- HRテックとは
- HRテックの国内市場と今後の動向
- HRテックを導入する際のポイントや注意点
HRテックとは?
みなさんは「HRテック」についてどのような印象をお持ちでしょうか?
HRテックとは、「Human(人) Resource(資源) Technology(技術) 」の造語で、
読み方は「 HR(エイチアール) テック 」です。
ビッグデータやAI(人工知能)といった先進技術を用いて、人事業務におけるさまざまな課題を解決するためのサービス・技術のことを指します。
採用管理・人材配置・労務管理など人事業務のさまざまな領域において、先進技術の力で人事業務に変革をもたらす点が、従来の採用システムとの違いであるといえます。
HRテックの役割は「人材管理」の効率化
多岐にわたる活用方法を持つ「HRテック」ですが、大きく言えば役割は1つです。
それは「人材管理」の効率化です。
人材管理とは、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち、ヒトに関する全ての業務を含みます。
採用業務や勤怠管理・給与管理はもちろん、人材配置やマネジメント、社会保険の手続きや年末調整も人材管理に含まれます。
例えば「各人材がどの部署に適しているのか」をデータから分析することで、部署のミスマッチを減らすなど、HRテックを活用することで、人材管理業務を効率化・最適化できます。
結果的に離職率の低下につながり、企業と社員どちらも満足した状態での働き方が目指せます。
HRテックが注目される理由とは?
HRテックが「人材管理」に役立つことは分かりましたが、HRテックの需要はなぜ高まっているのでしょうか?
それを考える上で重要な3つのポイントが存在します。
①働き方の多様化
昨今の新型コロナウイルスや働き方改革の影響を受け、日本では「働き方の多様化」が注目を浴びています。
テレワークの導入により、必ずしもオフィスに出社する必要はなくなり、自由な場所・時間で働ける働き方が浸透しました。
このような場所や時間を問わない働き方は、コロナが終息した後も残ると予想されます。
こうした多様化のニーズに合わせて活用することができるのがHRテックです。
テレワークの課題として、従業員の勤務状況が見えにくいことや、コミュニケーションの不足によるモチベーション低下などがあげられるでしょう。
実際に、リクルートが調査したテレワークに関する実態調査では、
【参考】株式会社リクルートマネジメントソリューションズ『テレワーク環境下で管理職が不安に感じていることやここが身につけておくべきスキルが明らかに』
- 部下がさぼっていないか心配
- 指示だしや指導がしづらい
- 心身や健康面の悪化の兆候など見えないため不安
- コミュニケーション低下によりチームビルディングができない
などの点に課題を感じている管理職の方が多く、
「テレワーク経験者」「テレワーク未経験者」ともに多くの不安を抱えていることがわかります。
そこで、これらの課題を解決するために役立つのがHRテックです。
テレワークが普及する中で多くの方が使うようになった「 ZOOM 」や「Teams」などもHRテックの一つです。
従業員同士が映像と音声をつなげながら作業をすることで、さぼり防止や、オンライン上でも円滑にコミュニケーションを取ることにつながります。
他にも、HRテックの一つである「ログ管理ツール」は、在宅勤務中の社員がPCを立ち上げてからPCの電源を切るまでの操作履歴を管理できます。
これによってさぼり防止だけでなく、自主的な残業による過労の防止につなげることができるのです。
②労働人口の減少
近年、少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、採用競争が激化しています。
HRテックを用いて採用活動を一括管理して業務を効率化することで、採用広報や学生との相互理解により多くの時間・工数をかけることができるようになります。
このことは採用力向上だけでなく、入社後のミスマッチ防止にもつながるでしょう。
また、限られた人的資本をいかに有効活用できるかが企業の競争力を左右するカギとなっています。
社員のスキルや価値観などのデータをもとにした戦略的な人材配置によって、既存の人材を有効に活用することができるのです。
③テクノロジーの進化
クラウドをはじめとするテクノロジーの進化もHRテックが普及した要因のひとつです。
従来のオンプレミス型サービスでは、企業がシステムを導入する際は自社でサーバーを購入する必要があり、コストや運用管理などの大きな負荷がかかっていました。
しかし、クラウド型サービスの登場により、自社でサーバーを購入する必要がなくなり、運用にかかる負担も以前よりぐっと軽減されました。
このように、オンプレミス型サービスからクラウド型サービスに移行したことが、多くの企業にHRテックが支持される様になったポイントの1つです。
「オンプレミス型」
自社でサーバーを購入し、業務に合わせた管理システムを開発・運用することが可能です。しかし、自社のネットワーク内での利用になるため、ネットワークがきちんと整備されている企業が利用するサービスとなっています。
「クラウド型」
以前まではSaaS/PaaS やASPと呼ばれ、インターネット接続を用いて利用することができるサービスです。
自社でサーバーを購入する必要はなく、インターネットが利用できる環境であればどこでも使うことができるため、導入コストの面でも多くの企業に導入される様になりました。
