採用広告とは
採用広告とは、企業の求人情報を掲載する広告のことです。
通常、採用広告には企業が求めるスキルや経験、業務内容に関する情報に加えて、給与や福利厚生などの待遇情報が掲載されます。
さらに、企業の業績や職場の魅力を伝えることで求職者の応募促進を図ります。
新聞のような紙媒体から始まった採用広告ですが、最近ではWebサイトやSNSで広告を掲載することが主流になりつつあります。
実際に22卒〜24卒の学生がみた広告媒体はSNS広告が多く、最も閲覧した媒体は「Instagram」が36.8%、ついで「YouTube」が36.2%、「Twitter」が31.7%となっています。
【参考】 株式会社インタツアー『22・23・24卒生対象 就活における広告についての調査』このように、採用広告は時代の変化とともに形を変え、デジタル媒体の台頭により多様化しました。
これにより、企業が自社に適した採用広告を利用する手段が増え、採用活動を効率よく行うことができるようになりました。
採用広告を掲載するメリット・デメリット
採用広告の種類によって得られる効果も異なりますが、ここでは採用広告自体を利用することによって生じるメリットとデメリットについて解説します。
採用広告のメリット
採用広告のメリットについて解説します。
①認知度の向上
採用広告を利用することで、多くの求職者に自社の存在をアピールできます。
どんな優良企業でも、自社の求める人材を採用するには、まずその人材に自社の存在を認知してもらう必要があります。
昨今では、ターゲティング広告によって自社の存在を知って欲しい層に絞った広告を掲載することも可能です。
採用広告を利用して、自社の認知度を高め、求める人材との接点を増やすことで、効率よく採用活動を進めることができます。
②潜在層にアプローチ
採用広告は、積極的に就職活動を行っている顕在層にアプローチできるだけでなく、「自分に合う企業があれば就職したい」と考えている潜在層にもアピールできます。
また、SNS採用広告のようなX(旧Twitter)やInstagram、Tiktokに採用広告を掲載する場合、自社に興味を持つ可能性のあるターゲットに絞り込むことも可能です。
こうした取り組みは、彼らが企業を探しを始めた時に自社が有力な応募先候補になる可能性を高めることができます。
このように、採用広告を通じて潜在層にアピールすることは、将来の求人応募者を増やすという面でも非常に効果的です。
採用広告のデメリット
採用広告のデメリットについて解説します。
①掲載内容を工夫する必要がある
採用広告の掲載が必ずしも求人応募の増加につながるとは限りません。
企業の求人内容が抽象的すぎる場合、求職者が仕事内容の具体的なイメージや仕事に対する適性を計れず、応募を見送る可能性が高いです。
営業の場合、取引先や提案する内容、顧客は「新規」なのか「固定」なのか、具体的な内容を伝えることで求職者は安心して応募できます。
採用広告の利用を求職者の応募につなげるためにも、求職者が不安を感じないような内容に工夫する必要があります。
②作成に時間がかかる場合がある
採用広告の作成には時間がかかる場合があります。
採用広告を掲載するには、求人媒体の運営・管理を行っている会社に問い合わせを行い、掲載内容と利用オプションの打ち合わせを行う必要があります。
その後、求人広告に掲載する内容の取材と原稿作成が始まります。
求人媒体や会社によって異なりますが、Web広告の場合は早くて1週間、通常は10日から2週間程度見積もる必要があります。
広告掲載後に応募があった場合、選考にも時間がかかるため、ある程度余裕を持った採用計画を立てる必要があります。
③他社と比較されてしまう
広告媒体によっては、競合他社と並んで掲載されることがあるため、条件面で比較されやすいです。
競合他社よりも好条件で求人を行える企業にとっては有利ですが、一方で採用が不利に働くこともあります。
そのため、他社と比較されづらいSNS広告を利用するなど、自社に適した広告媒体を選ぶ必要があります。
採用広告を利用した方が良いケース
多様な採用手法がある中で、採用広告を利用した方が良いケースにはどのようなものがあるでしょうか?
