例あり|ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?書き方を解説
2025/12/24

ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?

ジョブディスクリプション(職務記述書)とは、職務の内容を詳しく記述した文書のことです。日本語では「職務記述書」とも呼ばれています。

ジョブ型雇用が一般的な欧米諸国では、主に人事評価や採用活動で利用されることが多いようです。国内では、政府が中心となってジョブ型雇用の導入を推進しており、ジョブディスクリプション(職務記述書)の重要性が高まっています。本記事では、その理由や活用方法について、詳しく解説していきます。

【参考】内閣官房・経済産業省・厚生労働省『ジョブ型人事指針』

ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成する目的

ジョブディスクリプションには、以下の目的があります。

▼ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成する目的

  1. 採用ミスマッチの防止
  2. 人事評価・育成の基準の明確化
  3. 人事制度運用における指針作成

1)採用ミスマッチの防止

ジョブディスクリプション(職務記述書)の作成により、採用段階から求めるスキルや業務内容を明らかにすることができます。これにより、採用候補者との間で認識のズレを防ぐことができ、採用後のミスマッチを防ぐことが期待できます。

2)人事評価・育成の基準の明確化

求める人物像や職務に求める成果が明確になり、目標と実際の成果を比較しやすくなることで、納得感のある人事評価を行えるようになります。

ジョブディスクリプション(職務記述書)で、給与設定や昇進、解雇に関する情報を明示できることにより、万が一従業員から申し出があった場合の法的リスクを最小限にすることが可能になります。

3)人事制度運用における指針作成

ジョブディスクリプション(職務記述書)は、評価や等級格付けの明確な根拠となるため、新制度設計における重要な指針として機能します。 その活用範囲は採用活動だけではなく、人材育成から配置後のマネジメントまで多岐にわたります。

ジョブディスクリプション(職務記述書)が注目されている背景

なぜジョブディスクリプション(職務記述書)が日本で注目されるようになったのでしょうか。その背景について紹介していきます。

厚生労働省の支援

厚生労働省は、日本企業がジョブ型雇用へ円滑に移行できるよう、具体的なツールやデータの提供を強化しています。

特に注目したいのが、職業情報提供サイト「job tag(日本版O-NET)」です。 このサイトでは、約500種類以上の職種についての具体的な仕事内容や、求められるスキルが整理されています。企業は自社の職種に近いモデルデータを検索・ダウンロードし、カスタマイズするだけで標準的な職務記述書を作成することが可能です。

また、「ジョブ型人事指針」などを通じて等級制度や評価基準の整備手順も公開しており、導入ノウハウを持たない中小企業でも着手しやすいよう、整備を進めています。

【参考】厚生労働省「job tag(日本版O-NET)」

【参考】厚生労働省・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針」

ジョブ型雇用の増加

従来の日本では、職務や勤務地を限定しない「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。 まず人材を確保し、後から配属先を決めるシステムのことを指します。多くの日本企業が採用していることから「日本型雇用」とも呼ばれています。

しかし、ビジネス環境の変化が激しい現代においては、より専門性が高く、変化に対応できる組織作りが求められています。 そのため、職務内容が明文化された「ジョブ型雇用」への移行が進められています。

スペシャリスト需要の高まり

少子高齢化により人材確保が難しくなっている今、限られた人員で生産性を高めるために、特定の専門知識やスキルを持つ「スペシャリスト」を求める動きが加速しています。 企業の競争力維持や複雑な課題解決には彼らの力が不可欠であり、今後ますますその需要は拡大していくと予想されます。

そのため、スペシャリストの採用や育成に適した「ジョブ型雇用」への移行が進んでおり、その基盤となる「ジョブディスクリプション(職務記述書)」に注目が集まっているのが現状です。

