採用マーケティング戦略と聞くと、難しそうなイメージをもつ採用担当者様も多いのではないでしょうか。しかし、売り手市場の現在、採用マーケティングを行うことは採用活動の成功に必要不可欠です。
本記事では、複雑になりがちな採用マーケティングの始め方を詳しく解説します。
採用マーケティングとは
そもそも採用マーケティングとは、企業の採用にマーケティングの思考方法を取り入れる手法のことを意味します。
採用マーケティングでは、「求める人材に入社してもらう」という目的のもと、計画的に求める人材へアプローチするための戦略立てに使用されます。

単に「こんな人に入社してもらいたいです」と発信するだけでは、効果的に優秀な人材を集めることは難しいです。そのため、採用マーケティングを通して戦略的に採用活動を行っていく必要があります。
「【全7ステップで解説!】採用マーケティングの始め方」の章で詳しく解説しますが、新卒採用における採用マーケティングは以下のような流れで行います。
▼採用マーケティングの概要
- 市場調査を行い、就活トレンドを抑える
- 市場調査の結果から、ペルソナニーズを分析する
- ペルソナニーズに合わせた採用手法を検討する
- ペルソナニーズに訴求するコンテンツを作成する
採用活動に採用マーケティングを取り入れると、採用目標の達成に向けて適切なアプローチをすることが可能です。
従来の採用活動と採用マーケティングの違い
それでは、採用マーケティングと従来の採用活動は、どのように異なるのでしょうか。
従来の採用活動は、「応募者の中から優秀な人材を選ぶこと」が一般的でした。一方で採用マーケティングでは、「優秀な人材からどのように選ばれるか」を戦略的に考えていくという違いがあります。
| 従来の採用活動 | 採用マーケティング | |
| 採用活動への姿勢 | 応募者の中から優秀な人材を「選ぶ」 | 優秀な人材から「選ばれる」状態をつくる |
| 目的 | 自社に応募してきた人材から適任者を採用 | ターゲット人材の興味関心を高め、応募意欲を引き出す |
| 情報発信 | 必要最低限の会社情報を伝える | 候補者が知りたい価値観・社風・働き方を積極的に届ける |
| 施策例 | 求人票作成・会社説明会・面接など | 採用広報、SNS発信、コンテンツ制作、候補者体験(CX)設計など |
| 接点づくり | 応募が発生してから | 応募前の段階から継続的に接点を作る(ナーチャリング) |
| 評価指標 | 応募数・内定者数 | 認知・興味・エンゲージメント・応募の質など広範囲 |
採用ブランディングと採用マーケティングの違い
「採用マーケティング」という言葉に合わせてよく耳にするのが「採用ブランディング」です。
▼採用ブランディングと採用マーケティングの違い
- 採用マーケティング:「誰をターゲットにし」、「どのように候補者を集め」、「どのように魅力を伝えるか」を戦略的に考えて実行する枠組み
- 採用ブランディング:「自社をどのように魅せるか」を考え実行し、長期的に「◯◯業界といえば◎◎社」といったようにブランド化を図る枠組み
採用マーケティングにおけるPR活動の一貫として採用ブランディングを実践するケースが多くなっています。

採用マーケティングが注目される背景
ここ数年で採用マーケティングは瞬く間に認知度が上昇しました。採用マーケティングが注目される背景について解説します。
▼採用マーケティングが注目される背景
- 採用手段の多様化
- 採用の激化
- 学生の価値観の変化
- 採用手段の多様化
- マーケティングのデジタル化
採用手段の多様化
従来の採用手法であるナビ媒体・人材紹介に加えてダイレクトリクルーティングやリファラルなど、採用手法が多様化しています。
今までは学生からの応募を待つのが当たり前でしたが、現在では自社から積極的に学生へアプローチし、求める人材を獲得する手段ができました。
マイナビが実施した調査によると、26卒学生が現在入社意志の最も強い企業を発見したツールは以下のようになりました。
▼入社意志の最も強い企業の発見ツール
- インターンシップ・仕事体験(28.7%)
- 就職情報サイト(18.7%)
- 企業ホームページ(10.0%)
- 合同企業説明会(9.5%)
- OB・OG・先輩社員(5.1%)
- 逆求人サイト(4.8%)
