新卒一括採用のメリット・デメリット|通年採用と徹底比較
2023/09/19

「新卒一括採用を始めたいけど、初めての試みで上手くいくか不安・・・」
「通年採用や中途採用に比べて、新卒一括採用にどんなメリットがあるのか知りたい!」

という人事担当者の方はいませんか。

本記事では、そんな人事担当者の方に向けて


  • 新卒一括採用とはなにか、通年採用との違い
  • 新卒一括採用のメリットとデメリット
  • 新卒一括採用を実施する場合のスケジュールの立て方

などを、100社以上の新卒採用を支援している弊社の視点から紹介しています。

新卒一括採用の導入を考えている企業の方は、必見の内容です。

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新卒一括採用とは?

まず最初に、新卒一括採用と通年採用の違いを解説していきます。

新卒一括採用と通年採用の比較表

新卒一括採用の定義

新卒一括採用とは、日本独自の採用方法で、新卒の学生を毎年同じ期間に一定数採用する方式のことです。

毎年定期的に行われる採用のため、定期雇用と呼ばれることもあります。 経団連加盟企業では、経団連が定めた新卒一括採用における「就活ルール」に則り採用活動を進める場合が多いです。

新卒一括採用の一般的なスケジュールとは

先ほども触れましたが、新卒一括採用は経団連が定めた「就活ルール」にのっとり進められることが多いです。

新卒一括採用の対象期間は3月から10月で、具体的には以下のスケジュールで選考が進みます。

-大学3年次の3月に広報が解禁

-大学4年次の6月に選考が解禁

-大学4年次の10月に内定が解禁

就活ルールに関係なく新卒一括採用を行う場合は、上記の対象期間は関係ありません。

ただし、上記のスケジュールにのっとらず、早くから選考をはじめる企業でも、大学を卒業する年の4月から新入社員が入社するケースが多いです。

「採用を成功させるためには、いつ、どんな採用活動を進めていけばいいのだろうか」というお悩みをお持ちの方は、こちらの記事もご覧ください。

【参考】【企業向け】新卒採用スケジュールの立て方|企業、時期別にご紹介!

【参考】【テンプレート付き】採用計画の立て方を3つのポイントで紹介します

新卒一括採用の「企業側」のメリット・デメリット

ここでは、新卒一括採用を行う企業側のメリットとデメリットについてご紹介します。

新卒一括採用のメリットデメリット比較

新卒一括採用の企業側のメリット

まずは、新卒一括採用を行うメリットを以下の4つの点から解説していきます。

新卒一括採用のメリット

○採用にかかるコストの見通しが立てやすい

新卒一括採用は一定の期間中に行うべきことが明確です。 会社説明会の実施数や、参加するイベントにかかるコストなど、採用業務においてやるべきことの枠組みが基本的に決まっているため、全体を考えて行動しやすいです。

また、採用する人数の見通しも年度ごとに立てやすいので、どのくらいの業務負荷になるのか判断ができます。 そのため他の業務とのバランスを見ることができ、先々の計画が立てやすいです。

採用コストの削減について考えている方は、下記の記事をご確認ください。

【参考】【完全版】採用コストを削減する6つの方法とは?安い採用を実現しよう

【参考】【保存版】採用コスト・工数の削減方法!今すぐできる4つのポイント

○安定した教育を行える

新卒一括採用では一括で教育を行います。 そのため「人によって受けた教育の内容が違うので業務遂行レベルに差が出てしまう」ということが起きにくく、一定のクオリティを保つことができます。

また、一括に教育や研修を行うためには社内ナレッジの言語化が必要です。 「なんとなく」で行う業務をなくす機会となるため、業務内容に対する解像度を一致させることができます

○仲間意識・帰属意識を高められる

新卒一括採用では、年齢の近い同期ができ、内定者懇親会や研修を通して仲間意識が生まれやすいです。 同じスタート地点から始めた同期がいることで、自分の成長の比較対象ができます

そのため時にはライバルとして、時には支え合う仲間として切磋琢磨しやすい環境があります。 また、同時期に入社した同期がいることで、会社への帰属意識も高められます。

○若年層の失業率を低められる

日本では新卒一括採用が主ですが、海外では通年採用で新卒・中途問わずポストごとで採用を行っています。 能力や経験を重視される採用が主なため、経験値の低い若年層の雇用機会が少なくなってしまう傾向にあります。

一方で、日本では新卒一括採用で就職のチャンスが安定して設けられているため、若年層の失業率を低めることができています。

新卒一括採用の企業側のデメリット

次に、新卒一括採用を行う企業側のデメリットについて以下の4つの点から解説していきます。

新卒一括採用のデメリット

○ミスマッチによる離職可能性が高い

新卒一括採用ではいわゆるマインドマッチの「ポテンシャル採用」を行っており、社会経験がない新卒が対象となっています。 実務経験がないため本当にその仕事が合っているのかを判断しにくく、実際に入社してからミスマッチに気付くということが多々あります。

実際に、新卒採用で入社した人材が3年以内に離職する可能性はおよそ30%前後です。

【参考】厚生労働省「新規学卒者の離職状況」

○対象学生を限定してしまう

新卒一括採用では採用を行う時期が3~10月と限定されるため、その期間に就活を行うことが難しい留学生や海外大学生は対象から外れてしまいます。 また、第二新卒・既卒者も対象外となる場合が多く、対象とする学生の間口を狭めてしまいます

○一定の期間に集中して負荷がかかる

新卒一括採用では、学生へ短期間でアプローチできるため採用コストが削減できるという点で採用担当者へのメリットがあります。 一方で、学生にとっては選考の時期が集中しており限られた時間で就活を行う必要が出てくるため、負担がかかりがちです。

○内定辞退者の補完がしにくい

新卒一括採用では、選考を開始する時期と終了する時期が明確です。 基本的に10月にある内定式以降は、就職活動を続ける学生が少数派となります。

そのため、選考終了時に内定辞退者が出た場合、採用活動を再開しても求職者が少ないため、欠員分を補完するということが難しくなっています。 内定辞退者が想定より多く出た場合、採用目標人数に満たないという可能性もあります。

内定者フォローの方法について詳しく紹介している記事も参考にしてみてください。

【参考】【オンラインあり】内定者フォローの面白い企画事例からコツまで紹介

【参考】内定辞退の理由とは?すぐできる内定辞退対策12選を解説!

新卒一括採用の「学生側」のメリット・デメリット

ここでは、新卒一括採用の学生側にとってのメリットとデメリットを解説していきます。企業と学生双方のメリットとデメリットを把握しておきましょう。

新卒一括採用の学生側のメリット

新卒一括採用を行う学生側のメリットを以下の4つの点から解説していきます。

◯経験やスキルが求められない

新卒一括採用の場合は、ほとんどの企業が具体的なスキルや経験を求めてきません。

そのため、「人生で頑張った経験」や「入社してどのように活躍したいのか」など、企業にアピールをすることで、企業とマッチすれば採用に繋がる可能性があります。

◯大手企業に就職できるチャンスが大きい

企業にはよりますが、大半は新卒人数を多くとっている傾向にあります。

このように、多くの企業が新卒一括採用を行っているため、有名企業や大手企業に就職できる最大のチャンスと思っている学生も多いでしょう。

新卒一括採用の学生側のデメリット

続いては、新卒一括採用の学生側のデメリットについて紹介します。

◯自分のペースで就活をすることができない

限られた期間で就活活動を行うため、学生は学業や部活、趣味などと同時進行で行うことが難しいため、負担がかかる可能性が大いにあります。

◯プレッシャーがかかる

新卒一括採用が大チャンスだと思う企業の方も多いと思いますが、その反面、学生側にプレッシャーがかかっていることもあります。

一斉に就職活動がスタートするため、同学年の友人と比べてしまうことや、家族からの過度な期待によるストレスを抱えてしまう学生もいます。

新卒一括採用に影響を与えた就活ルールとは?

紳士協定のイメージ新卒一括採用の状況は就活ルールの廃止に伴い、大きく変化すると考えられます。

「就活ルール」というのは通称で、正式な名称は異なります。 経団連によって定められていた就活ルールの正式名称は「採用選考に関する指針」です。


就職活動の早期化によって学業に支障をきたすことを防ぐ目的で制定されました。


この指針では、下記の5点に配慮しつつ採用選考を行うように定められていました。


  • 公平・公正な採用の徹底
  • 正常な学校教育と学習環境の確保
  • 採用選考活動開始時期
  • 採用内定日の遵守
  • 多様な採用選考機会の提供

なお、具体的に取り組む際には、別途定められている「採用選考に関する指針」の手引きを踏まえるようにとの記載があります。

【参考】一般社団法人 日本経済団体連合会「採用選考に関する指針」

どの企業も必ず経団連の定めたルールに従わなければならないわけではありませんが、日本の企業の多くは経団連に加盟しているため、就活ルールに則った採用が主流となっていました。


そのような中、2018年9月3日に行われた記者会見で、経団連の中西宏明会長が「就活ルールを廃止する意向」を表明しました。 そのため、2021年卒以降のルールは経団連ではなく政府が主導して定めており、現在の就活ルールの正式名称は「学生の就職・採用活動日程」となっています。


就活ルールの廃止について

前述の通り、2018年9月に経団連主導の「就活ルール」の廃止が発表されました。 ここからは、就活ルールの今までや、廃止後の新卒採用についてを分かりやすく簡単に解説します。


  • 就活ルール廃止に至った経緯
  • 廃止後の就活ルールの現状
  • 新卒一括採用の問題点
  • 就活ルール廃止のメリット・デメリット

以上の4点を理解して、今後の採用はどのように行っていくべきなのかを考えましょう。

○廃止に至った経緯

就活ルールの廃止が決まったのはなぜなのでしょうか。 主に次の2点が原因と言われています。

⑴ ルールの形骸化

就活ルールには、違反した際の罰則がありません。 そのため経団連に加盟している企業でも、優秀な学生を早く確保しようと水面下で採用活動を行うことが少なくありません。

実際、面接の解禁日である6月1日よりも前に内定を得ている学生も一定数存在します。

⑵ 通年採用の重要性が高まっている

企業の世界展開が進む中、競争力や生産性を高めるために必要な人材を流動的かつ適時に確保する手段が重要となっていきます。

その状況の中、欧米では時期を定めず採用をする通年採用が一般的になっています。 世界の企業を相手に戦っていくためには、日本の雇用形態も変化していく必要があるのです。

○廃止後の就活ルールの現状

経団連主導の就活ルールの就活ルールは廃止されましたが、現在は政府が主導でルールを定めています。 2021年11月29日に発表された「2023年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程」では下記のように日程が取り決められました。

-広報活動(卒業前年度)  3月

-採用選考時期(卒業年度) 6月

-正式内定(卒業年度)   10月

同時に「就職・採用活動日程に関する考え方のポイント」も発表されています。 要点をまとめると以下の通りです。

  1. 就活ルールは、学修時間を確保しながら安心して就職活動に取り組めることが必要

  2. 調査の結果、就活ルールが必要との回答が7割
  3. 就活ルールの急激な変更は学生に混乱を生じさせるおそれがあり「新卒一括採用」を中心とした採用活動の在り方は、雇用全体の中長期的な課題である

  4. 就業体験を伴わないインターンシップが多く実施されている。学生・企業双方にメリットがあるインターンシップの在り方の検討が必要

  5. 就活ルールの遵守を前提に、柔軟な日程設定や秋採用・通年採用等による募集機会の提供をすることに加えて、中長期的視点に立った採用を進めるよう必要に応じて要請
【参考】内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省「2023年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方 ポイント」

2024年度卒業予定の学生の扱いについては、これまで通り毎年度決定の流れを踏襲し、来年度に改めて検討するということです。

現時点においては現行の日程を変更する可能性は低いようです。

2025年度卒業予定の学生の扱いについては、今後の経済情勢や企業の採用活動、インターンシップの見直しの動き等を見極め、在り方を含めて検討を行うという認識が共有されているとのことです。


ルールの制定が経団連から政府主導になってからも、今のところはスケジュールの大幅な変更は行われていません

2024年度も同様となる可能性が高いようですが、昨年の発表によると2025年度には大幅な変更も行われる可能性がゼロではないことが示唆されています。

○新卒一括採用の問題点

そもそも就活ルールが形骸化したのは、新卒一括採用が現状の企業体制に合っていないためです。 上述しましたが、昔は「終身雇用」や「年功序列」が日本の企業にとって当たり前でした。


このような長期的な雇用を前提とした上で、企業文化に染まりやすい新卒を一括に採用していました。


しかし現在では、テクノロジーが発展し、年齢と能力が比例しなくなり、年功序列制度や終身雇用制度も崩れ始めています。 それに応じる形で、「転職への意向が高い」労働者、「実力評価主義」の企業が増えています。


また、少子高齢化によって労働人口が減少し、多くの企業が優秀な人材を自ら積極的に確保する必要が出てきています。 将来的に貢献してくれそうな新卒をマインドマッチで採用することよりも、経験や能力を重視したスキルマッチ型の通年採用がこれから増加していくでしょう。

○就活ルール廃止のメリット・デメリット

就活ルールを廃止することによる企業側のメリットは、以下の通りです。

  • 優秀な人材を早期から確保できる
  • 就職活動期間の長期化によって出会える学生の母数が増える
就活ルールを廃止することによる企業側のデメリットは、以下の通りです。
  • 経団連に加盟している大企業が採用開始時期を早めるため、加盟していなかった中小企業が不利になりやすい
  • 長期化による人的・金銭的なコストが増える
就活ルールの廃止によって、短期集中型で行う新卒一括採用から、長期分散型で行う通年採用へシフトしやすくなります。

だからこそ今、新卒一括採用と通年採用のメリット・デメリットを把握し、自社にとってのベストな採用は何かを考えることが必要です。

通年採用の実施状況

分析のイメージ新卒一括採用が見直されている現在、どれほどの企業が通年採用へと移行し、実施しているのでしょうか。
ここでは通年採用への移行状況や、採用の早期化の現状をデータを用いてご紹介します。

通年採用の定義

通年採用では、新卒一括採用のように期間を限定せずに年間を通して採用します。新卒・中途問わず、ポストが空き次第、必要に応じて人材を募集していく形式です。

日本ではまだ主流ではありませんが、アメリカをはじめとした海外の多くの国で主流となっている採用方式です。

通年採用への移行状況

海外では主流である通年採用は、日本企業ではどの程度実施されているのでしょうか。 経団連の2020年の発表によると、実施状況について次のようなデータが得られています。

通年採用を

  • 実施している 16.5%
  • 実施予定 5.2%
  • 検討している 36.9%
  • 実施していない 41.4%
新卒採用において、通年採用を実施している企業は、実施予定を含めると2割強ということがわかります。 検討中を合わせると6割弱にのぼります。

また、今後5年間の方向性としては、未定と回答した企業が7割と大多数でしたが、増やしていくと回答した企業が2割という結果でした。

【参考】一般社団法人 日本経済団体連合会『2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果』 この調査から1年半ほど経過した現在の状況はどうなっているのでしょうか。

就職みらい研究所によると、2023年卒の採用について「通年採用」を実施予定の企業は25.5%という結果が得られています。 前年比+1.3%ということで、通年採用への注目が高まっていることが窺えます。

【参考】就職みらい研究所『就職白書2022』

採用の早期化

新卒一括採用から通年採用への移行は、採用の早期化という点からも見ることが可能です。

近年、経団連の定めた就活ルールの解禁日よりも前から学生との接点を持つ企業が近年増加傾向にあります。


内閣府の調査によると、約97%の学生が、就活ルールで定められた解禁日よりも前に「採用面接」に参加したと回答しています。


就活ルールよりも前に「内々定」を貰った学生は約74%、「説明会」に参加した学生は約65%、「エントリーシート」を提出した学生は約61%です。



また本選考前にインターンシップを行い、学生との接点を持つ企業も増えています。 2022年卒のなかでインターンシップに参加したことのある学生は全体の73%で、2018年卒の時よりも6%増えています。


インターンシップ参加経験の有無

インターンシップ参加者に向けたアプローチは、「3月の広報開始前の説明会に参加」が約6割、「参加者を対象とした早期選考の案内」が約5割となっています。

 

このことから、インターンシップを契機とし、早期に学生へとアプローチする企業が増えていることが分かります。

さらに、採用の長期化傾向も見られます。 「就職活動が始まったと考える時期」から「就職活動が終わったと考える時期」の間の期間について見てみると 、「9ヶ月間程度以上」の割合が約4割と最も高いです。

新卒一括採用を行う企業においても、採用の早期化・長期化が進んでおり、通年採用との区別がつきにくくなっていることが分かります。

【参考】内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査」


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通年採用の「企業側」のメリット・デメリット

ここでは、通年採用の企業側のメリット・デメリットをご紹介します。

通年採用のメリットデメリット比較

通年採用の企業側のメリット

まずは、通年採用を行う企業側のメリットを以下の3つの点から解説していきます。

通年採用のメリット

○採用業務の負荷が集中しない

新卒一括採用では一定の期間内に目標人数を採用しなければならないため、期間中の業務負荷が大きいです。


一方で、通年採用では採用活動に期限が設けられていないため、業務負荷が分散しやすくなっています。 そのため余裕をもって採用を行うことができます。


また、求職者側も他社の会社説明会日程被りなどがなくなるため、気になる企業全てを吟味できます。 他企業との兼ね合いでスケジュールが合わずに自社への応募を断念する、ということがなくなります。


○自社にとって本当に必要な人材のみを採用しやすい

通年採用では、新卒に限らず、第二新卒や留学生・中途など様々な候補者の中から自社に必要だと判断した人材を採用します。 そのため幅広い人材にアプローチすることが可能です。


また、期間内に採用できなければ来年まで待たなければいけない、ということもないため、本当に必要な人材か否かの基準で採用を判断しやすいです。


○内定辞退が合った場合の補完がしやすい

新卒一括採用では時期によって採用市場にいる学生総数の変化が大きいです。

選考終盤の6月以降からは、優秀な学生は既に内定を貰っている場合が多く、採用したい人材を探すことが難しくなります。

一方で、通年採用では閑散期のようなものがないです。 そのため内定辞退があった際に、採用活動を再開してもこの時期には既に良い人材がいなくなっている、ということが起こりにくく、そのため欠員の補完がしやすくなっています

通年採用の企業側のデメリット

次に、通年採用を行う企業側のデメリットを以下の3つの点から解説していきます。

通年採用のデメリット

○研修や教育の質を保つことが難しい

通年採用では、一括で大人数が入社することがないため、ひとまとめに研修や教育を行うことがありません。

一括で行う場合は研修内容などにも目が行き届きやすいですが、そうでなければ管理することが難しくなります。

そのため、質を一定に保って、安定的な教育を行うことが新卒一括採用に比べて難しくなります。

それにより、人によって業務に対する理解度、解像度が異なってしまう可能性があります。

○仲間意識・帰属意識を醸成しにくい

新卒一括採用のように、同じスタート地点から出発して切磋琢磨する仲間ができにくいです。 通年採用で入社した人材は、自分自身で鼓舞し続け、モチベーションを保ち続ける必要があります。

また、新卒一括採用では、内定者フォローや懇親会、研修などで社内同士で繋がりが深まる機会が多く設けられていますが、通年採用では比較的そのような機会が少ないです。

そのため会社に対する帰属意識を醸成しにくくなる傾向があります。

○『予想外の出会い』が発生しにくい

新卒一括採用では、一定の期間内に集中して就職活動を行う人が多いです。採用イベントや合同説明会などに足を運んで、様々な企業を見ていく学生が多く存在します。

そのため、最初は興味がなかった業界・業種に対する関心が就職活動を通して大きくなり、結果的に『予想外の出会い』が生まれる可能性があります。

一方で通年採用では、その時点で興味のある業界・業種の中だけで就職活動を行う求職者が多いです。

これにより人材に偏りが出やすくなります

通年採用の「学生側」のメリット・デメリット

続いて、通年採用の学生側のメリットとデメリットを解説します。

通年採用の学生側のメリット

まずは、通年採用の学生側のメリットについてです。

◯スケジュールに余裕が持てる

通年採用は長期的な採用活動になるため、学生はスケジュールに余裕を持つことができます。一方、新卒一括採用は短期的に行われるため、毎日のように説明会や面接がありスケジュールの管理が難しくなります。

場合によっては、志望している企業の説明会や面接が同日になってしまうこともあります。

反面、通年採用は採用時期が長いので、選考日が重複してしまう可能性は低いです。

◯時間をかけて準備を進めることができる

新卒一括採用は短い期間で、企業を選定して選考を進めなければなりません。

これは、必然的に1つの企業に対しての準備時間が少なくなるということです。

一方、通年採用は採用時期がバラバラであるため、1つの企業に集中して準備を進めることができます。

通年採用の学生側のデメリット

通年採用の学生側のデメリットについてです。

◯高いレベルと能力が求められる

通年採用は、新卒一括採用よりも選考基準が高い企業が多いです。

何故かというと、企業側も通年採用の場合スケジュールに余裕が出るため、採用コストと人材への期待度のバランスをよりシビアに評価するからです。

◯自発的な就職活動が大事

通年採用は、企業ごとに選考期間やフローが異なります。そのため、学生側が自発的に企業の情報収集をしなければいけません。

自ら入社したい企業に合わせて就職活動をするといった、自発的な行動が必要です。

新卒採用の成功のために、今後どのように対策すべきか?

対策のイメージ現状の採用活動は、『早期化』と『長期化』の2つの特徴があり、これらが就活ルール廃止によって拍車がかかると考えられます。

採用活動の『早期化』によって、優秀な人材を早いうちから確保しようとする企業が、今まで経団連のルールに従っていた大企業を含めて増えています。

これによって選考を受け始めてから、最終的に全ての企業を受けて内定承諾するまでの期間が長くなり、採用活動の『長期化』が予想されます。

これらの背景があるため、自社の採用活動をより強固なものにする必要があります。 具体的には下記のことを行います。

新卒一括採用のおける今後の対策リスト

次項から具体的に解説していきます。

ペルソナの設定・見直し

上述したように、採用の早期化・長期化によって競合他社が増えていくことが予想されます。 競争が激化していく中で自社を魅力的に見せるためには、採用戦略をより綿密に考えて、自社が求める人材に対して的確なアプローチを行っていく必要があります。

そのためには以下のことを把握することが必須です。

自社はどのような人材を求めているのか」 「自社のターゲットが集まりやすいイベントや場所はどこか」 「自社のターゲットのニーズは何か

これらを知るためには、採用要件からペルソナを設定しなければなりません。 採用要件は以下の流れで設定します。

採用要件設定の流れ

詳しい設定方法: 採用要件を明確に定義する方法!評価基準の設け方などを解説 ペルソナは以下の流れで設定します。

ペルソナ設定の流れ

詳しい設定方法: 採用ペルソナの設定方法やポイント・具体例について解説!

採用が激化していく中では、自社の魅力を最大限に表現し、求める人材へ自社の情報を確実に届けていくことが採用活動を成功させるために必要です。

ペルソナ作りを通してターゲットをピンポイントに設定することで、自社が行うべきことを明確にすることが可能になります。

例えば、「理系・主体性がある」という要素が採用要件に含まれていたとします。このままでは具体的にどのようにアプローチすれば求める人材に届くのかを考えることは難しいです。

「〇〇大学××学部、IT系のベンチャーで3ヶ月以上のエンジニアとしてのインターン経験あり」というように、採用要件から人物像を膨らませ、ペルソナを設定することができます。

ここまで考えられると、自社が求める人材が集まりやすい採用手法の選定など、具体的なアプローチ方法が見つかりやすいです。前年の採用プロセスと結果、その年の採用市場動向などを踏まえながら、見直しと改善を行うことを忘れないようにしましょう。

採用マーケティングの実行

自社が求める人材を採用するためには、採用市場や自社の強み・弱みについて分析し、戦略的に自社のPRを行う必要があります。

そのために、採用マーケティングを行なっていきます。 採用マーケティングは以下の流れで行います。

採用マーケティングの流れ

設定したペルソナに基づき、自社が求める人物像が企業に対して求めるものや想定される就職活動状況などを予想し、それに合わせたコンテンツ作りを行なっていきます。

採用管理システム(ATS)などのツールを活用し、データに基づいた戦略立てを行うことも効果的です。

求める人材を獲得するための最も効果的なアプローチ方法を採用マーケティングによって見つけ出し、激しい採用競争の中でも着実に求める人材を獲得できるようにしましょう。

【参考】採用マーケティングで採用活動を成功させる!手順とポイント徹底解説
【参考】注目の採用ブランディングとは?注意点や成功のポイントをご紹介!

内定者フォロー

就活ルールの廃止によって、採用活動の開始時期が早期化すると予想されます。 それに伴い、学生に対する内定出しも早まる可能性が高いです。

学生が内定を貰ってから実際に入社するまでの期間が長くなると、内定者のモチベーションが低くなる恐れがあります

入社意欲の低下によって内定辞退に至ってしまわないように、今までよりも内定者フォローに力を入れていくことが必要です。 学生は内定者フォローでは以下のことを行います。

内定者フォローの流れ

採用の長期化に伴い、入社へのモチベーションが低くなる学生が増加することが予想されます。 学生が自社へ入社したいと思い続けられるような環境作りを行うことで、入社までのサポートを行いましょう。

【参考】【改善策4選】3年分の内定承諾率から考察!内定承諾率を上げるコツ
【参考】学生が求める内定者フォローとは?ポイントごとの実例もご紹介!
【参考】新卒採用の内定辞退を予防!主な辞退理由から対策を立てる

学生に直接アプローチできる採用ツールの活用

人材獲得の競争の激化に伴い、採用力の高い大手有名企業などとの差別化を測る採用を行なっていく必要があります。

ナビサイトなどに自社の情報を掲載して学生からの応募を待つだけでは、優秀な人材と出会える可能性は低いです。

労働人口が少なくなっている現在、優秀な人材を確保するためには自らが積極的に動いていかなければいけません

ダイレクトリクルーティング、人材紹介などでは、企業側から学生へ主体的にアプローチしていく「攻めの採用」を行うことで、もともと自社に対する興味が低かった求職者にもリーチすることが可能です。

自社が求める人材からの応募を待つよりも、自社からその人材に対してアプローチしていくことで、効率的な採用活動が実現できます。

他にも、SNSなどを利用しながら自社についての情報を積極的に開示し、広げていくことが必要です。

SNSは媒体によってカジュアルさや求められる情報に差があるため、それぞれの特徴を把握しておきましょう。

他社との差別化を狙い、採用活動の早期化・長期化による競合他社増加に備えましょう。

【参考】表で解説!新卒採用で効果的な母集団形成を行う方法
【参考】【徹底解説】採用活動でSNSを最大限活用するには

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海外の新卒採用制度とは?

ここまで日本の新卒採用のあり方について解説しました。

最後に、海外(アメリカ・中国・フランス)の新卒採用の制度について説明します。

アメリカ

アメリカは通年採用を実施しています。

日本における中途採用と同様に、欠員が出たとき、あるいは特定の人材が必要になったときに求人を出し、採用を実施します。

そのため、新卒のキャリアを重視する傾向が日本に比べて低く、学業に重点を置く傾向が強いです。

日本で一般的な「就職活動」を実施せずに企業に入社する場合が多いといわれています。

また特徴的なのが、採用活動におけるインターンシップの重要度の高さです。

多くの学生が学業期間中にインターンシップに参加し、その経験が就職に影響することも多いです。

中国

中国の就活制度も他の国と異なる特徴があります。

まず中国は人口が多いため, 就活市場の競争率が非常に高いです。

企業は即座に業務に貢献できる候補者を優先的に採用することが多く、実践的なスキルを持たない新卒者が就職するのは困難です。

また、外国人留学生も競争相手となるため、年間800万人以上の新卒学生が就職活動をしています。

こういった激しい競争を勝ち抜くため中国の学生は大学時代の早い時期から就職活動を開始する必要があるようです。

フランス

フランスはアメリカと同様、いわゆる「新卒採用」という正式な制度はありません。

フランスでは一般的に卒業時期よりもスキルや資格に基づいて採用が行われています。

求職者はいつでもポジションに応募することができる一方、フランス企業は求職者のスキルと能力を重視するため、求職者はスキルや経験を積む必要があります。

おわりに

いかがだったでしょうか。 今回は、現在の採用体制である新卒一括制度についてお伝えしました。

今後は一層採用方式が多様化する可能性があるため、本記事をきっかけに現在の採用体制を見直してみることをおすすめします。