試用期間中に会社都合で解雇したい場合は、慎重に判断しなければ不当解雇にあたる場合があります。
本記事では、
- 試用期間中に会社都合・能力不足による解雇は可能か
- 試用期間中に能力不足で解雇する場合の注意点
- 試用期間中に解雇する際の手続き
について、具体的な裁判事例を紹介しつつ詳しく解説しています。注意点を踏まえて、今後の採用活動に活かしましょう!
試用期間とは
試用期間とは、採用者に自社の社員としての適性があるかどうか見極めるために設けられるお試し期間のことです。
1~6ヶ月程度の期間を設け、採用者に実際の業務に取り組んでもらい、パフォーマンスや業務態度を評価します。
試用期間における労働契約
試用期間中の労働契約は、通常の労働契約とは異なり、企業側に従業員を解約する権利が付与された契約(解約権留保付きの労働契約)であるとされています。
つまり、試用期間中において、採用者に業務適性がないとされた場合、企業側は採用者を解約する権利を有しているということになります。通常の解雇より広い範囲において解雇の自由が認められているということです。
しかしながら、採用者を解約する権利が認められているからといって、試用期間中に好き勝手に採用者を解雇できるわけではありません。労働契約自体は成立しているという状態になるため、一定程度厳格な解雇規制が敷かれることになります。
試用期間中の解雇について解説している厚生労働省の見解によると、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるような場合にのみ、解約権の行使が相当であるとされています。
試用期間中の雇用条件の扱い
試用期間中の場合であっても、採用者に対して、労働時間・給与・待遇などの諸条件を含む雇用条件を提示する必要があります。
試用期間中の雇用条件についてはいくつか注意すべき点があり、主に以下の3点が挙げられます。
▼試用期間中の雇用条件について注意するべき点
- 期間の長さ
- 給料
- 各種保険の加入義務
■一般的な試用期間の長さ
試用期間の長さについて明確な法規定はなく、企業側が自由に設定します。一般的には、3~6ヶ月程度に設定している企業が多いです。
▼実際の企業における試用期間の設定例
- ソフトバンク株式会社:3か月
- 日本航空株式会社:3か月
- 株式会社NTTデータ株式会社:4か月
- 三菱商事株式会社:6か月
試用期間は3~6ヶ月程度を目安に設定し、最大でも1年以内に設定するのが望ましいといえます。
【参考】ソフトバンク株式会社『募集要項』
【参考】日本航空株式会社『職種別募集要項|新卒』
【参考】株式会社NTTデータ『募集要項』
【参考】三菱商事株式会社『新卒採用』
■試用期間中の給料(給与・待遇など)
試用期間中の給料について、留意しておくべき点として以下2つが挙げられます。
▼試用期間中の給料について留意しておくべき点
- 試用期間中も給料の支払いは必須
- 試用期間中の給与・待遇は本採用後と別に設定できる
試用期間中も、採用者とは正式な雇用契約を結んでいる状態です。試用期間中=仮の契約だと考えて給料を支払わないと違法行為に当たるため、注意しましょう。
ただし、一般の労働者より著しく労働力がないなどの理由がある場合、都道府県労働局長の許可を受けることで個別に最低賃金の減額をすることができる「最低賃金の特例」が認められています。
▼最低賃金の減額特例を受けられる労働者の例
- 精神又は身体の障害により著しく労働能率が低い
- 試用期間中
- 認定職業訓練を受けている
- 軽易な業務や断続的な業務
減額をする場合、減額率・減額後の賃金を厚労省が定める申請書に記入し、所定の労働基準監督署に提出するという流れになります。計算例は、以下の通りです。
▼東京都最低賃金(1226円)を減額したい場合の計算例
減額率:15%に設定
減額する額:1,026×0.15=183.9 約184円
試用期間中の賃金:1,026円-183.9円=1042.1円 約1,042円
もちろん、最低賃金より減額する場合は双方の合意が必要であり、企業が一方的に行使することはできません。また、採用時に労働条件として明示し、雇用契約書や就業規則などで定めておく必要があります。