第1位はインターンシップ・仕事体験で前年度比+ 6.3%で、28.7%でした。一方2位の就職情報サイトは前年度比-6.4%で18.7%でした。
ここから、以前のように就職情報サイトや企業説明会を通してだけではなく、インターンシップやダイレクトリクルーティングなどの逆求人サイトを通して企業の情報を得ている学生が多いことがわかります。
【参考】株式会社マイナビ『マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就職活動・進路決定>』
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採用の激化
現在採用市場は少子高齢化の影響であらゆる企業が人材の確保に苦戦しています。
株式会社インディードリクルートパートナーズが実施した調査によると、26卒における大卒有効求人倍率は1.66倍でした。
また、25卒からはインターンシップが採用活動に利用できるようになり、就職活動の長期化や選考ルートの複雑化がますます進んでいます。
採用が激化する中で自社が求める人物を獲得するためには、従来よりも戦略的に採用活動を行っていく必要があります。
▼従来の「就活ルール」に則った採用スケジュール

▼就活の早期化・長期化に伴い多くの企業が導入している一般的な採用スケジュール

【参考】株式会社インディードリクルートパートナーズ『第42回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)』
【参考】労働基準監督署『令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります』
【参考】内閣官房『2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について』
学生の価値観の変化
ここ数年で企業志向や企業選択のポイントに大きな変化が見られています。
以下は、26卒学生が企業選びで重視する上位3つのポイントです。
▼26卒学生の企業選びのポイント(22卒と比較した際の差)
- 安定している会社…51.9%(+9.1%)
- 自分がやりたい仕事(職種)ができる会社…27.2%(-7.4%)
- 給料の良い会社…25.2%(+7.7%)
ここから、「安定している会社」「給料の良い会社」を重視する学生が年々増加していることが分かります。またその一方で、「自分がやりたい仕事ができる会社」などの働きがいを重視する学生は年々減少しています。
特に新型コロナウイルス感染症の影響により、先の見えない経済情勢を懸念して、働きがいやチャレンジすることよりも、安定やプライベートの充実を求める学生が増えてきています。
自社が採用したい学生に的確なアプローチをするためには、こういった学生のニーズの変動を把握した上で採用活動を行うことが必要です。
【参考】株式会社マイナビ『マイナビ 2022年卒大学生就職意識調査』
【参考】株式会社マイナビ『マイナビ 2026年卒大学生就職意識調査』
マーケティングのデジタル化
デジタルが発達する前の採用では、学生一人一人のエントリーや採用に至るまでの行動を記録することは不可能でした。しかし選考がデジタル化したことで、学生の行動を簡単・詳細に数値化することが可能となったのです。
デジタルマーケティングツールが多く提供されていることも、マーケティング手法を採用に適用する後押しになっています。
採用マーケティングのターゲットとは?
採用マーケティングは、従来の採用手法と採用ターゲットが異なります。
従来の採用手法では、すでに自社に応募をした「顕在層」をターゲットとして採用活動を行うのが一般的でした。
一方採用マーケティングでは、顕在層に加えて、自社に応募前の「潜在層」をターゲットにします。具体的な採用マーケティングのターゲットは以下の通りです。
▼採用マーケティングのターゲット
- 自社社員
- 不採用者・内定辞退者
- 退職者
- 就職・転職希望者
以下で詳しく解説します。
ターゲット①自社社員
マーケティング観点から考えると、自社社員は顧客とみなすことができるため、ターゲットであるといえます。
▼自社社員に対して採用マーケティングを行うことで期待できる効果
- SNSやWEBサイトでの良い口コミの拡散
- リファラル採用数の増加
インターネットが普及した現在、求職者はSNSや口コミサイトを利用して企業を選択しています。