働き方改革関連法の施行

2021年4月から、働き方改革関連法に基づき同一労働同一賃金が原則になりました。

正社員と非正社員間における不合理な格差の解消が目的とされており、厚生労働省がガイドラインを策定しています。

また、改革に伴う就業規則や賃金体系の見直しのため、厚生労働省は以下の支援を行っています。

▼厚生労働省の支援内容

  • 「働き方改革推進支援センター」
  • 「キャリアアップ助成金」
  • 職務分析・職務評価の導入支援

ジョブディスクリプション(職務記述書)は、職務内容と待遇の関係が明確になることで、不合理な待遇の解消に貢献します。

【参考】厚生労働省『同一労働同一賃金特集ページ』

ジョブディスクリプション(職務記述書)のメリット・デメリット

ここからは、ジョブディスクリプション(職務記述書)のメリットとデメリットについて解説していきます。

▼ジョブディスクリプション(職務記述書)のメリット

  1. 採用ミスマッチを防げる
  2. 人事評価の公平性向上をもたらす
  3. スキルアップ・キャリアアップ方針の明確化
  4. スペシャリストを育成できる
  5. 全社生産性を向上させる

メリット

1)採用ミスマッチを防げる

一つ目は、採用ミスマッチを防げる点です。 求人情報にジョブディスクリプション(職務記述書)を明記することで、候補者は自身のスキルや適性と照らし合わせて、応募すべきか判断できるようになります。 これにより、入社後の「思っていた仕事と違った」というギャップを解消し、早期離職のリスクを低減します。

2)人事評価の公平性向上をもたらす

ジョブディスクリプション(職務記述書)の作成により、公正な人事評価を行うことにつながります。あらかじめ具体的な仕事内容や求められる成果を明確にしておくことで、より客観的に人事評価を行えるようになります。結果的に、評価の透明度を高めることにつながるでしょう。

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3)スキルアップ・キャリアアップ方針の明確化

五つ目は、スキルアップ・キャリアアップ方針の明確化です。

採用時にスキル不足がある場合や、配置転換を行う際も、ジョブディスクリプション(職務記述書)があれば何が不足しているかが明確になり、個々に必要な研修を的確に実施できます。 また、担当業務の範囲が明確になることで、頼みやすい人に仕事が偏るといった不公平を防ぎ、従業員は自身の専門性を高める業務に集中できるようになります。

さらに、上位職の職務記述書を参照することで、将来目指すべき姿や習得すべきスキルが可視化され、従業員の主体的なキャリア形成を促すことが可能です。

4)スペシャリストを育成できる

ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプション(職務記述書)によって職務範囲が明確に定義されるため、従業員はゼネラリスト的な配置転換に縛られず、特定の専門分野を深く追求することが可能になります。 高度な専門知識や技術を持つ人材の育成は、企業の国際競争力を高める上でも重要となっており、ジョブ型雇用はその有効な解決策として期待されています。

5)全社生産性を向上させる

従来のメンバーシップ型雇用は、雇用と収入の安定といったメリットがありましたが、職務と評価基準の曖昧さから、能力が高くても正当に評価されないという課題を抱えていました。 これは、優秀な人材のモチベーション低下や流出を招き、組織全体の生産性を停滞させる大きな要因となっていました。

一方、ジョブ型雇用は仕事に人を割り当てるため、自分の能力を最大限に発揮できるポジションで働くことができ、高いモチベーションを維持できます。 結果として、個人の生産性が飛躍的に向上し、全社的な生産性向上につながります。

また、様々な人材に活躍のチャンスを与えることで、優秀な労働力の確保にも繋がります。

デメリット

▼ジョブディスクリプション(職務記述書)のデメリット

        1. 職務内容の変化に対する柔軟性が失われる
        2. 作成・管理コストがかかる
        3. ゼネラリスト育成が難しくなる

1)職務内容の変化に対する柔軟性が失われる

ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成することにより、ジョブローテーションが行えなくなるというデメリットがあります。また、従業員の仕事はジョブディスクリプション(職務記述書)に記載されている範囲内で完了してしまうため、誰も担わない仕事が発生したり、記載のない業務への対応があいまいになる可能性があります。

そのため、ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成するときは、業務内容を限定しすぎない方がよいでしょう。