■試用期間中の各種保険の加入義務
試用期間中であっても、事業主側は採用者を各種保険(労働保険・社会保険)に加入させる必要があります。労働保険や社会保険は法によって定められた強制加入のものであるため、従業員が加入要件を満たす場合には、企業側が加入義務を負うことになります。
試用期間中だからといって各種保険に加入させない場合、罰則を受けることになってしまうため注意しましょう。
試用期間延長の可否
以下の条件を満たしている場合のみ、試用期間の延長を行うことが可能です。
▼試用期間を延長できる条件
- 就業規則に延長する可能性やその理由、延長期間が明記されている
- 試用期間を延長すべき合理的な理由がある
試用期間の延長は、労働者を非常に不安定な立場に追いやるため、理由や合理的な根拠なく延長を行った場合、不当だと判断される可能性があります。
試用期間を延長するべき合理的な理由は主に以下の2点が挙げられます。
▼試用期間を延長すべき合理的な理由
- 雇い入れ時には予期できなかった事情があり、労働者の適格性の見極めに時間がかかる場合
- 延長期間内で、勤務態度などが改善されるか確認したい場合
また、繰り返し試用期間の延長を行った場合、トータルの労働時間が長くなりすぎてしまい、試用期間ではなく通常の労働期間だと判断される場合もあります。試用期間の繰り返しの延長はできるだけ避けるようにしましょう。
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本採用拒否と試用期間中の解雇の違いは?
「本採用拒否」と「試用期間中の解雇」にはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく解説します。
本採用拒否とは
本採用拒否とは、試用期間の終了と同時に解雇する場合を指します。
例えば、3か月という試用期間を設定していたが、入社後3か月が経過してから解雇する場合がこれに当たります。
試用期間中の解雇の違い
試用期間中の解雇とは、予め設定した試用期間の終了を待たずして解雇する場合を指します。例えば、3か月という試用期間を設定していたが、2か月で採用者を解雇した場合です。
以上2種類を比べた際、試用期間の途中で解雇する場合は本採用拒否に比べて不当解雇になりやすいです。もしも採用者から訴えられた場合、「採用者の適性を見極めるために設けた試用期間を待たず、性急に解雇した」と判断される可能性が高いからです。
本採用拒否ではなく、試用期間の途中で解雇したい場合には、まずは労働問題に詳しい弁護士事務所などに相談してから進めるのがおすすめです。
【会社都合の場合】試用期間中の解雇が認められる・認められないケース
試用期間中であっても、企業は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合でなければ解雇できません。また、企業側がその理由を説明できることが必要です。
認められるケース
会社都合で試用期間中の解雇が認められる可能性があるのは、以下の5つのケースが挙げられます。
▼試用期間中に会社都合での解雇が認められるケース
- 無断欠勤を繰り返した場合
- 重大な経歴詐称が発覚した場合
- 犯罪行為をした場合
- 故意に会社に損害を与えた場合
- 病気や怪我をした場合
①無断欠勤を繰り返した場合
企業側が指導をしているにも関わらず、正当な理由がない欠勤を繰り返している場合には正当な解雇事由として認められます。ただし、どれくらいの期間中に、何回遅刻・欠勤をすれば解雇できるという絶対的な規定はありません。
また、企業側が勤怠不良に対して指導をしないまま解雇してしまうと、不当解雇にあたってしまう場合があります。勤怠不良が生じた場合には、欠勤理由の確認を行った上で、書面で注意指導を行うなど、適切な指導を行いましょう。
②重大な経歴詐称が発覚した場合
採用者が学歴・職歴・犯罪歴などその他重要な経歴について、企業側に虚偽の申告をしており、それが重大な経歴詐称に該当する場合は、正当な解雇事由に当たります。
解雇が認められる重大な経歴詐称とは、新たに発覚した事実が予めわかっていれば、採用者を採用しない・同一条件では契約を結ばなかった場合を指します。