「あの会社は社員からの評価が低いから受けないでおこう・・・」と思われないようにするためにも、社員が働きやすい環境づくりは重要です。
ターゲット②不採用者・内定辞退者
採用マーケティングにおいては、選考の不採用者や内定辞退者もターゲットです。
▼不採用者・内定辞退者に対して採用マーケティングを行うことで期待できる効果
- SNSやWEBサイトでの良い口コミの拡散
- 自社商品・サービスのファンになってもらうことができる
「不採用なのだから、適当に対応しておけばいいだろう」
「内定を辞退されたから、適当に返信しておこう」
などと不採用者や内定辞退者を適当に扱ってしまうと、口コミやSNSで自社に対するネガティブコメントを書かれる可能性があります。
自社に入社しない人材といえど、興味を持ってくれた求職者は「顧客」です。「この会社を受けてよかった」と思われるように対応しましょう。
ターゲット③退職者
自社をすでに退職した社員も、採用マーケティングのターゲットであると言えます。
▼退職者に対して採用マーケティングを行うことで期待できる効果
- SNSやWEBサイトでの良い口コミの拡散
- アルムナイ採用に繋がる
- 近い業界に転職した場合、新たなビジネスチャンスに繋がる
アルムナイ採用とは、一度退職した社員を再び雇用する採用手法です。働き方の多様化により、近年注目されています。
退職者に対して採用マーケティングを行うことで、良い口コミの拡散やアルムナイ採用、将来のビジネスチャンスにも繋げることができるでしょう。
ターゲット④就職・転職希望者
就職・転職希望者や、転職潜在層も採用マーケティングのターゲットです。
▼就職・転職希望者に対して採用マーケティングを行うことで期待できる効果
- 就職・転職を検討しているが自社を認知していない層にアプローチできる
- 転職潜在層にアプローチできる
従来の採用活動では、自社や自社の業界に関心がある求職者にしかアプローチすることができませんでした。しかし、採用マーケティングを行うことで、就職や転職を検討しているが自社を認知していない層・現状は関心がない層に戦略的にアプローチすることができるでしょう。
採用マーケティングのメリット
採用業務でマーケティングを取り入れることでどんなメリットがあるのでしょうか?
実行方法の前に、なぜ採用マーケティングが有効なのか紹介します。
▼採用マーケティングのメリット
- 応募者と自社のマッチ度を高められる
- 優秀な人材を獲得しやすい
- コストカットできる
- 自社の認知度を上げることができる
応募者と自社のマッチ度を高められる
そもそも採用マーケティングは「求める人材に入社してもらう」という目的のもと、計画的に求める人材へアプローチするための戦略です。
その訴求やコンテンツを通じて入社を希望する学生は、自社とマッチしている可能性が高くなります。
優秀な人材を獲得しやすい
周囲の企業はこうやっているから自社も同じ採用方法で問題ないだろう…と考える企業は実は多いのではないでしょうか?
しかし、企業によって魅力や求める人材は全く違うはずです。
採用マーケティングを実行することで、改めて自社に最適な採用計画を見つけることができるでしょう。
これによって優秀な学生に効果的なアプローチが可能になり、結果的に質の高い母集団形成に繋がるのです。
コストカットできる
ありがたいことに沢山の応募が来たとしても、求める人材がいなければ選考の時間がもったいないですよね。
採用マーケティングをすれば、求める人材の割合が高い母集団形成ができるため、全体の選考時間が短くなります。
また、早期退職が起きると、それまでかかったコストや穴埋めの雇用にもコストがかかってしまいますよね。
採用マーケティングでマッチ度が高い学生を採用することで早期退職も防ぎ、長期的なコストカットに繋がります。
自社の認知度を上げることができる
採用マーケティングを通して戦略的に採用活動を行うことで、自社の認知度を上げることができます。
採用マーケティングを通して効果的なチャネルで、効果的な情報発信を行うことで、自社のことを知らない層にもアプローチすることが可能です。
継続的に情報発信を行うことで、転職潜在層や退職者にもアプローチすることができ、長期的な採用活動の成功にも繋がるでしょう。
【図で解説】採用マーケティングにおけるファネルとチャネルとは?
