採用計画は採用活動を成功に導くために、最も重要であるといっても過言ではありません。
そんな重要な採用計画は、注意すべきポイントが多く、立案にも時間が掛かります。
本記事は
「採用計画の立て方が分からないため、毎年就職活動の途中で修正をしている」
「目標の採用人数はあるが、そこに至るまでのプロセスが上手く立てられていない」
といった人事の方におすすめです。
Matcher Scoutという、新卒のダイレクトリクルーティングサービスを運営し、100社以上の採用を支援してきた弊社の視点から
- 採用計画の立て方
- 採用計画を立てるメリット
- 採用計画のテンプレート
などを紹介していきます。
採用計画とは
「採用計画」とは、採用活動を進めるうえでの指標となる計画のことです。
経営方針や事業計画に基づき、新しい人材の採用や既存社員の異動・配置の計画を立てる必要があります。
具体的には事業計画と照らし合わせ、「いつ」「どのような人材を」「どの部門に」「何名」などを決めていきます。
採用計画を立てるときに決めることは主に以下の4つです。
- 採用スケジュール(いつ)
- 採用要件(どのような人材を・どの部門に)
- 採用人数(何名)
- 応募者の採用方法
採用計画を立てるときは、新規採用だけではなく、人員整理やアウトソーシングなどの外部人材の活用も視野に入れ計画を立てます。人員の配置・採用は、事業計画の達成に関わる非常に重要なポイントです。
粗雑な採用計画では、求める人材を確保できない、ミスマッチによる早期離職などの問題につながりやすいため綿密な採用計画が求められます。
採用計画を立てる理由
では、なぜ内定承諾を獲得する際に「採用計画」を立てる必要があるのでしょうか。
理由は以下の4つです。
- 採用の質を向上し、採用の成功率を高めるため
- 採用に関わる関係者の認識を統一するため
- 採用活動の進捗を確認するため
- ミスマッチ防止のため
1.採用の質を向上し、採用の成功率を高めるため
このグラフは、自社の採用活動の見通しについて株式会社キャリタスが調査した結果です。
2025年卒の採用活動は、「非常に厳しくなる」と答えた割合が47.5%、「やや厳しくなる」と答えた割合は37.7%で、あわせて85%もの企業が採用活動が厳しくなると回答しています。
さらにこの割合は年々上昇しており、2026年卒の学生の採用も厳しいものとなることが予想できます。
採用活動が厳しくなると考えている理由として、以下のように回答されていました。
「インターンシップの応募が少なく、本採用につながると思えない。 」
「早期化の加速が進む理系採用は、年々難易度が上がっていると感じる。」
「他社も採用を強化しているため、学生の囲い込みが難しくなる。 」
【参考】株式会社ディスコ キャリタスリサーチ 「2025 年卒・新卒採用に関する企業調査-採用方針調査」
企業間での応募者の取り合いが激しくなるいまだからこそ、採用を成功させるために綿密な採用計画を練ることが非常に重要なのです。
2.採用に関わる関係者の認識を統一するため
求人要件や採用フロー、採用評価基準などを明確にしておくことで、関係者間の認識の齟齬を防ぐことができます。
採用には人事担当者だけではなく、部門責任者や役員など多くの関係者が携わるため、認識が違ってしまうと、採用の遅れやミスマッチといった問題につながりかねません。
採用計画を立て認識を合わせることにより、無駄な作業・コストの発生を防ぎ、効率的な採用活動が実現できます。
3.採用活動の進捗を確認するため
「今年の冬までに10名採用したい」というように、採用計画を立てる段階で「いつまでに何人採用するのか」決めておきましょう。
それにより、立てた計画どおりに採用活動が進んでいるのか、どこに採用コストが発生しているのかなど、採用計画とのずれを認識することができます。そのため、採用活動の進捗が芳しくない場合にもいち早く対策を打てるようになるのです。
最終的なゴールを設定することはもちろんのこと、そのゴールを達成するために「〇月までに〇名採用する」とマイルストーンを決めておくと軌道修正しやすくなります。
4.ミスマッチ防止のため
採用計画を立てることで、企業と求職者のミスマッチを防止することができます。
例えば、採用スキル/経歴を明確にすることで、応募者のスキルや経験を適切に評価可能です。
また、採用手法を多角的に検討することで、より多くの求職者に自社の魅力を伝えることができます。採用ミスマッチを防止することで、早期離職を防ぎ、人材の定着率の改善を期待できます。
採用計画を立てる前に行いたい準備
採用計画を立てる前に、行っておきたい準備があります。これらの準備を行ってから採用計画を立てることで、競合他社と差別化ができ、より自社にマッチした人材を集めることが可能になります。
