採用マーケティング戦略と聞くと、難しそうなイメージをもつ採用担当者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、複雑になりがちな採用マーケティング戦略を細かく分解していき、誰でもかんたんに戦略立てができるように説明していきます。
採用市場での認知度を高める施策をお考えの方は、ぜひ以下の記事も併せてご参照ください。
【参考】分析方法を徹底解説!採用歩留まりが低下しやすい項目と9つの改善策
【参考】【新卒】採用戦略の立て方、成功事例を紹介|フレームワークの活用
そもそも採用マーケティングとは、企業の採用にマーケティングの思考方法を取り入れる手法のことを意味します。
従来は求人を募集し、学生が応募することを待つといった姿勢が一般的でした。
しかし採用マーケティングにおいては、企業のほうから学生にアプローチするような攻めの採用を行います。
まずは一般的なマーケティングや採用ブランディングと比較して、改めて理解しましょう。
マーケティングとは一般的に、ある商品を売りたい会社が、消費者の購入を効果的に促すため戦略を立て、実行することを指します。
目的なく商品を作って店頭に並べただけでは、見込める購入数などの見通しが立たず、ビジネスとして成立しません。
どのような商品が消費者のニーズを満たすのか、どれほどの人がその商品を求めているのかなどを知り、的確に売り出すことが必要です。
マーケティングでは、市場調査を行い、それに即した内容のPRをすることで利益の獲得を狙います。
例えば、新しいチョコレートを売り出そうとしている会社があるとします。
既にたくさんの商品が市場に出回っている中で無計画に生産をしても収益は見込めないでしょう。
そこで、ニーズや市場規模を知るために市場調査を行います。
調査の結果、「チョコレートは食べたいけど、糖質が気になる」と回答した人が一定の割合いた場合、糖質0のチョコレートに需要があるのではという仮説が立てられます。
市場調査の次に、商品を「どう」見せるか、「何で」見せるかというPR方法を考える必要があります。
ニーズに応えて糖質0のチョコレートを売り出すだけでは、その商品を求める消費者の手には届きにくいです。
ターゲットが多く集まる場所を考え、コンビニだけではなくスポーツジムにも商品を置いてもらうなど、市場調査結果から得たナレッジを生かして販売を促進します。
このように、一般的なマーケティングは「消費者に商品を買ってもらう」という目的のもと、計画的に商品を消費者へ売り込むための戦略立てを指します。
採用マーケティングでは、「求める人材に入社してもらう」という目的のもと、計画的に求める人材へアプローチするための戦略立てに使用されます。
単に「こんな人に入社してもらいたいです」と発信するだけでは、効果的に優秀な人材を集めることは難しいです。
一般的なマーケティングと同様に、市場調査を行い自社のPRをすることで、採用活動を成功に導きます。
例えば新卒採用の場合では、就労経験の少ない学生に自社を認知してもらい、自社で働く魅力を効果的に伝える必要があります。
まずは、学生の就活ニーズや採用市場の動向、採用時期などを知るために、市場調査が必要です。
調査結果から、自社が求める人材はどのような企業を魅力的に思っているのか、どの媒体にどれくらいいるかなどの仮説を立てます。
次に、「どの媒体で募集するか」「自社をどう魅せるか」というPRを考え、実行します。
自社の採用要件に当てはまる学生へアプローチできる採用手法を選び、自社をアピールする文言などを作成します。
このように採用活動に採用マーケティングを取り入れると、採用目標の達成に向けて適切なアプローチをすることが可能です。
「採用マーケティング」という言葉に合わせてよく耳にするのが「採用ブランディング」です。
採用マーケティングは、人材を確保するために、「誰をターゲットにし」、「どのように候補者を集め」、「どのように魅力を伝えるか」を戦略的に考えて実行する枠組みのことです。
採用ブランディングは、自社に入社してもらうために「自社をどのように魅せるか」を考え実行し、長期的に「◯◯業界といえば◎◎社」といったようにブランド化を図る枠組みのことです。
採用マーケティングにおけるPR活動の一貫として採用ブランディングを実践するケースが多くなっています。
ここ数年で採用マーケティングは瞬く間に認知度が上昇しました。
採用マーケティングが注目される背景について解説します。
現在採用市場は少子高齢化の影響であらゆる企業が人材の確保に苦戦しています。
終身雇用を撤廃する企業も増え、日本型の雇用体系が変化しているため転職を前提とした就活が当たり前になりつつあります。