クラウド型サービスはオンプレミス型よりもセキュリティ面で劣るというデメリットもありましたが、最近では暗号化通信技術の向上やIPアドレス制限などの機能により、セキュリティレベルも高まっています。
HRテック市場の成長
ミック経済研究所の調査によると、HRテックの国内市場規模は2021年段階で587億7000万円に達しています。
これは前年比32.4%増であり、2027年度には2880億円に拡大すると予想されています。
また、HRテックの世界市場規模は2021年に229億米ドルとなりました。
今後も7.5%のCAGR(年平均成長率)で拡大を続け、2022年には246億2,000万米ドル、2030年には472億米ドルに達すると予測されています。
【参考】ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2022年度版 」
【参考】株式会社グローバルインフォメーション「HR(人的資源)テックの世界市場 - 市場規模、シェア、成長分析」
HRテックが活用される主な領域
HRテックが活用される領域は、
- 採用管理
- 労務・勤怠管理
- 人材管理・タレントマネジメント
- エンゲージメント管理
など多岐にわたります。
それぞれの領域について詳しく見ていきましょう。
①採用管理
採用管理システムでは、過去の採用データを蓄積し、機械学習をさせることができます。
膨大な応募者の管理を簡単に行うことができるため、選考状況や応募者の情報が見やすくなり、作業効率を上げられる点も採用管理システムの大きな利点です。
【参考】ATS(採用管理システム)とは?無料サービス7選を徹底比較!
②労務・勤怠管理
労務・勤怠管理システムでは、
- 入退社
- 保険
- 年末調整
- 出張・経費の手続き
- 休暇
- 勤務状況
といった事務的な面をシステム化することで、作業を効率化できることが特徴です。
また、給与計算もシステム上のデータをもとに算出できるため、さまざまな事務業務をカバーできるというメリットがあり、多くの企業に採用されています。
③人材管理・タレントマネジメント
「適材適所」の人材配置を行うために役立つシステムです。
データを集めて分析したり、個人のモチベーションや能力にあった部署を選定したりすることが可能になり、組織としての力をつけていくのに最適です。
また、人事担当者が表面的に見た評価ではなく、社員の隠れたスキルセットや将来の捉え方なども把握することができるため、組織づくりの点で重要なシステムです。
④エンゲージメント管理
社員ひとり一人の状況・意識を分析することで、組織全体の現状を把握することが可能になります。
個人の状態を把握することができるため、個人が抱えている問題の改善を図り帰属意識を高めることや、よりモチベーションを高く仕事をしてもらうことにつながり、結果として強い組織を創ることが可能になるのです。
HRテックを導入するメリット
これまで「HRテックとは何か」「なぜHRテックはここまで伸びたのか」という部分に触れてきました。
ここからは、HRテックを導入するメリットについて5つ紹介していきます。
①人事業務の効率化
HRテックが活用される中で大きな力を発揮してくるのがこの「人事業務の削減」です。
AI面接官による面接やオンラインでの入社手続きなど、人事業務の工数を削減・効率化することが可能になります。
また「年末調整」や「契約」などの業務も、HRテックを用いることで効率化を図ることができるようになりました。
人事の業務は何かと工程が多く時間がかかるため、この「HRテック改革」は企業にとって大きな影響をもたらしたと考えられます。
②企業にマッチした優秀な学生をより正確に選べる
近年、AI・機械学習を用いて過去のデータを採用に活用する企業が増加しています。
例えば、自社で活躍している社員のエントリーシートをAIに学習させることで、応募者のエントリーシートの中から活躍してくれそうな人材を判断してくれます。
このように、HRテックを活用することで、より企業にマッチしていて活躍してくれそうな優秀な学生を正確に選び出すことが可能になるのです。
③組織マネジメントのデータ活用にも有効
人事担当者に判断を委ねられていた組織マネジメントにも大きな影響を与えています。
大きく分けて、以下の2つが効果を生むと考えられます。
(1)評価基準の明確化
社員一人一人の働きを可視化し、データとして算出することで評価基準を明確化することが可能になります。
これにより客観的な評価が可能になり、社員の満足度を高められます。
一方、平等な評価が得られる環境では、長時間勤務を行い過労状態になる社員が出る恐れもあるでしょう。
HRテックを用いて勤務状況の管理も同時に行うことで、こうしたリスクを防ぎ、より洗練された組織マネジメントにつながります。
(2)データに基づいたタレントマネジメントが可能
社員ひとり一人が持つ特性・志向は異なります。
得意不得意やモチベーションの上げ方にも差があるため、人事には見えていないスキルセットや個人の価値観なども、企業が把握しておくべき重要な要素です。
HRテックを用いることで、こうした個々のデータを集積・分析し、より効果的な人材配置や組織マネジメントを行うことが可能になります。
評価基準が明確化され、自分にあった部署で働くことができれば、社員たちは自然と帰属意識が高まり、より高いモチベーションで働くことができるでしょう。
④離職率の低減
多くの企業で人事の課題となっているのが「離職率の高さ」です。
一般的に、離職の主な原因は企業と学生のミスマッチと言われています。