ここでは、採用広告の利用をオススメしたい企業の特徴を解説します。
①特定のスキル・経験を持つ人材を募集する場合
会社の状況によっては採用候補者の人物像よりも、特定のスキルや経験を有する人材を募集する場合があるでしょう。
例えば、特定のIT知識や、外国の言語・文化に精通している人材を募集する場合、そのスキルを持つ候補者を探すことが難しい場合があります。
このように、求めるスキル・経験が明確に定まっている場合はより幅広い人材にアプローチをする必要があるため、採用広告を利用することがおすすめです。
②採用予定人数が多い
採用予定人数が多い場合は、一定金額を支払うことで広告を掲載できる「定額制の採用広告」がおすすめです。
採用人数に関わらず費用が固定されているため、費用対効果が高く、予算の管理がしやすいです。
ただし、採用の人数やターゲットとする人材層によっては成功報酬型の方が効果的な場合もあるので事前に調査・検討する必要があります。
③企業の知名度がまだ低い場合
採用広告を利用することで、地理的な制約や業界内の知名度の低さに関わらず、広範囲の求職者にリーチできます。
また、他社との差別化が成功した広告を打てた場合、自社独自の魅力や価値がターゲットに伝わりやすく、優秀な人材を確保する確率が高まります。
「同業他社ではなく自社に入社するからこそ、実現できることとは何か?」「自社の強みは何か?」を意識して広告を打つことで、より多くの流入を狙えるでしょう。
採用広告の種類
採用広告には主に次の6種類があります。
- 求人検索エンジン
- Web求人サイト
- ハローワーク
- 紙媒体
- SNS広告
- 自社採用サイト
ここではそれぞれの費用相場や特徴について解説します。
①求人検索エンジン
代表的な求人検索エンジンとして「Indeed」や「求人ボックス」が挙げられます。
求人検索エンジンとは、求職者が「勤務地」や「業務内容」のようなキーワードを入力して、関連性の高い求人から表示されるサービスです。
さまざまな求人情報が一括で表示されるため、求職者は一目で様々な求人情報を閲覧することができます。
そのため、単に求人情報を掲載するだけでは競合他社の求人に埋もれてしまうおそれがあります。
したがって、効果的な求人を出すためには広告を運用する知識が必要になります。
【費用相場】
- 無料掲載:可能
- 有料掲載:クリック課金の場合 クリック単価10円~1000円
【メリット】
- 掲載コストが低い
- 多様な職種・雇用形態に対応可能
【デメリット】
- 求人情報が埋もれやすい
- 上位表示には運用知識が必要であるため、難易度が高い
②Web求人サイト
代表的なWeb求人サイトとして「マイナビ」や「doda」、「type」があります。
Web求人サイトとは、企業が自社の求人情報をWebサイトに掲載し、求職者がサイトを通して求人に応募するサービスのことです。
業種や職種問わず、広告を掲載する「総合型」とエリアやエンジニア採用のように特定の求人を掲載する「特化型」があります。
総合型は広範囲で求職者の募集を行いたいときに、特化型は特定の条件を満たした求職者を効率よく募集したいときに利用しましょう。
このようにWeb求人サイトは両者の特徴を生かして利用する必要があります。
【費用相場】
- 新卒採用:100~150万円
- 中途採用:20~100万
【メリット】
- 求職者が気軽に利用でき、ターゲット人材が利用している可能性が高い
- スカウトメールを利用して求職者にアプローチできるオプションがある
- 先行投資型の場合大量採用によって採用単価が下がる
【デメリット】
- 有料掲載がメインだが、必ずしも採用につながるとは限らない
- 知名度の高さや待遇の良い企業に求人が集まる傾向がある
③ハローワーク
ハローワークとは厚生労働省が運営する総合的雇用期間のことです。
政府が運営している機関ということもあり、認知度が高く、利用者の年齢層も幅広いことから多くの求職者の目に触れることができます。
さらに、募集条件によっては助成金も出ることもあります。
しかし、掲載できる情報に制限があることには注意が必要です。
【費用相場】
無料
【メリット】
- 助成金を活用して採用を行うことができる場合がある
- コストを抑えて求人掲載できる
【デメリット】
- 掲載開始には一度ハローワークに訪問しなければいけない
- 手書きで求人を書かなければいけない
④紙媒体
代表的な紙媒体のサービスとして新聞折込の「ディースターCLEAR」やフリーペーパーの「TOWNWORK」があります。
大学や専門学校のキャンパス、駅やコンビニのようにエリアを限定して採用広告を掲載できます。
そのため、通勤・通学や買い物をするときに特定の地域を利用する求職者に採用広告をリーチできます。
しかし、一度発行すると修正することが難しいことには注意が必要です。
【費用相場】
1~3万円
【メリット】
