試用期間中に会社都合や能力不足で解雇できる?注意点も解説!
2025/10/24

試用期間中に会社都合で解雇したい場合は、慎重に判断しなければ不当解雇にあたる場合があります。

本記事では、

  • 試用期間中に会社都合・能力不足による解雇は可能か
  • 試用期間中に能力不足で解雇する場合の注意点
  • 試用期間中に解雇する際の手続き

について、具体的な裁判事例を紹介しつつ詳しく解説しています。

注意点を踏まえて、今後の採用活動に活かしましょう!

試用期間とは

試用期間とは、採用者に自社の社員としての適性があるかどうか見極めるために設けられるお試し期間のことです。

1~6ヶ月程度の期間を設け、採用者に実際の業務に取り組んでもらい、パフォーマンスや業務態度を評価します。

試用期間における労働契約

試用期間中の労働契約は、通常の労働契約とは異なり、企業側に従業員を解約する権利が付与された契約(解約権留保付きの労働契約)であるとされています。

つまり、試用期間中において、採用者に業務適性がないとされた場合、企業側は採用者を解約する権利を有しているということになります。通常の解雇より広い範囲において解雇の自由が認められているということです。

しかしながら、採用者を解約する権利が認められているからといって、試用期間中に好き勝手に採用者を解雇できるわけではありません。労働契約自体は成立しているという状態になるため、一定程度厳格な解雇規制が敷かれることになります。

試用期間中の解雇について解説している厚生労働省の見解によると、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるような場合にのみ、解約権の行使が相当であるとされています。

【参考】厚生労働省「★HP版調整事件解説集⑥」

試用期間中の雇用条件の扱い

試用期間中の場合であっても、採用者に対して、労働時間・給与・待遇などの諸条件を含む雇用条件を提示する必要があります。

試用期間中の雇用条件についてはいくつか注意すべき点があり、主に以下の3点が挙げられます。

▼試用期間中の雇用条件について注意するべき点

  • 期間の長さ
  • 給料
  • 各種保険の加入義務

■試用期間の長さ

試用期間の長さについて明確な法規定はなく、企業側が自由に設定します。

一般的には、3~6ヶ月程度に設定している企業が多いです。

▼実際の企業における試用期間の設定例

  • ソフトバンク株式会社:3か月
  • 日本航空株式会社:3か月
  • 株式会社NTTデータ株式会社:4か月
  • 三菱商事株式会社:6か月

試用期間は3~6ヶ月程度を目安に設定し、最大でも1年以内に設定するのが望ましいといえます。

【参考】ソフトバンク株式会社『募集要項』
【参考】日本航空株式会社『職種別募集要項|新卒』
【参考】株式会社NTTデータ『募集要項』
【参考】三菱商事株式会社『新卒採用』

■試用期間中の給料(給与・待遇など)

試用期間中の給料について、留意しておくべき点として以下2つが挙げられます。

▼試用期間中の給料について留意しておくべき点

  • 試用期間中も給料の支払いは必須
  • 本採用後と給与・待遇が異なるのは問題ない

試用期間中も、採用者とは正式な雇用契約を結んでいる状態です。試用期間中=仮の契約だと考えて給料を支払わないと違法行為に当たるため、注意しましょう。

ただし、企業・従業員双方が合意した上であれば、給与・待遇が試用期間中と本採用後とで異なっていても問題ありません。減額の程度は企業側に任されており、例えば月給20万円の場合、試用期間中は19万円に設定しておくことが可能です。

また、都道府県労働局長の許可を取れば、試用期間中の給与設定を最低賃金の20%まで減額することができます。この減額率は、採用者の経歴や能力、職務内容を総合的に考慮して企業側が決定します。

▼東京都最低賃金(1013円)を減額したい場合
減額率:15%に設定
減額する額:1013×0.15=151.95 151円
試用期間中の賃金:1013-151=862 862円

以上で挙げた項目(減額率・減額後の賃金)を厚労省が定める申請書に記入し、所定の労働基準監督署に提出するという流れになります。

【参考】厚生労働省『最低賃金の減額の特例許可申請について』

試用期間中の給与・待遇を本採用後のものとは別に設定する場合には、採用者との合意が必須であるため、異なる旨を雇用契約書・就業規則などでしっかりと明示しておくようにしましょう。

■試用期間中の各種保険の加入義務

試用期間中であっても、事業主側は採用者を各種保険(労働保険・社会保険)に加入させる必要があります。労働保険や社会保険は法によって定められた強制加入のものであるため、従業員が加入要件を満たす場合には、企業側が加入義務を負うことになります。

試用期間中だからといって各種保険に加入させない場合、罰則を受けることになってしまうため注意しましょう。

試用期間延長の可否

以下の条件を満たしている場合のみ、試用期間の延長を行うことが可能です。

▼試用期間を延長できる条件

  • 就業規則に延長する可能性やその理由、延長期間が明記されている
  • 試用期間を延長すべき合理的な理由がある

試用期間の延長は、労働者を非常に不安定な立場に追いやるため、理由や合理的な根拠なく延長を行った場合、不当だと判断される可能性があります。

試用期間を延長するべき合理的な理由は主に以下の2点が挙げられます。

▼試用期間を延長すべき合理的な理由

  • 雇い入れ時には予期できなかった事情があり、労働者の適格性の見極めに時間がかかる場合
  • 延長期間内で、勤務態度などが改善されるか確認したい場合

また、繰り返し試用期間の延長を行った場合、トータルの労働時間が長くなりすぎてしまい、試用期間ではなく通常の労働期間だと判断される場合もあります。試用期間の繰り返しの延長はできるだけ避けるようにしましょう。

会社都合で試用期間中も解雇できるのか

結論から言えば、会社都合による試用期間中での解雇は可能です。しかしながら、先にも述べた通り、解雇理由には一定の合理性が必要であるため、試用期間で解雇したい場合には慎重な判断が必要であると言えます。

ここでまず気を付けてほしいのが、”試用期間中の解雇”は「本採用拒否」と「試用期間中の解雇」の2種類があり、後者は特に注意が必要だということです。

本採用拒否と試用期間中の解雇の違い

それでは、「本採用拒否」と「試用期間中の解雇」にはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく解説します。

■本採用拒否

本採用拒否とは、試用期間の終了と同時に解雇する場合を指します。

例えば、3か月という試用期間を設定していたが、入社後3か月が経過してから解雇する場合がこれに当たります。

■試用期間中の解雇

試用期間中の解雇とは、予め設定した試用期間の終了を待たずして解雇する場合を指します。例えば、3か月という試用期間を設定していたが、2か月で採用者を解雇した場合です。

以上2種類を比べた際、試用期間の途中で解雇する場合は本採用拒否に比べて不当解雇になりやすいです。もしも採用者から訴えられた場合、「採用者の適性を見極めるために設けた試用期間を待たず、性急に解雇した」と判断される可能性が高いからです。

本採用拒否ではなく、試用期間の途中で解雇したい場合には、まずは労働問題に詳しい弁護士事務所などに相談してから進めるのがおすすめです。

試用期間中に会社都合での解雇が認められたケース3選

それでは、実際にどんな場合に試用期間中の解雇が認められるのでしょうか。
具体的には、以下の3つのケースが挙げられます。

▼試用期間中の解雇が認められたケース

  1. 病気や怪我をした場合
  2. 勤怠不良である場合
  3. 重大な経歴詐称があった場合

①病気や怪我をした場合

試用期間中の社員が、業務外の理由で病気や怪我を被り、業務の継続が困難になった場合、正当な事由として解雇することが可能になります。

ただし、病気や怪我をしたからといって直ぐに解雇できるわけではなく、適切な手続きを踏んだ上での対処が必要です。

手順は以下の通りです。

▼病気や怪我を理由に解雇する手順

  • 就業規則に沿って休職させる
  • 休職期間満了時に、医師の助言を受け復職可能であるか検討する
  • 復職が不可能だと判断した場合に解雇する

病気や怪我を理由に就業困難になった場合でも、すぐに解雇できるわけではないので注意しましょう。

②勤怠不良である場合

企業側が指導をしているにも関わらず、正当な理由がない遅刻・欠勤を繰り返している場合には正当な解雇事由として認められます。ただし、どれくらいの期間中に、何回遅刻・欠勤をすれば解雇できるという絶対的な規定はありません。

また、企業側が勤怠不良に対して指導をしないまま解雇してしまうと、不当解雇にあたってしまう場合があります。勤怠不良が生じた場合には、欠勤理由の確認を行った上で、書面で注意指導を行うなど、適切な指導を行いましょう。

③重大な経歴詐称があった場合

採用者が学歴・職歴・犯罪歴などその他重要な経歴について、企業側に虚偽の申告をしており、それが重大な経歴詐称に該当する場合は、正当な解雇事由に当たります。

解雇が認められる重大な経歴詐称とは、新たに発覚した事実が予めわかっていれば、採用者を採用しない・同一条件では契約を結ばなかった場合を指します。

例えば、実際にはシステムエンジニアとしての業務経験がないのにも関わらず、経歴を詐称して企業側を誤認させ、不当に賃金を得ていた場合などがこれに当たります。

ただし、学歴・職歴・資格を除く些細な部分の詐称では、重大な経歴詐称に当たらず、解雇が認められない場合もあるため注意が必要です。

試用期間中に会社都合での解雇が違法とされたケース3選

一方で、以下のような場合は試用期間中の解雇が違法とされる場合があります。

▼試用期間中の会社都合での解雇が違法とされたケース

  1. 適切な指導を怠っている場合
  2. 一度だけ軽微なミスや遅刻を理由にした場合 
  3. 成績のみで判断した場合

①適切な指導を怠っている場合

繰り返しになりますが、適切な指導を行わずに解雇を行った場合、不当解雇に該当する可能性があります。

以下に、必要な指導が見受けられなかったために不当解雇に当たってしまった事例を挙げます。

【有限会社X設計事件 平成27年1月28日判決】
▼概要
土木関連の会社に図面作製の経験者として採用された従業員が能力不足を理由に試用期間満了後に解雇されたが、不当解雇と判定されたケース。

▼能力不足の内容

  • 入社後指示した橋梁の図面作成について、不備が有り手直しが必要な状態だった。

▼判決の理由

  • 入社早々に指示された図面作製については、従業員に経験がないにもかかわらず会社側から明確な指導を行った形跡が見られないこと。
  • 図面の作成について不備があり時間を要しているものの、最終的には要求通りに作業が出来ている点

従業員に図面作製の適性がないとはいえず、また、会社からの具体的な指導も見受けられなかったとして、不当解雇として判決が下っています。

【参考】栗坊日記「解雇175(有限会社X設計事件)」

②一度だけ軽微なミスや遅刻を理由にした場合 

一度きりの軽微なミスや遅刻を理由に解雇を行うことは、違法となる可能性が高いです。解雇の決定をする前に、適切な指導を行い、労働者と話し合いを行う必要があるでしょう。

②成績のみで判断した場合

業務上のノルマ達成状況や売上など、成績のみを理由に解雇を行った場合、不当解雇に該当する可能性が高いでしょう。

ノルマの達成状況や売上の成績は、労働者の能力や勤務態度だけではなく、マーケットの状況や社会状況、指導者の方針など、様々な要因が混在しています。業務上の成績の悪さだけで解雇を判断した場合は、解雇が無効になる可能性が高いです。

試用期間中に能力不足で解雇できるのか

採用者に業務遂行に必要な能力が備わっておらず、期待していた結果が出ない場合が能力不足に当たります。

能力不足を理由に解雇する場合は、慎重な判断が必要です。

過去の裁判例を参照すると、企業側の指導の有無などの状況の違いによって、同じ”能力不足”で解雇した場合でも不当解雇に当たっているケースが見受けられるためです。

試用期間中に能力不足で解雇する場合の注意点

能力不足で解雇する場合は、不当解雇にあたる場合があるため、以下3つのポイントに注意しましょう。

▼試用期間中に能力不足で解雇する場合の注意点

  • 解雇する前に会社から十分な指導はしたか
  • 新卒・未経験者を対象とした解雇ではないか
  • 試用期間満了前の解雇ではないか

「試用期間中に従業員を解雇したい…」と考えた場合、まずは会社側から指導を行いましょう。それでも改善が見られない場合、すぐに解雇するのではなく、試用期間満了まで待った上で解雇する方が安全です。

また、新卒・未経験者を解雇したい場合には、不当解雇にあたるかどうか判断が難しいため、専門の法律事務所・弁護士に相談してみましょう。

次の見出しから、試用期間中に能力不足での解雇が認められたケース・違法とされたケースについて解説していきます。

試用期間中に能力不足での解雇が認められたケース

同じ「能力不足」による解雇でも、認められたケースと違法となったケースがあります。その違いはどこにあるのでしょうか。

本章では、まずはじめに、能力不足での解雇が認められたケースについてご紹介します。

▼試用期間中に能力不足での解雇が認められたケース

  • 会社から十分な指導があった場合
  • 期待していた能力が欠如していた場合

会社から十分な指導があった場合

能力不足で解雇する場合でも、会社側から十分な指導があり、解雇を忌避する努力が行われている場合には、正当な解雇事由として認められるケースがあります。

以下に、具体的な事例として、日本基礎技術事件を挙げます。

【日本基礎記述事件 平成24年2月10日判決】
▼概要
建築会社に新卒で採用された技術者が、能力不足を理由に試用期間中に解雇されたが、正当な解雇として認められたケース。

▼能力不足の内容

  • 作業中に睡眠不足で居眠りをする
  • 時間や期限を守れず、時間管理能力に欠ける
  • 数分で終わる単純作業に1時間以上かかっていた
  • 再三の注意を受けても以上の行為に改善が見られなかった

▼判決の理由

  • 繰り返し指導が行われているのに対し、明確な改善が見られない
  • 今後指導を継続しても、社員に足る能力を得る見込みがたたない

判例の詳しい内容は以下の記事をご参照ください。

【参考】全国労働基準関係団体連合会「日本基礎技術事件」

新卒社員の研修態度の悪さに対して、会社側が解雇を忌避する努力、つまり十分な指導を行っていた点が重要な点になります。

期待していた能力が欠如していた場合

業務上期待されていた能力が採用者に不足していた場合には、試用期間中の解雇でも正当とされる場合があります。

具体的な事例として、リーディング証券事件を挙げます。

【リーディング証券事件 平成25年1月31日判決】
▼概要
証券アナリストとして採用された韓国国籍の従業員が、ネイティブレベルの日本語が備わっていないとして試用期間の途中で解雇され、判決で有効とされた事例。

▼能力不足の内容

  • 日本語のレベルが低く業務スピードが遅い
  • 証券アナリストとしての専門知識・技術レベルが低い

▼判決の理由

  • 会社側は、”ネイティブレベルの日本語力でもって、証券アナリストとして活躍できる即戦力”を期待して当該従業員を雇用している
  • 採用を決定づけたレポートの作成において、日本人の夫の手を借りていたという事実を秘匿していた

当該従業員が入社後に作成したアナリストレポートの出来栄えは、企業が求めていたレベルには到底達していなかったこと。

また、採用時に即戦力としての採用を決定づけたレポートに関して重大な秘匿があったことを踏まえて、解雇が有効と判断されています。

【参考】全国労働基準関係団体連合会「リーディング証券事件」

このように、採用の過程で、人材の判断を誤らせるような事実が発覚した場合は、試用期間中の解雇も正当とされる可能性があります。

試用期間中における能力不足での解雇が違法とされたケース

能力不足を理由にした解雇は、基準が厳しく、不当解雇と判定されやすいです。

特に、①新卒・未経験社を能力不足で解雇する、②試用期間の途中で解雇する場合は不当解雇とされる可能性があります。

以下で詳しく見ていきましょう。

▼試用期間中における能力不足での解雇が違法とされたケース

  • 新卒・未経験者を能力不足で解雇する場合
  • 試用期間の途中で解雇する場合

新卒・未経験者を能力不足で解雇する場合

新卒・未経験者を能力不足で解雇する場合には、不当解雇になりやすいです。

新卒や未経験者については、裁判所は「はじめは仕事ができないのは当然であり、企業側の指導により育成すべき」という考えを取っています。そのため、能力不足は解雇事由として不十分だとされる可能性が高いです。

以下に、未経験者を試用期間中に解雇したことが不当解雇に当たった事例をご紹介します。

【社労法人パートナーズ事件 平成25年9月19日判決】
▼概要
社労士の未経験者として採用された従業員を、能力不足を理由に試用期間の途中で解雇したが、不当解雇と判定された事案。

▼能力不足の内容

  • 従業員が、顧客への意向確認が不十分なまま雇用保険の手続きを行った
  • 社労士の基本業務においてコミュニケーションが不足していた

▼判決の理由

  • 企業側は、従業員が実務経験のない未経験者であることを了解した上で採用しており、即戦力としての活躍を期待できる状態ではない
  • 顧客への意向確認について、予め明確な指示は見られなかった

【参考】栗坊日記「解雇145(社会保険労務士法人パートナーズほか事件)」

試用期間の途中で解雇する場合

予め設けられた試用期間が満了する前に、能力不足で解雇する場合も不当解雇と判断される可能性が高いです。そもそも試用期間は採用者の適性を見極めるために設けられている期間であり、期間の途中で解雇する場合、企業側が十分な指導をしなかったと判断されるリスクがあるためです。

具体的な事例としてニュース証券事件を挙げます。

【ニュース証券事件 平成21年1月30日判決】
▼概要
かつての営業経験から、即戦力として採用された従業員が、成績不振を理由に試用期間の途中で解雇されたが、試用期間満了前に能力不足と判断するのは性急すぎるとして不当解雇に当たった事例。

▼能力不足の内容

  • 営業の経験者として当該従業員を採用したが、入社後3か月間の営業成績が他の社員に劣っていた

▼判決の理由

  • 営業日誌から、採用者が地道に営業活動を行っていたことが散見され、成績の改善見込みがないとはいえない
  • 採用者の資質・能力について、試用期間満了を待たずわずか3か月で判断するのは性急すぎること。

【参考】全国労働基準関係団体連合会「ニュース証券事件」

以上に挙げたケースのように、試用期間満了前に能力不足で解雇してしまうと、例え経験者枠としての採用であったとしても、能力の有無を判断するには不十分だとして不当解雇に当たるリスクがあります。

採用者に対して期待するパフォーマンスが見られない場合、まずは指導を行ってから解雇を検討しましょう。

また、もし解雇をするという結論に至った場合には、試用期間満了を待つようにするのが安全です。

試用期間中に人材を解雇する手続き

試用期間中に解雇したい場合、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。

具体的には、以下3つの手順が必要です。

▼試用期間中に人材を解雇する手続き

  1. 解雇要件を検討し、経営幹部に共有する
  2. 解雇予告・解雇予告手当の支払いを行う
  3. 解雇通知書を交付する

①試用期間中の解雇要件を検討する

まず、試用期間中の解雇を決定する前に、解雇要件を満たしているか確認します。解雇要件に合致することの確認が取れた場合には、該当従業員を解雇する旨を経営幹部に共有し、解雇の方針を決定します。

解雇の種類と、その要件は以下の通りです。

▼解雇の種類・要件

解雇の種類 定義 具体事由 解雇要件
①普通解雇 社員が重大な規律違反を犯した際に、企業側から一方的に労働契約解除を行う行為 就業者が、能力不足や経歴詐称・度重なる遅刻・欠勤をした場合
  1. 就業規則に普通解雇事由の記載があること
  2. 就業規則に定める解雇事由に該当すること
②整理解雇 事業縮小など、経営側の事情によって、人員整理のために労働者を解雇する行為 経営難により人員を削減する必要がある場合
  1. 人員整理が本当に必要であること
  2. 整理解雇を避けるための努力を企業側が行なっていること
  3. 解雇選定者の理由に合理性があること
  4. 解雇される労働者側と十分に協議を尽くしていること
③懲戒解雇 社員が重大な規律違反を犯した際に行われる解雇。最も重い処置であり、要件の判断が厳しい 社員が、横領や重度のセクハラなど、犯罪行為や重大な規律違反を起こした場合
  1. ”懲戒解雇を行うことがある”という内容の記載が就業規則にあること
  2. 就業規則上の懲戒事由に該当すること

法的に正当な解雇だと認められるためには、上記要件に加えて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められることが必要になります。

▼労働基準法 第16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

【出典】e-Gov「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律第七十一号)」

この要件は、労働基準法16条の規定によって明記されており、企業側からの解雇を厳しく縛る条件となっています。十分に要件を考慮せずに社員を解雇してしまうと、後にトラブルや訴訟に発展する可能性が出てきてしまいます。

不当解雇に当たらないようにするために、慎重に判断していきましょう。

②解雇予告・解雇予告手当の支払いを行う

解雇要件を把握し、経営幹部と共有を図ったら、該当社員に対して解雇予告をするか、または解雇予告手当の支払いを行います。人材を解雇したい場合、解雇の30日前に解雇予告を行うか、または30日以上の平均賃金を支払う必要があります。これは、労働基準法第20条により規定されています。

▼労働基準法第20条

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

【出典】e-Gov「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)」

解雇予告の通知方法に関して、法律上特に規定されていません。そのため、従業員に解雇する旨が伝わっているのであれば、口頭でも、書面でも、メールでも、法的には問題がないということになります。

しかし、確実に予告をした証拠が残る書面による方法がおすすめです。証拠がないことで、後に要らぬトラブルに発展するのを防ぐことができるでしょう。具体的には、解雇予告通知書を作成した後、以下のような方法があります。

▼解雇予告通知書を作成した後にするべきこと

  • 直接従業員に手渡す
  • 配達証明書付きの内容証明書郵便を利用する

解雇予告・解雇予告手当を実施しない場合の解雇は、不当解雇にあたるため、必ず実施するようにしましょう。

【例外】試用期間開始後14日以内の解雇には解雇予告・解雇予告手当不要

試用期間開始後14日以内の従業員を解雇する場合には、上にあげた解雇予告・解雇予告手当は必要ありません。

▼労働基準法 第21条

前条の規定(解雇予告・解雇予告手当の実施義務)は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者

試用期間開始後14日以内の従業員を解雇する場合には、解雇通知書のみを作成して交付することになります。

ただし、解雇予告・解雇予告通知が不要なだけで、解雇要件の厳しさは通常の解雇と同様なため、注意しましょう。

【出典】e-Gov「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)」

③解雇通知書を交付する

最後に、解雇当日になったら解雇通知書を交付します。方法としては、解雇予告の場合と同じく、書面による通知がおすすめです。

なお、従業員から解雇理由証明書の請求があった場合には、解雇通知書とは別に、解雇理由証明書を作成する必要があります。請求があった場合には、漏れなく対応しましょう。

▼労働基準法第22条2項

労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

【出典】e-Gov「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)」

試用期間に会社都合で人材を解雇する際の注意点・ポイント

ここまで、試用期間に会社都合の解雇が認められたケースと違法となったケース、解雇する際の手順についてご紹介しました。

最後に、試用期間に会社都合で人材を解雇する際の注意点やポイントについて解説します。

▼試用期間に会社都合で人材を解雇する際の注意点・ポイント

  • 解雇する前に労働者の話を直接聞く
  • 試用期間での解雇は本採用後よりハードルが低い
  • 解雇理由をしっかり言語化する

解雇する前に労働者の話を直接聞く

解雇するべき明確な理由があったとしても、まず初めに労働者本人と直接話し、事情をヒアリングするようにしましょう。労働者が重大な問題を起こしていたとしても、何か事情が合った場合も考えられます。

そのため、話を聞かず一方的に解雇してしまっては、かえって重大なトラブルを引き起こしてしまう場合もあるでしょう。

試用期間での解雇は本採用後よりハードルが低い

試用期間中に解雇を検討している際に抑えておくべきポイントは、「試用期間での解雇は本採用後よりハードルが低い」ということです。

実際に、最高裁でも以下のように述べられています。

「右の留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない。」

【出典】最高裁ホームページ『昭和48年12月12日 最高裁判所大法廷 判決 』

ここから、試用期間での解雇は厳格な規制があるものの、本採用後の解雇と比較するとハードルが低いことがわかります。

解雇理由をしっかり言語化する

解雇理由をしっかりと言語化することで、解雇の妥当性を高めることが重要です。解雇理由をしっかりと言語化できない場合、トラブルに繋がってしまうおそれがあります。

トラブルを防ぐためにも、試用期間中に最低限身に着けてほしい能力や、期待する成果などを具体的に設定し、それを書面で共有しておくことが大切です。

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会社都合で試用期間中に解雇する場合は慎重に行おう!

いかかでしたか?

今回の記事では、試用期間の解雇はそもそも可能なのかどうか、不当解雇に当たるのはどんな場合か、具体的な事例を用いてご説明してきました。

試用期間中の解雇は、不当解雇にあたりやすいため、慎重に判断していきましょう。