- キャリアアップができない・やりたい仕事ができない・労働時間が長すぎるなど、入社前のイメージと入社後の現実が違う
- 思ったように成果を出せない
などといったイメージと現実のギャップや、企業や業界への理解不足といったものが原因としてあげられます。
このようなギャップを無くすためには、採用段階でもっとコミュニケーションをとることが重要です。
人事業務の効率化により、学生とコミュニケーションをとる時間が確保できるとともに、組織マネジメントの質も高めていけるため、結果として離職率の低減につながるのです。
HRテックを導入するステップ
ここまででHRテックの意味や導入のメリットについて見てきました。
では、実際にHRテックを導入する際はどのようなステップが必要になるのでしょうか?
①導入目的に基づいて運用計画を立てる
まずは、なぜHRテックを導入するのか目的を明確にしましょう。
現在の人事業務における課題を洗い出し、解決すべき課題の優先度やボトルネックを特定します。
例えば「離職率が高い」という課題がある場合、根本的な原因として、採用のミスマッチや労働環境などいくつかの要因が考えられるでしょう。
課題が明らかになったら、何年後にどのような状態になっていたいのかゴールを設定し、そこから逆算して運用計画を立てます。
その際、現場のマネージャーやバックオフィスの管理職などにも議論に加わってもらいましょう。
②サービスの選定
運用計画を立てたら、それに沿ってHRテックの選定を行いましょう。
HRテックは多種多様なものが存在するため、複数のサービスを比較検討して自社の課題解決に適したものを選ぶ必要があります。
サービスを選定する際には、単に課題解決につながりそうかだけではなく、自社が導入している既存システムとの相性にも注意してください。
既存システムとの連携がうまくいかないと、入力や管理が二元になってしまうなど無駄な工数が発生する可能性があります。
③トライアル運用の実施
導入するHRテックを選定したら、本格的な導入の前にトライアル運用を行いましょう。
トライアル運用を行うことで、見落としていた課題が明らかになることもあります。
期間と適用範囲を定めて効果測定を行うことで、本導入時の効果をより高める策を講じたり、運用ルールなどを周知する際に役立てることができるでしょう。
④PDCAを回す
正式に導入した後は、1年未満の短いスパンで効果検証を行い、改善を繰り返してください。
使いづらい点はないか、コストは削減できているか、業務は効率化できているかなど、導入効果を計測し、さらなる効率化を図りましょう。
HRテックを提供する企業7選とサービスを紹介
ここからは、HRテックの企業と各社が提供しているサービスをご紹介します。
カオスマップもご紹介しています。
株式会社リクルート
株式会社リクルートは、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
Airワーク 採用管理
特徴:求人検索エンジンIndeedへの掲載ができる無料採用支援ツール
リクナビHRTech 採用管理
特徴:応募から入社までの選考状況をクラウド上で一元管理する無料採用管理システム
Airシフト
特徴:シフトの作成と管理がひとまとめで行えるシフト管理サービス
Geppo
特徴:個人と組織の課題をそれぞれ見える化し、働き方改善をささえるHRサーベイ
株式会社ビズリーチ
株式会社ビズリーチは、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
HRMOS
特徴:勤怠管理や人財活用などの各システムを展開
株式会社SmartHR
株式会社SmartHRは、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
SmartHR
特徴:労務を全てデジタル化する労務管理サービス
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社は、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
MITERAS仕事可視化
特徴:仕事を可視化しホワイトな働き方を実現する労務管理ツール
MITERAS 勤怠
特徴:クラウド型勤怠管理システム
HITO-Link CRM
特徴:タレントプールの構築を行う採用管理システム
エン・ジャパン株式会社
エン・ジャパン株式会社は、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
HR OnBoard
特徴:新入社員の入社後フォローを支援するオンボーディングシステム
エンカレッジ
特徴:従業員のリスキリングを支援するe-ラーニングシステム
Talent Viewer
特徴:人事コンサルのサポートも受けられるタレントマネジメントシステム
Hirehub
特徴:採用プロセスを効率化する無料の採用管理サービス
株式会社マイナビ
株式会社マイナビは、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
crexta
特徴:人材開発・組織開発を支援するタレントマネジメントシステム
Entry Pocket
特徴:アルバイト、パート向けの採用管理サービス
ACCESS ON LINE
特徴:新卒採用に特化した採用管理サービス
freee株式会社
freee株式会社は、主に以下のHRテックサービスを展開しています。
A-SaaS
特徴:会計・税務・給与などをクラウド上で管理できるシステム
