社ですか?
1位 ノルマのきつそうな会社 34.5%
2位 暗い雰囲気の会社 29.5%
3位 休日・休暇がとれない(少ない)会社 23.4%
4位 転勤の多い会社 22.7%
5位 仕事の内容が面白くない会社 19.6%
上記の結果から、近年の学生は「仕事におけるノルマ」や「社風」、「休みの取りやすさ」などを重視していることが分かります。
コロナ渦での就活となっている現在の大学生は、雇用に関する不安が大きく、比較的安定した企業に入りたいという傾向が強くなっています。
新卒採用の課題を克服し、効率を上げるためには、上記のような「近年の学生の志向」や「会社選びの軸」をしっかりと把握することが重要です。
さいごに
新卒採用において企業が抱える課題とその解決策についてみてきました。
コロナでオンライン化が進んだこともあり、就職活動も大きく変化しています。
「近年の学生の志向」「就活トレンド」「新卒採用における自社の課題」の3つを日々確認することが、新卒採用担当者の方に求められているといえるでしょう。