また、2025年度卒から経団連が今まで定めていた採用におけるルールを廃止されるため、通年採用の常態化・採用活動の長期化が見込まれています。
(参考:日本経済新聞『就活、23年春卒も6月面接解禁 見直し25年卒以降に』)
具体的に、以下2つの点が変更される予定です。
これらが要因となって、就職活動の長期化傾向がさらに加速し、選考ルートが複雑化することが予想されています。
採用が激化する中で自社が求める人物を獲得するためには、従来よりも戦略的に採用活動を行っていく必要があります。
【参考】【最新版】過去3年分の内定承諾率から考察!内定承諾率を上げるコツ
ここ数年で企業志向や企業選択のポイントに大きな変化が見られています。
2021年卒の大手志向学生は過去12年で最も多い55.1%でしたが、2022年卒では前年から4.0pt減少した51.1%となりました。
これは中小企業志向よりも大手志向の学生の方が多くなった2018年卒以降で最も低い数値です。
上記のグラフは、「あなたが企業選択をする場合、どのような企業がよいと思いますか」という質問に対して20つあるポイントの中から2つ選択し回答した、学生調査の結果における10年間分の推移を表したものです。
企業選択のポイントでは「安定している会社」を重視する学生が2013年度以降急激に増加し、2022卒では過去10年で最多の42.8%となりました。
一方、10年前は群を抜いて最も重視されていた「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」は、2022卒では34.6%と減少傾向にあります。
「給料の良い会社」は17.5%の学生が重視していると回答し、2002卒では8位だったが、現在では3位の結果となっています。
(参考:マイナビ 『2022年卒大学生就職意識調査』)
上記のグラフからも見られるように、学生の価値観が以前とは変わってきています。
特に新型コロナウイルス感染症の影響により、先の見えない経済情勢を懸念して、働きがいやチャレンジすることよりも、安定やプライベートの充実を求める学生が増えてきています。
自社が採用したい学生に的確なアプローチをするためには、こういった学生のニーズの変動を把握した上で採用活動を行うことが必要です。
従来の採用手法であるナビ媒体・人材紹介に加えてダイレクトリクルーティングやリファラルなど、採用手法が多様化しています。 今までは学生からの応募を待つのが当たり前でしたが、現在では自社から積極的に学生へアプローチし、求める人材を獲得する手段ができました。
オンラインでの就職活動が盛んになったこと、採用の激化や学生の価値観の変化に合わせて、様々な手法を使いこなしながら主体的に採用活動を行っている企業が増えています。 採用手段の多様化によって、採用マーケティングを取り入れた時の効果が大きくなっているのも、採用マーケティングが注目されている背景にあります。
デジタルが発達する前の採用では、学生一人一人のエントリーや採用に至るまでの行動を記録することは不可能でした。
しかし選考がデジタル化したことで、学生の行動を簡単・詳細に数値化することが可能となったのです。
デジタルマーケティングツールが多く提供されていることも、マーケティング手法を採用に適用する後押しになっています。
採用マーケティングは、従来の採用手法と採用ターゲットが異なります。
従来の採用手法では、すでに自社に応募をした「顕在層」をターゲットとして採用活動を行うのが一般的でした。
一方採用マーケティングでは、顕在層に加えて、自社に応募前の「潜在層」をターゲットにします。
潜在層には、内定辞退者や不採用となった人材、自社社員なども含まれます。
マーケティング観点から考えると、自社社員は顧客とみなすことができ「ターゲット」といえます。
自社社員が気持ちよく働ける会社づくりをすることで、
などの効果が期待できます。
IT社会となった現代において、自社に興味を持つ人は、SNSやWEBサイトをチェックしてから応募してくる可能性が高いです。
「あの会社は社員からの評価が低いから受けないでおこう・・・」と思われないようにするためにも、社員が働きやすい環境づくりは重要です。
採用マーケティングにおいては、選考の不採用者や内定辞退者もターゲットです。
「不採用なのだから、適当に対応しておけばいいだろう」
「内定を辞退されたから、適当に返信しておこう」
などと不採用者や内定辞退者を適当に扱ってしまうと、口コミやSNSで自社に対するネガティブコメントを書かれる可能性があります。
自社に入社しない人材といえど、興味を持ってくれた求職者は「顧客」です。
「この会社を受けてよかった」と思われるように対応しましょう。
採用業務でマーケティングを取り入れることでどんなメリットがあるのでしょうか?