例えば、実際にはシステムエンジニアとしての業務経験がないのにも関わらず、経歴を詐称して企業側を誤認させ、不当に賃金を得ていた場合などがこれに当たります。
ただし、学歴・職歴・資格を除く些細な部分の詐称では、重大な経歴詐称に当たらず、解雇が認められない場合もあるため注意が必要です。
③犯罪行為をした場合
犯罪行為を行い、その内容によって会社の信用を著しく損なった場合や、業務の遂行に重大な支障を及ぼした場合には、解雇が有効と判断される可能性があります。
例えば、会社の金品を横領した場合や、業務に関連する犯罪によって企業に大きな損害を与えた場合などが該当します。
ただし、犯罪行為があったからといって、直ちに解雇できるわけではありません。犯罪の内容や会社への影響、業務との関連性などを総合的に考慮した上で判断されます。
また、懲戒解雇を行う場合は、就業規則に懲戒事由が定められていることが前提となります。客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は、不当解雇と判断される可能性があります。
④故意に会社へ損害を与えた場合
従業員が故意に会社へ重大な損害を与えた場合や、会社の社会的信用を著しく低下させる行為を行った場合には、解雇が有効と判断される可能性があります。
例えば、会社の備品や設備を意図的に破損させた場合や、機密情報を外部へ漏えいさせた場合、虚偽の情報を発信して会社の信用を著しく損なった場合などが該当します。
ただし、軽微なミスや過失による損害だけで解雇が認められるわけではありません。行為の悪質性や会社に与えた損害の程度、改善の見込みなどを踏まえて判断されます。
⑤病気や怪我をした場合
試用期間中の社員が、業務外の理由で病気や怪我を被り、業務の継続が困難になった場合、正当な事由として解雇することが可能になります。
ただし、病気や怪我をしたからといって直ぐに解雇できるわけではなく、適切な手続きを踏んだ上での対処が必要です。
手順は以下の通りです。
▼病気や怪我を理由に解雇する手順
- 就業規則に沿って休職させる
- 休職期間満了時に、医師の助言を受け復職可能であるか検討する
- 復職が不可能だと判断した場合に解雇する
病気や怪我を理由に就業困難になった場合でも、すぐに解雇できるわけではないので注意しましょう。
認められないケース
一方で、試用期間中の解雇が認められないケースもあります。解雇が認められない可能性があるのは、以下の3つのケースが挙げられます。
▼試用期間中に会社都合での解雇が認められないケース
- 労働者に非がない経営不振や人件費削減の場合
- 解雇理由として合理性に欠ける場合
- 十分な休職期間や療養の配慮を行わない場合
①労働者に非がない経営不振や人件費削減の場合
人件費の削減や、経営状況の悪化に伴って解雇する場合は、いわゆる整理解雇(リストラ)にあたります。この場合、労働者とその家族の生活に大きな影響を与えるため、整理解雇の正当性が認められる必要があります。
以下の4つの要件を満たしていない場合、不当解雇にあたる恐れがあります。
▼整理解雇(リストラ)の4つの要件
- 財務状況が悪化しており、整理解雇の必要性がある
- 雇用継続できる方法を検討・努力した
- 客観的・合理的な基準で公正に選んだ
- 労働者が納得できる説明を十分にした
また、解雇後に新規での採用や賃上げといった矛盾した行動を行った場合、人員削減の必要性が認められないケースがあります。
②解雇理由として合理性に欠ける場合
業務上の小さなミスや一度の無断欠勤など、指導や教育によって改善が見込まれるにもかかわらず解雇することは、解雇が有効と認められない可能性があります。
また、業務に直接支障がない人間関係のトラブルや、上司との相性が悪いといった理由だけで解雇することも、客観的に説明できる理由とはいえません。
試用期間中であっても、本採用を拒否したり解雇したりするには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。
以下に、必要な指導が見受けられなかったために不当解雇に当たってしまった事例を挙げます。