①直近の採用市場を把握する
まずは採用市場全体の動向を把握することが重要です。
市況や景気などを踏まえ、市場業界が「売り手なのか」「買い手なのか」を定期的に情報収集し、自社が置かれている状況を客観的に把握する必要があります。
これから策定する採用計画にとって最も基本的な指標となるので、必ず確認するようにしましょう。
②「採用上の競合」を調べ「差別化」ポイントを抑える
採用上の競合とは「採用したい人材」を取り合う他社を指します。採用上の競合について調べていくことは、「相場観」を知ることが狙いとなります。
相場観とは「相場に関する見方」のことを指します。ライバル各社の給与や待遇などの相場観を知っておかなければ、自社の魅力も適切に判断できません。
例えば、「有給取得率50%」という点も、「相場で見るとどうか?」という視点が大切です。
応募者に選ばれるための魅力をアピールするには、競合のリサーチと分析が必要不可欠なのです。
5つの手順でできる採用計画の立て方
採用計画を立てる場合は、以下の流れで行うのがおすすめです。
▼採用計画を立てる5つの手順
- 採用要件と採用人数を設定する
- 採用フローを設定する
- 採用人数を達成するための指標(KPI)を設定する
- 採用チャネルごとに採用人数を決める
- 採用にかかる工数を算出する
下記にて、具体的に紹介していきます。
①採用要件と採用人数を設定する
採用計画を立てる前の準備が終わったら、実際にどのような人材(=採用要件)をどのくらい採用するべきなのか(=採用人数)を設定していきましょう。
採用要件や採用人数を決めるときには、以下を考慮しましょう。
- 自社の経営理念や事業計画
- 各部署が求める人材
a. 自社の経営理念や事業計画
自社の経営理念や今後の事業計画を把握することは、採用要件を決定するうえで重要です。
今後、会社が何を目指して何に力を入れたいかによって、どのような学生を採用するかは変化するでしょう。
b. 各部署が求める人材
また、各部署がどのような人材を求めているかを把握することが重要です。各部署へヒアリングを行い、どのようなスキルや素質を求めているかを把握します。
同時に、各部署の人員構成についても記録しておくことが大切です。各部署の人員構成とそれぞれの部署が求める人材を考慮して、採用要件を決定しましょう。
②採用フローを設定する
採用人数が決まったところで、採用フローの設定をします。
今現在新卒採用を行っている場合は既存の採用フローに置き換えてみてください。新卒採用を新規で始める担当者の方は、学生のエントリーから内定まで、どのようなフローで進めるか決めていきましょう。
以下の画像は採用フローの設定の例となります。
例えば内定承諾者を10人と設定した場合、10人の内定承諾を達成するまでの採用フローを決めていきます。
採用フローを決めると同時に、いつから採用活動を始めていつ終了するのか、採用スケジュールも決めましょう。
具体的に説明会や面接の開催時期まで決めておくと、スムーズに採用活動を進めることができます。
さらに、採用フローの各工程における率の算出を行っていきます。
エントリーから説明会への参加率など、次のフローに進む割合をこれまでの採用実績から計算していきます。
それを加えたものが下の画像になります。
採用フローと同様に、新規で新卒採用を始める場合は競合他社の数値を参考に算出してみましょう。
(ここで各率に当てはめた数値は例です。実際の採用現場とは異なるので注意してください。)
③採用人数を達成するための指標(KPI)を設定する
KPIとは「Key Performance Indicators」の略で、目標を達成するために設定する指標のことです。この場合、採用人数を達成するためにそれぞれの工数でどれくらいの人数を集めれば良いかという指標になります。
内定承諾者数から目標とするエントリー数(KPI)の求め方は以下の式にあてはめて算出することができます。
全て算出すると次のようになります。
今回の数字を例に上げると、内定承諾10人を獲得する際のエントリー数のKPIが499人、説明会参加数が449人……とKPIが設定できました。 (今回は小数点以下第1位を切り捨てて算出しています。厳密な計算とは異なる場合があるので注意してください。)
このように、①~③で採用人数の決定、採用フローの決定、KPIの決定をすることが出来ました。
④採用チャネルごとに採用人数を決める
エントリー数が計算できたら、次に採用チャネルごとに何名のエントリーを獲得するか算出しましょう。
以下では、ダイレクトリクルーティング・人材紹介・ナビ媒体で集客することを仮定して算出しています。
例えば、エントリー数を500名とした場合、ナビ媒体は300名、人材紹介は100名、ダイレクトリクルーティングは100名と計算します。