実行方法の前に、なぜ採用マーケティングが有効なのか紹介します。
そもそも採用マーケティングは「求める人材に入社してもらう」という目的のもと、計画的に求める人材へアプローチするための戦略です。
その訴求やコンテンツを通じて入社を希望する学生は、自社とマッチしている可能性が高くなります。
周囲の企業はこうやっているから自社も同じ採用方法で問題ないだろう…と考える企業は実は多いのではないでしょうか?
しかし、企業によって魅力や求める人材は全く違うはずです。
採用マーケティングを実行することで、改めて自社に最適な採用計画を見つけることができるでしょう。
これによって優秀な学生に効果的なアプローチが可能になり、結果的に質の高い母集団形成に繋がるのです。
ありがたいことに沢山の応募が来たとしても、求める人材がいなければ選考の時間がもったいないですよね。
採用マーケティングをすれば、求める人材の割合が高い母集団形成ができるため、全体の選考時間が短くなります。
また、早期退職が起きると、それまでかかったコストや穴埋めの雇用にもコストがかかってしまいますよね。
採用マーケティングでマッチ度が高い学生を採用することで早期退職も防ぎ、長期的なコストカットに繋がります。
ここまでで、採用マーケティングの概要や実施の必要性をご紹介しました。
次からは、具体的に採用マーケティングを進めていくための手順について詳しく解説します。
「誰に」「何を」「いつ」「どのように」売り出せば、自社が求める人材を獲得できるのかを考えていきましょう。
採用マーケティングを始める際に、まずは自社の特徴を整理します。
自社の企業理念・事業・組織・労働環境などの要素から強み・弱みを整理することで、現在自社にどのような人材が必要なのかを判断できます。
また、自社の採用上の競合企業が明確な場合についても同様に分析を行うことをおすすめします。
こうすることで、自社の立ち位置や発信すべき魅力を明確にすることができます。
自社の特徴を整理するためには
①3C分析
②SWOT分析
の2つのフレームワークを活用できます。
①の3C分析とはビジネスを行っていく上で「市場の関係性」を理解するために使われるフレームワークです。
3CのCは『顧客(custmer)』『Company(自社)』『Competitor(競合)』の頭文字を意味するものです。
なお、採用マーケティングにおいて、 顧客⇒求職者 競合→同業他社 に当たります。
②のSWOT分析とは、マーケティングフレームワークの1つです。
まずは企業の状況を「内部環境」「外部環境」という2つのカテゴリーに分けます。
そして、それぞれのプラス要因とマイナス要因を明確化します。
「内部環境」→『Strength(強み)』『Weakness(弱み)』
「外部環境」→『Opportunity(機会)』『Threat(脅威)』
これらの4項目(SWOT)を分析して自社の立ち位置を理解することで、効果的に採用マーケティングを行うことができます。
上述したように、採用マーケティングは「欲しい人材に入社してもらう」という目的のもと行います。
①で整理した自社の強み・弱みから、自社が採用するべき人材の特徴を把握しましょう。
求める人物像やペルソナを決定することで、市場調査で調べるべき内容が明確になり、戦略が立てやすくなります。
求める人物像がどのような訴求をしている会社に惹かれやすいのかについて調査します。
例えば自社が「協調性」「ストレス耐性」がある人材を求めているのであれば、体育会所属経験のある学生が惹かれやすい企業の特徴などを調査します。
他にも、体育会活動の状況などを調べ、忙しい時期や時間帯、就職活動を始めるタイミングなどの情報も必要です。
ターゲットとなる学生の嗜好性や行動スケジュールを把握することで、何をするべきなのかが見えやすくなります。
ここまで行うと、「誰に」「何を」「いつ」訴求するべきなのかが明確になります。
次に、市場調査結果をもとに、「どのように」訴求するのかを考えていきます。
先ほど出した例のように体育会所属経験のある学生に対してアプローチするのであれば、平日は練習で忙しいことが市場調査で分かります。
その場合、
「体育会所属学生に向けた会社説明会を平日夜9時以降や土日に開催」
「〇〇部出身の人事が部活と就活を両立させるコツを伝える座談会」
といったコンテンツが効果的であると考えられます。