【有限会社X設計事件 平成27年1月28日判決】
▼概要
土木関連の会社に図面作製の経験者として採用された従業員が能力不足を理由に試用期間満了後に解雇されたが、不当解雇と判定されたケース。
▼能力不足の内容
- 入社後指示した橋梁の図面作成について、不備が有り手直しが必要な状態だった。
▼判決の理由
- 入社早々に指示された図面作製については、従業員に経験がないにもかかわらず会社側から明確な指導を行った形跡が見られないこと。
- 図面の作成について不備があり時間を要しているものの、最終的には要求通りに作業が出来ている点
従業員に図面作製の適性がないとはいえず、また、会社からの具体的な指導も見受けられなかったとして、不当解雇として判決が下っています。
③十分な休職期間や療養の配慮を行わない場合
病気やけがによって一時的に就労が困難となった場合は、就業規則に休職制度がある企業では、休職制度の利用が検討されるのが一般的です。十分な休職期間があれば復職できるにも関わらず、一時的に働けないことを理由に解雇することは認められていません。
労働基準法により、「業務上の傷病による休業期間および休業後30日間」と、「産前産後の休業期間およびその後30日間」は原則として解雇が禁止されています。
【能力不足の場合】試用期間中の解雇が認められる・認められないケース
同じ「能力不足」による解雇でも、認められたケースと違法となったケースがあります。その違いはどこにあるのでしょうか。
本章では、まずはじめに、能力不足での解雇が認められたケースについてご紹介します。
認められるケース
▼試用期間中に能力不足での解雇が認められたケース
- 十分な指導を与えたが能力不足の場合
- 期待していた能力が欠如していた場合
- 能力不足により会社に損失を与えている場合
①十分な指導を与えたが能力不足の場合
能力不足で解雇する場合でも、会社側から十分な指導があり、解雇を忌避する努力が行われている場合には、正当な解雇事由として認められるケースがあります。
以下に、具体的な事例として、日本基礎技術事件を挙げます。
【日本基礎記述事件 平成24年2月10日判決】
▼概要
建築会社に新卒で採用された技術者が、能力不足を理由に試用期間中に解雇されたが、正当な解雇として認められたケース。
▼能力不足の内容
- 作業中に睡眠不足で居眠りをする
- 時間や期限を守れず、時間管理能力に欠ける
- 数分で終わる単純作業に1時間以上かかっていた
- 再三の注意を受けても以上の行為に改善が見られなかった
▼判決の理由
- 繰り返し指導が行われているのに対し、明確な改善が見られない
- 今後指導を継続しても、社員に足る能力を得る見込みがたたない
判例の詳しい内容は以下の記事をご参照ください。
新卒社員の研修態度の悪さに対して、会社側が解雇を忌避する努力、つまり十分な指導を行っていた点が重要な点になります。
②期待していた能力が著しく欠如していた場合
業務上期待されていた能力が採用者に著しく不足していた場合には、試用期間中の解雇でも正当とされる場合があります。
具体的な事例として、リーディング証券事件を挙げます。
【リーディング証券事件 平成25年1月31日判決】
▼概要
証券アナリストとして採用された韓国国籍の従業員が、ネイティブレベルの日本語が備わっていないとして試用期間の途中で解雇され、判決で有効とされた事例。
▼能力不足の内容
- 日本語のレベルが低く業務スピードが遅い
- 証券アナリストとしての専門知識・技術レベルが低い
▼判決の理由
- 会社側は、”ネイティブレベルの日本語力でもって、証券アナリストとして活躍できる即戦力”を期待して当該従業員を雇用している
- 採用を決定づけたレポートの作成において、日本人の夫の手を借りていたという事実を秘匿していた
当該従業員が入社後に作成したアナリストレポートの出来栄えは、企業が求めていたレベルには到底達していなかったこと。
また、採用時に即戦力としての採用を決定づけたレポートに関して重大な秘匿があったことを踏まえて、解雇が有効と判断されています。
このように、採用の過程で、人材の判断を誤らせるような事実が発覚した場合は、試用期間中の解雇も正当とされる可能性があります。