2)作成・管理コストがかかる

本格的に導入する場合、作成から運用までに多くの工数が必要です。 現場への詳細なヒアリングに加え、経営層や各部門責任者とのすり合わせなど、合意形成のプロセスも発生します。

また、企業規模が大きく職種が多様な場合、作成数は膨大になります。さらに、事業の変化に応じて常に最新の状態へ更新し続ける必要があるため、維持・管理(メンテナンス)のコストも考慮しなければなりません。

3)ゼネラリスト育成が難しくなる

ジョブディスクリプション(職務記述書)は、職務内容と範囲を限定するため、幅広い知識や経験を持つ「ゼネラリスト(オールラウンド型人材)」の育成にはあまり適していません。

専門特化したスペシャリストの育成には高い効果を発揮しますが、企業経営を担う幹部層には、社内の様々な業務に精通したゼネラリストの視点が欠かせません。 将来的にゼネラリストとして育てたい人材層に対しては、職務記述書の導入を慎重に行うか、あるいは定期的な異動を前提とした柔軟な契約内容にする必要があるでしょう。

ジョブディスクリプション(職務記述書)の作成方法

一からジョブディスクリプション(職務記述書)を作るにはどうしたらよいのでしょうか?

作成方法をご紹介していきます。

①職務の目的や目標を明確にする

ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成する際にはまず、その職務の目的や目標を明確にする必要があります。

職務の目的や目標を明確にすることで、職務内容や求められるスキル・経験を具体的に考えることができるためです。

②職務内容を具体的に記載する

ジョブディスクリプション(職務記述書)には、具体的な職務内容を記載する必要があります。

職務内容を記載する際には、以下の点に注意しましょう。

      • 職務内容を簡潔にまとめる
      • 職務内容を時系列で記載する
      • 職務内容を具体的な業務内容に落とし込む
      • 責任・権限を明確にする

ジョブディスクリプション(職務記述書)には、職務において責任を負う範囲や、権限の範囲を明確に記載する必要があります。

責任・権限を明確にすることで、社員が職務を遂行する際に、何をすべきか、何をすべきでないか、を判断しやすくなります。

➂求められるスキル・経験を記載する

ジョブディスクリプションには、応募に必要なスキル・経験を記載する必要があります。求められるスキル・経験を記載することで、採用担当者が求める人物像を明確にすることができます。

④必須条件と歓迎条件を分ける

求められるスキル・経験を記載する際には、必須条件と歓迎条件を分けることが重要です。分けて提示することで、応募者が自身の適性を判断しやすくなり、ミスマッチの防止につながります。

必須条件:応募に必須のスキル・経験を記載

歓迎条件:応募に望ましいスキル・経験を記載

⑤勤務地や給与などの条件も記載する

ジョブディスクリプション(職務記述書)には、勤務地や給与などの条件も記載することが必要です。

勤務地や給与などの条件を記載することで、求職者が応募するかどうかを判断しやすくなります。

【テンプレ】ジョブディスクリプション(職務記述書)を穴埋めで完成!

早速ですが、コピペ+穴埋めで完成するジョブディスクリプションのテンプレートを作成しましたので、ぜひ業務にお役立てください。

職務記述書

株式会社[会社名]は、[地名]に本社を置く[業界名]企業です。[事業内容]を主な事業としています。

職種: [職種名]
部署: [部署名]

職務概要
[職種名]は、[会社名]の[部署名]に所属し、[上司のポジション]に報告します。彼/彼女は[具体的な業務やプロジェクト]の成功に向けて積極的に貢献し、[会社名]のビジョンと目標を達成するために業務を遂行します。

主な責任

  • [具体的な業務/プロジェクトの実行]
  • [関連するタスクの遂行]
  • [コミュニケーションと情報共有]
  • [スキルと知識の向上]

必要な資格と経験

  • [関連する学位や資格]
  • [業界経験の年数]
  • [特定のスキルや言語の習熟度]

必要なスキル

  • [コミュニケーションスキル]
  • [プロジェクト管理能力]
  • [チームワークと協力]
  • [問題解決能力]

勤務条件

  • 雇用形態: [正社員/契約社員/パートタイムなど]
  • 給与: [給与範囲やボーナスの有無]
  • 勤務地: [勤務地やリモートワークの可否]
  • 勤務時間: [標準的な勤務時間]

新卒採用のジョブディスクリプションはどう作るべき?