また、体育会所属学生にとって有益なメッセージをメールに載せて配信することで、彼らのニーズに即した自社の魅力を伝えることができます。
このように、市場調査結果をもとに自社が求める人材のニーズに合わせてコンテンツを作ることにより、効果的にアプローチしていくことが可能です。
コンテンツを作り、実行したらPDCAサイクルを回しましょう。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとった用語です。
施策を実行後に評価をして、それを元に改善を図ります。
改善した施策を計画し、また実行する…というサイクルを繰り返すことで持続的なコンテンツの成長が見込めるんですね。
実行して終わりではなく、次のコンテンツ作りに繋げましょう。
採用マーケティングにおいて重要なのが「ファネル」と「チャネル」です。
ファネル分析とは、ターゲットの行動プロセスを分解して、対象の意識と人数の変化を調査する際に利用する分析方法のことです。
ファネル分析を用いて各プロセスを整理することで、無駄のないアプローチが設計しやすくなります。
例えば、自社に関する情報を一切持っていない人物に対して選考へのエントリーを促しても、効果は期待できないですよね。
ファネル分析を使って、自社をどうやって伝えるのか、コンテンツやアプローチ方法を決めていきます。
採用マーケティングにおけるファネルとは、自社認知から内定に至るまでのプロセスです。 「認知→興味→選考→内定」のプロセスごとに対象者が少なくなる状態を、逆三角形を用いて示します。
採用マーケティングにおけるチャネルとは、ファネルごとに有効なアプローチ方法です。
例えば”認知”のチャネルとしては、合同説明会やソーシャルリクルーティングなどがあります。
後ほど各ファネルごとに有効なチャネルを解説しますね。
ファネル分析を行うには、歩留まり率などの行動情報を溜めていくことが重要です。
ファネルとして捉えて数値管理をしていくことで、各段階において改善すべき点が明確になります。
採用マーケティングの効果を最大化するためには、上記で紹介したファネルとチャネルの考え方が重要です。
ここでは、下記のファネルごとに有効な採用チャネルを紹介していきます。
採用活動において、まずは求職者に対して自社の存在を認知してもらうことが必要です。
様々な採用手法を使って、自社について知ってもらいましょう。
もし採用における知名度が低い場合は、学生に見つけてもらうのを待っているだけでは効果はありません。
その場合は、人材紹介やダイレクトリクルーティングなどを利用しながら主体的に自社を知ってもらう活動を行う必要があります。
またこの時、求める人物像で設定した人材に対して適切にアプローチしなければいけません。
ここでの歩留まり率が低い場合は、市場調査結果をもとに、自社が欲しい人材が集まっている媒体を選ぶように注意しましょう。
自社を知ってもらったら、次に興味を持って、選考へ応募してもらえるように誘導します。
認知してもらった人材に対して、説明会・動画配信・座談会などのイベントに参加してもらい、自社の魅力を訴求しましょう。
ここでも市場調査結果を利用し、ターゲットとなる人材が参加したいと思えるようなコンテンツを用意する必要があります。
例えば体育会所属経験のある学生にアプローチする場合は、
「夜9時以降から行う会社説明会」
「〇〇部出身人事が体育会に所属しながら就活を成功させるコツを伝える座談会」
など、ターゲットに対して効果的な訴求を行います。
優秀な人材の獲得が激化している現在、選考の際にも「学生に見られている」という意識を持つことが大切です。
面接は、学生と面接官がコミュニケーションを取る場です。
会話の流れの中で、面接官に対して好感を持つ要素があると、その後内定承諾などを得られやすくなります。
候補者情報などを事前に担当者へ共有し、スムーズなコミュニケーションが取れるようにするのも採用活動を成功させる秘訣です。
内定者フォローを行うことで、自社への入社を決め切れていない学生の不安や悩みを解決することができます。
効果的な内定者フォローを行うには、学生のニーズについて把握することが大切です。
市場調査で分かった入社の決め手となる要素などを参考にコンテンツの企画を行い、自社が求めている人材に入社してもらえる環境づくりを行いましょう。
【参考】 学生が求める内定者フォローとは?ポイントごとの実例もご紹介!
