RJPとは?採用した従業員とのミスマッチを防ぐ方法・効果を解説!
2024/08/02

人材不足を解消するために、人材の採用母数を増やすことを考える企業も多いと思います。

単に採用母数を増やして入社する人材を増やすことは、短期的には人材不足を解消することができるかもしれません。

しかし、採用した人材のミスマッチによる早期離職は長期的な企業の人材不足を解消することは難しいでしょう。

ここでは、採用した従業員とのミスマッチによる早期退職を防ぐRJP理論について詳しく解説します。採用戦略の立て方の資料ダウンロード

RJP(Realistic Job Preview)理論とは

RJP(Realistic Job Preview)理論とはRealistic Job Previewの頭文字をとった単語で、直訳すると「現実的な仕事情報の事前開示」です。

これは1970年代に産業心理学者であるジョン・ワナウス(John P. Wanous)によって提唱された理論で、会社組織を成長させるための戦略的な人材確保の手法ではなく、入社した人材の定着に重きを置いた理論です。

多くの会社では、採用広告やダイレクトリクルーティングのような採用手法に投資を行い、採用母数を増やすことで人材不足をカバーする動きがあります。

しかし、入社した人材が定着せず、高い離職率を維持し続けると人材採用に投資した費用の回収が見込めないことに加え、企業イメージも損なってしまう可能性があるでしょう。

そこで、企業のポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も含めた具体的な仕事内容や職場環境、社風をありのまま伝えることで、これに納得した採用候補者に対して選考を行う採用理論がRJP理論です。

つまり、企業と採用候補者の間で考え方の相違による応募者数減少はあるものの、企業と求職者のミスマッチをなくし、企業で長く活躍してくれる人材を採用することで持続可能な組織運営を可能とする考え方です。

日本でRJP理論が注目されている理由

厚労省が毎月公表している有効求人倍率によると、近年の日本は求人数が求職者数を上回る人材の売り手市場となっています。

加えて、統計局のデータによると転職希望者の数は年々増加傾向にあり、2023年には過去最高の1035万人が転職を希望しています。転職希望者数の推移を表す画像。年々増加傾向にある。

このような社会動向から、企業の持続的な成長のため、人事は採用人数を増やすだけでなく、入社した人材がミスマッチによる早期離職を防ぐことにも気を配るようになったことで、RJP理論が注目されるようになりました。

【参考】厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」

【参考】総務省統計局労働⼒⼈⼝統計室「直近の転職者及び転職等希望者の動向について」

RJP理論導入が人材定着に及ぼす4つの心理的効果

これまでの内容で、RJP理論の概要を理解していただけたかと思います。

では、なぜRJP理論が入社した人材の定着、特に企業と従業員のミスマッチ軽減に貢献することができるのでしょうか?

RJP理論が求職者に及ぼす心理的効果は次の4つが考えられます。

  • ワクチン効果
  • スクリーニング効果
  • コミットメント効果
  • 役割明確化効果

ここでは、この4つの効果が何かそれぞれ説明します。

(1)ワクチン効果

ワクチン効果とは、感染症を予防するために感染症の原因となるウイルスを接種することで免疫システムを備える実際のワクチンを心理的に捉えたものです。

つまり、会社のポジティブ情報だけでなく、ネガティブなものを含めて伝えることで入社後の失望感を緩和させる効果です。

従来のポジティブな情報だけを伝えた採用では、ネガティブな情報に対する免疫が少ないことから、企業と従業員の間で入社後のミスマッチによる早期離職が多発してしまいます。

RJP理論の導入により、事前の情報開示で求職者が入社後に感じる幻滅感を抑制することができます。

(2)セルフ・スクリーニング効果

セルフ・スクリーニングとは、条件にあうものを選び出す行為のことを指し、別の単語で言い換えると「選別」や「ふるいにかける」が挙げられるでしょう。

RJP理論において、求職者はネガティブな情報を含めて自分にあった企業をスクリーニングすることができます。

ここで重要なのは、自ら選択を行っている点です。

「入社後にネガティブな出来事もあるが、それを踏まえても自分に適した会社である」という気持ちが固まることで、責任を持って働ける求職者からの応募を期待できるでしょう。