freee人事労務
特徴:労務事務を一気通貫で管理できるクラウドサービス
HRテック・カオスマップ(業界地図)
以下は、労務管理・採用・求人・タレントマネジメントなど、HRテックで活用される主なサービスをまとめたカオスマップです。
HRテックの活用により成果が出た例
①株式会社日立製作所
株式会社日立製作所では、世の中の流れが「コトづくり」に変化しつつある中で、「モノづくり」に特化した人財が多いということが課題でした。
そこでHRテックを導入し、「コトづくり」に特化した人財を採用することで、5%程しかいなかった「コトづくり」人財を15%まで上げることに成功しました。
そして更なる問題として、タレントマネジメントの点に関しても改善させていこうと考え、
- 「生産性の向上」
- 「配置配属のフィット感の向上」
を目指し、「AI分析」や「ピープルアナリティクス」を活用しながら、現在も新たな施策を打ち続けています。
【参考】Hitachi, Lt_人事の実践経験者が語る! HRテックを活用した日立の働き方改革の実例
②エイベックス株式会社
エイベックス株式会社では、採用管理ツールを複数使用していることでミスが起こりやすく、タイムロスを生み出してしまっているという課題を抱えていました。
従業員数も膨大であるため管理業務に時間を取られてしまい、新たなチャレンジができないなど、事業の停滞といった意味でも解決しなければならない問題でした。
そこでHRテックを導入したことで、採用管理システムの導入で管理ツールが統一され、管理がシンプルになり、無駄な工数を約4割削減することに成功しました。
また、連絡漏れや単純なミスなどが減り、採用業務にかける不安というものが払拭されたため新たなチャレンジが可能となる事で更なる改革を進めることができるようになりました。
③ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社では、年間3万人の求人応募があり、採用業務に多大な人的資源を費やしていました。
膨大な人数のエントリーシートの合否判定を行わなければならないため、人事担当者ごとの判定の偏りやヒューマンエラーが起きやすいという課題もありました。
結果として、早期退職や求める人材と異なる人材を採用してしまうといった事態が起こってしまっていたのです。
これを解決するために同社は「AI」によるエントリーシートの振り分けを導入しました。
多大な時間を要しヒューマンエラーも起きやすいエントリーシートの振り分けに「AI」を起用することで、振り分けにかかっていた時間を約8割削減することに成功しました。
それだけでなく、AIに過去の応募者のデータを学習させたことで、企業にマッチした学生を採用することが可能になりました。
【参考】日本の人事部_AIによるエントリーシート選考が“攻めの採用”を加速させる 500時間の工数を削減した“ソフトバンク流”未来の新卒採用(前編)
④株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは、社員数の増加に伴い、適材適所な人財配置の円滑化を目的として「人材科学センター」を設立しました。
「人材科学センター」では従業員の志向やコンディションといった主観的なデータを集めて分析し、組織活性に役立てます。
同社は、チームと個人のコンディションの差や、マネージャーと個人のコンディションの差など、従業員ごとのコンディションの差を問題として捉えています。
ただし、企業文化にのっとったHRテックの活用を基盤としており、「AI予測」や「マッチング」を用いるのではなく、あくまで情報を集めてPDCAを回していくためのツールとして活用している様子です。
【参考】HR NOTE_「主観データを収集するだけでわかった」組織と個人のマッチング|サイバーエージェント人材科学センターに聴く#1
中小企業がHRテックを導入するべき理由
中小企業がHRテックを導入するべき理由は2点あります。
- 社内の雰囲気の活性化
- 業務のフローの改善
どちらも、大手企業になればなるほど浸透するまでに多くの時間が必要ですが、
中小企業であればちょっとした業務フローの改善や、社内雰囲気の活性化で、大きな力を生み出すことが可能です。
また、クラウド型サービスの普及により、初期コストやランニングタイムも抑えて活用できる為おすすめの理由と言えます。
HRテックを運用する際の注意点
ご紹介したように、HRテックを運用することによってさまざまな効果が期待できます。
以下では、HRテックを効果的に運用するために注意すべき点をご紹介します。
中長期的な視野を持つ
HRテックは、導入してからすぐに効果が出るわけではありません。
自社の情報をデータとして蓄積し、活用するには時間も労力もかかります。
HRテックを効果的に活用するには、利用者側のリテラシーも必要です。
そのためHRテックを用いた課題解決は、中長期的な視野を持って取り組むようにしましょう。
個人情報の取扱い
HRテックを活用した人材管理では、膨大な個人情報を集積し取り扱います。
セキュリティ対策をしっかりと行い、社員の個人情報やプライバシー保護に注意して運用しましょう。
HRテックに依存しない
HRテックはあくまでも人事業務を効率化し、サポートするツールです。
HRテックに過度に期待したり依存したりすることは避けましょう。
データばかりを鵜呑みにするのではなく、現場の状況や意見も鑑みながら、「人」が主体となって業務にあたるということを念頭に置いてください。
HRテックで使われるテクノロジーとは?