- デジタル媒体が苦手な人に届けられる
- 手元に残るため繰り返し読んでもらえる
【デメリット】
- 紙面に掲載できる情報に制限がある
- 新しい情報を届けるのに時間がかかる
⑤SNS広告
スマートフォンの普及にともなって、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokといったSNSを採用広告として利用する企業も増えてきています。
SNS広告では、利用者の年齢や性別、住んでいる地域、興味関心などの膨大な個人情報を活用することができます。
そのため、精度の高いターゲティングを行うことができます。
広告として効果が高い一方で、多くのユーザーからの反対意見が殺到することにより炎上するリスクが常に付きまとっていることには注意が必要です。
【費用相場】
- 自社運用 無料
- クリック課金型 24~200円/1クリック
- インプレッション型課金 400~650円/1000インプレッション
【メリット】
- 拡散力が高い
- 若い世代にアピールできる
【デメリット】
- ユーザーの興味を引くためにクオリティの高さが成果に直結する
- 常に効果を測定し、アップデートする必要がある
⑥自社採用サイト
読んで字のごとく自社のサイト内に採用ページを作成する方法です。
多くの求職者が求人サイトで興味を持った会社を見つけた後、その企業のホームページを閲覧する傾向にあります。
写真の枚数や掲載内容に制限のある求人サイトとは異なり、自社採用サイトでは社風や働き方を自由に伝えることができます。
そのため、自社の魅力を余すことなく求職者にアピールできます。
しかし、魅力を伝えるためのコンテンツを充実させるためには継続的にサイトを運用する必要があります。
そのため、短期的な目標だけではなく、長期的な戦略を考えながら運営することが重要になってきます。
【費用相場】
数十万~数百万円
【メリット】
- 他の採用広告より自由度が高い
- 広告宣伝費を削減できる
【デメリット】
- コンテンツ作成には時間と労力がかかる
- サイト単体で効果を出すのが難しい
採用広告の料金モデル
採用広告には様々な料金モデルが存在し、自社の予算と相談しながら利用を考える必要があります。
①完全無料型
完全無料型とは、広告の作成から掲載、採用まで全て無料で利用できる料金モデルです。
求人に費用をかけたくない企業や、複数の広告を並行して利用したい場合に適していますが、人気企業に応募が集中する傾向があります。
そのため、追加機能として上位表示などのオプションを利用できる場合もあります。
②クリック型掲載
クリック型掲載とは、広告がクリックされる度に料金が発生する料金モデルです。
採用広告に興味を持った採用候補者の数だけ料金が発生するため、無駄な費用を抑えることができます。
クリック型掲載は費用対効果の高い広告ですが、競争の激しい業界だとキーワードによってはクリック単価が高くなってしまいます。
③先行投資型(掲載課金型)
先行投資型とは、特定期間に広告を掲載する段階で料金が発生する料金モデルです。
料金が固定されているため、予算計画が立てやすいですが、採用の成否に関わらず料金が発生するため、大量採用に向いています。
④成功報酬型
成功報酬型とは、求人掲載時に費用がかからず、採用が成立した際に料金が発生する料金モデルです。
これにより、初期費用を抑えつつ採用することが可能ですが、採用が決定した際の費用はやや高額になります。そのため、採用人数が少ない企業に向いています。
採用広告を掲載するための手順
様々な種類が存在する採用広告ですが、広告を掲載するまでの手順は同じことが多いです。
①求人広告会社へ問い合わせ
まずは、求人サイトの運営会社や求人誌を取り扱う会社へ問い合わせを行います。
お問い合わせは業者のサイト内の専用フォームやメール、電話などで行います。
採用の難易度や最適なプランを知るために、明確に掲載プランが決まっていなくても気軽に問い合わせてみましょう。
②採用広告の内容に関する打ち合わせ
お問い合わせ後、サービス提供者側から採用計画などより詳しいヒアリングが行われます。
ヒアリングでは、自社の採用スケジュールや予算、要件やそのほか採用に関する要望を具体的に伝え、自社に最適なプランを提案してもらいます。
③原稿作成のための取材
採用広告の原稿を作成するための取材を行います。
有料プランの場合、業者のライターが企業を取材して原稿の作成と提案を行います。
そのため、事前に取材する社員を選定しておくことで掲載がスムーズに進みます。
その後、ライターから提出された原稿を確認し、それを承認することで広告の掲載内容が確定します。
④採用広告の掲載スタート
掲載がスタートしたら、応募者と求人媒体の管理画面でやりとりを行い、選考を進めて行きます。
採用広告が見られていなかったり、応募が集まらなかった場合は内容を適宜修正する必要があります。