(3)コミットメント効果

コミットメント効果とは、公開しなくてよいネガティブな情報をオープンにする行為によって、企業の誠実性を高めることが企業への愛着心につながる効果です。

この効果が、求職者の入社後に「企業に貢献したい」という意欲を生み、エンゲージメントを高めることができます。

エンゲージメントが高い従業員は離職率が低く、定着しやすいという特徴があります。

(4)役割明確化効果

役割明確化効果とは、企業の人事が求めている本音の部分を伝えることで求職者が「期待に応える」という意欲を引き出す効果を指します。

RJP理論の「企業のありのままの姿の情報開示」は、企業が求職者に対してどんな役割を期待して採用を行っているかを本音ベースで伝えることを含みます。

このような求職者は入社後に、自らが果たすべき目的を明確に理解しているため、その目的を果たすために早期から活躍し、長期的に従事することが期待できます。

RJP理論を導入するメリット

RJP理論導入の目的は「人材流出を防ぎ、人材定着を図る」ことですが、これ以外にも副次的に得られるメリットがないか気になるところだと思います。

ここでは、RJP理論を導入することで具体的にどのようなメリットが付随するのかを解説します。

企業に対する信頼性の向上

求職者に企業のポジティブな情報だけを伝えることは感情的な反応を引き起こしやすく、その仕事が好きか嫌いかという単純な感情に訴えることができます。

感情に訴えることで、求職者が企業を論理的に分析せず、より直感的な意思決定を促すことができるでしょう。

しかし、ポジティブな情報だけでは「もしかしたら裏があるのでは...」や、入社後に「思っていたものと違った」のような不信感につながり、結果的にミスマッチによる早期離職につながりやすいです。

ポジティブな情報に合わせてネガティブな情報も包み隠さず情報開示することは、企業にとっても不利になるような情報を伝えるので、企業に対する信頼度が上がります。

さらに、デメリットを理解した上で入社を承諾するので自分の選択に対する責任感が強まり、ネガティブな場面に遭遇しても従業員が離職しにくいという特徴があります。

採用コストの削減

採用活動で企業の良い情報のみを伝えることは、求職者の母集団形成に多大な効果を与えるでしょう。

しかし、多くの採用候補者が集まっても、その中からターゲットとなる人材を選考するのに人事担当者の時間や手間など多くのコストがかかってしまいます。

企業に関する情報を事前に開示できていれば、求職者自身で企業との相性を図ることができます。

これはミスマッチによる選考の途中辞退を防ぐことに加えて、自社がターゲットとする人材の応募を促進し、結果的に採用コストを下げることができます。

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RJP理論の導入を成功に導くためには

ここまでRJP理論は従業員の定着率をあげるための考え方で、ポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報を事前に伝えることだと説明しました。

では、RJP理論の導入がミスマッチを防ぎ、人材定着に貢献するために必要なことはなんでしょうか?

重要なのは、求職者をスクリーニングしつつ、志望度をあげるような程よいバランスで情報発信をすることです。

ネガティブな情報以上にポジティブな情報を提供する

RJP理論で企業は求職者に対してポジティブ・ネガティブな仕事の情報開示をすると思います。

これにより求職者が企業に対して感じる信頼度は向上しますが、心理学者によるとポジティブとネガティブな感情の理想的な比率は「3:1」であると提唱されています。

この比率を厳密に守る必要はありませんが、ネガティブな情報を伝えたらポジティブな情報もたくさん伝えることを意識しましょう。

情報を誇張しすぎず正しい情報を提供する

求職者と企業のミスマッチを防ぐためにRJP理論を導入しますが、情報を誇張しすぎるとかえってミスマッチを生じる要因となってしまいます。

例えば「伝えられたネガティブな情報以上にきつかった」、「ポジティブなものが実現不可能であった」など事実とのギャップが従業員の定着を阻害する要因になる可能性が十分あります。

RJP理論を採用活動をする際は、現場情報との乖離が少ないように正しい情報発信をしましょう。

適切な導入時期を見極める

RJP理論は従業員の定着率を向上させる理論ですが、募集時点で求職者を選別してしまうため採用候補者が減ってしまうというデメリットがあります。

すでに多くの従業員を抱えており一般的な認知度が高い企業の場合、自ずと求職者からの応募が集まる傾向にあることから、採用活動の初期段階からRJP理論を実践しても問題はないでしょう。

しかし、求職者の母集団形成に苦戦している企業が無闇にRJP理論を導入すると「そもそも採用候補者の応募に至らない」、「選考途中の辞退につながるリスク」が考えられます。

「では、RJP理論を実践することができないのか?」というとそういうわけでもなく、重要なのは「まず自社を好きになってもらってからRJP理論を実践する」ことです。

基本的に求職者は候補となる企業の選考を何社も受けており、最終的にその中から自分が納得して入社できる企業に入社します。

そのため、セルフ・スクリーニン効果を期待して、求職者と接触する初期段階にRJP理論を実践するのではなく、ワクチン効果を期待して選考終盤の段階で現実を伝えることが重要です。

企業価値を損なわないネガティブ情報の伝え方例4選

RJP理論では、企業のポジティブな情報とネガティブ情報を求職者に伝えることで、企業に対する理想と現実のギャップを埋め、ミスマッチによる早期退職を防ぐことができます。

しかし、ネガティブ情報をそのまま伝えては企業イメージを損なってしまうでしょう。

そこで、企業価値を損なわず求職者を上手にスクリーニングするにはどのようにすればいいのでしょうか?