ジョブ型雇用を導入するうえで、ジョブディスクリプションの作成は必須ですが、特に新卒採用に関しては、学生目線での作成に留意すると良いでしょう。

社会人目線で作成すると、学生にとっては職務や役割のイメージがつきにくい内容になることが考えられるためです。

入社後の明確なビジョンを提示する

学生目線での「ジョブディスクリプション」とは、学生が就職先を選ぶ際に、その仕事内容や求められるスキル・経験、キャリアパスなどを、学生目線でわかりやすく伝えるためのものです。

具体的には、以下の3つのポイントを意識して作成するとよいでしょう。

▮仕事内容を具体的に伝える

学生は、応募する仕事内容が具体的にイメージできないと、入社後に自分が何をするのか不安になってしまいます。そのため、仕事内容は、具体的な業務内容や成果物、使用するスキルやツールなどを、できるだけ詳しく伝えるようにしましょう。

例「新規顧客の開拓や既存顧客のフォローアップを行い、売上を達成する」

▮求められるスキル・経験を明確にする

企業は、採用する学生に、ある程度のスキルや経験を求めています。そのため、ジョブディスクリプションでは、求められるスキル・経験を明確に伝えるようにしましょう。

例「コミュニケーション能力や交渉力、プレゼンテーション能力」といったスキルや、「営業経験」

▮キャリアパスを示す

学生は、入社後にどのようにキャリアを積んでいくことができるのかを知りたいものです。そのため、ジョブディスクリプションでは、キャリアパスを示すようにしましょう。

例「入社後は、新規顧客の開拓を担当し、その後、既存顧客のフォローアップや、営業マネージャーなどへのキャリアアップを目指す」

学生目線での「ジョブディスクリプション」を作成することで、学生がその仕事内容や求められるスキル・経験、キャリアパスなどを、より深く理解し、入社を検討する際の判断材料にすることができます。

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採用におけるノウハウをまとめた記事も多く出ておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

ジョブディスクリプション(職務記述書)作成時の注意点

ジョブディスクリプションを活用する場合の注意事項を解説します。

▼ジョブディスクリプション(職務記述書)作成時の注意点

        • 業務内容を網羅した内容にする
        • 定期的に見直しをする
        • 職業能力評価基準とは異なる

以下で詳しく説明していきます。

業務内容を網羅した内容にする

ジョブディスクリプションに業務内容を詳しく書くことで、自分の業務に集中できる一方、担当業務以外の仕事は「やらなくてよい」という意識になりがちです。

自分が与えられた業務だけに集中すると、誰も手をつけない業務が発生するなどして、生産性に影響を及ぼすことがあります。

そのため、組織全体の業務内容を網羅したジョブディスクリプションを作っておくと、チームや組織で業務が円滑に行えるでしょう。

定期的に見直しをする

ジョブディスクリプションを作成した後に、経営状況の変化によって業務内容や必要なスキルが変わっていくことも考えられます。

ジョブディスクリプションと実際の業務内容に異なる点があると、チームワークが十分に発揮できず生産性の低下につながったり、業務の運営に支障が出たりする可能性があるため注意しましょう。

ジョブディスクリプションは、企業の変化に合わせて定期的に見直すことが必要です。

職業能力評価基準とは異なる

ジョブディスクリプション(職務記述書)は、職務の内容を詳しく記述した文書のことであり、厚生労働省が策定した「職業能力評価基準」とは性質が異なります。

職業能力評価基準とは、職種ごとに必要な知識・技術・行動例を体系化し、業界共通の評価基準として整備したものです。 4つのレベル区分によって能力を可視化できるため、ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成する際に「どのようなスキル要件を書けばいいか」の参考資料(ベース)として活用してもよいでしょう。