採用マーケティングを行う上で大切なのが、「ファネル」と「チャネル」を理解することです。以下の図は、それぞれの違いを解説したものです。

採用マーケティングにおけるファネルとは
採用マーケティングにおけるファネルとは、自社認知から内定に至るまでのプロセスです。 「認知→興味→選考→内定」のプロセスごとに対象者が少なくなる状態を、逆三角形を用いて示します。
採用マーケティングにおけるチャネルとは
採用マーケティングにおけるチャネルとは、求職者にアプローチするための手段や媒体のことです。採用マーケティングでは、ファネルごとに有効なチャネルを検討します。
例えば”認知”のチャネルとしては、合同説明会やソーシャルリクルーティングなどがあります。
各ファネルごとに有効なチャネルについては、後の「【ファネル別】採用マーケティングに効果的な採用手法」で詳しく紹介します。
【全7ステップで解説!】採用マーケティングの始め方
ここまでで、採用マーケティングの概要や実施の必要性をご紹介しました。
次からは、具体的に採用マーケティングを進めていくための手順について詳しく解説します。「誰に」「何を」「いつ」「どのように」売り出せば、自社が求める人材を獲得できるのかを考えていきましょう。
▼採用マーケティングの始め方
- 自社の特徴を分析
- 求める人物像、ペルソナの決定
- 市場・ペルソナニーズの分析
- キャンディデートジャーニーを設計
- ファネルに応じたチャネルを選定
- ペルソナニーズに訴求するコンテンツ作り
- 施策のフィードバックと改善(PDCAサイクル)
①自社の特徴を分析
採用マーケティングを始める際に、まずは自社の特徴を整理します。
自社の企業理念・事業・組織・労働環境などの要素から強み・弱みを整理することで、現在自社にどのような人材が必要なのかを判断できます。
また、自社の採用上の競合企業が明確な場合についても同様に分析を行うことをおすすめします。
自社の特徴を分析することで、自社の立ち位置や発信するべき自社の魅力を明確にすることができます。
自社の特徴を整理するためには以下のようなフレームワークを利用することがおすすめです。
▼採用マーケティングで使えるフレームワーク
- ペルソナ分析
- 3C分析
- 5A理論
- カスタマージャーニー
- SWOT分析
詳しいやり方や、無料でダウンロードできるフレームワークのテンプレートは後の「採用マーケティングで使えるフレームワーク5選」の章で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
②求める人物像、ペルソナの決定
上述したように、採用マーケティングは「欲しい人材に入社してもらう」という目的のもと行います。
①で整理した自社の強み・弱みから、自社が採用するべき人材の特徴を把握しましょう。
求める人物像やペルソナを決定することで、市場調査で調べるべき内容が明確になり、戦略が立てやすくなります。
詳しいやり方は、以下の記事を参考にしてみてください。
【参考】【テンプレート付き】採用ペルソナの作り方とは?活用方法も解説
③市場調査・ペルソナニーズの分析
求める人物像がどのような訴求をしている会社に惹かれやすいのかについて調査します。
例えば自社が「協調性」「ストレス耐性」がある人材を求めているのであれば、体育会所属経験のある学生が惹かれやすい企業の特徴などを調査します。
他にも、体育会活動の状況などを調べ、忙しい時期や時間帯、就職活動を始めるタイミングなどの情報も必要です。
ターゲットとなる学生の嗜好性や行動スケジュールを把握することで、何をするべきなのかが見えやすくなります。ここまで行うと、「誰に」「何を」「いつ」訴求するべきなのかが明確になります。
④キャンディデートジャーニーを設計
キャンディデートジャーニーとは、カスタマージャーニーを求職者に応用したもので、企業の認知から入社意志決定までの流れを可視化したもののことです。
どのチャネルで求職者と接点を持ち、そこでどのような訴求をしたら良いのかを考える手助けになります。
以下がキャンディデートジャーニーを考える際に使えるワークシートです。このワークシートを活用して、キャンディデートジャーニーを設計しましょう。
▼キャンディデートジャーニーのフレームワーク
| ペルソナ | |||||
| フェーズ | 認知 | エントリー~選考前 | 選考中 | 内定出し | 内定承諾~入社 |
| 求職者に取ってほしい行動 | |||||
| 求職者に思ってほしい感想 | |||||
| 自社が取るべき行動 | |||||
⑤ファネルに応じたチャネルを選定