採用マーケティングとして最も有名なファネル分析を解説しました。
しかし、ファネル分析以外にも参考になる分析フレームワークは沢山あります。
様々なフレームワークを知って、採用マーケティングに活かしましょう。
AIDMAは消費者の行動プロセスを「認知(Attention)→興味(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→行動(Action)」とした古典的なマーケティングフレームワークです。
これにインターネットの普及を加味したものがAISASの「認知(Attention)→興味(Interest)→検索(Search)→行動(Action)→共有(Share)」
デジタル社会を考慮するために「検索」「共有」というフェーズが追加されています。
情報社会が発達したことで、学生は選考応募する前に口コミサイトやSNSから企業の情報を検索します。
また、選考中や選考後には自身の体験をネットを通じてシェアすることがメジャー。
ツイッターでは匿名で学生が発信する就活アカウントが数多く存在し、大手就活サイトでは企業ごとの選考体験談を投稿すると報酬を渡していることもあります。
これらのフェーズを考慮することで、よりデジタル社会に即した採用マーケティングができるでしょう。
採用マーケティングにおけるカスタマージャーニーとは、ペルソナが自社認知から内定に至るまでのプロセスです。
ファネル分析と非常に似ていますが、カスタマージャーニーでは各フェーズで「顧客が何を考えているか?」に着目する特徴があります。
ファネル分析にペルソナの思考を考える項目が加わった、と捉えると分かりやすいでしょう。
ペルソナにどんな施策が有効か考える際に、ペルソナの感情を含めたカスタマージャーニーは役立ちます。
コトラーの5A理論とは、消費者の「認知(Aware)→訴求(Appeal)→調査(Ask)→行動(Action)→奨励(Advocate)」という行動プロセスです。
「調査」「奨励」というプロセスが入っていることが特徴。
AISASと非常によく似ていますが、インターネットに限定しているかという点で違いがあります。
AISASの「検索」「共有」はインターネットでの行動のみを指しており、5A理論での「調査」「奨励」はオフラインの活動も含みます。
SNS等のオンライン活動が活発になった現代では、むしろオフラインでのコミュニケーションを工夫することが他社との差別化になるでしょう。
また、ファネル分析やカスタマージャーニーでは、対象者がプロセスが進むにつれて少なくなっていきます。
対して5A理論は、「奨励」フェーズでの新たな流入なども期待されるため、対象者の人数が減るとは考えられていません。
SIPSは消費者の行動モデルを「共感(Sympathize)→確認(Identify)→参加(Participate)→共有&拡散(Share & Spread)」で表しています。
多くのマーケティングフレームワークは「認知」から始まりますが、SIPSでは「共感」から始まることが特徴。
AISASと同じく、主にインターネットが対象です。
例えばSNSで1dayインターンシップの情報が流れた場合、「おもしろそう」と”共感”した人はそのインターンシップの情報を”確認”します。
その後、インターンシップに”参加”してSNSや口コミサイトで感想などを”共有”し、”拡散”されていきます。
また、たとえ参加まで至らなかったとしても、いいねやリツイートなど投稿に対する反応といった形で”参加/共有&拡散”する人もいるでしょう。
その共有や拡散は新たな”共感”を呼びます。
ペルソナに共感されるコンテンツをひとたび発信すれば、企業側がアプローチすることなく情報は拡散され続けます。
SHIPはSNSにおける循環型共有モデルと言えますね。
採用マーケティングをより効率的に行うにはツールの利用がおすすめです。
様々なツールを比較検討して、目的に合ったものを選びましょう。
ATSでは、求人情報、応募者の個人情報、選考状況、内定者情報の管理が行えます。
よって、一人ひとりの候補者が選考プロセスのどの段階にいるのかを管理できます。
採用活動の状況をまとめて把握することで、特定の人に対して現在取るべき対応が分かりやすくなり、情報の抜け漏れなどを減らすことができます。