【参考】厚生労働省 職業能力評価基準

ジョブディスクリプション(職務記述書)を導入している企業事例

実際にジョブディスクリプション(職務記述書)を導入している企業の事例について紹介していきます。

日立製作所

日立製作所ではグローバル事業の拡大に伴い、人事制度のグローバル化を行うべく、ジョブ型制度の導入を行いました。

 制度導入後も、実際に制度をもとにキャリアを自分で描く社員を増やすための制度を用意することで、制度の形骸化を防いでいます。

実際に数千講座もの学習プログラムを提供している「日立アカデミー」を設置し、社員が一人ひとり学びたいスキルやノウハウを習得することを可能にしています。

また2022年には、上司に希望の職種を伝えることのできる制度や、ジョブポスティング制度の強化を図っているようです。

実際のジョブディスクリプション例

日立製作所では、職務ごとに「職務の等級(グレード)」が細かく設定されており、そのグレードに達するために必要な経験年数や資格が明確に定義されています。

例えば、戦略企画を担うポジションでは、以下のような要件が定義されています。

▼配属組織名

戦略企画本部 経営企画室

(株)日立総合計画研究所に出向 (研究第一部 政策・環境グループ)

▼必須条件

      • 事業会社での事業戦略立案、変革実行の経験。もしくは官庁、シンクタンク、コンサルティングファームにおいて事業会社の戦略立案をサポートした経験(目安3年以上)
      • TOEIC 800点以上の英語力(海外の専門機関、非日本語話者の幹部、海外グループ会社とのディスカッション等有り)
      • 社内外メンバーを巻き込んで業務を行うコミュニケーション能力、提案力、発信力
      • 社会課題を解決するための先進的技術に対する強い関心
      • 多角的な視点で柔軟に社会の将来像や事業ビジョンを検討できる思考力

▼歓迎条件

      • 環境・エネルギーをはじめとするサステナビリティや社会課題解決のビジネスに対する強い関心・知識(強い学習意欲のある方であれば、応募時点の知識がなくとも結構です)
      • エネルギー、DXに関する専門的知識・業務経験
      • 顧客企業、競合他社などのマーケット分析や事業戦略立案の経験
      • 事業環境分析に関連する経済、社会、技術、環境等のデータの収集および分析
      • 財務分析や統計分析などの分析スキル、分析に必要なITツールを提案・導入できるITリテラシー
      • 小規模なチームを率いて調査研究を取り纏めるプロジェクトマネジメント能力

【出典】株式会社日立製作所『募集職種検索』

このように、「英語力」といった曖昧な表現ではなく「TOEIC 800点以上」、「経験」ではなく「事業会社の戦略立案をサポートした経験(3年以上)」と具体化することで、共通の基準で人材を評価・採用できる仕組みを整えています。

富士通株式会社

富士通株式会社は、2020年から「ジョブ型人材マネジメント」へ移行し、等級制度を「Global Role Framework」へ変更しました。導入した等級制度は、職務(ポジション)を「職種」と「等級(レベル)」の組み合わせで分類する、グローバル共通の枠組みです。

従来の「コンピテンシー(職能)」ではなく、担っているジョブの職責の大きさに等級を紐づけることで、年齢や勤続年数といった年功的な要素を排除する仕組みとしています。スキルや専門性など「人」に紐づく要素ではなく、ジョブ(ポジション)そのものの職責の重さに基づき等級を決定します。