キャンディデートジャーニーで考えたストーリーを参考に、各ファネルでどのようなチャネルを選定したら良いか検討しましょう。
例えば、キャンディデートジャーニーにおける「認知」の部分で「求職者に自社の存在を知ってほしい」と考えている企業の場合は、ダイレクトリクルーティングや人材紹介の利用を検討すると良いでしょう。
各ファネルでどのようなチャネルを用いるべきなのかについては、後の「【ファネル別】採用マーケティングに効果的な採用手法」で詳しく解説します。
⑥ペルソナニーズに訴求するコンテンツ作り
次に、市場調査結果やキャンディデートジャーニーで考えたストーリーをもとに、「どのように」訴求するのかを考えていきます。
例えば、体育会所属学生に対して「認知」のためのアプローチを取る場合、平日は練習で忙しいことが想定できます。
先ほど出した例のように体育会所属経験のある学生に対してアプローチするのであれば、平日は練習で忙しいことが市場調査で分かります。
その場合、
「体育会所属学生に向けた会社説明会を平日夜9時以降や土日に開催」
「〇〇部出身の人事が部活と就活を両立させるコツを伝える座談会」
といったコンテンツが効果的であると考えられます。
また、体育会所属学生にとって有益なメッセージをメールに載せて配信することで、彼らのニーズに即した自社の魅力を伝えることができます。
このように、市場調査結果をもとに自社が求める人材のニーズに合わせてコンテンツを作ることにより、効果的にアプローチしていくことが可能です。
⑦施策のフィードバックと改善(PDCAサイクル)
コンテンツを作り、実行したらPDCAサイクルを回しましょう。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとった用語です。
施策を実行後に評価をして、それを元に改善を図ります。改善した施策を計画し、また実行する…というサイクルを繰り返すことで持続的なコンテンツの成長が見込めます。
実行して終わりではなく、次のコンテンツ作りに繋げましょう。

【ファネル別】採用マーケティングに効果的な採用手法
採用マーケティングの効果を最大化するためには、上記で紹介したファネルとチャネルの考え方が重要です。
ここでは、下記のファネルごとに有効な採用チャネルを紹介していきます。
▼採用マーケティングで考えるべきファネル
- 認知
- 興味
- 選考
- 内定/入社
認知で有効な採用手法(チャネル)

採用活動において、まずは求職者に対して自社の存在を認知してもらうことが必要です。
様々な採用手法を使って、自社について知ってもらいましょう。
もし採用における知名度が低い場合は、学生に見つけてもらうのを待っているだけでは効果はありません。
その場合は、人材紹介やダイレクトリクルーティングなどを利用しながら主体的に自社を知ってもらう活動を行う必要があります。
またこの時、求める人物像で設定した人材に対して適切にアプローチしなければいけません。
ここでの歩留まり率が低い場合は、市場調査結果をもとに、自社が欲しい人材が集まっている媒体を選ぶように注意しましょう。
興味で有効な採用手法(チャネル)

自社を知ってもらったら、次に興味を持って、選考へ応募してもらえるように誘導します。
認知してもらった人材に対して、説明会・動画配信・座談会などのイベントに参加してもらい、自社の魅力を訴求しましょう。
ここでも市場調査結果を利用し、ターゲットとなる人材が参加したいと思えるようなコンテンツを用意する必要があります。
例えば体育会所属経験のある学生にアプローチする場合は、
「夜9時以降から行う会社説明会」
「〇〇部出身人事が体育会に所属しながら就活を成功させるコツを伝える座談会」
など、ターゲットに対して効果的な訴求を行います。
選考で有効な採用手法(チャネル)

優秀な人材の獲得が激化している現在、選考の際にも「学生に見られている」という意識を持つことが大切です。
面接は、学生と面接官がコミュニケーションを取る場です。会話の流れの中で、面接官に対して好感を持つ要素があると、その後内定承諾などを得られやすくなります。
候補者情報などを事前に担当者へ共有し、スムーズなコミュニケーションが取れるようにするのも採用活動を成功させる秘訣です。
内定/入社で有効な採用手法(チャネル)

内定者フォローを行うことで、自社への入社を決め切れていない学生の不安や悩みを解決することができます。
効果的な内定者フォローを行うには、学生のニーズについて把握することが大切です。
市場調査で分かった入社の決め手となる要素などを参考にコンテンツの企画を行い、自社が求めている人材に入社してもらえる環境づくりを行いましょう。
【参考】内定者フォロー事例15選!学生が嬉しかったと感じる内容は?