③能力不足により会社に重大な損失を与えている場合
試用期間中であっても、従業員に能力が著しく欠けていたり、経営上の重大な支障が出ていたりする場合には、解雇が正当であると認められるケースがあります。
しかし、損害が発生したという理由だけで解雇が認められるわけではありません。そのような場合でも会社側が適切な指導を行っていたか、十分な努力をしたかという点が問われやすいです。解雇の正当性を裏付けるためには、客観的な理由が不可欠です。
認められないケース
能力不足を理由にした解雇は、基準が厳しく、不当解雇と判定されやすいです。以下で詳しく見ていきましょう。
▼試用期間中に能力不足での解雇が認められないケース
- 新卒・未経験者を能力不足で解雇する場合
- 試用期間の途中で解雇する場合
- 成果のみを重視した判断の場合
①新卒・未経験者を能力不足で解雇する場合
新卒・未経験者を能力不足で解雇する場合には、不当解雇になりやすいです。
新卒や未経験者については、裁判所は「はじめは仕事ができないのは当然であり、企業側の指導により育成すべき」という考えを取っています。そのため、能力不足は解雇事由として不十分だとされる可能性が高いです。
以下に、未経験者を試用期間中に解雇したことが不当解雇に当たった事例をご紹介します。
【社労法人パートナーズ事件 平成25年9月19日判決】
▼概要
社労士の未経験者として採用された従業員を、能力不足を理由に試用期間の途中で解雇したが、不当解雇と判定された事案。
▼能力不足の内容
- 従業員が、顧客への意向確認が不十分なまま雇用保険の手続きを行った
- 社労士の基本業務においてコミュニケーションが不足していた
▼判決の理由
- 企業側は、従業員が実務経験のない未経験者であることを了解した上で採用しており、即戦力としての活躍を期待できる状態ではない
- 顧客への意向確認について、予め明確な指示は見られなかった
【参考】栗坊日記「解雇145(社会保険労務士法人パートナーズほか事件)」
②試用期間の途中で解雇する場合
予め設けられた試用期間が満了する前に、能力不足で解雇する場合も不当解雇と判断される可能性が高いです。
そもそも試用期間は採用者の適性を見極めるために設けられている期間であり、期間の途中で解雇する場合、企業側が十分な指導をしなかったと判断されるリスクがあるためです。具体的な事例としてニュース証券事件を挙げます。
【ニュース証券事件 平成21年1月30日判決】
▼概要
かつての営業経験から、即戦力として採用された従業員が、成績不振を理由に試用期間の途中で解雇されたが、試用期間満了前に能力不足と判断するのは性急すぎるとして不当解雇に当たった事例。
▼能力不足の内容
- 営業の経験者として当該従業員を採用したが、入社後3か月間の営業成績が他の社員に劣っていた
▼判決の理由
- 営業日誌から、採用者が地道に営業活動を行っていたことが散見され、成績の改善見込みがないとはいえない
- 採用者の資質・能力について、試用期間満了を待たずわずか3か月で判断するのは性急すぎること。
③成果のみを重視した判断の場合
試用期間中に設定されていた目標を達成することができなかったという理由だけでは、解雇が認められにくいです。
どれだけ素晴らしい経歴を持つ人材だとしても、職場環境や業務内容が変わりすぐに成果を出すのは難しいです。設定されていた目標自体が不適切である可能性もあるでしょう。
そのため、短期間で期待した成果が得られなかったという理由だけで能力不足と判断し、十分な指導や改善の機会を与えずに解雇した場合は不当解雇と判断される可能性があります。
試用期間中に人材を解雇する手順
試用期間中に解雇したい場合、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。
具体的には、以下3つの手順が必要です。
▼試用期間中に人材を解雇する手続き
- 解雇要件を検討し、経営幹部に共有する
- 解雇予告・解雇予告手当の支払いを行う
- 解雇通知書を交付する
①試用期間中の解雇要件を検討する
まず、試用期間中の解雇を決定する前に、解雇要件を満たしているか確認します。解雇要件に合致することの確認が取れた場合には、該当従業員を解雇する旨を経営幹部に共有し、解雇の方針を決定します。解雇の種類と、その要件は以下の通りです。