例えば、ATSを使うことで、一次面接合格後に二次面接の日程予約を行っていない人を見つけ、そこから自社への志望度が上がりきっていないことが仮説として立てられます。
CMSでは、自社のWebサイト上のコンテンツを一元的に管理することができます。
自社に興味を持った人物は、より自社について知ろうと思い、インターネットで調べる可能性が高いです。
その際に、必要な情報を提供できるか否かで志望度を高められるかに大きな影響が出ます。
コンテンツ管理ツールを使用してウェブサイトを作成し、適切に情報を伝えることで、「認知」の段階にいる求職者に対してアプローチすることが可能です。
プログラミングに関する知識などがなくても簡単にウェブページを作成できるツールもあります。
例えば、CMSを使用することで、学生の志望度を高められそうなメルマガを作成して送信したり、記事を公開することができます。
採用マーケティングオートメーションでは「ログ分析」を行い、特定のサイト上での行動を追跡することができます。
誰が、何のコンテンツを、どれだけの時間読んでいたのか、などの詳細を数値として把握することが可能です。
このように行動を追跡することで、
といったことが把握できるようになります。
例えば、MAを使うことで、営業職採用に関する情報を多めに見ている学生を見つけ、その人物に対して営業職向けイベントに招待するなどの対応が取れます。
オウンドメディアとは自社が所有するメディアのこと。
自社サイトや自社SNSアカウント、パンフレットなど幅広いメディアを含みます。
ただし、一般的には自社運営のブログのようなウェブサイトのみを指すようです。
オウンドメディアの利点は自社の魅力をしっかり伝えられること。
採用サイト開設は短期的にはコスト高ですが、自社の価値観に共感した学生が集まりやすくなります。
企業広報としてツイッター等のSNSを運用している企業も多いのではないでしょうか。
実際に若者向けのTikTokにも多くの企業アカウントが投稿をしています。
ツイッターやインスタグラム、TikTokなどのSNSは10~20代のユーザーが多いため、新卒向けの情報の需要は高いでしょう。
また、大手SNSでは専用のマーケティングツールも多く提供されています。
質の高いデータ分析が簡単にできることも利点の一つですね。
ただし、不快な内容を投稿するとバッシングされる危険性も。
誤解を生む表現がないように注意しましょう。
弊社では、ダイレクトリクルーティングサービスのMatcher Scoutを運用しています。
ダイレクトリクルーティングとは自社の採用要件にマッチする学生に自社からアプローチできる「攻め」の採用手法です。
ダイレクトリクルーティングでは、「〇〇業界を志望する学生」「〇〇所属経験のある学生」などタイプ別に合わせてスカウトを送信することができます。
そのため、ターゲット層のニーズ調査が正しかったのかを検証し、改善することが可能です。
Matcher Scoutでは、独自のA/Bテストシステムによって、弊社担当者がより効果的な文言や画像を見つけ出し、御社が本当に会いたい学生に会える確率を向上させることができる機能があります。
加えて社員のエンゲージメントを強化するために、社員がOB・OG訪問を活用することもおすすめです。
魅力的な組織づくりができれば社員は優秀な広報部員となるため、ぜひ採用マーケティングの手段の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
【参考】ムラのない集客力。工数削減とナレッジ蓄積が同時に行え、意欲的な学生の採用に成功しました。
ここまでは採用マーケティングの概要や実行方法について解説しました。
最後に、採用マーケティングを実施する際に気を付けておくべきポイントをお伝えします。
採用マーケティングで重要なのは円滑に求める学生を採用できる仕組み作りです。
これまでの採用では求める人物像の設定や選考過程で、採用担当者の経験が重視されてきました。
しかし、採用マーケティングでは自社の求める人物像をより明確にし、ターゲット層ごとへ効果的にアプローチすることが重要になります。
そのために、データに基づいた客観的な判断を行うことが必要になります。