採用マーケティングで使えるフレームワーク5選
ここでは、採用マーケティングに欠かせない、「自社の特徴の分析」をする際に使えるフレームワークを紹介します。
▼採用マーケティングで使えるフレームワーク5選
- ペルソナ分析
- 3C分析
- 5A理論
- カスタマージャーニー
- SWOT分析
無料でダウンロードできるフレームワークのワークシートはこちらからダウンロードできます。ぜひ参考にしてみてください。
ペルソナ分析
ペルソナとは、「自社が求める典型的な学生像」のことです。採用要件よりも詳しく、具体的に求める人物像を設定します。
▼ペルソナ設定で考えるべき項目
- 名前
- 年齢
- 学歴
- サークル・部活
- 趣味
- アルバイト先
- 休日の過ごし方
設定したペルソナを分析することで、ペルソナに刺さる、効果的なアプローチをすることが可能です。
3C分析
3C分析とは、customer(顧客)、Competitor(競合)、company(自社)を分析する手法です。採用活動におけるcustomer(顧客)は求職者を指します。

採用マーケティングにおいては、3C分析を導入することで、採用活動における自社の現状や、どのような時期にどのような訴求をすることが効果的なのかを考える手助けになるでしょう。
5A理論
5A理論とは、コトラーが提唱するインターネット社会におけるカスタマージャーニーのことです。
5Aとは、Aware(認知)、Appeal(訴求)、Ask(調査)、Act(行動)、Advocate(推奨)を指します。
これらを採用マーケティングに利用することで、求職者が自社を認知し、他者に推奨するまでのプロセスを分析することができます。
カスタマージャーニー
採用マーケティングにおけるカスタマージャーニーとは、ペルソナが自社認知から内定に至るまでのプロセスです。
ファネル分析と非常に似ていますが、カスタマージャーニーでは各フェーズで「顧客が何を考えているか?」に着目する特徴があります。
ファネル分析にペルソナの思考を考える項目が加わった、と捉えると分かりやすいでしょう。
ペルソナにどんな施策が有効か考える際に、ペルソナの感情を含めたカスタマージャーニーは役立ちます。
SWOT分析
まずは企業の状況を「内部環境」「外部環境」という2つのカテゴリーに分けます。
そして、それぞれのプラス要因とマイナス要因を明確化します。
▼内部環境と外部環境のプラス要素、マイナス要素
- 「内部環境」:『Strength(強み)』『Weakness(弱み)』
- 「外部環境」:『Opportunity(機会)』『Threat(脅威)』
これらの4項目(SWOT)を分析して自社の立ち位置を理解することで、効果的に採用マーケティングを行うことができます。
採用マーケティングを成功させるためのポイント
ここまでは採用マーケティングの概要や実行方法について解説しました。最後に、採用マーケティングを実施する際に気を付けておくべきポイントをお伝えします。
▼採用マーケティングを成功させるためのポイント
- データを蓄積し、活用する仕組みを作る
- 長期的な視点を持って取り組む
- 手法にとらわれないように気を付ける
データを蓄積し、活用する仕組みを作る
採用マーケティングで重要なのは円滑に求める学生を採用できる仕組み作りです。
これまでの採用では求める人物像の設定や選考過程で、採用担当者の経験が重視されてきました。
しかし、採用マーケティングでは自社の求める人物像をより明確にし、ターゲット層ごとへ効果的にアプローチすることが重要になります。そのために、データに基づいた客観的な判断を行うことが必要になります。
実際に企業の中にはデータを採用において活用するために採用管理システムを導入しているところもあります。
選考過程の学生や既存社員のデータから、自社の魅力の伝え方や自社で活躍している人材を的確に把握して採用につなげましょう。
長期的な視点を持って取り組む
採用マーケティングは、地道にターゲットに訴求したり、継続的に市場分析をしたりと、長期的な取り組みが必要不可欠です。そのため、採用マーケティングを始めたからと言ってすぐに効果が出ない場合も多いでしょう。
効果がでないからと言ってすぐに辞めてしまうのではなく、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。
手法にとらわれないように気を付ける
マーケティングの考え方が浸透したことで、様々な手法やツールが提供されています。
もちろん手法やツールの活用は採用マーケティング初心者にも利用しやすく便利です。