自社の採用課題やどのような人材を求めるかで各採用チャネルの人数を決めていくことが必要です。
また、過去の実績と比較してエントリー数が不足しそうな場合や、余裕をもって運用したい場合は新たなチャネルを検討していきましょう。
以下の表は、ナビ媒体、人材紹介、ダイレクトリクルーティングのそれぞれの特徴とメリット、デメリットについてまとめたものです。
それぞれの特徴を把握しておくことで、自社に適した採用チャネルを使うことができます。
なお、ナビ媒体や人材紹介などは応募を待つ形式のため、エントリー数をコントロールすることは難しいです。
一方ダイレクトリクルーティングは自ら候補者に働きかける形式のため、エントリー数をコントロールしやすい傾向にあります。
ダイレクトリクルーティングをチャネルの1つとして利用し、他チャネルからの応募が芳しくない場合は計画をカバーするように運用できると、安定した集客が実現できるようになります。
⑤採用にかかる工数を算出する
最後に行うのが、エントリー数を確保するための工数確認です。
ナビ媒体と人材紹介は「待つだけ」なのでエントリー数を確保するために必要な工数はほぼかかりません。
一方でダイレクトリクルーティングは、候補者を探しスカウト送信をする必要があるため、工数がかかります。
工数をあらかじめ見積もっておくことで、限られた採用担当者のリソースでエントリー数の目標が達成できるかを確認することができます。
下記はダイレクトリクルーティング等、スカウト型の採用活動を行った場合に掛かる工数をまとめた表です。
採用計画と同様に、ダイレクトリクルーティングの各フローにおけるKPIを設定します。
開封率・返信率・エントリー率は、過去の実績から算出して当てはめてみてください。
上記の例をもとに下記にて解説します。
過去の実績を基に、ダイレクトリクルーティングで100人のエントリーを獲得するには500人へのスカウト送信が必要であることが分かりました。
また候補者1人あたりの選定時間に2分、スカウトの作成に3分掛かっていたことも確認できました。
この数値を基に、500人にスカウトを送信すると考えると、合計で42時間掛かることが分かります。(候補者選定2分×スカウト作成3分×500人)
このように、目標エントリー数から逆算して計画を立てていくと、人事担当者がどのくらいの時間を割かなければならないかがわかります。
工数を見積もってみて「現在の人事担当者だけでは対応できない!」と思ったら、採用代行を検討しましょう。
採用にかかる工数を削減したいならMatcher Scout
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新卒採用と中途採用の採用計画の立て方の違い
新卒採用と中途採用の採用計画の立て方の違いは、主に以下の3つです。
採用時期
新卒採用は、一般的に4月入社に向けて、前年の秋頃から採用活動が始まります。
一方、中途採用は、欠員が発生したタイミングや、新規事業立ち上げなど、採用の必要性に合わせて、いつでも採用活動を開始することができます。
採用人数
新卒採用は、入社後の研修やOJTなど、人材育成に時間がかかるため、採用人数を少なく設定する傾向があります。一方、中途採用は、即戦力を求めるため、採用人数を多めに設定する傾向があります。
採用スキル/経歴
新卒採用は、ポテンシャル重視で、将来性や成長可能性を評価します。一方、中途採用は、即戦力を求めるため、スキルや経験を重視して評価します。
新卒・中途採用計画のテンプレート例
実際に新卒採用・中途採用それぞれの採用計画のテンプレート例をご紹介します。
新卒学生採用計画書テンプレート
採用計画に必要な項目をまとめたものが以下のフォーマットです。こちらを活用して採用計画書を作成していきましょう。
採用目標
募集職種 | 営業、エンジニア |
採用人数 | 営業名20名 エンジニア5名 |
求める人物像 | ・好奇心旺盛な学生
・成長意欲の高い学生 |
<求める人物像>
自社が採用したい学生像を、フォーマットを使って明確にしておくことも重要です。
ソフトスキル | ハードスキル |
must(絶対に必要) | |
wants(あったらよい) |
上記の様に、求める学生像をソフトスキルとハードスキル、絶対に必要なスキルと合ったらよいスキルに分けると、より自社の求める学生像が明確になります。
採用チャネル
採用チャネル | ナビサイト○○に出稿、充足状況に応じて別媒体の利用を検討する |
選考フロー
選考フロー | 書類選考→筆記試験(SPI)→一次面接(若手社員)→二次面接(マネージャー)→最終面接(役員) |
採用スケジュール