効果的に採用広告を利用するポイント
採用広告を効果的に利用するためのポイントはさまざまですが、特に重要であるものを4つ解説します。
①採用する人物像を明確にする
採用活動を始める前に、まずどのようなスキルを持ち合わせている人を採用するかを明らかにする必要があります。
求人広告を利用することで、自社の求人を多くの人の目に留まらせることができます。
採用ターゲットが曖昧な広告は、求職者からすると自分が求められている人材なのか判断し難いため応募を見送ることが考えられます。
このようなことを防ぐためにも、自社が求めている人物像を明確にしてターゲティングをする必要があります。
②同時に広告を複数利用する
昨今の採用市場は、求職者よりも企業の求人が多い売り手市場になっています。
このように希少な人材が取り合いになっている中で、効率よく採用活動を行うには、予算の中で広告を複数利用して求職者の間口を広げることも重要です。
例えば、求人サイトとSNS広告のように、様々な媒体を組み合わせることで、より多くの候補者にリーチすることが可能です。
しかし、広告の内容を長期間更新せずに掲載し続けると、「常に人手不足である」や「いい加減である」のような印象を持たれてしまいます。
そのため、しっかりとした管理体制を敷く必要があります。
③自社の魅力を十分に訴求する
近年、採用広告を利用する企業は増えています。
そのため、競合他社に埋もれないために、自社の魅力を求職者に十分伝えることが重要です。
ただし、万人にとって興味深い内容である必要はありません。
募集要項をただ羅列するのではなく、自社がターゲットとしている求職者が興味を持ちそうなキーワードが何かを考えることが重要です。
これだけでも、求職者が自社に興味を抱く確率が変わります。
④掲載内容の仮説と検証
採用広告を掲載したあとは、単に求職者からの応募を待つだけではなく、掲載内容を見直す必要があります。
もし採用広告が閲覧されていない場合、それはターゲット層から魅力的な求人であると見られていない可能性が高いです。
そのため、掲載する広告媒体を変えるか、募集条件を見直す必要があります。
また、閲覧されているが応募に至っていない場合は、仕事内容が分かりづらい可能性があります。
これが入社後のミスマッチにつながる可能性もあるので、言葉の表現を変えるなどの対応が必要になります。
このように、原因を振り返らなければ同じ失敗を繰り返すことになってしまいます。
広告掲載が採用につながるためにも仮説と検証を繰り返す必要があります。
活用事例
ここでは、実際に採用広告を活用した事例を紹介します。
1.ヤフー株式会社
国内初の検索サイトとして知られるYahoo!JAPANですが、東京エリア以外の拠点採用が思うようにいかず求人検索エンジンで知られるIndeedで採用広告の掲載を始めました。
採用広告に使われる文言や応募者に見やすいスマートフォンサイトのカスタマイズなど、さまざまな角度から修正を行うことで応募数を倍に増やすことに成功しています。
【参考】Indeedお客様成功事例 - Yahoo JAPAN様
2.株式会社キャリアデザインセンター
株式会社キャリアデザインセンターは、「type」を中心とした総合型の人材サービス業を展開しており、採用広告においては自社採用サイトのコンテンツを充実させています。
具体的には、実際に会社で働いている人のインタビューやフォトギャラリーをサイト上に掲載することで、自社での働きに対するリアルなイメージを提供しています。
さらに、社内制度を単なる文字列に留めず、イラストやスケジュールを表にしたり視覚的にわかりやすく紹介しています。
これにより、求職者が応募前に感じる不安を軽減し、応募するまでのハードルを低くすることに力を入れています。
3.フリー株式会社
フリー株式会社は、クラウド会計サービスを皮切りに、業務を効率化するクラウドサービスを開発・提供している会社です。
自社採用サイトでは、豊富なコンテンツを提供することに注力しています。
社員インタビューのみならず、自社の技術発表資料や社内研究資料も積極的に公開しています。
こうした取り組みにより、自社の技術力の高さをアピールし、自社が欲する優秀な人材の獲得に力を入れています。
【参考】採用ブログ|採用情報|フリー株式会社
【参考】技術発表資料・社内研修資料 - freee Developments Hub
まとめ
採用広告を利用することで、自社の求人情報を多くの人に届けることができます。
ただし、応募者を増やすには自社の採用ターゲットに合わせた戦略を立てる必要があります。
また、利用する媒体によっては採用スケジュールと合わない可能性もあります。
そのため、各広告媒体の特徴や自社の状況を考慮する必要があります。
採用広告を活用する際には、本記事で紹介したそれぞれの特徴と効果的に利用するためのポイントを参考にして、採用活動に役立ててください。