実際に企業の中にはデータを採用において活用するために採用管理システムを導入しているところもあります。
選考過程の学生や既存社員のデータから、自社の魅力の伝え方や自社で活躍している人材を的確に把握して採用につなげましょう。
採用マーケティングが注目される背景でお伝えしたように、現在は採用手段が多様化しています。
自社に合った採用手法を活用することが、採用を成功させる上で重要です。
特に採用マーケティングでは、自社から積極的に学生へアプローチできる「攻め」の採用手法を選ぶと効果的です。
人材紹介、リファラル採用、ダイレクトリクルーティングなどのサービスを比較・検討し、自社に合った採用手法を選びましょう。
これから選考に参加する方のみがターゲットではありません。
過去に不採用になった応募者や内定辞退者も含めて考えましょう。
例えば不採用通知を段階的に送信する方法です。
現段階の基準で不採用になった学生でも、採用状況が変われば基準を満たしている可能性があります。
ただし結果通知をあまりに遅くすると、学生の就職活動に支障が出てしまいます。
企業としての印象も良くないので、ほどほどにしましょう。
また内定辞退した学生の中にも「やっぱり辞退しなければよかった…」と後悔する方もいます。
就職活動終盤にもう一度アプローチをかけるなど、機会を逃さないようにしましょう。
採用マーケティングでは採用全体の運用を考えることが多いですが、学生1人1人としっかり向き合うことを忘れないようにしましょう。
採用前・採用後の一対一のコミュニケーションを行う事で、学生によりよい印象を与えられます。
一対一の場であれば学生が気軽に質問出来ます。
マッチングを高めて、内定辞退や早期退職を防ぎましょう。
また、学生の本音を聞くことで今後の採用マーケティングの参考にもなります。
学生にどうアプローチすれば魅力が伝わるか、を考えることはとても重要です。
ただし、根本的に自社の魅力を増やす活動も忘れないようにしましょう。 新入社員への環境整備だけではなく社内全体を見直すことで、学生がより自社を魅力的に感じるようになるでしょう。
マーケティングの考え方が浸透したことで、様々な手法やツールが提供されています。
もちろん手法やツールの活用は採用マーケティング初心者にも利用しやすく便利です。
しかし、それらにとらわれてしまうと採用マーケティングの目的を見失ってしまいがち。
手法やツールを選ぶ前に、ペルソナの洗い出しなどの段階を踏むことを忘れないようにしましょう。
ここまでで採用マーケティングを紹介し、導入手順から使えるフレームワークまで解説してきました。
これを読んだ担当者の方の中には「もっと詳しく学んでみたい!」と考えている方もいるかもしれません。
そこで最後に、採用マーケティングを深く学べる書籍を3冊ご紹介します。
採用のプロである筆者が、求職者の認知〜獲得までのアプローチの「勝ちパターン」を明らかにする人事初心者必読の1冊。
「候補者が思わず振り向く求人コピーのつくり方」
「リファラル(社員紹介採用)を成功に導く7つの取り組み」
「効果的な面接の進め方」
「内定辞退を引き起こす7つの失敗+1」
を企業の実例を上げて解説してます。
人手不足が深刻な状況においてでも、1万人の応募者を集める中小企業は日本に数多く存在します。
今後も人手不足が継続すると考えると、人を集められる企業とそうでない企業の人財格差は開いていく一方です。
その明暗を分ける要素は何なのか、採用に対する考え方を解説しています。
人事担当者のみならず経営者にもおすすめな採用バイブルです。
“「地方勤務」「知名度なし」「休日87日」「初任給17万」……
それでもすごい社員を採用できる!
「本当に小さな会社」のための「化ける人材」を集めて育てる超実践的採用戦略。”
(引用:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1145914)
中小企業の人事担当者におすすめの1冊。
コストをかけずに効率よく人材を獲得するための方法が余すことなく掲載されています。
いかがだったでしょうか。
今回は採用マーケティングについてご紹介しました。
ターゲット層に合わせた効果的な打ち手をデータを元に検討し、円滑に求める人物像を採用できる仕組みを作りましょう。