4月(大学3年) | ・大学4年生の動向を気にしつつ、次年度以降の採用計画を立てる
・計画に基づき、必要な人員数を確保する ・採用のペルソナを設定 ・採用フローを設計 |
5月~6月 | ・夏季インターンシップの募集を開始
・募集要項を作成&周知する ・夏季インターンシップで利用する媒体を選定 |
7月 | ・夏季インターンシップの選考 |
8月~9月 | ・夏季インターンシップ |
10月 | ・秋、冬インターンシップの選考を実施 |
11月~1月 | ・これまでの採用活動を振り返り、採用媒体を見直す
・秋、冬インターンシップの開催 |
3月 | ・本選考の広報を開始
・ナビサイトへ掲載 ・説明会を開催 |
4月(大学4年) | ・1次、2次選考開始
・選考の突破率によって、別の採用媒体を導入する |
5月 | ・最終選考
・順次内定出し |
6月 | ・内定出し |
10月 | ・内定式の実施 |
内定出し後 | ・内定者フォロー |
中途採用計画書テンプレート
続いて中途採用計画書のテンプレートを紹介します。
採用目標
募集職種 | エンジニア |
採用人数 | 3名 |
求める人物像 | ○○でプログラミングをした経験あり
勉強熱心であること |
採用チャネル
採用チャネル | ダイレクトリクルーティング/人材紹介 |
選考フロー
選考フロー | 書類選考→スキルテスト→面接(2回) |
採用計画を立てる3つのメリット
①求める人物像が明確化することにより採用成功率が高まる
採用計画を策定するとき、採用要件として求める人物像を明らかにすることで、自社に必要な人材が集めやすくなります。
「どのような人材がいたらより企業が更なる成長を遂げることができるのか」「○○人いたらより事業拡大を図ることができるのか」など定量的かつ定性的な項目を洗い出しましょう。
それにより、自社が「本当に求めている人材」に対して効果的にアプローチすることができます。
②採用活動の進捗に応じた対策が講じられる
採用計画を事前に立てることにより、「〇月に〇人採用する」必要があるかを可視化できます。その計画がうまくいっているか、そうでないかによって企業が取るべき今後の動きが変わってきます。
そのため、行き当たりばったりではなく、採用をスムーズに進めるためにも事前に採用計画を策定します。
その計画をもとに「現在の採用活動が有効か否か」を判断し、その状況にあった対応を行なっていく必要が生じるのです。
③社内の人材管理や見直しにもつながる
採用計画は、最初に自社の現在の人員構成を把握する必要があるため
各部署において何人の社員がいるのか、どんな仕事内容でどんな人的課題があるのか、今後の業務繁忙など人材の状況を管理することができます。
社員のキャリア希望や家庭の状況なども含めて管理することで、採用だけでなく、配置や異動にも活用でき社員活躍へと繋がるでしょう。
採用計画を立てるときの3つの注意点
➀早期から採用計画の策定に取り掛かること
近年、就活の早期化が進んでいることにより、人材獲得の競争が激化しています。
その競争を乗り越えるために、採用計画を早いうちから作成し始めることで他社よりもリードすることができます。
前年度の採用計画などがある場合、その資料を参考に一度計画を策定してみることをおすすめします。
②エントリー数など数値の見積りには余裕を持たせること
求職者よりも求人数のほうが多い「求職者有利」の時代に突入し、就活生にとって選べる企業の幅が広がりました。
他方、企業側にとっては選ばれることが難しい局面に突入しているため、どれだけの人がエントリーし、選考に進んでいるかなど、目標数値をある程度高く見積もったほうが採用計画としては円滑に進むでしょう。
そのため、エントリー数など母集団の形成は多めに見積もり、余裕を持たせることをおすすめします。
③内定辞退に関する理由を把握しておくこと
内定辞退者の理由を知ることで、自社の不足しているポイントの把握が可能です。
辞退する理由としては、以下のことがあげられます。
- 他企業の内定が先に出ていた
- 就職条件が合わなかった
- 会社のイメージが応募時と違った
- 面接者の雰囲気が悪かった
辞退理由をよくチェックし、次の採用活動までに改善できる部分を見直していきましょう。
④採用計画を定期的に見直す
採用計画は一度立てれば完成ではありません。年度ごとはもちろんですが、採用活動中にも採用計画によって自社が求める人材を集めることができるのか見直すと、より精度の高い物になるでしょう。
さいごに
いかがだったでしょうか。
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本記事以外にも、当HPではダイレクトリクルーティング運用に役立つ記事を沢山掲載しているので、是非参考にして頂ければと思います。