▼解雇の種類・要件
| 解雇の種類 | 定義 | 具体事由 | 解雇要件 |
| ①普通解雇 | 社員が重大な規律違反を犯した際に、企業側から一方的に労働契約解除を行う行為 | 就業者が、能力不足や経歴詐称・度重なる遅刻・欠勤をした場合 |
|
| ②整理解雇 | 事業縮小など、経営側の事情によって、人員整理のために労働者を解雇する行為 | 経営難により人員を削減する必要がある場合 |
|
| ③懲戒解雇 | 社員が重大な規律違反を犯した際に行われる解雇。最も重い処置であり、要件の判断が厳しい | 社員が、横領や重度のセクハラなど、犯罪行為や重大な規律違反を起こした場合 |
|
法的に正当な解雇だと認められるためには、上記要件に加えて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められることが必要になります。
▼労働基準法 第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【出典】e-Gov「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律第七十一号)」
この要件は、労働基準法16条の規定によって明記されており、企業側からの解雇を厳しく縛る条件となっています。十分に要件を考慮せずに社員を解雇してしまうと、後にトラブルや訴訟に発展する可能性が出てきてしまいます。
不当解雇に当たらないようにするために、慎重に判断していきましょう。
②解雇予告・解雇予告手当の支払いを行う
解雇要件を把握し、経営幹部と共有を図ったら、該当社員に対して解雇予告をするか、または解雇予告手当の支払いを行いましょう。
人材を解雇したい場合、解雇の30日前に解雇予告を行うか、または30日以上の平均賃金を支払う必要があります。これは、労働基準法第20条により規定されています。
▼労働基準法第20条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
【出典】e-Gov「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)」
解雇予告の通知方法に関して、法律上特に規定されていません。そのため、従業員に解雇する旨が伝わっているのであれば、口頭でも、書面でも、メールでも、法的には問題がないということになります。
しかし、確実に予告をした証拠が残る書面による方法がおすすめです。証拠がないことで、後に要らぬトラブルに発展するのを防ぐことができるでしょう。具体的には、解雇予告通知書を作成した後、以下のような方法があります。
▼解雇予告通知書を作成した後にするべきこと
- 直接従業員に手渡す
- 配達証明書付きの内容証明書郵便を利用する
解雇予告・解雇予告手当を実施しない場合の解雇は、不当解雇にあたるため、必ず実施するようにしましょう。
◎【例外】試用期間開始後14日以内の解雇には解雇予告・解雇予告手当不要
試用期間開始後14日以内の従業員を解雇する場合には、上にあげた解雇予告・解雇予告手当は必要ありません。
ただし、解雇要件が緩和されるわけではないため、慎重に検討する必要があります。
▼労働基準法 第21条
前条の規定(解雇予告・解雇予告手当の実施義務)は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者
試用期間開始後14日以内の従業員を解雇する場合には、解雇通知書のみを作成して交付することになります。
ただし、解雇予告・解雇予告通知が不要なだけで、解雇要件の厳しさは通常の解雇と同様なため、注意しましょう。
【出典】e-Gov「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)」
③解雇通知書を交付する
最後に、解雇当日になったら解雇通知書を交付します。方法としては、解雇予告の場合と同じく、書面による通知がおすすめです。