重要なのは「ありのままを伝えながらも好意的に受け取ってもらう技術」です。

ここでは、ネガティブな情報をどのように伝えたら良いか、次の4つの具体例を用いて紹介します。

  1. 人数が少ない
  2. マニュアルがない
  3. 業務時間が多い
  4. 転勤・部署異動が多い

1.人数が少ない

現在、従業員が⚪︎人の中、市場シェアを△%を占めており、大手競合とも互角以上で戦っています。いる。

一人当たり高い生産性を確保しており、常に新しいスキルや知識を吸収できるため自己成長に繋がります。

2.マニュアルがない

設立から日が浅く、自ら考える場面が多いと思います。

その分裁量権が大きいため、挑戦する楽しさを体感できると思います。

3.業務時間が多い

月の平均残業時間は⚪︎時間ですがあるが、スケジュールは自分で調整することができるためプライベートは確保できます。

また、現在はリモートワーク環境を整備しているところです。

4.転勤・部署異動が多い

入社して〇年間は会社内の様々な業務を経験してほしいという想いから、平均して〇年に〇回転勤や部署移動があります。

希望部署や職種については、〇か月に一回面談を行い、本人の意思を最大限尊重した配属先を決定しています。

RJP理論導入で気を付ける必要がある情報

次のような社内の人間関係に関わる情報は求職者によって、ポジティブ情報にもネガティブ情報にもなってしまいます。

  • 頻繁な飲み会やイベント
  • 社内の親密な人間関係
  • 休日のアクティビティ

このような情報は次のように伝えることで、出席しないことによるペナルティの存在がないことや、従業員の意見を尊重していることを伝えると良いでしょう。

「仕事とプライベートを最大限尊重しているため、参加は自由となっています。また、イベント等に関しては従業員のフィードバックを基に毎回、改善を行っています。」

RJP理論の実施方法

RJP理論のメリットや注意点について説明してきましたが、実際に人事が企業情報を求職者側に伝える方法について気になると思います。

ここでは、RJPの具体的な実施方法について紹介します。

インターンシップの実施

RJP理論の実施方法の1つに学生が就業前に行う職場体験であるインターンシップの実施があります。

学生はインターンシップに参加することで、業務に適性があるかを計り、入社するか見極めます。

そんなインターンシップで、社員が学生とざっくばらんに交流場を提供することは、社員の入社前後のギャップなど実体験によるリアルな情報を伝えることが可能になります。

インターンシップを実施し、若い社員から中堅社員まで幅広い年齢層の社員と率直にコミュニケーションをとることで、ミスマッチを防ぎ、入社した際の定着率を高めることができるでしょう。

リファラル採用を促す

英語のrefferal(紹介/推薦する)を語源とする、リファラル採用は社員に自社に合いそうな人材を紹介してもらう採用方法のことを指します。

リファラル採用を通じて入社する人材は、既存社員による正直な意見を理解した上で興味を持ってくれたり、似通った価値観をもっている可能性が高いです。

そのため、企業カルチャーに馴染みやすくミスマッチが起きにくい人材であることが特徴です。

社員インタビューによるコンテンツの制作

今までの方法は求職者が既存社員と交流することで、企業の実態を理解してもらうものでした。

しかし、RJP理論は必ずしも社員との交流を必要とせず、企業で働く社員のインタービューコンテンツでも実現可能です。

社員インタービューでは、一週間の勤務時間や業務内容を可能な限り詳細に記載することで求 者が入社後の生活をイメージしやすくなります。

合わせて、やりがいや苦労したこと、入。理由など社員のリアルな声を紹介することでもRJP理論を実行できます。

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おわりに

RJP理論について詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか?

口コミサイトでの情報収集が求職者にとって当たり前になりつつある現代では、人事担当者によるポジティブな側面だけを強調した採用情報はあまり信用されなくなってきています。

早期離職につながる入社後のミスマッチを防ぐためには、求職者にリアルな情報を誠実に伝えることが重要です。

RJP理論の考え方は、このような求職者の情報収集の方法にマッチした採用方法ということができます。

自社の状況に合わせてRJP理論を取り入れ、人材の流出入が安定した組織づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか?