採用担当者のマンパワー不足によって、うまく採用活動を進められないとお悩みの採用担当者の方も多いのではないでしょうか。実際に株式会社マイナビの調査によると、「採用活動が厳しかった」と回答した理由について、以下のような課題がありました。
▼2026年卒の採用活動が厳しかったと回答した理由(抜粋)
- 採用選考への動員:40.5%
- マンパワーの不足:20.6%
- 採用スケジュール見直しへの対応:9.0%
しかしながら、こうした採用担当者の業務負担の問題はHR Ops(人事オペレーション)を導入することで解決できます。本記事では、HR Opsの業務内容や導入するべき企業の特徴、導入する際の注意点について詳しく解説しています。
【参考】株式会社マイナビ『マイナビ 2026年卒 企業新卒内定状況調査』
HR Ops(Human Resources Operations)とは
HR Ops(Human Resource Operations)とは、人事業務全体の標準化・効率化を担う仕組みや体制を指します。従業員が働きやすい環境の構築や入退社の手続き、さらには候補者の面接日程の調整などのあらゆる人事業務の最適化を支援する役割を担っています。
▼HR OpsとCHRO・CoE・HRBPの違い
| 用語 | 意味 |
| HR Ops(Human Resources Operations) | 人事業務全体の標準化・効率化を担う仕組みや体制のこと |
| CHRP(Chief Human Resources Officer) | 企業の最高人事責任者。
経営戦略と人材戦略を結びつける役割を担う。 |
| CoE(Center of Excellence) | 企業の採用、報酬、人材開発、労務といった特定の専門分野の知識を活かし、人事業務の設計・施策を策定するチームのこと |
| HRBP(HR Business Partner) | 各事業部に入り込み、現場の課題解決や組織づくりを担う存在 |
CHRO(Chief Human Resources Officer)との違い
CHRO(Chief Human Resources Officer)とは企業の最高人事責任者のことで、経営戦略と人材戦略を結びつける役割を担っています。また、採用、配置、育成、評価、制度などのあらゆる人事業務を統括する存在です。
HR Opsは社員の日々の業務を効率化することを中心に行いますが、CHROは経営戦略にあった中長期的な人材戦略を策定する役割を担っています。
CoE(Center of Excellence)との違い
CoE(Center of Excellence)とは、企業の採用、報酬、人材開発、労務といった特定の専門分野の知識を活かし、人事業務の設計・施策を策定するチームのことです。
特に採用業務や人材マネジメントの分野において、人事制度やルールの仕組みづくりという重要な役割を担っています。
HRBP(HR Business Partner)との違い
HRBP(HR Business Partner)とは、各事業部に入り込み、現場の課題解決や組織づくりを担う存在です。CHROや経営者が思い描く人材戦略を現場に落とし込む役割を担っています。
主な活動としては、現場マネージャーとの1on1面談やタレントマネジメントであり、そうした活動を通して組織の成長をサポートしています。
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HR Opsが重要視される理由
近年ではHR Opsの導入による人事業務の効率化が進められていますが、なぜこのような行動が注目を集めているのでしょうか。その理由としては以下の3つがあげられます。
▼HR Opsが重要視される理由
- 人的資本経営の増加
- 最新技術の活用
- 採用担当者の負担増加
以下より詳しく解説していきます。
①人的資本経営の増加
1つ目は人的資本経営が増加していることです。人的資本経営とは、人材を資本として捉え、その価値を最大限引き出すことによって持続的な企業価値向上へとつなげる経営手法のことです。
近年では2023年3月期決算より、有価証券報告書を発行している大手企業約4,000社に対して人的資本の情報開示が義務化されました。このように、人的資本に関するデータが重要になってきており、そのデータを集める手段としてHR Opsの導入が重要視されるようになったのです。
【参考】経済産業省『人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~ 』
②最新技術の活用
2つ目は最新技術の活用が人事業務で増えてきていることです。近年ではリモートワークの普及やAIの発達などによって様々な最新技術が開発、実装されています。HR Opsはそういった最新技術との親和性が高いのが特徴です。
最新のHR OpsはAIを用いた面接スケジュールの自動調整機能やチャットボットによる24時間365日の問い合わせ対応など、業務を自動化する仕組みが整えられています。そのため、最新技術を取り入れつつ、人事業務を効率化できるHR Opsに注目が集まっているのです。
③採用担当者の負担増加
3つ目は採用担当者の負担が増えていることです。実際に株式会社マイナビの調査によると、採用担当者のマンパワー不足を感じている企業の割合は67.9%でした。
また、同調査によると、26年卒の新卒採用を担当した部署・チームの構成について、「全員が他業務と兼任している」と回答した企業は77.8%であり、専任の26年卒の採用担当者数は平均1.1人と非常に少ないです。
しかしながら、採用競争が激化する中でマンパワーを増やそうにも採用にかけられるリソースには限りがあります。そのため、採用業務を効率化し、一人当たりの生産性を高めることができるHR Opsへの期待が高まっているのです。
【参考】株式会社マイナビ『マイナビ 2026年卒 企業新卒内定状況調査』
HR Opsの業務内容
ここでは、HR Opsが担う業務内容について解説していきます。
▼HR Opsの業務内容
- 採用オペレーション
- 労務オペレーション
- ナレッジ・データ管理
- HRテック・ツールの運用
- コンプライアンス管理
以下より詳しく解説していきます。
①採用オペレーション
応募者のエントリー受付や面接日程の調整、候補者情報の一元管理などの採用業務を円滑に行うためのオペレーションを整備します。これにより、候補者とのスムーズなコミュニケーションが行えるとともに、採用業務全体の効率化を実現することができます。
②労務オペレーション
社員の入退社手続きや給与管理といった手作業によるミスや属人化が起きやすいバックオフィス業務を中心に効率化します。これにより、従業員が快適に働くことができる環境を整備することができます。
③ナレッジ・データ管理
社内のマニュアルや面接評価・人事評価などを一元管理し、企業内で共有、活用できる仕組みを整備します。ナレッジやデータが一つの場所に集約されるようになるため、誰でも必要な情報を素早く入手することが可能になります。
④HRテック・ツールの運用
HRIS(人事情報システム)やATS(採用管理システム)の選定や運用・保守などを行います。各ツール間の連携や最適化を行うことによって、人事業務を大幅に効率化できるでしょう。
⑤コンプライアンス管理
労働関連法令や業界・社内の規定に沿った人事業務ができているかを内部監査などによって監視するとともに、業界・社内のルール変更や法改正に合わせた見直しを行います。これらを実施することで、健全な業務運営が行える環境を構築することができます。
HR Opsを導入することで得られるメリット
では、HR Opsを導入することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、そのメリットについて以下の4つを解説していきます。
▼HR Opsを導入することで得られるメリット
- 人事業務の生産性が向上する
- データに基づいた意思決定が可能になる
- 採用体験を向上させられる
- 社内トラブルの防止につながる
以下より紹介していきます。
①人事業務の生産性が向上する
HR Opsを導入することで人事業務の生産性を向上させることができます。仮にHR Opsを導入しない場合、人事業務の属人化が進んでしまい、担当していた社員が異動や退職となってしまった際には業務が回らなくなってしまうかもしれません。
そのためHR Opsを導入し、人事業務に関する知識や経験、データを蓄積しておくことで円滑に人事業務を進めていくことができます。
②データに基づいた意思決定が可能になる
「HR Opsの業務内容」でも述べた通り、HR Opsではナレッジ・データ管理が可能です。そのため、HR Opsで蓄積したデータをもとに納得感のある意思決定を行えます。
これまで社員の勘や経験で判断していた人事施策や評価についても、HR Opsによって蓄積されたデータを活用することで経営陣や現場に対して説得力のある提案ができるようになります。
③採用体験を向上させられる
HR Opsは採用担当者の業務負担を減らすだけでなく、候補者の採用体験も向上させることが可能です。
選考における面談日の調整やこまめな連絡などの煩雑なやり取りは、候補者にストレスを与えてしまう要因になり得ます。HR Opsによって採用プロセスやコミュニケーションを効率化することで、候補者はストレスなく安心して選考に臨むことができるようになるでしょう。
④社内トラブルの防止につながる
HR Opsを導入・運用することは、残業代の未払いやハラスメントなどの社内トラブルを防止するうえでも有効です。
適切な労務データの管理体制を構築し、社内ルールや問い合わせ窓口を整備することによって、労務上のリスクを未然に防ぐことができます。また、万が一トラブルが発生した場合でも、迅速かつ適切な対処が可能です。
HR Opsを導入するべき企業の特徴3選
ここまでHR Opsを導入することで得られるメリットについて解説してきました。しかしながら、「自社にHR Opsを導入するべきかわからない」とお悩みの採用担当者もいるのではないでしょうか。
ここでは、HR Opsを導入するべき企業の特徴について以下の3つを解説していきます。
▼HR Opsを導入するべき企業の特徴3選
- 人事業務が属人化している企業
- 人事業務が複雑化している企業
- 業務のナレッジ・データが不足している企業
以下より詳しく解説していきます。
①人事業務が属人化している企業
人事業務が特定の採用担当者に依存してしまっている企業はHR Opsの導入を検討するとよいでしょう。
採用や労務、入退社手続きなどの業務が属人化してしまうと、仮に担当者が休職や退職をしてしまった場合に業務が滞る可能性があります。また、担当者ごとに業務の進め方や候補者の評価基準にムラがあると、業務の生産性や採用の質が低下してしまうでしょう。
HR Opsを導入して人事業務を標準化することによって、属人化を回避しつつ効率的に業務を進めることが可能になります。
②人事業務が複雑化している企業
人事業務における管理や調整に多くの時間や工数を費やしている企業もHR Opsの導入を検討してみるとよいでしょう。
企業規模が大きくなるにつれて、人事部門が担う役割はより複雑になってきます。業務が複雑になってくると、本来注力するべき人材育成や組織づくりが疎かになってしまうことも考えられるでしょう。
HR Opsを導入し、手間のかかる煩雑な作業を効率化することで本来注力するべき人材育成や組織づくりの時間を作ることが可能になります。
③業務のナレッジ・データが不足している企業
人事業務に関するナレッジやデータが不足している企業もHR Opsの導入を検討するべきでしょう。
人材戦略を立てる上では根拠となるデータに基づいた意思決定が必要になってきます。HR Opsでは社員や応募者に関するデータを一元管理することができるため、自社にナレッジを蓄積することが可能です。
これにより、HR Opsで蓄積されたナレッジを用いて人材戦略を立てることができるようになります。
HR Opsで必要なスキル・能力
HR Opsを導入する際には主に以下の4つのスキル・能力が必要になってきます。
▼HR Opsで必要なスキル・能力
- オペレーション構築力
- コミュニケーション能力
- データ分析力
- ツールを活用する力
ここでは、これら4つのスキル・能力について解説していきます。
オペレーション構築力
オペレーション構築力とは、人事戦略や制度を誰もがミスなく行えるように業務のプロセスやルールを体系的な仕組みとして明文化し、現場に定着させる能力のことです。この能力があると、人事業務の属人化を防ぐことができるでしょう。
なお、HR Opsを導入する際には法務や労務に関する知識や業務フローに関する知識といったオペレーションの知識が必要になってきます。オペレーション構築の際には、こうした能力を持っているかどうかを確かめるようにしましょう。
コミュニケーション能力
HR Opsを導入・運用していくにあたっては多くの現場社員と連携していくことが必要不可欠です。そのため、人材戦略を現場社員にわかりやすく伝える説明力や現場社員との意見をすり合わせ、よりよい合意形成を行う調整力などのコミュニケーション能力が重要になってきます。
データ分析力
データ分析力とは、採用データやエンゲージメント、離職率といった人事に関する様々な数値やデータを収集し、そこから組織の課題や傾向を分析する能力のことです。
HR Opsではナレッジやデータの管理や蓄積を行うことができますが、蓄積したデータを自社の人材戦略に活用しなければ意味がありません。この能力があることで、客観的なデータに基づいた人事施策の立案や改善を行うことができるでしょう。
ツールを活用する力
ツールを活用する力とは、ATS(採用管理システム)や労務管理システム、タレントマネジメントシステムといった様々なHRテックツールをスムーズに使いこなし、業務の自動化や効率化を図る能力のことです。この能力があると、日々のルーティンワークを削減し、より戦略的な業務にリソースを割くことができます。
さらにHR Opsを運用していくにあたっては人事担当者だけでなく、現場社員にもツールを活用できるように研修を行わなければなりません。したがって、自らが使いこなせるだけでなく、その使い方を社員に分かりやすく説明し、現場全体に定着させる指導力や巻き込み力も重要です。
HR Opsを導入するまでの流れ
ここでは、HR Opsを導入するまでの流れを6ステップで解説しています。
▼HR Opsを導入するまでの流れ
- 現在の業務内容を把握する
- 現場の課題を洗い出す
- 課題に優先順位をつける
- 理想の業務フローを考える
- ツールを選定する
- 社内に導入する
以下より解説していきます。
①現在の業務内容を把握する
まずは現在の業務内容を把握することから始めましょう。具体的には、採用・労務・ナレッジ管理といった業務を誰が担当しているのか、またどういった手法やツールを活用して業務を行っているのかを正確に洗い出していきます。
人事業務を正しく把握しておくことは、後々の現場の課題を洗い出す際に非常に役立ちます。
②現場の課題を洗い出す
現在の業務内容が把握できたら、そこから現場の課題を採用・労務などの各業務ごとに満遍なく洗い出していきます。その際は、どういった業務においてどういった課題があるのかを具体的に掘り下げていくことが重要です。
例えば採用業務で課題がある場合であれば、「採用業務において、応募者の情報をうまく集められていない」などのように、具体的に言語化していきます。
③課題に優先順位をつける
②で洗い出した課題に優先順位をつけていきます。もちろん、人事業務における全ての課題を解決することが理想ではありますが、その分膨大な時間がかかってしまうことが考えられます。
そのため、洗い出した課題に優先順位をつけて「最も解決するべき問題」を見つけるとよいです。なお、最も解決するべき問題を選ぶ際には、解決することで人事業務の大幅な改善が見込めるものがのぞましいでしょう。
④理想の業務フローを考える
最も解決したい課題を整理できたら、その課題を解決できるような理想の業務フローを考えていきます。人事業務の属人化を防ぐために、誰にとってもわかりやすい標準化された業務フローを作成するとよいでしょう。
また、業務フローを設計する際には役割分担を明記しておくとよいです。「誰が、どの業務を担当するのか」を整理しておくことで、担当者以外のメンバーでもスムーズに業務を進めることができるようになります。
⑤ツールを選定する
続いて、HR Opsの導入に必要なツールを選定していきます。現場の課題を解決できるうえに誰にとっても扱いやすいツールを選ぶようにしましょう。
また、既存のシステムや他ツールとの連携がスムーズにできるかを確認し、コスト面やサポート体制があるかをチェックしておくとよいです。
⑥社内に導入する
ここまでの準備が整ったら、いよいよHR Opsを導入していきます。しかしながら、導入した当初は現場に浸透しないことが多いです。そのため、事業部のマネージャーや現場社員に周知させるとともに、ツールの扱い方に関する教育を実施するとHR Opsの導入がはかどるでしょう。
HR Opsを導入する際の注意点
HR Opsを導入するにあたって注意するべき点は以下の4つです。
▼HR Opsを導入する際の注意点
- 自社にあったツールを選定する
- 段階的にHR Opsを導入していく
- 継続的に運用を行う
- 現場の社員を巻き込む
以下より詳しく解説していきます。
①自社にあったツールを選定する
自社の人事業務を最大限効率化できるようなツールを選定することが重要です。自社に合わないツールを選んでしまうとかえって業務が複雑化したり、現場社員にうまく浸透しなかったりするでしょう。
既存のシステムとの互換性やツールの使いやすさ、運用コストなどの様々な面から比較し、自社にあったツールを選定するとよいです。
②段階的にHR Opsを導入していく
属人化が特に顕著な人事業務からHR Opsを導入していくようにしましょう。最初から全ての業務を効率化するためにHR Opsを導入してしまうと運用の手間が増えてしまい、失敗する原因になりかねません。
「HR Opsを導入するまでの流れ」でも説明したように、まずは自社の人事業務における一番の課題を特定し、それを解決するためにHR Opsを導入することが望ましいでしょう。その後、段階的に他の業務に導入していくことがHR Opsの運用を成功させるポイントです。
③継続的に運用を行う
HR Opsの導入だけで満足してしまうと、現場でうまくツールを活用できなかったり、現場に浸透しなかったりする場合があるでしょう。そのため、HR Opsは継続的に運用を行っていきつつ適宜改善を実施していく必要があります。
HR Opsの導入後はKPIを設定して、目標数値に対してどれくらいの達成度合いなのかを確認することで、現場の活用状況や導入による効果を測定できるでしょう。
④現場の社員を巻き込む
現場の社員を巻き込んでHR Opsを運用するようにしましょう。特に多くの社員が関わる採用業務においては、現場マネージャーや若手社員などの様々な社員が関わってきます。この際、HR Opsがしっかりと周知されていないと採用基準のブレや候補者データが上手く集まらないといった問題が生じてしまいます。
そういった事態を防ぐためにも、事前にHR Opsを社員に周知させるとともに、HR Opsで活用するツールの使い方に関して教育を実施しておくとよいでしょう。
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HR Opsを導入して人事・採用業務を効率化しよう!
いかがでしたか。本記事ではHR Opsを導入することで得られるメリットや導入するべき企業の特徴について解説しました。
この記事を参考に、HR Opsの導入を検討してみてください。