なお、従業員から解雇理由証明書の請求があった場合には、解雇通知書とは別に解雇理由証明書を作成する必要があります。請求があった場合には、漏れなく対応しましょう。
▼労働基準法第22条2項
労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
【出典】e-Gov「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)」
試用期間中に人材を解雇する際の注意点・ポイント
ここまで、試用期間の解雇が認められたケースと認められないケース、解雇する際の手順についてご紹介しました。
最後に、試用期間に人材を解雇する際の注意点やポイントについて解説します。
▼使用期間中に人材を解雇する際の注意点・ポイント
- 解雇理由をしっかりと言語化する
- 新卒・未経験者を対象とした解雇ではないか確認する
- 解雇する前に会社から十分な回避努力をする
- 試用期間満了前の解雇ではないか確認する
- 解雇する前に労働者の話を直接聞く
以下より解説していきます。
①解雇理由をしっかり言語化する
解雇理由をしっかりと言語化することで、解雇の妥当性を高めることが重要です。解雇理由をしっかりと言語化できない場合、トラブルに繋がってしまうおそれがあります。
トラブルを防ぐためにも、試用期間中に最低限身に着けてほしい能力や、期待する成果などを具体的に設定し、それを書面で共有しておくことが大切です。
②新卒・未経験者を対象とした解雇ではないか確認する
新卒や未経験者について、裁判所は「最初から仕事ができないのは当然であり、企業側の指導により育成すべき」という考えを取っています。そのため、能力不足は解雇事由として不十分だとされる可能性が高いです。
そのため、複数の視点からの評価を行うことや、繰り返し適切かつ十分な指導を行ったという実績が必要です。
③解雇する前に会社から十分な回避努力をする
従業員の能力不足を一方的に訴えるだけでは不当解雇と判断されやすいです。
適性のある他職種に配置転換を行ったり、事前に解雇の可能性を伝えたうえで業務改善の機会を与えたりしたかという「十分な回避努力の有無」が問われます。
そのため、解雇を決定する前にできるかぎりのアプローチを尽くしたかどうか確認しましょう。
④試用期間満了前の解雇ではないか確認する
試用期間は、労働者の適性や能力を見極めるために設けられている期間です。そのため、試用期間の途中で解雇する場合は、「現時点で本当に改善の見込みがないのか」を慎重に判断する必要があります。
特に、指導を始めて間もない段階や、改善状況を十分に確認できていない段階で解雇を決定すると、「能力を見極める機会を十分に与えていない」と判断される可能性があります。
解雇を決定する前に、試用期間を最後まで継続できない合理的な理由があるか、指導期間や改善期間を十分に確保したかを改めて確認しましょう。
⑤解雇する前に労働者の話を直接聞く
解雇するべき明確な理由があったとしても、まず初めに労働者本人と直接話し、事情をヒアリングするようにしましょう。労働者が重大な問題を起こしていたとしても、何か事情が合った場合も考えられます。
そのため、話を聞かず一方的に解雇してしまっては、かえって重大なトラブルを引き起こしてしまう場合もあるでしょう。
面談を実施する際は、一方的に解雇を通告するのではなく、課題や改善点を具体的に伝え、本人の説明や意見を十分に聞くことを意識しましょう。
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一人採用するためには多くの工数や費用がかかります。しかし、入社後に試用期間を終えても「期待したような成長が見込めない」「自社とのミスマッチを感じる」といった課題に直面することもあるのではないでしょうか。
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会社都合で試用期間中に解雇する場合は慎重に行おう!
いかかでしたか?
今回の記事では、試用期間の解雇はそもそも可能なのかどうか、不当解雇に当たるのはどんな場合か、具体的な事例を用いてご説明してきました。
試用期間中の解雇は、不当解雇にあたりやすいため、慎重に判断していきましょう。