しかし、それらにとらわれてしまうと採用マーケティングの目的を見失ってしまいがちです。
手法やツールを選ぶ前に、ペルソナの洗い出しなどの段階を踏むことを忘れないようにしましょう。
【事例】採用マーケティングに成功した企業
採用マーケティングに成功した具体的な企業事例についてご紹介します。
株式会社ニトリ
株式会社ニトリでは、インターンシップを重視した採用マーケティングを行った結果、有痛業界の求人倍率が12.5倍と言われている中でマイナビの就職人気ランキングで5位を獲得することに成功しました。
データ分析を通して「インターンシップ」が最大の採用広報であると考えたニトリは、インターンシップを通して「キャリア」や「企業」について考える「きっかけ」を提供するインターンシップを実施しました。
その結果、入社意思に問わず、流通業界に興味がない学生にもアプローチすることに成功し、見せ方を変えることで興味を持ってもらうことができたと言います。
【参考】採用コンサルティングのジャンプ株式会社『【イベントレポート】ニトリ、JTの採用イノベーションは、 どのように生み出されたのか?』
三幸製菓株式会社
三幸製菓株式会社では、合同説明会での訴求内容の改善によって、新卒採用エントリー数を300人から13,000人に増やすことに成功しました。
競合他社のエントリー者数が3万人ほどであったのに対し、自社のエントリー者数が300-400人であったことに危機感を抱き、大手と戦うにはまずはより多くの母集団を形成しなくてはならないと考え、採用マーケティングを開始したと言います。
自社分析の結果、業界の中で唯一「売上成長力」があることに注目し、就職サイトやパンフレットを徹底的に変更し、「熱量高くて、成長力があって、すごい会社がある。地方によくわかんないお菓子メーカーあるぞ」というブランディングを開始しました。
そして、地道な企業ブランディングの結果、3年間で新卒採用エントリー数を300人から13,000人に増やすことに成功しました。
【参考】HR NOTE『「新卒採用エントリーを300名から13,000名に増やした」地方のお菓子メーカーの採用戦略とは』
採用マーケティングを学びたい方向け入門書3選
ここまでで採用マーケティングを紹介し、導入手順から使えるフレームワークまで解説してきました。これを読んだ担当者の方の中には「もっと詳しく学んでみたい!」と考えている方もいるかもしれません。
そこで最後に、採用マーケティングを深く学べる書籍を3冊ご紹介します。
採用に強い会社は何をしているか ~52の事例から読み解く採用の原理原則
採用のプロである筆者が、求職者の認知〜獲得までのアプローチの「勝ちパターン」を明らかにする人事初心者必読の1冊。
「候補者が思わず振り向く求人コピーのつくり方」、「リファラル(社員紹介採用)を成功に導く7つの取り組み」、「効果的な面接の進め方」、「内定辞退を引き起こす7つの失敗+1」について企業の実例を上げて解説してます。
【参考】ダイヤモンド社『採用に強い会社は何をしているか ~52の事例から読み解く採用の原理原則』
いい人財が集まる会社の採用の思考法
人手不足が深刻な状況においても、1万人の応募者を集める中小企業は日本に数多く存在します。今後も人手不足が継続すると考えると、人を集められる企業とそうでない企業の人財格差は開いていく一方です。
その明暗を分ける要素は何なのか、採用に対する考え方を解説しています。人事担当者のみならず経営者にもおすすめな採用バイブルです。
【参考】フォレスト出版株式会社『いい人財が集まる会社の採用の思考法』
小さな会社こそが絶対にほしい!「化ける人材」採用の成功戦略
“「地方勤務」「知名度なし」「休日87日」「初任給17万」……
それでもすごい社員を採用できる!
「本当に小さな会社」のための「化ける人材」を集めて育てる超実践的採用戦略。”
中小企業の人事担当者におすすめの1冊。
コストをかけずに効率よく人材を獲得するための方法が余すことなく掲載されています。
【出典】紀伊国屋書店『「化ける人材」採用の成功戦略(小さな会社こそが絶対にほしい!)』
新卒採用にはMatcher Scoutがおすすめ!
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おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は採用マーケティングについてご紹介しました。
ターゲット層に合わせた効果的な打ち手をデータを元に検討し、円滑に求める人物像を採用できる仕組みを作りましょう。