【参考】内閣官房・経済産業省・厚生労働省『ジョブ型人事指針』

【参考】富士通株式会社『「ジョブ型人材マネジメント」に基づく採用方針について』

実際のジョブディスクリプション例

富士通株式会社では、職種ごとに詳細な要件が定義されています。例えばエンジニア関連の職種では、以下のように具体的な資格や経験年数が明示される傾向にあります。

▼職種

AIエンジニア

▼職務内容

官公庁向け防衛装備品のAIアプリ開発担当として、お客様とのコミュニケーションを図り、富士通社内およびビジネスパートナー様と連携し、設計・製造・試験を実施する。

▼必須のキャリア、スキル、資格など

以下の経験及び資格すべて必須

      • AI関連の業務経験
      • 基本情報技術者試験
      • G検定

▼歓迎するキャリア、スキル、資格など

      • E資格保有者
      • 応用情報技術者資格保有者

▼個人に期待する役割やミッション

中小規模のAIアプリ開発プロジェクトにおいて、お客様の要件を踏まえ、お客様調整を実施し、具体的な設計、製造、試験を実施する。

      • ・お客様の要件を踏まえ、お客様との設計内容調整を行う
      • ・プロジェクトの担当箇所について、設計・製造・試験を実施する

【出典】富士通株式会社『採用特設サイト』

このように、「分析ができる」だけでなく企業独自の戦略を要件に落とし込むことで、カルチャーマッチした人材を惹きつけることができます。

KDDI

KDDI株式会社では、「プロを創り、育てる」ことを目的に、 2020 年 より全総合職を対象に 「KDDI 版ジョブ型人事制度」を導入しました。

一般的なジョブディスクリプション(職務記述書)は詳しい職務内容を記載するのに対し、「KDDI」版は異なる特徴を持っています。

1つ目は、 社内の職務を「30の専門領域」に分類し、それぞれの職務や必要なスキルを具体化している点です。社員が自身の専門性をどこまで深めればよいか、キャリアの道筋を明確にしています。

2つ目は、「人間力」も評価対象としている点です。

「人間力」評価に応じてダイレクトに報酬へ反映させることで、高い専門性を持ちながらもチームワークを発揮できる人材を育成・優遇する仕組みです。

また、社内教育機関「KDDI DX University」を設置するなど、社員がライフステージに合わせて挑戦し、市場価値を高められるよう手厚いキャリア支援を行っています。

【参考】KDDI株式会社『環境・制度を知る KDDI版ジョブ型人事制度』

【参考】内閣官房・経済産業省・厚生労働省『ジョブ型人事指針』

実際のジョブディスクリプション例

KDDI株式会社では、30の専門領域に基づき、職務ごとに詳細な要件が定義されています。例えば、エンジニア分野の職種では、以下のように具体的なスキルや経験年数が明示される傾向にあります。

▼必須経験・スキル

      • 大規模Webアプリケーションの開発(3年以上目安)
      • 1つ以上の言語(Java、TypeScript、JavaScript、Python、Go、など)でのプログラミング(3年以上目安)
      • アジャイル開発の経験
      • 関係者と積極的に議論できるコミュニケーションスキル

▼あると好ましい経験・スキル

      • Springフレームワークを用いたWebアプリケーションの開発
      • ペアプロやコードレビューによる品質向上の経験
      • リファクタリング
      • AWSを利用した環境構築、運用保守
      • CI/CD環境の構築

▼求める人物像

      • アジャイル開発に熱い想いをお持ちの方
      • 自ら課題を設定し、自律的な姿勢で周囲と協力して解決に向けて進めていける方
      • チームメンバーや関係者と協調して、円滑なコミュニケーションができる方
      • ユーザー/顧客志向で開発ができる方

【出典】KDDI株式会社 キャリア採用(中途採用サイト)

このように、明確なスキル要件を定義することで、専門性と組織貢献(人間力)を両立できる人物像を求めていることが伝わります。

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おわりに

いかがでしたでしょうか。ジョブ型雇用の増加により、ジョブディスクリプション(職務記述書)の需要はますます高まっています。

▼この記事のまとめ

      • ジョブディスクリプションとは、ジョブディスクリプションとは、職務の内容を詳しく記述した文書のこと
      • ジョブディスクリプションはジョブ型採用の実施に必要不可欠である
      • ゼネラリスト採用にはジョブディスクリプションは適さない
      • 新卒向けにジョブディスクリプションを作成する場合はキャリア形成や実際の業務をイメージできる内容にするべき

是非この記事を参考に自社のジョブディスクリプション(職務記述書)を作成してみてください。