ここからは、HRテックで使われるテクノロジーにはどのようなものがあるのか紹介していきます。
①AI技術
HRテックを語る上で重要な要素となるのがこの「AI技術」の進化です。
AI技術とは、人工知能・機械学習とも呼ばれ、学習したデータにもとづいた分析や解析を行うことが可能です。
採用業務などを中心に力を発揮する「AI技術」ですが、大手企業のように過去のデータを大量に所有する企業に比べて、元のデータが少ないスタートアップ企業などではうまく効果を発揮できないこともあります。
②クラウド
「クラウド」とは、自社でサーバーを用意しなくても、インターネット環境があればどこでもシステムにアクセスできる技術です。
SaaSやクラウドシステムと呼称され、働き方改革やコロナウイルスによるリモートワークの影響を受け、多くの企業がこのクラウド型サービスを利用するようになりました。
パソコン以外のデバイス(スマートフォン・タブレット等)からも利用でき、インターネットが利用できる所なら場所を問わない点が、多くのユーザーに利用される要因だと考えられます。
③RPA
ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)は、クラウド上で動くソフトウェアであり、計算や転記を自動で行うことができるものです。
請求書や経費の処理、発注や受注の業務を自動化・効率化してくれます。
HRテックの今後のトレンド
HRテックは確実に今後成長を見せ、日本の採用・人事管理を大きく変えるものとなるでしょう。
そんな時に抑えておきたい今後のHRテックのトレンドについて紹介していきます。
①働き方の多様化へ活用される
HRテックは働き方の多様化を大きく支えます。
現在のHRテックは、クラウドの活用などにより通信環境のある場所ならどこでも作業をすることができるようになりました。
新型コロナが落ち着いても、この働き方の柔軟性は変わらず、リモートワークや時差出勤、フレックスタイム制など働き方の多様化は進むことでしょう。
法制度においても、育児・介護休業法の改正により、育児休暇や介護休暇を1時間単位での取得することが可能になりました。
また、取得のための条件も撤廃され、全ての労働者が取得できることになりました。
このような社内の労働時間のずれや休暇の細分化に臨機応変に対応していくことができるHRテックは、今後ますます働き方の多様化に寄与していくと予想されます。
【参考】厚生労働省_⼦の看護休暇・介護休暇が 時間単位で取得できるようになります︕
②通年採用により人材確保への貢献
これまでの採用形態の多くは、3月に就職活動が一斉にスタートを切るといった横並びの方法でした。
しかし、HRテックを用いることで通年採用が可能になります。
これまでの採用形態では、留学している学生などの就職活動に制限がかかるといったデメリットがありましたが、年間を通して採用活動を行うことで、このデメリットをカバーすることができるのです。
一方で、通年採用の実施によって、インターンや説明会、選考などの工程が複雑化してしまうというリスクもあります。
しかし、こうしたリスクも、HRテックを用いて統一管理していくことで削減することができます。
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まとめ
HRテックが注目されている事についての解説をしてきましたがいかがでしたでしょうか。
今後間違いなく多くの企業が取り入れていきたい技術であり、採用や人事管理に大きな影響を与えてくれることでしょう。
みなさんも導入するときは使う理由を明確にし、導入することが目的ではなく、何をしたいのかを意識した活用を心がけてみてください。